仮面ライダーウィザード ~Magic Girl Showtime~ 作:マルス主任
ねむりん登場!
スノーホワイトとラ・ピュセルは、街にある大きな鉄塔に二人で座っていた。
「スノーホワイト、君のおかげで本当に助かってるよ」
「そんな、私だけじゃ出来ない事もあったし、そうちゃんのおかげだよ」
「そ、そうちゃんはやめてくれよ、調子狂っちゃうじゃないか」
ラ・ピュセルは頬を赤くする。どうもスノーホワイトに礼を言われると調子がおかしくなってしまう。
「そうだね、ごめんラ・ピュセル。これからもキャンディー集め頑張ろうね!」
「あぁ、私も善処しよう。スノーホワイト」
魔法少女達は困っている人を助けたりすることによってマジカルキャンディーを得ることができる。
前から二人はキャンディー集めをしていたが、今日は特に張り切っている。
こうなったのも、全ては昨日のあの出来事からだ。
魔法少女を減らす。ファヴがそんなことを言い出したのは突然であった。
魔法少女達は、ファヴが何を言っているのか分からなかった。
そしてしばらくしてファヴから再び連絡が入った。
その連絡は魔法少女を現在の16人から、半分の8人へ減らすというものだった。
そして魔法少女を辞めなければならない者の基準は、毎週マジカルキャンディーを集め、ランキングを発表し、キャンディー所持数が一番少ない魔法少女から辞めていくというルールだった。
ランキングは週に1回、つまり2ヶ月間マジカルキャンディー所持数ランキングを行わなければならない。
ラ・ピュセルもスノーホワイトも、まだ魔法少女を続けたい。その気持ちを胸にキャンディー集めに勤しんでいた。
落とし物探しやゴミ拾いなど、優しい内容のものから、強盗犯捕獲などハードなものまで何でも取り組んでいった。
そのおかげもあってか、スノーホワイト、ラ・ピュセルの二人のキャンディーは3万を越えており、ランキング中間発表では1位2位を二人で独占していた。
しかしランキングというものは1位もいれば最下位もいるもの。
中間発表で最下位だったのはねむりんという魔法少女だった。
以前の集まりではねむりんは姿を現さなかった。
その後チャットルームに顔出したねむりんにスノーホワイトが理由を聞いたところ、寝ていたから知らなかったということだそうだ。
ねむりんはその名前の通り、眠っていることが多く、魔法少女としての活動場所も夢の中というのが多かった。
魔法少女には一つだけ特有の魔法が使える。
例えばスノーホワイトは他人の心の声が聞こえる、ラ・ピュセルは自身の武器の大剣の大きさを自由に変更できるなど、魔法少女によって様々だ。
ねむりんの魔法は人の夢の中に入れることであり、悪夢を見ている人を助けてあげたり、その人にとって良い夢を見せてあげることが多い。
夢の中のマジカルキャンディー所持数は5億を越えており、断然1位だが、夢の中のキャンディーは現実に反映されず、現実では0個であり、ぶっちぎり最下位である。
現実での活動の無さはファヴにも心配される程である。
ねむりんはそもそも家の外から出ることがほとんど無いのだとか。
このままでは、最下位決定で魔法少女を辞めなければならないのだが…
「晴人さん、大丈夫かな」
「そういえば晴兄ってねむりんに会いに行くんだっけ。ねむりん現実では顔見せないし、どんな人かよくわからないけど。」
「キャンディー集めの手伝いするなんて、本当に晴人さんは優しい人なんだね」
「そうだね、晴兄こそ、正義の鑑だよ」
晴人は市街地から少し離れた人気の無い路地裏で待ち合わせをしていた。
待ち合わせ相手はキャンディー所持数ランキング現在最下位のねむりんである。
ラ・ピュセルのマジカルフォンを借りて再びチャットルームに行った際に知り合った。
現実でキャンディーが集まらないのは集めかたがよくわからないというねむりんに、一度会ってみないか。と誘ったのは晴人の方であった。
なかなか現実では顔を見せないと聞き、断られるかと思っていたが、意外にもすぐOKをくれた。
向こうは家族以外に人と会うのが大分久し振りなようだ。
ウィザードへ変身した晴人が少し待っていると、パジャマを来て、周りには雲のようなものがついた少女が現れた。彼女こそがねむりんである。
「君がねむりんかい?」
「うん。ねむりんだよ、宜しくねー」
「俺はウィザード。宜しくな」
一通り挨拶を済ませ、晴人は早速本題に入る。
「キャンディーが今は一番最下位なんだよな。キャンディー集めの良い方法を思い付いた。少しでもいいから、やってみないか?」
「分かった、いいよ。初めてだからいろいろ迷惑かけるかも」
「今回はねむりんの為にやることだ。気にすんな」
こうしてウィザードはねむりんを連れて街のトラブルなどを解決しに回った。
最初は慣れないねむりんだったが、段々手数をこなせるようになり、なんと崩れ落ちてきた鉄骨をウィザードと共同で防ぎきることも出来た。
キャンディーも少しではあるが500貯まり、まぁまぁなものとなっただろう。
「今日はありがとー、ウィザードって優しいんだね」
「まぁ、色々あったからな。これぐらいは御安い御用さ」
「じゃあ、この辺でお別れだね」
「あぁ、キャンディー集め頑張れよ」
「でも、もう集めないかも」
「えっ、何でだ?」
意外な返答にウィザードは驚く、しかしねむりんは続けた。
「実は私、これで魔法少女辞めようかなって思ってて…私はもう大人なんだけど、働いてなくてね…でもいつまでもこのままじゃダメだと思って、面接行ってくることにしたんだ」
「そうなのか…」
ねむりんは自らの正体をウィザードに語った。
「それはねむりんの選んだ道なんだろ?だったら応援するよ。会えなくなるのは残念だけどな」
ウィザードに落胆されるかと思いきや、逆にウィザードはその考えを認めてくれた。
「そう?なんか嬉しいな。本当にウィザードは優しいんだね」
「俺には人の考えを否定する権利は無いしな。それにいつまでも立ち止まってるより前に進む方が良いと思ってる。俺もそうだったしな」
「ウィザードもいろいろ大変だったんだね」
「まぁな。残りの期間、ねむりんがどう動こうとも、俺はそれを尊重するよ」
「うん。ありがとー、ウィザード」
そのような話をしながら、ウィザードはねむりんを家まで送った。
「悪いな。今日会ったばっかの奴が家まで来ちゃって」
「良いよ、気にしてないし。じゃあね、ウィザード。またチャットで会えたら会おうね」
「あぁ。面接頑張れよ!」
こうして二人は解散した。
これまで6日間が経過し、一時ランキング最下位脱出をしたねむりん。
残り1日、魔法少女達はキャンディーを集める。魔法少女を続けていく為に。
そして一人は、自分の未来を大きく決める選択をした。それが魔法少女を辞めることになっても、その選択が正しいと信じて。自分の考えを認めてくれた家族や知り合いの為、自分の為に。
運命の7日目がやってくる。結果発表は、もうすぐそこに迫っていた。
その後に待っている悪夢の始まりを知らずに…
以上、5話でした。
そのつもりで書いてないのになんだかウィザードがねむりんを口説いてるようにしか見えなくなりました。すいません。
次回は結果発表、その先に待つ運命を変えられるのか、ウィザード…