やはり俺がこの終末世界を生き延びようとするのは間違っている。 作:きょうポン酢
明けた朝
俺たちは自らの生命の危険を脅かす存在との遭遇を果たした、これから始まる一日はどの様になるのだろうか
それはつまり悪夢のような1日の始まりに過ぎないのである
静「君たち起きたまえ 今日1日どう動くかを決めねばなるまい」
そういって平塚先生と俺は全員の朝食を並べ始めた 缶詰ばかりだがこの際文句は言っていられないだろう
いろは「あ!わたしサバ缶がいいです」
結衣「あたしは牛肉!」
雪乃「由比ヶ浜さん、消費期限の近いものから選びましょう」
こいつらは平常運転のようだ、やはり睡眠をとれたというのが大きいのだろうか
八幡「今日は3階を探索してみようと思います とにかく物資を集めないといけませんからね」
小町「昨日に比べて奴らの数が少なくなっていると思います 生きていた時の行動をしてるんですかね~」
静「まるで映画の世界に飛び込んでしまったようだな… あまりの展開に頭がついていかないよ」
雪乃「比企谷君、いくら私たちが素手で戦えるとはいえ効率が悪いのではないかしら?」
八幡「倉庫にあったこのバールとバット、モップの棒が武器になると思う 作戦を立ててみたんだが聞いてほしい 3階に着いたら防火シャッターを下げて下からの奴らの侵入を阻止した後3階を制圧、3階に新たな拠点を作って物資をそこに集めたいと思うんだがいいか?」
静「奴らの少ないこの時間帯なら無理な話ではないな 私は賛成だが他の者はそれで良いかね?」
雪乃「戦える人と屋上を守る人で別れましょう 屋上の守りもしなければならないので戦える人を一人屋上に配置するのが良いと思うわ」
八幡「そうだな、小町!屋上を頼みたいんだがいいか?」
小町「任せてよお兄ちゃん!屋上は小町が守るよ~」
静「よし!早速行動しよう 私と比企谷と雪ノ下で3階を奪還することにしよう 残りの者は屋上の守りを固めてくれ」
結衣「ヒッキー!死なないでね!ゆきのんと先生も!」
いろは「かわいい後輩のためにも先輩頑張ってください!」
俺たちは3階へ降りた後防火シャッターを下げた シャッターの音で奴らをおびき寄せてしまったみたいだ
静「前方に数体確認!油断するなよ!」
俺は手に入れたバールで奴らの頭をカチ割った、後ろの奴らが突っ込んできたが難なく雪ノ下が捌く、その間に捌いた奴らを平塚先生がバットで頭を破壊する、見事に息の合った連携がとれていた
八幡「この調子で残りのやつらも倒していくぞ!」
20分ほどで3階を制圧してしまった
静「死体を窓から捨てよう! 雪ノ下!屋上の者達を呼んできてくれ!」
俺たちは死体を捨てた後3階にある物資を1つの教室へ運んだ
静「確保できたのは飲料に生徒たちの弁当、懐中電灯にソーラー式の充電器、抗生物質などが入った救急箱、ライターにドライバーなどだな」
雪乃「用具室にあったものがほとんどですね」
総武高校には非常時のための物資が備えられていた 備えあれば憂いなしというのは本当だな
八幡「2階にある職員室も確保したいですね あそこにはマイクロバスのキーがあるのであれが無いと脱出は困難ですからね」
校舎内のうめき声が多くなってきた気がするな… 奴らが集まってきているようだ
静「3階を校内の最終拠点にしよう 2階には他校舎との連絡通路があるから封鎖するのは困難だろうな」
八幡「少し休憩したら二階を探索して、それで昼前には戻ってくる予定で行動しましょう」
雪乃「探索ついでに奴らの性質を把握したいから手伝ってくれるかしら?」
結衣「あいつら音にだけはやたら反応してると思う…目は見えてるのかな?」
あいつらがどういう理由で動いているのかは不明だが、生き延びる上で奴らの性質を知るのは重要な要素になるだろうな…
静「由比ヶ浜と一色と小町君は物資の整理とリュックサックへの詰め込みを頼む 探索組は2階の物資集めを行いながら職員室へ向かおう」
俺と平塚先生と雪ノ下は防火シャッターの扉を開ける
八幡「俺たちが出て行ったら鍵をかけておいてくれ、合図で扉を叩くから合図が来たら開けてくれな」
結衣「分かったよヒッキー」
俺たちは2階へ降りる 2階にはちらほら奴らがいるようだ すると雪ノ下があるものを取り出した
八幡「それは濡れ雑巾か、何に使うんだ?」
雪乃「奴らが音に反応するのは分かるわね? それは匂いのようなものと一緒に反応しているのか、音だけに反応しているのかを確認するためよ」
そういって雪ノ下は俺たちから一番近いところにいる奴らの近くのロッカーに濡れ雑巾を投げつけた すると奴らは雑巾の方へ向かっていった
静「どうやら音だけに反応するようだな… 今のうちに職員室へ向かおう」
俺は職員室へ向かう途中に技術室に注目した
八幡「ちょっと待ってくれ、何か使えるものがあると思う」
俺たちは技術室へ入るとあるものを見つけた
静「これは…釘打ち機か…?」
八幡「雪ノ下、お前射撃は得意か?」
雪乃「ええ、アメリカに留学していたころ元軍人の人に射撃訓練を受けていたのよ これなら使えるのではないかしら 予備の釘の弾倉もたくさんあるし良いと思うわ」
静「これなら大きな音を出さずに奴らを倒すことが出来そうだな 雪ノ下は合気道が使えるが奴らにとどめをさすのは難しいだろうしな」
俺たちは技術室でかなり長い梯子を見つけた 脱出するときはこの部屋から梯子を使えそうだ
八幡「脱出にはこの部屋から梯子を使いましょう この部屋は階段から近いですし、この下から降りる方が1階昇降口から駐車場に向かうよりずっと距離を短縮できると思います」
静「うむ、それが良さそうだな」
俺たちは技術室を出た後職員室へ向かった 職員室では生前教師であったであろう奴らが6体ほどいた
八幡「俺は右の2体をやります!先生達は左の4体をお願いします!」
俺たちは2手に分かれて、俺は右の1体の頭を粉砕した、後ろのもう一体が掴みかかってきたが足払いをして転ばしバールを叩きこんでやった 左では雪ノ下と平塚先生が奴ら相手に応戦していた、雪ノ下は後方から射撃をして平塚先生はバットで奴らの頭を粉砕していた 職員室の鍵かけにはいくつかのキーがかかっていた、バスが故障していた時のことを考えて持っていく方が良さそうだ
静「奴らとはいえ、仕事仲間の頭を粉砕するというのはあまり気分のいいものでは無いな…」
俺たちは職員室の扉を閉めた後、マイクロバスのキーを手に入れた 職員室にはテレビが備え付けてあったので電源を入れてみることにした
雪乃「ほとんどが放送していないみたいね… でも1つだけ放送しているところがあるみたいよ」
『こちらは総武放送です、現在の状況をお伝えします、現在原因不明の奇病が世界中を襲っています、日本政府は国家非常事態宣言を発令しました、住民の皆様はしっかりと施錠をして家から出ないようにしてください、我々も可能な限り放送をしていきたいと思います、どうか希望を捨てないで…』
国家というものは儚くも脆い存在である、第二次大戦において日本という国は一時は太平洋を支配するというところまで迫っていたのだ
それが、天敵の存在によりこうもあっさりと崩れ落ちてしまう
八幡「どうやら本格的にまずい状況になってきたようだな…自衛隊が機能していれば救助も期待できるのか…」
雪乃「とにかく今は生き延びることを第一に考えましょう この事を由比ヶ浜さんたちに伝えないといけないわね…」
静「我々はとにかく生きねばなるまいよ、いつか希望が出てくるはずだからな...」
俺たちは職員室を出ると3階へ向かった 途中いた奴らは生徒たちの上履きを使って奴らの注意を引き付けさせ、俺たちは階段を上っていく シャッターの扉に合図の音を出し、3階へ戻ってきた
結衣「ヒッキー! 無事だったんだね!」
そう言いながら由比ヶ浜がもの凄い笑顔だ、やめろよなんでそんなに笑顔なんだよ、うっかり惚れて告白しそうになるだろ、振られるけど
振られちゃうのかよ
いろは「こっちは荷物の整理は終わりました!そっちは何か収穫はありましたか?」
静「マイクロバスのキーと武器は手に入ったよ、TVでニュースを見ることができたのは嬉しい誤算だったな」
教室へ移動した後、由比ヶ浜と一色と小町にニュースの内容を伝えた
小町「世界中がそんなことになってるなんて…」
結衣「救助は来るよね… きっとすぐにいつも通りになるよね…」
八幡「救助が来るかどうかは確証が持てない…世界中がこうなってるんじゃ救助の優先度も国のお偉いさんが最初だろうしな…」
雪乃「今足りないのは情報よ、情報があるかないかでは今後の動き方に大きな違いが出てくるわ」
静「以前避難所へ職員たちと見学へ行った時にネットワーク環境が充実しているように思えたのだが、あそこなら恐らくインターネットが使えると思う、職員室のパソコンを見てみたのだがこの騒ぎでルーターが壊れてしまっていたみたいだ」
八幡「せめてスマホがあればいいんだけどな…残っていた生徒も部活があった生徒たちばかりだったからな…」
いろは「今日は持ち込み検査の日でしたからね~、この日にスマホをもってきている生徒たちはほとんど居なかったかもです」
八幡「なんで持ち込み検査廃止しなかったんだよ一色…」
いろは「しょうがないじゃないですか!こんなことが起きるなんて誰にもわかりませんよ!」
結衣「ふたりとも落ち着いてよ!今さらどうしようもないよ…」
小町「なら尚更避難所に行くことが急務ですよね」
静「小町君の言う通りだな、明日の早朝にでも総武高校を脱出するので良いかね?」
この世界はもはや平和では無くなってしまった、俺たち人類は食物連鎖の一員へと組み込まれてしまったのだろう
だけど俺は、いや、だからこそ俺は
俺の居場所を守りたいと、そう強く願えるようになったのだと思うことが出来るんだ
読んでいただきありがとうございます。
修正を加えました