仮面ライダーウィザード ~Magic Girl Showtime~   作:マルス主任

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お久しぶりです。
そして皆様、あけましておめでとうございます。

様々な用事が重なり3ヶ月以上おまたせしてしまう形となった事、申し訳ないです(おのれFGO)
さて、今年の冬映画も面白かったですが、今回はそんな平ジェネFinalにも登場した鎧武も少し活躍します。

後、最後のあとがきにちょっとしたお知らせも御座いますので、宜しければご覧下さい。


第44話 本当のチーム

仮面ライダーウィザード、操真晴人と魔法少女ラ・ピュセル、岸辺颯太は魔法少女スイムスイムの救援と、クラムベリーと決着を付けるために共に王結寺に向かっていた。

 

 

 

「ウィザード、すまない。私のワガママを聞いてもらって…」

「気にすんな。お前はクラムベリーと決着を付けたいんだろ?…そういう気持ちも分からなくはない」

「そうか…ありがとう」

「ただ、無茶だけはするなよ。二人でスイムスイムを助けよう」

「そうだね…」

「…ん?どうしたんだラ・ピュセル」

「…ウィザード、スイムスイムはこれまで何度か私達を襲ってきたり、邪魔してきたり、敵対した事もある。正直私は彼女を助けるのに多少躊躇がある…」

「そうか…」

「私はそう思う…ウィザードはどうして、そこまで戸惑いも、躊躇もなく助けに行けるんだ…?」

「そうだな…ラ・ピュセル、お前は人を助けるのに理由がいると思うか?」

「え…?」

「助けたいから助ける。守りたいから守る。それが俺かな」

「そうか…。やっぱり凄いな、仮面ライダーって。私はこんなんじゃ立派な魔法少女になれないな…」

「いいや、そんな事はないさ。お前だって立派な魔法少女になれる」

「でも…」

「助けたい、守りたいってのは俺の願望さ。実際は俺一人じゃ全ての人の希望を守るってのは難しい。だから俺に守れるものは絶対守りたいって思う。それと、お前が言うようにスイムスイムを助けても、また邪魔されるんじゃないかって思うんだろ?」

「…あぁ」

「確かに、この世界の人は皆が皆善人じゃないかもしれない。中には悪意を持った人を助ける事もあると思う。でも俺は、そんな悪意も希望に変えられたらなって思うんだ」

「ウィザード…晴兄…」

「それは難しい事かもしれないけど、力を持ってるのに何もしないってのは違うと思ってさ。それに、スイムスイムの事は、たま達に託されたからな」

「託された?」

「スイムスイムを助ける事が、あいつらにとっての希望でもあるし、スイムスイム自身にとっても、チーム全員で生き残る事が希望だと思う。俺はそんな願いや希望を守りたいんだ」

「たま達の願いの為に戦う…」

「まぁ、戦えない人の分まで戦うって事だ。俺の仲間も良く聞く言葉だ。きっとそれが、希望を守る魔法使い、そして仮面ライダーである事なんだろうなって」

「戦えない人の分まで…私にも、できるかな…?」

「あぁ、きっとな。それに、何も戦う事が全てじゃない。困ってる人の力になってあげることも必要だ。そして、それが魔法少女の役目でもあるんだろ」

「うん。勿論。その為に私も、小雪…スノーホワイトも魔法少女になったんだ」

「…そっか。ならいい。さて、お話はこれくらいにして、飛ばすぞラ・ピュセル!」

「分かった。急ごう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウィザード達が急ぐ一方、肝心の王結寺では。

 

 

 

「うぐっ…」

「やはり、貴方は中々の力をお持ちで…。ですが、こちらも負ける為にこんな事をしているわけではないのです」

 

 

スイムスイムは、クラムベリー相手に苦戦を強いられていた。

強さ自体はあまり大差は無いが、スイムスイムは一つだけクラムベリーに劣っている事があった。

それは“音”の効果である。

水を操れるスイムスイムの唯一の弱点、それは音と光だった。

よりにもよって相手はクラムベリー、音を操る魔法少女(の能力を使うファントムなのだが)。

互角に見えた戦いが、能力の差でほぼ勝敗が決まるのである。

スイムスイムはこの事に勿論気付いていたし、クラムベリーもそれを知った上での戦いであろう。

このままではスイムスイムが倒れるのも時間の問題かもしれない。

 

 

 

「みんなの為に…クラムベリー、あなたを…!」

「不利だと分かった上で、まだ戦い続けるとは…ですが、あなたが守ろうとしている魔法少女達も、果たして生き残れるんでしょうかね?」

「ッ…!卑怯な…!」

「勝つ為の戦略と言っていただきたいものです。さぁ、戦いを続けようではありませんか…」

 

 

クラムベリーはスイムスイムを蹴飛ばして攻撃を続ける。

防戦一方のスイムスイムは徐々に追い詰められていく。

ついに、クラムベリーの攻撃を避けきれず、ダメージを受けて一気に倒れ込んでしまった。

 

 

「うっ…このままじゃ…」

 

 

逃げようにも、この状態では能力を使った所でクラムベリーに対抗されてしまう。

打つ手が無くなってしまい、スイムスイムに危機が訪れる…かに思われたが。

 

 

「ハァッ!」

 

 

遠くからクラムベリーに向かって放たれた銃弾が的確にクラムベリーにヒットする。

後ずさりしたクラムベリーが銃弾が流れてきた方向を見ると、そこにはウィザード、フレイムスタイルの姿が。

そしてその隣には、大剣とブレイラウザーを構えたラ・ピュセルも。

彼らが到着したのだ。

 

 

「随分と派手にやってるじゃないか、クラムベリー」

「スイムスイムは何とか倒れてないみたいだね」

「ウィザード…ラ・ピュセルまで…」

「おやおや、来ましたかウィザード。それに、また珍しい方も」

「クラムベリー、お前と決着を付けに来た…」

 

 

 

クラムベリーはウィザード達を見ると、待ちくたびれたと言わんばかりの表情を見せて口元を歪める。

その表情を見たラ・ピュセルは敵対心を露にする。

 

 

「クラムベリー…!」

「その感じからするに、どうやら俺達を呼び寄せる気満々だったみたいだな」

 

 

何の目的だ。とウィザードが聞こうとしたのを、スイムスイムが遮り、ウィザードに詰め寄る。

 

 

「ルーラ達はどうなったの…!生きてるの…?」

「…どういう事だ?」

「ルーラ達がいる場所に怪物の大群を送り込まれた…!魔法少女だけじゃ勝てない…」

 

 

間髪入れずにスイムスイムが続けた。

その言動から、焦りが見える。

 

 

「戻らないと、ルーラ達がやられる…私の事は良いから、早く戻って!」

「何だって!?」

 

 

ラ・ピュセルはそれを聞き、驚いているようだ。

更に、クラムベリーも続けた。

 

 

「彼女の言う通りです。ですが、今から戻った所で、間に合わないでしょうね…」

「ッ…!」

 

 

言葉にならない怒りをぶつけるラ・ピュセル。

そんな中でも、ウィザードは冷静であった。

 

 

「へぇ…やっぱりそういうことか」

「ウィザード…?」

「私の目的を察していたという訳ですか?」

「だとしたら?」

「なら何でルーラ達を放っておいた!」

「少し落ち着けスイムスイム。あいつらだってこれまで戦い抜いてきたし、俺達はアイツらを見捨てない」

「つまりは貴方は彼女達だけでもファントムを倒せるとでも…?」

 

 

バカにしたかのようにクラムベリーは笑う。しかし、ウィザードは続けた。

 

 

「アイツらは強いさ、お前が思ってる以上にな。…それに、お前は俺を誘導して、アイツらの元から仮面ライダーを離れさせるつもりだったみたいだが、仮面ライダーは俺だけじゃないのを忘れたか?」

「忘れるはずないでしょう。ですが、そんなに都合良く彼女達の元に辿り着けるライダーが?」

「あぁ。どんな命も見捨てずに、どこにいても必ず助けに来る奴がな…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なっ、何なのよ!何でこいつら急に湧き出てきたのよ!」

「ルーラ、落ち着いてよ!」

「でもお姉ちゃん、この数はヤバいよ!」

 

 

ウィザード達を見送った少し後、スノーホワイト達魔法少女は突如現れたファントム軍団に襲撃されていた。

グールだけでなく、どこから蘇ったのか、今までに倒したファントムも混じっている為、数は相当なものだ。

 

 

 

「スノーホワイト、気をつけて下さい…」

「アリスも気をつけて!…よりにもよって、ラ・ピュセルとウィザードさんがいない時に…!」

「たまはルーラを守って!」

「うん、分かった!」

「ちょっと待って!あなた達、こいつら倒す気なの!?」

 

 

 

早苗は驚いた。ざっと見る限り100以上はいるファントム達を倒すというのだから。

ファントム退治に慣れているであろう仮面ライダー達ならともかく、魔法少女5人では、とてもではないが勝機は薄い。

 

 

 

「ここで死ぬわけにはいかないでしょ!だから戦うんだ!」

「お姉ちゃんの言う通りだよ!ルーラだってこんなところで死にたくないでしょ!」

「せ、せっかくまた会えたんだから…すぐお別れは嫌だよ」

「ミナエル、ユナエル、たま…」

 

 

 

早苗はその言葉を聞くと、昔の彼女達の事を思い出した。

確かに喧嘩をしたり、意見が食い違う事もあった。

でも、チームとして共に活動していた時は、なんだかんだで楽しかったのかもしれない。

そして、必死に生き残ろうと全員で協力する姿。

これこそが、本当のチームなんだろう、と早苗は思った。

だからこそ、もう一度5人のチームに戻るために、死ぬわけにはいかなかった。

もう迷いも、疑問も無くなった。後は彼女達を信じるのみだ。

 

 

 

「分かったわ。みんな、お願い!」

「了解!」

「オッケー!」

「うん!」

 

 

早苗の声を聞いたミナエル達は大きな返事を返し、ファントム達に立ち向かっていく。

更に、スノーホワイトとアリスもミナエル達の手助けをしつつ、ファントムをなぎ倒していく。

 

 

 

「スノーホワイト!アリス!」

「戦いは慣れてないけど…私達も死ぬわけにはいかないから!」

「はい。援護はお任せを…」

「サンキュー!」

 

 

スノーホワイトは倒れたグールから手に入れた槍を、アリスは購入していたアイテム、ファイズエッジを手にファントムと戦う。

ミナエルが変身した刀を振り回して戦うユナエル、ルーラを守りつつユナエル達の援護をする。

スノーホワイトとアリスは、協力してファントムを1体、また1体と倒していく。

一見順調に見えるのだが、ファントムは減っても減っても襲い来る。

いくら戦えると言えど、魔法少女達の体力は減っていくばかりである。

 

 

 

「くそっ…どんだけ出てくるの…?」

「流石に、キツいかなっ…!」

「もう…無理…」

 

 

ルーラはたまの近くに隠れ、その戦いを見守っていたが、たまも体力が減ってきているのか、ファントム達に苦戦している。

スノーホワイト達の攻撃も、段々精度が落ちてきていた。

相手の数がやはり尋常でなかったのだ。

今までは押し通せていた敵達が、更なる勢力で襲いかかる。

ダメージを受け始め、ミナエル達の体力も後僅か。

 

 

 

万事休すかと思われた、その時………。

 

 

 

 

《ロック・オン!》

 

 

 

その場に和風テイストの謎の音が響く。

上空から何かオレンジ色の球体が降ってくるのを見たたま達。

 

 

「あれ…もしかして…」

「たま?」

「いや、あの球体…多分…」

 

 

たまは、あの球体が何なのか分かった気がした。

そして、それはたまの予想通り…。

 

 

「変身…!」

 

 

静かな掛け声と共に、球体が地上に降り立つ。

そして同時に、その球体から果汁が弾け、光が覆い、ファントム達を吹き飛ばす。

 

 

 

《オレンジアームズ!花道・オンステージ!》

 

 

 

球体の中から現れる者。

その正体は…。

 

 

「よく頑張ったな。みんな」

「その声…やっぱり鎧武さん!」

 

 

仮面ライダー鎧武・オレンジアームズ推参。

以前たま達に姿を見せた際は、極アームズの姿であったが、今回はオレンジアームズで現れた。

 

 

「その通り、鎧武だ。久しぶりだな」

「なんか…姿変わってませんか?」

「そうだな〜、晴人…ウィザード達にはこの姿の方が馴染みあるかもな、まぁ基本の姿だと思ってくれ」

「あなたもウィザードさんの仲間さん…ですか?」

「お前達二人は初めて会うな。まぁ、ウィザードの仲間だ。ここがどういう状況かは大体把握したよ。後は俺に任せてくれ」

「この数を1人で倒すんですか!?」

「みんな頑張ってくれたからな。俺も負けてられないさ」

「分かりました!お願いします!」

「あぁ!ここからは、俺のステージだ!」

 

 

鎧武はアームズウェポン、大橙丸と腰に携えた無双セイバーを抜刀し、グール、ファントムの交じる大群に一人飛び込んだ。

無双セイバーのガンモードで牽制し、接近したら2つの刀で大群を切り裂いて倒していく。

自分達が苦戦を強いられた大群との戦いを、あっという間に制圧していく姿に、たま達はただただ驚くのみだ。

更に、鎧武は無双セイバーと大橙丸の接続部分を結合し、ナギナタモードになった無双セイバーを振り回す。

 

 

 

「行くぜ!うらぁぁ!」

 

 

 

グールの大群であろうが、ファントムであろうが薙ぎ倒していく鎧武。

倒しても倒しても増え続けていたファントム達の数も少なくなってきた。

 

 

「あと少しだ、一気に片付ける!」

 

 

鎧武はドライバーからオレンジロックシードを取り外し、無双セイバーのコネクタ部分に取り付ける。

無双セイバーの必殺技を発動させる…!

 

 

《一…十…百…千…万!!》

 

 

オレンジのオーラを帯びた無双セイバーがファントム達に向けてそのオーラを解き放つ。

 

 

《オレンジチャージ!》

 

 

「ハァッ…!」

 

 

オレンジのオーラはファントム達の動きを止め、拘束する。

鎧武は無双セイバーを振るってファントム達に飛び込み、そのまま完全に切り裂いた。

 

 

「セイハーッ!」

 

 

あれだけの数群がっていたファントム達は鎧武の一撃で木っ端微塵に爆散した。

 

 

「ふぅ…どうにかなったな」

 

 

鎧武は変身を解き、紘汰の姿に戻った。

紘汰の周りに、スノーホワイト達が駆け寄る。

 

 

「すごいです…あの数を倒しちゃうなんて!」

「なんとかなって良かったよ。みんな大丈夫か?」

「また助けられちゃったよ、ありがとう」

「鎧武さん、本当にありがとうございます…!」

「私からも礼を言わせて。貴方がいなければ危なかったかもしれないわ」

「あぁ。アンタがルーラだったか?」

「そうよ。まぁ、魔法少女の力はもう無いのだけれどね。それでもやれる事があるんじゃないかと思って、こうしてここにいるわ」

「そうか。確かに、力だけが全てじゃないからな。諦めなければ、きっとそれが力になるさ」

「ありがとう、鎧武」

「ああ。…それにしても、なんでファントムはあんなに湧いて出て来たんだか」

「そうなんですよ。私達も急に現れて驚いて…」

「やっぱりか、向こうで何かあったのかもしれない。ウィザードは?」

「ウィザードさんは、私達の仲間を助けに…」

 

 

そう言ったスノーホワイトは、王結寺に向かったウィザードとラ・ピュセルの身を案じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その王結寺では…。

 

 

 

「まさか、本当に倒してしまうとは…」

 

 

クラムベリーが見つめるのは作り出した魔法陣から見える、スノーホワイト達の居場所。

そこには、魔法少女達を守りながら、ファントムを殲滅する鎧武の姿があった。

 

 

「だから言ったろ、仮面ライダーは絶対諦めない。命を見捨てないためにアイツは戦ってるんだ」

「流石、と言っておきましょうか…」

「それにしても、えらく便利な魔法を使うんだなお前。魔法少女としての能力じゃなさそうだが…」

「えぇ。ある人に頂いたものですからね」

「まぁ、この際それはいいさ。問題はお前自身だ。ファントムの大群を操れる以上、お前はただの魔法少女じゃないのは分かってる。そろそろ正体を明かしてもいいんじゃないか?」

 

 

核心へと迫るウィザード。すると、ラ・ピュセルに支えられて休んでいたスイムスイムが口を開いた。

 

「そいつは…クラムベリーじゃない。ファントムがクラムベリーの姿に化けてる…!」

「やっぱりか…。そんな所だろうと思ったよ。なぁ、オーガ?」

 

 

ウィザードは得意気に答え、クラムベリー?を見据える。

その言葉が真実なのか嘘なのか、困惑するラ・ピュセル。

そして、当のクラムベリーはしばらく黙り込んだ後、大きな笑い声をあげる。

そしてその直後、クラムベリーはファントム・オーガの姿に変貌した。

言葉通りにオーガに変わり果てたのを見て、ラ・ピュセルは驚く。

 

 

「まさか本当にオーガだったなんて…」

「俺の正体、いつから見破っていた?」

「さぁな。ただ、クラムベリーとオーガは必ず同時に現れない、襲撃してきてはすぐに姿を消したり、行動がなんとなく似てたからな。それだけじゃ不十分か?」

「いいや、問題無いな。…さてどうする。このまま戦闘続行か?」

「ちょっと待ってくれ」

「…ラ・ピュセル?」

 

オーガとウィザードの間に、ラ・ピュセルが割って入った。

 

 

「私はオーガじゃなく、クラムベリーに借りがある。クラムベリーとの決着を付けさせてくれ」

「ラ・ピュセル!?お前…」

「いいだろう…それに乗ってやるよ」

 

 

そう言ったオーガは、再びクラムベリーの姿に戻る。

ラ・ピュセルの提案に乗るようだ。

 

 

「…それではこの姿で良いでしょう。ですが、貴方一人で私を倒すと…?」

「あぁ。私自身で、お前とのケリを付ける」

「ほぅ…ならば本気でお相手しましょうか」

「ラ・ピュセル…本気なんだな」

「あぁ。スイムスイムを頼んだよ」

 

 

 

そう言ったラ・ピュセルは、クラムベリーと対峙する。

静かに剣を構えて戦闘態勢を整える。

 

 

 

「では…始めましょうか」

「あぁ。行くぞ…!」

 

 

 

クラムベリーとラ・ピュセルは、同時に飛び出して相手に向かって突っ込む。

先に攻撃を始めたのはクラムベリー。

素早くラ・ピュセルに殴りかかる。

ラ・ピュセルは間一髪剣を地面に突き刺し、反動で飛び跳ねてクラムベリーの後ろを取る。

突き刺した剣を引き抜き、剣の大きさを小さくし、レイピアサイズになった剣でクラムベリーを少ない動作で切り裂いた。

 

 

「以前よりも動きが素早く…」

「当然だ。いつまでも同じ私だと思わないでもらおう!」

「それでこそです。それでこそ戦いがいがあるというもの…!」

「来い!今度は負けない!」

 

 

ラ・ピュセルとクラムベリーは互いに一進一退の攻防を繰り広げる。

以前のラ・ピュセルは、クラムベリーの強大さ、恐ろしさに怯えていたのかもしれない。

しかし今はそんな気持ちは全くなかった。

ただ目の前の敵を倒す。その思いは強く、次第にクラムベリーを押して行く…。

クラムベリーの素早い動きの攻撃を剣でことごとく弾き、キックを浴びせて蹴り飛ばす。

 

 

「まさか、ここまでついてくるとは…!」

「よし、小雪に借りたこれも!」

 

 

ラ・ピュセルは、小雪から借りたブレイラウザーを呼び出し、二刀流でクラムベリーを攻撃する。

2つの剣から繰り出される連続攻撃を受けるクラムベリー。

そのままラ・ピュセルは大剣をクラムベリーに振り下ろすが、クラムベリーも押されるだけではなく、その大剣を掴んで防いだ。

 

 

「ぐっ…防いだ!?」

「貴方の独壇場にする訳にもいきませんよ…!」

「でも、私は負けられないんだァ!」

 

 

ラ・ピュセルは大剣を持ったクラムベリーを、そのまま突き飛ばす。

少し怯んだクラムベリーを見ると、すぐさまブレイラウザーからラウズカードを取り出し、スキャンする。

 

 

「確かこうすればっ!」

 

 

《サンダー!》

 

《スラッシュ!》

 

《ライトニングスラッシュ!》

 

 

ブレイラウザーにサンダーの雷とスラッシュの力が宿る。

ラ・ピュセルはすかさず、大きく飛び、クラムベリー目掛けて必殺、ライトニングスラッシュを浴びせた!

 

 

「これで終わりだ!でやぁぁぁぁぁ!」

「そうです…こんな戦いがしたかった!」

 

 

クラムベリーはなんと、ライトニングスラッシュの直撃を受けながらもラ・ピュセルに抵抗し、強烈な蹴りを与えた。

 

 

「ぐぁぁっ!…まだだ、まだァ!」

「貴方もやるように…うぐっ!」

 

 

ラ・ピュセルも倒れず、クラムベリーをもう1つの剣で切り伏せる。

2つ目の攻撃の威力も凄まじく、クラムベリーは遂に倒れた。

 

 

「…ふ、ふふっ…まさか私が貴方にここまで圧倒されて…」

「…これが、今の私の…いや、私だけの力じゃない。私を助けてくれた、色んな人の思いの力だ…!」

「この姿では完敗…ですね」

 

 

そう言ったクラムベリーは、再びオーガの姿に戻り、ウィザード達に告げた。

 

 

「これでこの力を使うのは最後だ。魔法使い、そして魔法少女共。次に会う時は、俺はこの姿で貴様らを叩き潰す!」

「意外に律儀なんだな、お前。分かったよ、次は本当にお前との決着を付ける」

「フン、それも良い。待っていろ魔法使い。次こそその力は俺が頂く…」

 

 

そう言い残したオーガはこの場所から消えていった。

一段落付いたウィザードは、戦いを終えたラ・ピュセルと共にスイムスイムを介抱する。

 

 

「ラ・ピュセル。よくやったな、スイムスイムも無事で良かった」

「あぁ。さて、スノーホワイト達の所に戻ろうか」

「私も…戻るの?」

「何言ってんだ。当たり前だろ。早くアイツらと仲直りりしておけよ」

「私、あなた達も、みんなも傷つけた…それでもいいの?」

「それを決めるのは俺じゃない。だからこそ、アイツらの所に行くんだ。さ、早く」

「う、うん…」

 

 

スイムスイムは、今までやってきた事を悔んでいるのかもしれない。

だが、自身を許すのは仲間達自身だ。というウィザードの言葉に頷き、共に戻ることとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鎧武の協力を得て、大量のファントムを倒したスノーホワイト達の所に、ウィザード、ラ・ピュセル、スイムスイムが帰ってきた。

ウィザードは鎧武と再び再開した。

 

 

 

「あ、ラ・ピュセル!ウィザードさん!戻ってきてくれた!」

「スイムちゃん!生きてて良かった!」

「心配させたな。だが、ラ・ピュセルもスイムスイムも無事だ」

「ウィザード。お疲れ」

「お前もな、鎧武。来てくれてありがとう。助かったよ」

「お互い様だって。何かあったら飛んでくるって言ってたし」

「心強くて助かるよ」

 

 

 

そして、早苗、スイムスイム、ミナエル、ユナエル、たまの5人は、再び生きて会えた事を喜んでいる。

そんな中、スイムスイムが口を開く。

 

 

「みんな…ごめんなさい。私のせいで、色んな人に迷惑かけた…」

 

 

突然の謝罪に驚く一同だったが、少しの間の後、彼女達には笑顔がこぼれていた。

 

 

「気にしないでよスイムスイム!実際は私達にも良くないところはあったわ。こちらこそ、ごめんなさい」

「そうだよそうだよ!私達チームでしょ!」

「だからさ、これからも一緒に高めあって、協力し合っていこうよ!」

「じゃ、じゃあ…私の変身前を見ても殺さない?」

「当たり前よ!なんで素顔知っただけで殺しあわなくちゃいけないのよ!」

「え、でもルーラがそうしろって…」

「時と場合に寄るのよ。チームの仲間なら信じられるでしょ?それに、今はこんな状況だし、信じあっていかないとね」

「そう…なんだ…」

「スイムスイム。あなたは物事を固く考えすぎよ。もう少し柔らかく考えて見なさい」

「…うん。じゃあ、私の本当の姿を見せる…」

 

 

スイムスイムは、変身を解き、人間としての姿に戻った。

その姿は、実際のメンバーの中で最も幼い、小学生くらいの姿の少女だった。

 

 

 

「…私、坂凪綾名。私がスイムスイム」

「そう。あなたはこんな幼いのに、チームの為に頑張ってくれてたのね、ありがとう」

 

 

早苗は、スイムスイムもとい綾名に優しく微笑む。

すると、たま達も変身を解き、人間の姿となった。

 

 

「私、犬吠埼珠っていうんだ。名前難しいかな?」

「天里優奈だよ!この際みんな素の姿を見せちゃおうよ!」

「天里美奈。優奈とは普通に双子でーす!」

「改めてだけど、木王早苗よ。宜しくね」

「みんな…いいの?」

「えぇ。少しは気が晴れたかしら?」

「うん。ありがとう…!」

「じゃあ、改めて宜しく、みんな」

「勿論!…でも、ルーラは変身できないけどね!」

「ちょっと!今そういう事は言わないの!」

 

 

はしゃいで、共に楽しそうにしている彼女達の姿を見ていたスノーホワイト達とウィザード、鎧武。

 

 

「…なんだ。聞いてたより仲良いじゃないか」

「意外とあんなもんさ。スイムスイムもこれで仲直り出来たろうし、良かったよ」

「そうですね。やっぱりウィザードさん達はすごいです!」

「俺は大したことはしてないさ。あれはアイツらが選んだ選択だよ」

「所で、これでほとんどの魔法少女がウィザードを通じて仲良くなった気がするんだが…?」

 

 

と、ラ・ピュセルが呟く。

何かあるのか?とウィザードが問おうとした時だった。

 

 

「…!?ファヴからです…」

 

 

アリスが最初にマジカルフォンに入った連絡を確認する。

続いてラ・ピュセル達も確認する。

そこから現れたのは…。

 

 

『はいはいぽん。スイムスイム達は正体バラシすぎなのはどうかと思うぽん』

「ファヴ!今まで何をしてたんだ!」

「まぁいいぽん。どうせもうそんな話は関係なくなるぽん」

「おい、どういう意味だ」

 

 

ラ・ピュセルが問う。

すると、ファヴは陽気に答えた。

 

 

『もう皆さんご存知かもしれないけど、最近は週末の脱落魔法少女を決めてなかったぽん。怪物退治に忙しそうだったから仕方ないぽん。でももうそんなの関係ないぽん』

「…は?」

『その辺についての詳しい話を明日行いたいぽん。生きている魔法少女達は、明日の朝、すぐにチャットルームに集まるぽん。あくまで、魔法少女だけぽん!他の人は立ち入り禁止ぽん!では、シーユーぽん!』

 

 

 

唐突に始まり、唐突に切れたその連絡。

 

 

 

実はこれが、これから待ち受ける最後の戦いの開始の合図だった…。




本当にお久しぶりだった44話でした。
いつもよりは長めにさせて頂きましたが、雑な仕事なのはご愛嬌という事で。
実は次回からは終盤に突入します。意外にも、もう終わりが近かったりするのです。
最後の戦い、どうなっていくのかご期待下さい!

そして、こんなに投稿ペースが遅いのに何言ってるんだと言われるかもしれませんが、この作品が終了した後に書きたいと思っている次回作の構想を始めました。
次もクロスオーバー作品なのですが、次はエグゼイドのお話です。
気になるクロスオーバー先は…
《いらっしゃいませ!ラ○ット○ウスへようこそ!》
ヒントは以上です。モロバレですね。
エグゼイドとこの作品を絡ませるのは、ただの自分の趣味です。

取り敢えず詳しい事が決まり次第お知らせしますので、そちらも頭の片隅に置いて頂けると嬉しかったりします。

では、今回も閲覧ありがとうございました!
次回はもっと早くお会い出来るように頑張ります!

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