魔法少女育成計画 -Suicide Side-   作:∈(・ω・)∋

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◆ 登場人物 ◆

◇ ジェノサイダー冬子… 何でも開け閉めできる魔法の鍵を持ってるよ ◇
◇ ユミコエル… ものすごい力を出せるよ ◇
◇ ルール・シール… 魔法を封印できる不思議な水晶を作れるよ ◇
◇ チックタック… 触っているものの時間を巻き戻せるよ ◇
◇ メイククイーン… 理想の人材を育て上げるよ ◇
◇ 炎の剣士レイト… 炎を操る魔剣を使うよ ◇
◇ 高橋(たかはし)病舞子(やまこ)… いろんな効果のあるハーブを育てられるよ ◇
◇ ティンクル・ベル… 相手の感覚を自分と共有できるよ ◇
◇ まきゅらさま… 探しものが得意だよ ◇
◇ 煌輝(きらき)プリズム… 何でも反射しちゃうよ ◇
◇ アップリラ… つぎはぎだらけにしちゃうよ ◇
◇ メイデン… 誰も逃れられないよ ◇
◇ バブルリブル… 何でも溶かすシャボンを作れるよ ◇


*** プロローグ ***

◆ ルール・シール ◆

 

 きゅっ、きゅっ、きゅっ、きゅっ

 デフォルメされた花が散りばめられたピンク色の壁紙に、沢山のぬいぐるみ、ふわふわのクッションに、暖かそうな毛布と柔らかいベッド。

 生活する環境としては確かに整えられているが、少女にとっては結局のところ牢獄だ。

 この部屋から外に出る権利は無いし、この部屋から外に出る自由もない。与えられたのは、ただただ石を磨き続けることだけだ。

 きゅっ、きゅっ、きゅっ、きゅっ

 少女が白い布で、無骨な石を磨いていると、やがて変化が訪れる、灰色だった石の表面はキラキラと水晶のように輝き始め、形を変えていく。三十分、無心で続けていると、やがてそれは、八面体に整えられた、手のひらサイズの結晶体となっていた。

 こうなったら、少女自身もあまり迂闊にはさわれない。まかり間違って消えてしまいたい、と思ったら、この水晶に吸い込まれてしまう。

 『魔法を封印する水晶を作ることができる』、それが少女――――魔法少女、ルール・シールの魔法だ。ただの石を丁寧に磨き続けることで出来上がるそれは、魔法に携わる物ならなんでも問答無用で、ぶつけただけで封印してしまう。

 それがあまりに有用すぎて、優良すぎて――――ルール・シールは魔法少女になって早々、魔法の国に、正確には一人の魔法少女に拉致られて、監禁された。

 以降、もう片手では足りないぐらいの年数、ずっとこの水晶を作り続ける作業を強制されている。

 何度外にでたいと訴えても、食事を持ってきたり、水晶を回収しに来る魔法少女は「あの方のお手伝いができるなんて幸せなことだ」「それ以上の喜びはないんだから外に出る必要もない」「何か不満でもあるのか」ととり合ってもくれず、やがて面倒になったのか、顔を合わせる前に部屋に睡眠ガスを流し込み、目が覚めたら労働の成果は全てなくなっていて、新たなノルマが用意されている様になった。

 地獄のような孤独だが、さりとて死ぬ勇気もなかった。お家に帰りたい、家族に会いたい。元の日常に戻りたい。その思いは愚かな願望というにはあまりに強すぎた。

 そんなある日の事だった、普段なら一週間ぐらいのペースで水晶を回収しに来る魔法少女が、二週間経っても三週間経っても現れない。どころか水や食料も持ってこない。

 与えられた菓子パン等には貯蓄があったにせよ、いくら魔法少女とはいえ飲まず食わずではそのうち死ぬ。

 空腹も限界に達したところで、扉を叩いてみた。三十分間、拳から血が出るほど叩いて叩いて、結局びくともしなかった。疲れ果てて床に寝転んで更に三十分後に、扉が開いた。

 

 そして―――――ルール・シールは自由になった。

 

 


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