仮面ライダーウィザード ~Magic Girl Showtime~   作:マルス主任

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Vシネマの仮面ライダースペクターを見終えました。
ゴーストのスピンオフ関連作品は大体名作というのはあながち間違っては無いですね。
今までのゴースト関連作品をよく見ている方ほど楽しめるのではないでしょうか。
ですが、この作品の完成度はとても高く、おすすめの作品です!


第38話ㅤ罪を背負って

貴方に死んでもらうため、という言葉と共にカラミティ・メアリを攻撃したクラムベリー。

ドライブ、リップル、トップスピードは状況の理解に時間が掛かった。

メアリの口調からして、クラムベリーはメアリの仲間だと思っていたドライブだったが、予想外だった。

リップルとトップスピードは固まったように動かない。

衝撃で動けないのか、わざと動かないのかは分からない。

ただ、今分かっているのは、メアリはこのままでは死ぬという事だ。

 

 

 

 

「くっ…不意打ちなんて卑怯な手を使うねェ…!」

「これまで不意打ちや騙し討ちで多くの人々を葬ってきた貴方が言えた事では無いのでは?」

「ぐっ…調子に乗って…がぁぁぁ!」

 

 

 

 

抵抗しようとしたメアリをクラムベリーは容赦なく踏みつける。

 

 

 

 

「貴方はもう用済みですから。障害は排除しますよ」

「くそっ…がああああ!」

「貴方が私達の秘密を知った時点で、既に終わっていたのです。では、さようなら…」

 

 

 

踏みつけていた脚を上げ、今度はメアリの顔面を踏み潰さんとする。

リップルとトップスピードは、その瞬間をただ見つめるしか無かった…。

そして、クラムベリーの一撃がメアリに届く。

 

 

 

 

 

…と思われたその時。

クラムベリーは突然トライドロンに吹き飛ばされ、後ろに倒れ込んだ。

そして、ドライブは倒れているメアリを背負ってメアリを休ませるように地面に寝かせ込んだ。

 

 

 

「と、泊刑事!?」

「な、なんで…?」

 

 

 

リップルとトップスピードもこれには驚くしかない。

ドライブが、メアリを助けたからだ。

 

 

 

「二人共、そいつを連れてここから離脱しろ!」

「でも…泊刑事は」

「いいから早く行け!時間稼ぎは俺がする!」

「時間稼ぎって…」

「後で俺も合流するから、急げ!」

「…ああ分かったよ!これ使ってくれ!行くぞリップル!」

「サンキュートップスピード!リップルも、頼んだぞ!」

「…分かった」

「付いてこいメアリ!行くぞ!」

「…」

 

 

 

 

リップルとトップスピードは、メアリを担いで遠ざかって行った。

そして、トップスピードは自分のハンドル剣をドライブに投げ渡した。

ドライブはハンドル剣を受け取り、自身のハンドル剣と二刀流を披露する。

そして、再び立ち上がったクラムベリーの前に、ドライブが立ちはだかる。

 

 

 

 

「貴方は何を考えているんですか?私は貴方達の敵を排除しようとしただけですが…?」

「そういう問題じゃない。俺は人を守っただけだ」

「あそこで仕留めなければまた誰かが死にますよ?仮面ライダーは正義の味方じゃないんですか?」

「いや、俺は…俺達は、正義の為に戦うんじゃない、人々を…自由を守るんだ!」

「…?」

「悪人だからって、人間を殺してしまえば、そこで自分も罪人だ」

「…私には、貴方の考えが理解出来ません」

「理解なんてしなくていいさ、これが俺の戦い方だ」

 

 

 

 

ドライブがそう言い切った刹那、クラムベリーがドライブに襲いかかる。

すると、シフトカーがクラムベリーを牽制する。

 

 

 

 

『シフトカー、Go!』

「ベルトさん…!」

『進ノ介、君も言うようになったね…。以前は怒りで我を忘れる事も多々あったがね』

「なっ、せっかくキメてたのに、そういうこと言うかベルトさん?俺だって成長するし、余裕だって出てくるよ」

『そうだね、進ノ介。さぁ、君のトップギアを見せる時だ』

「あぁ、行くぞベルトさん!」

 

 

 

 

タイプスピードへ戻ったドライブが、クラムベリーへ立ち向かう。

ハンドル剣を使って、回転しながらクラムベリーに攻撃を仕掛けていく。

しかし、クラムベリーも攻撃を避けて、反撃の機会を伺っている。

そして、クラムベリーがドライブへ反撃を始める。

素早い連撃でドライブに徐々にダメージが与えられていく。

 

 

 

 

「スピード勝負なら、こっちも負けてられない!」

 

 

 

『スピード!スピード!スピード!』

 

 

 

 

シフトレバーを倒し、シフトスピードの高速攻撃を手に入れる。

クラムベリーを上回るスピードで戦うドライブ。

やがてクラムベリーを圧倒し始め、一気に追い込む。

 

 

 

 

「なかなかですね…」

「だったら次はこれだ!来い!デッドヒート!」

 

 

 

 

『Drive!type dead heat!』

 

 

 

 

ドライブは、タイプデッドヒートに変化する。

タイプスピードより攻撃を重視したタイプで、クラムベリーに猛攻を仕掛ける。

 

 

 

「ハァァァァァ!」

 

 

 

ハンドル剣でクラムベリーを切り裂き、次はパンチでクラムベリーを吹き飛ばす。

 

 

 

「うっ…!」

「そろそろ決めるぞ!」

 

 

 

「dead heat!」

 

 

 

ドライブはシフトブレスのボタンを押し、必殺を発動する。

タイヤでクラムベリーを拘束して、2つのハンドル剣で切りかかる。

 

 

 

「ハァァァァァ!」

 

 

 

ドライブはオーラを纏ったハンドル剣で、クラムベリーを両断した。

 

 

 

 

 

 

…はずだった。

 

 

 

 

攻撃が当たったように思いきや、何故かクラムベリーは姿を消していた。

とてもじゃないが、あの状態から単独で脱出出来たとは思いにくかった。

だが、この場所に誰かがいる気配も無い。

 

 

 

 

『…逃げられたようだね』

「そうみたいだな…。逃げたのは気になるが、それよりもリップル達を追わないと」

『そうだね、トライドロンで急ごう』

 

 

 

クラムベリーから切り替えたドライブは、トライドロンを駆り、リップル達の逃げた方向へ向かって行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『いやー、テレポートはやっぱ強いぽん。こればかりはウィザードに拍手ぽん』

「貴方も魔法が…?というよりも、何故私を助けたんですか、ファヴ」

『何で…とはどういうことぽん?』

「私はまだ戦えました。なのに…」

『そういう戦闘狂感は良いけども、ちょっと今死なれては困るんだぽん』

「?…それはどういう…」

『まぁ、これを見てくれぽん』

 

 

 

 

クラムベリーを助けたのは、ファヴであり、なんとウィザードの魔法の力を駆使したようだ。

そして、そのファヴが今度テレポートで呼び出したのは…。

 

 

 

 

「こ、これは…」

『どうぽん?驚いてもらえたぽん?』

「な、何故このファントム達が…」

 

 

 

 

クラムベリーの前に姿を現したファントムは、なんと、赤い不死鳥のモチーフのファントム、フェニックス。

緑色を基準にしたファントム、グレムリン。

頭に蛇を無数に飼っている、ファントムメデューサ。

白色を基準にしたファントム、カーバンクル。

4体のファントムは、何も言葉を発さず、ただこちらを見つめている。

クラムベリー、もといオーガはこれに驚くしかなかった。

自分もではあるが、このファントム達は以前ウィザードによって完全に倒されたファントムであるからだ。

 

 

 

 

 

「蘇らせた…のですか?」

『その答えでは間違いぽん。正確には、造ったというのが正しいかもだぽん』

「造った?」

『砕いて説明すると、このファントム達はウィザード、ビーストの戦闘記録からデータを再構築して造った人造ファントムだぽん。魔法に関しても、データから偽造して作り上げただけぽん』

「…馬鹿な」

『今までただウィザード達にボコボコにされてただけじゃないぽん。ファヴは頑張ってたんだぽん』

「…フッ、面白くなってきたじゃないですか」

『さぁ、ニューステージの始まりぽん。君達には、もっと頑張ってもらうからぽん。覚悟しておくぽん』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

市街地から少し離れた外れの場所で、リップルとトップスピードはメアリを休ませていた。

メアリは戸惑いというよりも、なんとも言えない感情が渦巻いていた。

 

 

 

「そろそろ休めたか、メアリ。…あ、お前の武器は俺達が没収しといたから反撃なんて出来ねーぞ」

「…そうかい。それよりも、あのドライブとかいうのは何であたしなんかを助けたんだか。あのまま手を出さなければ、あたしは完全にくたばってたのに」

「そんなの、私達は知らない。泊さんが言ったから、それを守っただけ」

「泊さんが言ったから、ねぇ…。あんたらはこれで良いのかい?散々人殺しに近い事をしでかしたあたしを助けるってのに協力してさ」

 

 

 

 

助けて以降というもの、卑屈な話しかしないメアリにトップスピードは穏やかに答えた。

 

 

 

「まぁ、正直お前への恨みが無いっていったら嘘になるかな。でも、泊刑事の選択には、何も反対は無いさ」

「へぇ、何で?」

「俺にはあの人の考え全てが分かるわけじゃねえけどさ、今まで散々悪事働いて高笑いしてた奴が、いざ死ぬとなったら、罪から逃げるみたいにすぐにくたばっちまうってのも、卑怯じゃねえか?」

「はぁ…」

「なんていうかよ、ハッキリ言わせてもらうとさ、しっかり生き残って、自分の罪を償えってことだよ」

 

 

 

自分の罪を償う。その言葉を聞いたメアリは、以前の自分を思い出していた。

 

 

 

 

この世の全てがどうでも良くなり、自暴自棄になって自分の娘や、夫に八つ当たりした記憶。

結果、唯一の居場所だった家庭すら失った。

そんなことすらどうでもいいと思っていたが、今になって、家族で過ごせていたあの時が恋しくなった。

これも、自分が招いた結末なのだが。

 

 

 

 

「…あたしには昔、娘と夫がいたんだ」

「えっ…?」

 

 

 

メアリは、トップスピード達に昔の話をすることにした。

少し驚いたような表情を見せたが、トップスピード達は、話に耳を傾けた。

 

 

 

 

「最初は、結構楽しく暮らせてた。でも、気付けば全てを失ってた」

「何かあったのか?」

「あたしが、娘を虐待したのさ…何を思ってたのか知らないけど、もう動機すら忘れちまったよ」

 

 

 

娘を虐待した、そのメアリの言葉でトップスピードの目の色が変わった。

 

 

 

「…それで、その子は今何してるんだ…」

「そんなの知らないさ。でも、きっと楽しく生きてるんじゃねぇかな。もうあたしの事なんか、とっくに忘れてるだろうけどね」

「メアリ…お前は…」

「でも、あたしとなんか生活しなくて正解だよ。今も一緒だったら、もっと辛い思いさせてたろうし…」

 

 

 

メアリは、大きく息を吸い込んで、リラックスすると、再び口を開いた。

 

 

 

「結局、母親らしいこと何も出来なかったのさ…滑稽な話だよ」

 

 

 

「…そうだな、滑稽だな」

 

 

 

 

メアリはトップスピードの方を向いた。

トップスピードが放った言葉に驚いている。

 

 

 

「やっぱりそう思うかい?」

「おう。それに虐待したなんて、俺は許せない」

「…」

「でもさ、メアリ。あんたの話を聞くに、今も娘さんを大事に思ってるんじゃないかって思うんだ」

「何でそう思う?あたしなんか人間の屑だよ、もう自覚してるよ」

「普通、気にしてなかったら今も娘の心配なんかしないだろ。少なくとも、あんたにまだ少しは母親としての心が残ってんだろ」

「…そうかねぇ。でも、もうきっと会えないんだろうさ…」

 

 

 

 

「それはどうかな?」

 

 

 

 

メアリ達が新たな声が聞こえた方向へ向く。

そこには、トライドロンから降りたドライブ、泊進ノ介が立っていた。

 

 

 

 

「あんたは、仮面ライダー」

「泊刑事!クラムベリーは?」

「逃げられた。後少しで追い詰められたんだがな」

「そっか。でも、ありがとうな」

「あぁ。お前達全員無事で良かったよ」

「仮面ライダー、ドライブだっけ。あんたもお人好しだね」

「そうかもな。お前は確かに罪人だ。それに何人かの人間も殺している。許された事じゃないし、罪も重いだろう。でもな…」

「でも…?」

「人は変われる。俺の仲間が言ってた言葉だ」

「…変われる…か」

「あぁ、きっと変われる。いつか、お前が罪を全て償いきった時に…俺はそう信じてる」

「ふふっ、案外、そう思えてきたよ。感謝しとくよ、ドライブ」

「そう思ってくれたなら何よりだ」

 

 

 

 

進ノ介達が話を、続けている途中、3人の魔法少女のマジカルフォンから、連絡が届いた。

 

 

 

「トップスピード、連絡だ」

「何だろうな、一体」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『魔法少女のみんな、救助活動ご苦労様ぽん』

『でも、ここで悪いお知らせぽん』

『今回の騒動、原因はカラミティ・メアリだというのを魔法少女から情報提供されたぽん』

『よって、カラミティ・メアリのマジカルキャンディーを強制で0個にするぽん』

『また、同時に最下位なので、メアリの脱落も決定ぽん。運営からの制裁だぽん。その場で脱落ぽん』

『悪い魔法少女が消えてスッキリぽん。じゃあシーユーぽん』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はあ!?」

「どういう事だよ!」

「魔法少女の誰かが、ファヴに密告したんだ」

「お、おいどうなるんだよ?」

 

 

 

突然の事態に混乱する一同。

すると、メアリの様子が一変した。

 

 

 

「ぐっ、ぐぁぁぁぁぁぁぁ!」

「メアリ!おい、どうした!?」

「マズイ、これは魔力を吸われてる。このままじゃ死んじまう!」

「くそっ、どうすればいいんだ!」

 

 

 

 

 

 

しかし、突然の緊急事態に襲われる進ノ介一同を、少し離れた場所から見つめる影が…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「メアリが死ぬみたいだね、リーダー」

「うん。人間が近くにいるけど、今のうちにリップルとトップスピードもまとめて倒す」

「オッケー!2人でも頑張っちゃうよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ…やっと全部倒せたか」

「やったね、みんな」

「あぁ、スノーホワイト、アリス、それに晴兄もお疲れ様」

「…やりましたね」

 

 

 

 

 

メアリの脱落が発表される少し前、襲い来るグール軍団を倒しきったウィザード達一同。

そんな所に、2人の魔法少女がすごい勢いで走ってきた。

 

 

 

 

「う、ウィザード!大変だ!」

「お、お前らは確か、ユナエルとたま!どうした?」

「リップルとトップスピードが危ない!スイムスイムとお姉ちゃんに殺されちゃう!」

「何だって!」

「それは本当か!?」

「はい。スイムちゃんとミナちゃんが、次の相手はその2人だって…!」

「分かった。お前達を信じる。行くぞ、みんな!」

 

 

 

 

正直ウィザード達は、スイムスイムチームに何があったのかは分からない。これも罠かもしれない。

だが、2人の必死な顔を見て、ただ事では無いと判断したウィザード達は、急いでリップル達を探すことにした。

場所は分からないが、必ず見つける。

その思いを背負い、ウィザードは走る。

 

 

 

 

 

新たな戦いが、仮面ライダー達と、魔法少女達を包み込んでいく…。




出張でまた遅れたのをお許し下さい!
えぇ、暫く出番の無いシスターナナ達ですが、本当に次回こそ出番を作ります。
メアリは死ぬのか、生き残るのか、スイムスイムチームに何があったのか。
全ては次回です。ではでは。

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