仮面ライダーウィザード ~Magic Girl Showtime~   作:マルス主任

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またまた随分とお待たせしてしまいました。
毎度毎度逃亡したんじゃないかと思われているかもですが、生きてます。
これも仕事とFGOのせいなんです(責任転嫁)


第42話 決意

「スイムスイム…ね…あの子は今何をしてるの?」

「…あんたの消えた後のチームを引っ張ってたが、あいつらにも思う事があったんだろうな。今では内部分裂しちまってる」

 

 

 

晴人は、元魔法少女、ルーラこと木王早苗と再開し、スイムスイムについての情報を聞き出そうとしていた。

少しずつではあるが、団結しつつある魔法少女達の中でミナエルと共に孤立し、魔法少女を襲っているスイムスイム。

スイムスイムについて、ルーラとして活動していた時に協力していた早苗なら、何か知っているのではないかと晴人は踏んでいた。

 

 

 

「まだ大変みたいね。あなたも、あの子達も」

「この事件の元凶を絞れてきてはいるんだ。ただ、今のスイムスイムを放っておくわけにはいかない。どうにかして説得したい」

「私もあなたの言う事を否定したりはしないわ。後戻り出来なくなる前に止めないとね」

「助かるよ。早速だが、スイムスイムがどんなやつだったか教えてくれるか?」

「えぇ。…スイムスイムは不思議な子だったわ。私がチームに勧誘したのはいいけど、何の目的を持っているのかも、私に何で従ってくれていたのかも分からなくて」

「そうなのか…?」

「だから、スイムスイム達に裏切られて殺されかけたのも、想定外でね」

「そっか。あんたでもスイムスイムについてはよく知らないとなると、あいつは一体何を…」

 

 

 

スイムスイムの目的が読めず、困った素振りを見せる晴人に、何かを思い出したように声を出した早苗。

 

 

 

「どうかしたか…?」

「一つだけ。スイムスイムが言ってた、私がルーラになるって言うのが気になっててね…」

「ルーラになる、か。純粋にお前に憧れてたってわけじゃないか?」

「ただ、もしかするとあの子は純粋に生き残りたいだけかもしれない…」

「生き残りたいだけ?」

「えぇ。私にはあの子がどう考えてるのかは分からないけど、そんな気がするわ」

 

 

 

そんな話を最後に、その日は解散となった。

別れる際に、晴人はもう一度早苗に告げた。

 

 

 

「今日はありがとうな。情報を得られただけでも充分だ」

「そう言ってくれるなら良かったわ。もしスイムスイムを止めるんだとしたら、あまり無茶しないでね」

「分かってる。じゃあ、また」

 

 

 

バイクに乗って去っていった晴人を見送った後、早苗は1人考え込んでいた。

 

 

 

「私にも、何か出来ることはないかしら…」

 

 

 

しかし、魔法少女への変身能力を失った以上、もはや晴人達の力になれることは無いに等しい。

だが、何もしないわけにはいかなかった。

1度は無くしかけた命を救ってくれた恩、返したいと思っていた。

きっと何か出来ることがある。その考えを胸に、彼女は次なる1歩を踏み出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐっ…ファヴはいるか!」

『オーガ、お疲れ様ぽん。まぁ、酷いやられ方みたいだけどぽん』

 

 

 

先のビースト達との戦いでダメージを背負ったファントム・オーガは、ある廃屋で、ファヴと会話をしていた。

オーガ以外のファントムは皆、ライダー達との戦いで倒れ、完全敗北となってしまった。

 

 

 

「確かにやられたが、お前らもデータを集められたんだろ?」

『そっちはばっちりだぽん。良いデータを取れたぽん』

「それなら目的は達成した訳か。しかし、ライダーのデータはかなり集まったのか?」

『今回新しく手に入ったゴーストのデータで、今までこの件に絡んできたライダーの戦闘データ、もとい記録も手に入れられたぽん』

「ファヴ、データを採集した以上、奴らを叩き潰せるんだろうな?」

『まぁまぁ、待ってろぽん。今度こそ君にウィザードとの決着を付けさせてやるぽん』

「そうか。ならば、決戦が近いというわけか」

『そうぽん。どの道、君の正体もファヴの事もバレちゃうのは近いぽん。例の計画の完成も近いから、君には…いや、君たちには最後の足止めを頼むぽん』

「たち…だと?」

『言っただろぽん?オーガ、あくまで君はウィザードの相手をしてもらうぽん』

「つまり、他のライダーには他の奴が対処するというわけか」

『その通りぽん。しかも、ライダー達に立ち塞がるのは、そのライダーと因縁がある奴らだぽん』

「それは面白いな。待っていろ…ウィザード。散々伸びてしまったが、今度こそ決着を付けてやる」

『いい心意気ぽん。戦いを大いに楽しめばいいぽん』

「そうさせてもらおう…。だが、その前にだ…」

 

 

 

そう言ったオーガは、魔法少女クラムベリーの姿へ変化した。

しばらくはこちらの姿で活動していなかったが、何故わざわざ変身したのだろうか。

 

 

 

『クラムベリーの姿になってどうするぽん?正直、もう君にはその姿は必要無いと思うぽん?』

「えぇ…確かにもうこの姿は必要無いかもしれませんね。ですが、もう少しだけこの姿で動きたいので」

『誰と戦う気ぽん?正直、今の魔法少女達の大半は仮面ライダーの味方に付いてるはずぽん?無闇に襲いかかっても、返り討ちに遭ってそれこそ終わりぽん』

「ふふっ、まだいるじゃないですか。孤立して行動している魔法少女達が…」

『…まぁ、好きにすればいいぽん。ただし、仮面ライダー達に出くわしてもしらないぽん』

「ご心配なく。その時は、クラムベリーとして、決着を付けます。」

「分かったぽん。まだこっちが動くのには時間が掛かるから、肩慣らししてくるといいぽん」

 

 

 

ファヴのその言葉を聞いたクラムベリーは、口元を歪め、名深市の中に消えていった。

クラムベリーを見送ったファヴは、自身が投影されているマジカルフォンの隣に置いてある少し大きな黒い石を見た。

その石は、まるでウィザードの指輪制作に使われていた魔法石に類似していた。

そして、その石に映し出されたある人物に向かって話しかけた。

 

 

 

『クラムベリー…オーガが行っちゃったぽん。特に問題は無いぽん?』

『…案ずることは無い、ファヴ。しかし、オーガにはまだ働いてもらわねばならない。もしもの事があれば、君に動いてもらおうか』

『分かったぽん。でもこの状態で行った所で、ウィザード達にオーガ共々袋叩きにされかねないぽん』

『…それもそうか。ならば、これを持っていくが良い』

 

 

 

石に映し出された人物は魔法陣を作り出すと、その中から、あるベルトをファヴのいる場所へ転送した。

ファヴの目の前に現れたそのベルトは、ウィザードが使用しているウィザードライバーと同じ形をしていた。

色合いはウィザードライバーとは違い、バックル部分の手の色は赤く、その他の箇所は、全体的に黒くなっている。

 

 

 

『これは…もしかして例のモノかぽん?』

『その通り、君が求めていた、君専用のドライバーだ』

『感謝するぽん。そっちが使っているのと同じ物を頂けるとは、驚きぽん』

『指輪も転送してある。それを使ってくれ』

『了解ぽん。来るべき時に使わせてもらうぽん』

 

 

通信を切ったファヴは、置かれたドライバーを見つめる。

見つめる先にある指輪、チェンジウィザードリングが、怪しく輝いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おーい、みんな大丈夫だったか!」

「あっ、泊さん!」

 

 

 

一方、進ノ介は、戦いを終えたゴースト達の元へ来ていた。

 

 

「遅くなって悪かった。戦闘は…もう終わったみたいだな」

「いえ、泊さんだって大変だったんですから、気にしないでください」

「そうですよ。泊さんの方は、なんとかなったんですか?」

 

 

 

変身を解いた永夢も、進ノ介に問いかける。

 

 

 

「あぁ、なんとかな」

『ウィザードや魔法少女達が協力してくれたからね。君達にも、魔法少女が手助けしてくれたみたいだね』

 

 

 

進ノ介の腰に巻かれたベルト、クリムがシスターナナとウィンタープリズンの方を見ながら話し始めた。

 

 

 

「えぇ、仮面ライダーさん達にはお世話になりましたから…」

「借りは返したいから、これからも協力させてもらうよ」

「そうか、ありがとう。ちなみに、君達を助けたライダーってのは…」

「確か、鎧武とおっしゃってましたよ」

「瀕死だったナナを、助けてくれたんだ、感謝してもし切れない…」

「神様、やっぱ半端ないな。俺もあいつには礼を言わなきゃいけないし。ベルトさんを持ってきてくれたからな」

『そういえば、彼には掘り出されて以降出会っていないな。君達も、鎧武に出会ってはいないかね?』

「僕達も見てないです。少なくとも、ここには来てないかと…」

「そうか。あいつ、どこで何やってんだか」

「きっと、あの人にしか出来ない事をやっているんですよ」

「それもそうか。まぁ、この件に協力してくれてるなら、いずれ会えるかもな」

「そうだな。所で、あんたはどこへ行くんだ?ドライブ」

「俺は、これからウィザードの所にもう一度行こうと思う。タケル達はどうする?」

「俺もついて行きます。晴人さんの助けになればいいなって」

「僕も行きます。飛彩さんはどうしますか?」

「すまないが、俺はここで一旦病院に戻らせてもらう。患者の術後経過も確認しなければならない。ここはお前に任せるぞ、研修医」

「あ、はい。分かりました。そっちの事は頼みます」

「私とナナも、一旦戻って良いか?後で必ず合流する」

「そうか、分かった。ビースト、あんたはどうする?」

「みなまでいうな。俺も同行するぜ」

「分かった。じゃあ、ウィザード達の所へ行こう」

 

 

 

飛彩達と別れ、ウィザード達のいる場所へ向かって移動している進ノ介達。

バイクという移動手段が無い以上、トライドロンの助手席に乗る仁藤。

その時に、進ノ介は仁藤にある情報を提供した。

 

 

 

「そういえば、カラミティ・メアリって魔法少女から、お前と晴人に伝えた方が良いって情報を仕入れてな」

「ほ?何だ?」

「魔法少女にクラムベリーってのがいるんだよな?」

「あぁ。だが、颯太を本気で殺そうとしたいけ好かない奴だけどな」

「そうか…。ただ、そのクラムベリーってのは偽物だ」

「へー、そうなのか…ってはぁ!?お前今何言った!」

「取り敢えず結論だけ言うと、今いるクラムベリーは偽物で、本当のクラムベリーとされる人物は、恐らく既に死んでしまっているかもって話だ」

「おいおいマジかよ…で、正体は誰なんだよ」

 

 

食い気味で仁藤が尋ねてくる。

進ノ介はそのまま答える。

 

 

「メアリが言うには…オーガだ」

「オーガだと…!?」

「恐らく、クラムベリーとオーガの姿の二つを使い分けて、この戦いを裏から操作していたんだろうな」

「じゃあ…颯太をあんな目に遭わせたのも、オーガって訳か…!」

「だが、今回の1件の首謀者はオーガだけじゃないはずだ」

「あいつだけじゃない…?」

『その見解には私も同意する。オーガは1人の魔法少女として参加している。この状態では、その他の魔法少女達と同じ立場だ。彼1人で操作しようとしても、どうしても参加者の立場では不可能な部分がある』

 

 

 

進ノ介の言葉にクリムが意見を付け足す。

それを聞いた仁藤は少しの間黙り込んだ後、何かを閃いたらしく、それを口に出した。

 

 

 

「それって、この戦いの主催者って事か!?」

『Exactly!君の考えていることは正解だ』

「あぁ。恐らくは魔法少女育成計画の運営側にも、オーガに手を貸している奴がいる…とは言っても、そこまで来たら結論は1人なんだけどな」

「まさか、ファヴか!」

「…そうなるな」

『言い方が悪いが、魔法少女として今まで活動してきた彼女達は、ずっと運営に踊らされていたのだろう』

「何だって…それは許せねぇ…!」

「このまま晴人達に伝えに行こう。魔法少女達にも協力を仰げるはずだ」

『先程までいた2人にも伝えておくべきだったか…誤算だったね、進ノ介』

「あぁ…」

「皆まで言うな。取り敢えずは晴人の所に…」

「そうだな。フルスロットルだ、ベルトさん!」

 

 

そう言うと、トライドロンのスピードを上げて、タケルや永夢と共に晴人の元に向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、その晴人はと言うと…。

 

 

 

「…行くか」

 

 

晴人は、マシンウィンガーに乗り、ある場所へ向かおうとしていた。

と、そんな彼の前に現れたのは。

 

 

「晴人さーん!」

「スノーホワイト、ラ・ピュセル、アリス…」

「どこに行くんだ?晴兄」

「…私達も、お供します」

 

 

やって来たのは、スノーホワイト、ラ・ピュセル、アリスの3人。晴人とよく行動しているメンバーである。

 

 

「王結寺に行こうと思う。たまとユナエルが、スイムスイム達と話し合いをしたいって言ってたからな、何が起こるか分からないから、着いていこうと思うんだ」

「そうだったんですか…。それじゃあ、一緒に行きましょう」

「…あぁ。構わないけど、良いのか?話し合いで済めば良いが、最悪戦いに巻き込まれる事になる。今までもそうだったけど、危険な目に遭うかもしれない。無茶をするなよ…」

「分かってます。でも、だからこそ連れて行って下さい。晴人さんも、1人で抱え込んだり、無茶はしてませんか?」

「そうそう、私達だってただ見てるだけじゃないよ。それに、これまでも色んな戦いを切り抜けてきたんだからね」

「助け合い…って大切ですよ。人だって助け合いが大切だって、前に会った旅人の方が言ってました」

 

 

 

スノーホワイト達に言われた事が、晴人には心に刺さった。

彼女達の言う言葉は、以前にも言われた事がある。

1人で抱え込み過ぎるのは良くない。いつか、自分の大切な所を腐らせてしまう、と。

かつての自分の恩師の言葉。

そして、もっと頼っていい、という仲間達の言葉。

これまでの戦いで、ほぼ毎回と言っていい程、スノーホワイト達にも辛い思いをさせてしまっている気がする。

そう感じた晴人は、心の中では分かっていても、やはり彼女達を危険な目に遭わせたくないという気持ちが強くなっていた。

危険な目に遭わせたくないのは、今も変わらない。

だが、彼女達はもう自分にとってただの知り合いでは無いのだ。

 

今は、晴人の信頼し合える仲間だ。

 

 

 

「…そうだな。助け合いだな」

「そうですよ、晴人さん。他のライダーさん達より役には立てないかもしれないですけど、私達だって、晴人さんの役に立ちたいんです」

「あぁ。ありがとう、みんな」

「お互い様です。さぁ、行きましょう!」

「よし、付いてきてくれ!」

 

 

晴人の言葉に、3人は大きく頷き、マシンウィンガーに付いていく。

 

 

 

 

 

 

「所で、アリス…」

「…何でしょうか」

「さっき言ってた、旅人ってのは、パンツ大量に持ってなかったか?」

「…そう言われると、持っていたような…少しのお金とパンツがあれば、なんとかなる…とか言ってました」

「やっぱあいつか」

「…ご存知なのですか?」

「まぁな。あいつも、自分の目標の為に頑張ってるんだな…」

「…良いですね、仲間って」

「どうした?急に」

「今まで、仲間とか、友達と呼べる人と色んな事をして過ごすって体験が少なかったので…」

「そうか。どうだ?こうやって一緒にいるのも」

「楽しいです。だから、私も頑張ります。こんな体験をさせてくれたあなたや、スノーホワイト達の為に…」

 

 

 

 

…例え、この命が尽きる事があっても………。




今回は本当に久しぶりの投稿でした。
なんとか8月に入り、休みに入ったので急いで書いて投稿しました。
今回のように、更新がこれからも遅れるかもしれませんが、気長に待って頂けると、こちらもとても嬉しいです。
次回は、スイムスイム達に重点を置き、話を進めていきます。

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