仮面ライダーウィザード ~Magic Girl Showtime~   作:マルス主任

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第6話です。
ついに最初の脱落者!?


第6話 エンゲージ

 三条合歓、24歳

これまで就職活動をしたことが無く、当然働いていない。

自分の家で母親の家事手伝いをしている。

家事手伝いというのも、掃除や洗濯、などの母親の仕事を手伝っており、その他は自室でパソコンを使ってまとめサイトを漁ったり動画サイトで動画を見て過ごしたりと、だらだらとした生活を送っていた。

世間で言うところの「ニート」というやつだ。

そんな彼女が出会ったスマートフォン用ゲームアプリ、魔法少女育成計画。

彼女はすぐにこのゲームにハマり、毎日プレイしていた。

しかしある時、このゲームのマスコット、ファヴが本当に現れ、本当の魔法少女にならないか?という勧誘があった。

そして彼女は本当の魔法少女になった。

名前はゲーム本編で使用していたねむりんという名前で活動していた。

しかしファヴから突然魔法少女を減らす。という連絡があった。

周りの魔法少女達は皆困惑を抑えきれないようだった。

ねむりん自身も全く驚いていないと言えば嘘になったが、ねむりんはこれを機に魔法少女を辞め、散々世話になった家族へ恩返しをしたい。その思いで就職を決意した。

元々ねむりんの活動場所は夢の中であって、現実では人助けなどで貰えるマジカルキャンディーがあまり集まらなかった。

このままなら最下位となり、魔法少女を辞めることになるだろう。そう思っていた彼女に一人の人物が声を掛けてきた。

その人物とは、仮面ライダーウィザード。自身を魔法使いと名乗っており、ファントムと呼ばれる怪物を追って、名深市を訪れ、自分達魔法少女と関わることとなった。

そんなウィザードが、自分のキャンディー集めを手伝いたい。と言い出したのは昨日だった。

恐らくランキング最下位の自分を心配してくれているのだろうと思い、断るわけにはいかないと思って、OKの返事を返した。

そしてその日の内にキャンディー集めを行った。

ウィザードに手伝ってもらったおかげもあり、500個キャンディーを集めることが出来たが、その帰りにウィザードに自分の思いを話した。

しかしウィザードはその考えに賛成してくれた。

後悔するより前に進もう。そう言ってくれた。

そのおかげで、前よりもっと自分の選択に自信が持てるようになった。

 

 目が覚める。またふとした時に眠りについていたのだろう。

そして今日はランキング発表の日。自分の魔法少女生活最後の日になるかもしれない日。

するとマジカルフォンからファヴが現れ、合歓に語りかける。

『今日でランキング最終日だぽん。昨日はキャンディー貯めたみたいだけど、また最下位になっちゃったぽん。どうするぽん?』

「まぁいいよ。辞めてもいいし」

『そうなのかぽん、残念ぽん。でもまだ時間があるから、気が変わったりしたらまた集めるぽん。』

 それを最後にファヴはマジカルフォンに消えていった。

「さて、もう一眠りするかな」

合歓はもう一度ベッドに潜り、眠りに着いた。

 

 

 

 時刻は夜11時を回った。魔法少女達はファヴから集合が掛けられていた。

チャットルームに続々と入室する魔法少女達。

魔法少女達は緊張のあまり震えていたり、浮かない顔をしている者もいた。

一方、スノーホワイトとラ・ピュセルは、ただ静かにチャットルームを見つめていた。

 

「そうちゃん、ランキングどうだろうね」

「私達は、君のおかげで恐らく最下位は無いだろう。本当に感謝する」

「も、もう、そんなに畏まらなくても…」

スノーホワイトとラ・ピュセル、そしてウィザードは、よく集まっている鉄塔でその結果を見ていた。

「おい、ファヴが来たぞ」

ウィザードがそう言うと、二人は真剣な顔となり、チャットルームを見つめた。

 

~チャットルーム内~

 

『みんなお待たせぽん。ドキドキの結果発表だぽん』

「おいファヴ、やけにお前嬉しそうだな」

何故か上機嫌のファヴに、トップスピードが早速不満を露にする。

『そんなわけないぽん。今日辞めてしまう魔法少女が出るなんて悲しいぽん』

「ファヴ、お前の事情はどうでもいい。さっさと始めろ」

カラミティ・メアリが銃を構える。この前ウィザードに返り討ちされたのに反省していないようだ。

ファヴは少しだけ驚きながらも、こう告げた。

「では、発表するぽん。まずはキャンディーを一番集められなかった魔法少女からぽん」

 

 全員が息を飲む。静まり返ったチャットルームは、森の音楽家クラムベリーという魔法少女が奏でる音楽のみが流れていた。

当のクラムベリーは緊張している様子もなく、悠々と音楽を奏でている。相当自信があるのだろう。

 

『一番少なかったのは…』

 

 

『ねむりんだぽん。』

 

 

 ファヴがそう告げた。魔法少女達は皆ねむりんの方を向いた。

「あはは、やっぱりね~」

当のねむりんは少しだけ恥ずかしそうにしていた。

 

「やっぱり、あいつはこの道を選んだんだな」

ウィザードはねむりんの選択に納得したように声を発した。

「晴兄、ねむりんから聞いてたのか?」

「あぁ、これで魔法少女をやめるきっかけが出来たって。自分にとってやりたいことを見つけたらしい」

「そうなんだ…」

そう言うとスノーホワイトは、チャットルームにいるねむりんに声を掛ける。

「ねむりん、本当にお別れなの?」

「うん、そうだね。でもスノーホワイトやみんなといれた時間は楽しかったよ」

「いっつも私の話ばっか聞かせて、悪かったな」

トップスピードもねむりんに駆け寄る。それなりに話していた二人だったので、別れは寂しいのだろう。

「いやいや、トップスピードの話は面白くて聞いてて楽しかったよ」

「これからもまとめサイトで、みんなの活躍見てるからね!」

 

『みんな、お別れは済んだぽん?それではねむりん、さようならぽん』

 

 

そのファヴの言葉を最後に、ねむりんが消去されました。という表示でねむりんはチャットルーム内から消滅した。

 

消去されました。という表示に、魔法少女達は驚きを見せる。

「おい、いくらなんでもあんまりな消しかただろ!」

『消しかたにどうもこうもないぽん。もうねむりんは魔法少女じゃないぽん』

「何だよそれ、お前本当に無責任だな」

 

 魔法少女達のブーイングの中、これまで沈黙を保っていたリップルがファヴに話しかける。

「そういえば、脱落した魔法少女はどうなるの?」

予想外の質問だったが、ファヴは少し口を歪め、こう言った。

『魔法の力などを吸収して、マジカルフォンを通じてファヴに戻ってくるぽん』

『その時は魔法の力を一気に吸収するから、こっちは大変だぽん。つまりねむりんは日付が変わる頃に、完全に魔法少女でなくなるぽん』

 

 その返答に、魔法少女達はただ頷くしか出来なかったが、ウィザードだけは、嫌な記憶が思い浮かんだ。

サバトやゲート、そして幻の世界ではあったが魔法使いの世界での魔法使いの一斉ファントム化計画…

 

 

これはマズイ。ウィザードはスノーホワイトとラ・ピュセルに安全に帰るように告げ、急いでねむりんの家へ向かった。

前のキャンディー集めのときに寄った事があるねむりんの家。バイクなら5分で着くだろう。

現在は11:40分。後20分しかない。

ウィザードはバイクを走らせた。ファヴに質問などしている場合ではない。

 

 

 恐らくねむりんは、魔力以外に命も吸収され、12時に死ぬ。またはファントム化する。

 

 

11:45分、ねむりんの家に着いた。

ウィザードは家族の人どころか、素顔のねむりんすら面識が無いため、家族の人に不審がられるかもしれないが、今はそんなことを言っている場合ではない。だが一応変身解除し、家に向かう。

玄関から突入しようとすると、家から女性が顔面を蒼白にし、晴人に助けを求めた。恐らくねむりんの母だろう。

「ど、どうかしたんですか!?」

「家の子が、合歓が、合歓がぁ!」

かなり取り乱している様子。不審がられるどころではなく、誰でもいいから助けを求めているのだろう。

晴人も急いで家の中に入り、ねむりんの部屋を教えてもらって突入した。

 

 そこには、顔や体に紫色のヒビが入ったねむりんと思われる女性が倒れていた。

この感じ、やはり絶望しかけているゲートと似ている。

そう思った晴人は女性の元へ駆け寄る。

しかし幾らかファントムと違う点も見かけたが、これがファヴの言う魔力吸収というやつだろう。

 

「変身!」

 

晴人はウィザードへ変身した。

そして女性、三条合歓の右中指にウィザードの使う指輪を付ける。

 

しばらくしてやってきた合歓の母親は、ウィザードに驚きを隠せない。

「あ、あなたは…」

「この人は、絶対に助けます」

 

 

「俺が最後の希望だ…」

 

 

そう言うと、ねむりんに付けた指輪をベルトにかざした。

 

エンゲージ、プリーズ!

 

その瞬間、合歓の上に魔方陣が浮かび上がり、ウィザードはその中へダイブした。

エンゲージの魔法は相手のアンダーワールドと呼ばれる心の中の世界へ入ることができるのだ。

そしてウィザードは合歓のアンダーワールドへ突入する。

そこは何だか、会社のオフィスのような所だった。

「ねむりん、将来の希望を持っていたんだな」

しかし、ウィザードにアンダーワールドを見学している余裕は無い。

突如現れた巨大ザメのようなモンスターにウィザードは吹き飛ばされる。

「くそっ、結局これか!」

ウィザードは右手の指輪を付け替え、魔法を発動する。

 

ドラゴライズ、プリーズ!

 

ウィザードは、巨大な魔方陣を出現させて、中から自分の魔力の源、ウィザードラゴンを召喚した。

 

「ドラゴン、俺に力を貸せ」

『よかろう、操真晴人。俺の力を存分に使うといい』

そういうとドラゴンはサメのモンスターに飛び掛かり、攻撃を仕掛ける。

ウィザードは自身のバイク、マシンウィンガーをドラゴンに合体させた。

そこに飛び乗ったウィザードはウィザーソードガンでモンスターへダメージを少しずつ与えていく。

モンスターは段々よろめき始め、ついには地面に倒れた。

「今しかない!フィナーレだ!」

ウィザードはもう一度指輪を付け替えて、とどめの必殺技を放つ。

 

チョーイイネ!キックストライク!サイコー!

 

するとドラゴンは巨大なドラゴンの足の形へ変形しする。

そこへウィザードがキック技の体勢を取り、そのままモンスターへキックを放った。

「だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

ウィザードのキックはモンスターへ直撃。無事にモンスターを破壊した。

 

するとボロボロになったアンダーワールドは元に戻った。

そこには大変ながらも笑顔を見せて会社で働いている合歓の姿があった。

いつかこんな風になれるといいな。そうウィザードは思い、アンダーワールドを後にした。

 

合歓の自室に戻ってきたウィザード、そこにはヒビもなく、息も止まっていない合歓がこちらを見ていた。

 

時計を見たウィザード、11:58分だった。

間に合った。消えそうな命を、希望を救えた。

ウィザードに気付いた合歓は声を掛けてきた。

「もしかして、ウィザードが私を助けてくれたの?」

「あぁ、君はねむりんだろ?助かって良かった」

「チャットから抜けた後、ファヴからもう少し魔法少女になれるって聞いたから他の人の夢に入ってたんだけど、気付いたらとても息が苦しくて、倒れたみたい」

「そうか、でももう魔法少女の能力は失われちまった、すまない」

「良いよそんなの、本当にありがとうね、ウィザード」

「本当にありがとうございます!なんと礼を言えば良いのか…」

合歓と母に感謝され、変身解除した晴人は久々に心からの笑顔を見せた。

まだこれから、ファヴやファントムのこと、いろいろやらなければならないことがある。

それでもこうやって、誰かの希望を救えたことが、晴人にとっての一番だ。

 

 この先は、彼女自身の望む未来だ。

しっかりと会社に就職し、家族に尽くしていくだろう。

魔法少女ねむりんはもういない。だがこれからは三条合歓としての新しい生活が始まる。

 

三条合歓の物語はこれから始まる…




完成しました。第6話でした。
これが皆様の期待に沿えたのかは分かりませんが、自分なりに頑張りました。
これからはファヴVSウィザード、魔法少女の戦いが始まっていきます。
ご期待ください!
閲覧ありがとうございました!

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