仮面ライダーウィザード ~Magic Girl Showtime~   作:マルス主任

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お久しぶりです。
気付けばエグゼイドが終わり、ビルドが始まりましたね。
結局トゥルー・エンディングは3回見てしまいました。
最終回の後に見直すと、また違った観点から楽しめました。



第43話 狙われたのは

日はすっかり落ち、夜が訪れる。

そんな中、王結寺には、4人の魔法少女が集まっていた。

スイムスイム、ミナエル、ユナエル、たまの4人である。

元リーダー、ルーラによって集められた4人である。

リーダーとして君臨していたルーラを失った後も、着々と活動していたが…

 

 

 

「スイムちゃん…」

「全員、集まった…。」

「そ、そうだね。全員で集まれるのは」

 

 

 

少し前の事、ある戦いでの一件が原因で彼女達4人の意見が食い違い、チームでの活動がほぼ無くなっていた。

だが、こうしてもう一度集まった4人。

目的は和解なのか、それとも…

 

 

 

「お姉ちゃん…」

「…ユナ」

 

 

 

しばらくの沈黙の後、初めに口を開いたのはユナエルだった。

姉のミナエルとは、今までの間、共に寝泊まりするという事も無く、ユナエルはたまの家で生活をしていたのだった。

久しぶりにミナエルに会い、内心ホッとしていたのだった。

しかし、それも束の間、表情を変えて真剣な眼差しでミナエル、そしてスイムスイムを見つめる。

 

 

 

「2人共、ごめんなさい」

「わ、私からも言わせて。ごめんね、2人共…」

 

 

 

ユナエル、そしてたまも頭を下げて謝る。

突然の事で、驚きを見せるミナエル。

スイムスイムは表情を一切変えることなくユナエル達を見つめるままだ。

 

 

 

「なっ、ユナ…たま…」

「2人とも、何で謝るの?」

 

 

 

スイムスイムは至って冷静に質問を返す。

頭をずっと下げていたたまとユナエルだったが、再び頭を上げてスイムスイムに答えた。

 

 

 

「スイムちゃんにも、ミナちゃんにも迷惑を掛けちゃったから…」

「う、うん。仲間割れみたいな事になっちゃったから、このままじゃ嫌だと思ったんだ」

「…そう」

 

 

 

あくまでスイムスイムは感情的な態度を見せずに、反応も冷静であった。

しかし、たまは再び顔を引き締め、スイムスイムに語りかけた。

 

 

 

「でもスイムちゃん、これだけは言わせて。このまま同じ事を続けていくのは良くないよ…!みんなに協力していかない?」

「…仮に協力した所で、私達全員が助かる確証はある?」

「でも、今のままよりは絶対に助かる確率は上がるよ。…だから!」

「確率が上がるだけじゃダメ。必ず生き残らないといけない。絶対に」

「スイムちゃん、何でそこまで…」

「私はルーラになりたい。でも、ルーラになるからには、チームのみんなを必ず生き延びさせないといけない」

「スイムちゃん…」

「私はみんなと生き残って、ルーラになる。ルーラだって、それを望んでる…」

 

 

 

たまは苦悩していた。

どうすればスイムスイム達と和解出来るのかが分からなくなった。

スイムスイムの意志は固い。何が彼女をそこまで狂わせるのか分からないが、その異常なまでの意志が、彼女を強くさせているのだろうか。

 

しかし、諦めてはならない。ここで諦めたら、スイムスイム達はウィザード達との和解する道を失いかねない。相手が折れるまで、自分は折れてたまるか。

たまは再び覚悟を決めて、もう一度語りかけようとした。

 

が、その瞬間にたま達に聞こえてきたのは、意外な人物の声だった。

 

 

 

 

「いや、私は…“あなたの憧れの”ルーラはそんなの望んでないわよ」

「えっ…!?あなたは…」

「うっそでしょ…」

 

 

 

そう、彼女達の目の前に現れた人物は、外見こそ初めて見る格好だが、声だけで、4人はこの人物が誰なのか理解していた。

 

 

 

「…ルー、ラ…?」

「えぇ、そうよ。私は元魔法少女、ルーラよ。まぁ、今は早苗とでも呼んでくれればいいわ」

 

 

 

現れた人物の正体は、魔法少女ルーラの元変身者、木王早苗だった。

驚きの人物の登場で、みな困惑を見せ、スイムスイムですら、少し動揺があるようだ。

 

 

 

「何でここに来たの?」

「何でって…貴女達に仲間割れしてもらいたくないからよ」

「ルーラって、そんなキャラだっけ?…ほら、もう少し毒舌だったような…」

 

 

 

少し雰囲気の変わったルーラ、もとい早苗に、4人は驚かされるばかりであった。

 

 

 

「随分な言われようね…まぁ、今までの感じじゃあ、言われても仕方ないわね」

「本当にどうしたんだよルーラ…」

「そうね…一つ言えるとしたら、魔法少女をやめて、0からやり直したのよ。そうしたら、考え方が変わってね」

「そうだったんだ…でも、私達を恨んでないの?正直、ウィザードがあの場に居なかったら、ルーラは本当に…」

 

 

 

たまの問いかけに、早苗は少し間を空けたが、こう答えた。

 

 

 

「そりゃ、あの時は混乱してたし、少なくとも貴女達への戸惑いもあったわ。…でも、その事もだけど、全て私が悪かったと思ってるわ。私こそ謝らなきゃいけないわ…みんな、本当にごめんなさい」

「そこまで…ルーラ…」

 

 

謝り、頭を下げた早苗。再び頭を上げると、再び4人に語りかける。

 

 

「こんな私が言えることなのかは分からないけど、言わせて」

「何…?」

「…貴女達が仲間割れなんてしてちゃいけないわ。なんだかんだ言ってても、貴女達が一緒に活動してるのは楽しそうだもの。これが最後の命令…いや、願いよ」

 

 

早苗がそう言うと、たま、ユナエル、そしてミナエルも頷こうとしていた。

しかし、スイムスイムは…。

 

 

「ルーラ…」

 

 

そう一言呟き、薙刀を取り出して早苗に猛スピードで飛びかかった…。

 

 

「スイムちゃん!?」

「何やってるんだ!」

「…え?」

 

 

魔法少女の動きは素早い、いくら元魔法少女とはいえ、早苗にはそれを避けきれる余裕など無かった…。

そのまま、薙刀が早苗の首を刈り取った。

 

 

 

 

…かに見えたが…。

 

 

 

「ん……え?スイムスイム…?」

 

 

 

スイムスイムからの攻撃から目をつぶっていた早苗だったが、目を開けた先では、驚きの光景が広がっていた。

早苗の首を狙っているように見えた攻撃は、それとは裏腹に早苗を守るようにしてある攻撃を防いでいた。

またスイムスイムも早苗を守るようにして構えている。

 

 

 

「スイムスイム…!?」

「ルーラを狙っているのは分かってた。…私に不意打ちは通じない」

 

「おやおや…誤算でしたか…少々貴女を侮っていたようですね」

 

 

スイムスイムは薙刀で相手を吹き飛ばす。

そのルーラを襲おうとした本人とは…

 

 

「お、お前はクラムベリー!」

「何の用だ!」

 

「何って…貴女方と戦いたいだけですよ」

 

 

その正体は、4人の前には久々に現れたクラムベリーだった。

今までの間で、隙を伺って早苗を抹殺する気だったようだ。

 

 

「何でルーラを狙った。私が目的なら傷つくのは私だけでいい…」

「私は本気のあなたと戦いたい。あの方を殺せば、貴女も戦う気になるかと思ったんですが…」

 

 

その言葉を聞いた瞬間に、スイムスイムはクラムベリーに薙刀を構えて一気に襲いかかった。

 

 

「…おっと、既にその気のようですね」

「スイムスイム!」

「ユナエル、ミナエル、たま。ルーラを連れてここから離れて」

「何言ってるんだよ、いくらスイムスイムとはいえ、1人じゃ…」

「いい、大丈夫。こいつは私だけで倒す。倒さやきゃいけない…」

「ちょ、ちょっとスイムスイム!あなた…」

「みんな、急いで…!」

「わ、分かった…。ルーラ…早苗さんも着いてきて!」

「ユナ、行くよ!」

「分かった、お姉ちゃん!」

 

 

ミナエル達に運ばれ、スイムスイムとの距離は離れていく中、スイムスイムは早苗にこう呟いた。

 

 

「…ルーラ。ありがとう…。お陰で、私のやる事が分かった…」

「ちょっと…スイムスイム!」

 

早苗に聞こえるか、聞こえないか程の声で呟いたスイムスイムは、やがて早苗達が離れていくのを確認し、クラムベリーへ飛び込んでいく。

 

 

「急に本気を出し始めましたね…なんの理由があってでしょうかね?」

「クラムベリー。あなたは許さない」

「もしや、ルーラの事ですか?もしそうなら、あなただって1度は彼女を殺めようとしたのに…何故です?もはやただの人となった彼女に、この場にいる資格は…うっ!?」

 

 

クラムベリーが話し終わる前に、スイムスイムは素早く蹴りを加えて吹き飛ばす。

 

 

「あなたに、ルーラを語る資格は無い…!」

 

 

スイムスイムの攻撃は更に猛烈になり、クラムベリーを倒すべく突撃する。

対してクラムベリーは、少し口元を歪めると、スイムスイムに飛び込んで行く。

スイムスイムと、クラムベリーの一騎討ちが始まった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方で、スイムスイムに場を任せ、寺から脱出した早苗達。

寺からは大分離れただろうか。ミナエルとユナエルが周囲の安全を確認し、異常は見当たらなかったので、少し休む事にした。

 

 

 

「みんな、怪我は無いね?ルーラも大丈夫だった?」

「私はもうルーラじゃないわよ…早苗って呼んでくれてもいいのに」

「いやー、なんか慣れなくてね。やっぱりルーラって言うのがしっくり来てさ。なっ、たま」

「そ、そうだね。私もルーラって言う方がなんか良いかなぁ」

 

 

 

たま達にそんな事を言われたので、顔を少し赤くしながらも、早苗は返事をした。

 

 

 

「ま、まぁ貴方達がそれでいいなら、好きにしてもらって良いけどね…」

「ならいいや!ルーラで決定!」

「そ、そうね。…でも、スイムスイムが心配だわ。クラムベリーと一騎討ちだなんて」

「ルーラはクラムベリーが悪いヤツだったって知ってるの?」

「ま、まぁね。ウィザードから色々聞いてるのよ」

「そうなんだ…。でも、スイムちゃんなら勝てるよね、きっと」

「スイムスイム…。あの子、私を倒そうとした時もそうだけど…何だか純粋過ぎるのよね」

「…え?どういう事?」

「なんて言うのかしら…不思議というか、悪く言えば、少し子供みたいな…」

 

 

 

と、言いかけたが。

 

 

「…ん?あれってたま達じゃない?」

「確かにそうだ。ウィザード!たま達がいるよ!」

「何?…ってホントだ。お前ら!どうしたんだ!」

 

「ウィザード!それにスノーホワイト達も!」

 

 

現れたのは、ウィザードと、スノーホワイト、ラ・ピュセル、アリスだった。

 

 

 

「何だか分からないですが、集合されてるみたいですね…」

「お前ら、こんなところでどうしたんだよ。…それに、何でお前がいるんだ」

 

 

 

ウィザードは何故かたま達と一緒にいた早苗に声を掛ける。

 

 

 

「私も何か役に立ちたかったから。じゃ足りないかしら」

「いや、よく頑張ったな。見た感じ、丸く収まった…訳じゃなさそうだが、何があった」

「それが…スイムスイムがクラムベリーと戦ってるわ」

「なんだって!」

「私達を逃がす代わりに、スイムちゃんが残って戦ってるの…」

「分かった、俺が行くから、お前らはここに居てくれ」

 

 

 

そのままマシンウィンガーに乗り、その場を離れようとするウィザード。

しかし、ウィザードに、ラ・ピュセルは声を掛け

 

 

 

「ウィザード、待って欲しい」

「ラ・ピュセル?どうした」

「私も連れて行ってくれ。クラムベリーには借りがある」

「そうちゃ…ラ・ピュセル!危険だよ!」

「心配しないで、スノーホワイト。私は今度こそ負けない」

「ラ・ピュセル…本当に行くのか?」

「えぇ。行こう、ウィザード」

「待ってラ・ピュセル!これを…」

 

 

ラ・ピュセルに、スノーホワイトはブレイラウザーを渡した。

マジカルキャンディーで以前購入した武器である。

 

 

「スノーホワイト…。良いのか?」

「うん。絶対役に立つから」

「そっか…。ありがとう」

 

 

そう言い残して、ラ・ピュセルとウィザードは王結寺に向かって行った。

 

 

「ウィザードさん。お願いします…」

「きっと帰ってくるよ。それまでは待っていよう。みんな」

「そうですね…。きっとここなら安全ですから…」

 

 

と、残ったスノーホワイト達は、ウィザード達の帰りを待つのみである。

しかし、そんな彼女達にも危機が迫っている事に、まだ誰も気付いていない…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、一方で戦い続けていたスイムスイムとクラムベリー。

両者の攻撃は相殺し合い、均衡を保ち続けている。

スイムスイムは無表情ではあるが、その中にも少し焦りが見える。

対してクラムベリーは、薄ら笑いを浮かべながら不気味に攻撃を続ける。

少しではあるが、クラムベリーに形勢が傾こうとしていた。

そんな戦いの中、クラムベリーがふと口を開いた。

 

 

「ふふっ、中々いい戦いですね」

「…それはあなたが有利だから」

「それはそうかもしれませんね。ですがせっかくなので、少し良いことを教えてあげましょう」

「…?」

「もうしばらくすれば、あなたを援護する為に、助けが来るでしょう。恐らくそれはウィザードかと…」

「だったら何…」

「きっと逃げた彼女達にも、1度は合流するでしょう」

「ルーラ達に?」

「恐らくウィザードが去ったら、彼女達は無防備でしょうね」

「…何を考えてる…」

「どうせこの姿で戦うのはこれで最後でしょう。あなたには教えてあげましょうか」

 

 

 

警戒をし始めるスイムスイムに、クラムベリーは本当の姿である、ファントム・オーガの姿を見せた。

 

 

 

「…!?」

「私はファントムです。そして、逃げた彼女達に配下のファントム達を送る事も出来る…」

 

 

 

その言葉を聞いた瞬間、全てを悟ったスイムスイムは姿が戻ったクラムベリーに向かってこれまでとは比べ物にならない速度で詰め寄る。

 

 

 

「最初からそのつもりで…クラムベリー…!」

「言ったでしょう?本気の貴女と戦いたいと。貴女の全力を引き出すスイッチは、やはり仲間の事でしたか…」

 

 

 

スイムスイムを吹き飛ばしたクラムベリーは、更に優位に立ったように笑う。

 

 

 

「さぁ、ここから本気で戦いましょうか。貴女が私を倒して彼女達を救うか。ここで貴女も死に、彼女達も死んでいくか。楽しみですね…」




はーい、なんだかんだしてたら1ヶ月以上放置してました。本当に申し訳ありませんでした。
本当に不定期更新になりつつありますが、皆さん変わらずご応援の程宜しくお願い致します!
次回は久しぶりにあの方が登場しますよ〜

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