仮面ライダーウィザード ~Magic Girl Showtime~ 作:マルス主任
あやねること佐倉綾音さんの男装、中々良かったです。
さて、今回は熱血刑事と不良娘の出会いが明かされます。
そして、神がついにあのキャラクターを…!
『何なんだぽん。あの仮面ライダーは…』
「随分と、お困りのようですね」
ファヴは、ある廃屋の中で、森の音楽家クラムベリーと会話をしている。
ファヴの声音からは、焦りというよりも、怒りの感情が溢れている。
『せっかくユナエルがシスターナナを刺して、心が踊ってたのに、シスターナナの治療とかチートだぽん。能力半端ないぽん』
「あなたがせっかく送ったグールとウロボロスも、全て無駄になってしまいましたね」
『まだグールがやられることは分かってたぽん。でも瞬殺はないぽん。全滅まで10秒かからなかったぽん』
「そして、ウロボロスまで倒されてしまった…と。分が悪すぎましたね」
『元は魔法少女同士の殺し合いを期待していたんだけど…。甘かったぽん』
「ですがファヴ。こちらには動かしやすい駒が一人いるじゃないですか」
『動かしやすい…かは知らないけど、それは良い案だぽん。どうせそろそろ切り捨てるつもりだったぽん』
「では、早速連絡を取りましょうか…」
『良いぽん。これでもっとゲームは面白くなるぽん…』
「おーい、泊刑事!」
「おぉ、トップスピードじゃないか!」
刑事、泊進ノ介は、再びトップスピードに出会い、行動を共にしていた。
そして、トップスピードの横には、以前出会った時にはいなかったリップルが立っていた。
「隣の娘は?」
「あぁ、リップルっていうんだ。俺の相棒さ!」
「…チッ」
突然の舌打ちに進ノ介は驚く。
何か気に障る事を言ってしまっただろうか?
すると、トップスピードが慌ててフォローを入れる。
「あぁ、気にしないでくれ。こいつは見た目怖いけど、中身は良いやつだから」
「…余計な事を言わなくてもいい」
「全く、素直じゃない奴だなぁ。ほれほれ~」
「…チッ」
頭を撫でるトップスピード。しかし、リップルは再び舌打ちをする。
良い顔はしていないが、トップスピードから避けないあたり、二人にはかなりの信頼関係があると見た。
しばらくして、リップルが進ノ介に尋ねた。
「ところで、あなたとトップスピードは何処で出会ったの…?」
「出会いか?」
「そうだなぁ…あの時はいろいろ大変だったなぁ…」
すると、トップスピードと進ノ介はリップルに向かって語り出した…。
これは昔の話である。
警視庁の刑事、泊進ノ介と、その相棒である早瀬明は、名深市をパトロールしていた。
近頃、この付近では暴走族が暴れており、夜間であったが為に周辺地域に住む住人からの苦情を受け、二人が暴走族の沈静化の任務を受けたのであった。
「着いたぞ進ノ介。この辺りらしいぞ」
「やっとか。でも静かじゃないか。とてもじゃないが暴走族なんていないような…」
「というか、この仕事受けておいてアレだが、このくらいの仕事は市の職員とかがやるんじゃないのか?」
「どうやら苦戦してるらしくてな。リーダーの女の子が厄介なんだそうだ」
進ノ介の問いに、早瀬は答える。
すると、なにやらバイクの爆音が響いてくる。
地響きかのような音に、進ノ介と早瀬も思わず耳を塞ぐ。
「おいおい…これってまさか」
「来ちゃったか…」
バイクが止まり、暴走族が二人の前に現れた。
リーダーらしき少女が先頭であり、恐らく彼女らが言われている暴走族であろう。
「おい、君たち。こんな夜に何をしてるんだ。こんな音じゃ周りの人に迷惑だろう」
進ノ介が呼び掛ける。だが、リーダーらしき少女がこちらに向かって来た。
「はぁ?何だあんたら。邪魔くせえんだよ、どっかいけよ」
「ヒャッハァ!リーダーの邪魔すんじゃねえぜヒャッハー!」
リーダーと部下らしき男二人が反論してくる。
部下の雰囲気がレトロ過ぎではないかと思った二人だったが、そんなことを言っている場合ではない。
「人の迷惑も考えたらどうだ?」
「俺らにとっちゃ、お前らが一番迷惑だよ!」
早瀬が注意するも、聞く耳を持たない。
まさに不良というところか。
どうにかして抑えようとする二人であったが、なかなか収まらない集団。
と、そこへ懐中電灯を持った男が近寄ってきた。
その男を見ると、リーダーの少女はあからさまに嫌な顔をした。
「君達、いい加減にしろ!」
「またお前かよ…」
どうやらその男は、前々からこの件に関わっていた市役所の男のようだ。
その男は、こちらに気付くと声をかけてきた。
「あの…あなた方は?」
「警視庁から来ました、泊です」
「同じく早瀬です。パトロールで巡回していた所、彼女達に遭遇しました。なので説得をしております」
「それはそれは…ご苦労様です。そして我々の力が及ばず申し訳ない。自分は、名深市役所の室田と申します」
「そちらも、連日ご苦労様です…って室田さん!彼女達がいなくなってる!」
進ノ介達が気付くと、不良集団はいなくなっていた。
こちらで話している隙に逃げてしまったのだろう。
「また逃げたのか…!」
「とにかく探しましょう。いくら集団とはいえ夜間は危険ですから…」
一旦話を止めたトップスピードと進ノ介。
リップルは反応こそ薄いものの、かなり話に集中していた。
「っていうのが、泊刑事と俺の出会いってワケよ」
「あぁ。色々大変だったよ」
「でも、そこから今のような関係性になるとは思えない。何かもっと重大なことがあったの?」
「まぁな…そこで泊刑事と仲良くなったし、そして昇一に惚れた…あっ」
「それ…言っちゃダメな奴じゃ…」
昇一という新しい人物の登場で、リップルは更に疑問が出来た。
「昇一…?」
「あーあ、言っちまったよ。そこは後でするから、しょーがねえ、話を続けるぜ」
進ノ介達と、不良集団“エンブレス”の騒動はしばらく続いた。
しかし、そんな中のある日、大きな事件が起こった。
いつも通りパトロールをしていた進ノ介達。
そんな所に、不良集団の一人が現れたのだ。
しかも、ボロボロの状態で。
「刑事さん達…助けてくれ…」
「お、おい!何があった!」
「リーダー達が…強盗に捕まっちまって…」
「何だと!?」
「進ノ介、恐らく今日の昼にあった銀行強盗だ。まだ犯人は捕まってなくてな」
「どこにいるんだ、そいつらは」
「ちょっと向こうの廃屋に…」
「分かった。早瀬、お前は他の刑事と、室田さんに連絡を。それと、こいつを休ませてあげてくれ」
「あ、あぁ。お前はどうするんだ」
「あいつらを助けに行く」
「大丈夫なのかよ。危険だ」
「あいつらはもっと危険な目に遭ってるんだ…!」
「お、おい!進ノ介!」
進ノ介は走っていってしまった。
早瀬はしょうがなく、不良と共にパトカーに乗った。
「あーもう!行くぞ!」
「すまない…あの刑事さんにも、あんたにも迷惑かけちまって…」
「そんな事は気にするな。それに、あいつはああなったらもう止まらない」
「…?」
首を傾げる不良に、早瀬はこう答えた。
「いわゆる、脳細胞がトップギアってやつだ」
「お前…俺達を捕まえて楽しいか?」
「ほざくな小娘。てめえらは人質なんだ、黙ってろ」
一方、不良集団エンブレスのメンバーは、強盗犯に捕まり、人質にされていた。
強盗犯の手には拳銃が握られており、迂闊には動けない。
「リーダー、どうしよう…」
「いつかチャンスは来る…その時までは…」
「おい、コソコソ何を話してやがる」
強盗犯の男が近づいてきた。
しかし、そこに一人の男が現れた。
「おい、その娘達を解放しろ!」
「誰だてめえは!」
「なっ、あんた…」
現れたのは、進ノ介…ではなく、室田だった。
「早瀬さんから話は聞いた。大人しく投降しろ」
「この状況見て、良く言えるよなァ!」
強盗犯は、拳銃をリーダー達に向ける。
「お前が余計な事をすれば、こいつらの命は無い」
「くっ…卑怯な…」
「卑怯もラッキョウもあるものか!」
「だったら、俺が変わりになってやる!だからその娘達を解放しろ!」
「笑わせる、だったらここでお前から先に葬ってやる!」
拳銃の引き金が引かれた。
弾が発砲され、室田の腕に当たってしまった。
「ぐあぁ!」
「お、おいあんた!」
腕から血が流れ、室田は倒れる。
「てめえ…本気かよ…」
「あぁ…本気さ…この娘達を守るためなら…」
「この野郎ォォォ!」
「危ない!」
再び強盗犯が拳銃の引き金を引こうとした。
しかし、その時だった。
一発の銃弾が拳銃を弾き飛ばした。
驚く強盗犯の目線の先には、進ノ介が立っていた。
「そこまでだ、強盗犯」
「て、てめぇは…警察かよ…」
「お前を逮捕する…!」
「このぉ…調子に乗りやがって…」
「動くな。もう直にお前は包囲される」
「くっそぉ…」
進ノ介は直ぐに強盗犯を捕らえた。
反抗されないように、手錠をかける。
「どうせ、彼女達を人質にして、逃走用の車でも用意するつもりだったんだろ。詰めが甘い。警察を舐めるな」
しばらく経ち、早瀬達が駆け付けて、強盗犯は逮捕された。
室田は腕に全治2週間のケガを追ったものの、命に別状は無かった。
また、犯行の動機は遊ぶ金が欲しかったという理由であり、実にありきたりだった。
こんな下らない悪意が室田やエンブレスのメンバーを苦しめたのだと考えると、改めて人間の悪意の恐ろしさを感じる。
「室田さん…すまない、もっと俺が早く行ければ…」
「気にしないで下さい。それに助かりましたから」
話している二人の元に、エンブレスのリーダーがやってきた。
「…助かった。ありがとう」
「今回は無事だったが、これからは何が起こるか分かったもんじゃない、もうこんな事するのはやめろ」
「…分かったよ」
「やっと分かってくれたんだな」
頷いたリーダーに、進ノ介と室田はやっと安心する。
すると、リーダーは室田に話しかけた。
「何で、俺達をあそこまでして救ってくれたんだ?」
「…ただ純粋に助けたかったってだけじゃダメか…?」
「ふふっ…あんた、名前は?」
「昇一。室田昇一だよ。でも何で?」
「聞いてみただけだよ。…俺はつばめだ。宜しくな!」
「お、おぉ…宜しく。ていうか何でお前の名前も?」
「…気付けよバカ」
「え?何か言った?」
「なーんも!」
トップスピードは話を終えた。
全員が話に集中していた。
「長くなっちまったな、悪い、これが俺達の出会いだな」
「結局俺もこの後に昇一と仲良くなってな」
「ところで、その昇一って人は?」
リップルはそこが気になっていた。
昇一という人物、つばめという人物。
なんとなくトップスピードの正体がつばめということは分かったが、結局昇一という人間とはどういう関係なんだろうか。
「そうだったな、それを言っとかないとな」
「おい、良いのか?」
「良いよ、リップルは相棒だしな」
そう言うと、トップスピードは、光に包まれ始めた。
変身を解除したのだ。
リップルは目を疑った。
トップスピードの人間体は、マタニティドレスを着た女性だった。
お腹が膨らんでおり、その見た目は“妊婦”としか言い様がない。
「トップ…スピード?」
「おう。俺は室田つばめ。見た通り妊婦さ」
「…ごめん、思考が追い付かない」
「おいおい、そんな驚かなくても…」
「まぁまぁ、最初は驚くだろ」
「そうかなぁ…でも、活動には支障ないから安心してくれ」
「そうなんだ…それは良かった」
「おう、だからこれからも一緒に頑張ろうぜ!」
「…分かった」
改めてリップルとつばめは共に活動する事を決めた。
「そう言えば、リップルも大分丸くなったよな」
「…そんなことない」
「まぁ素直じゃねえなあ…」
「…ちょっと、やめて、お腹を大事に…」
そんな二人を見ながら、進ノ介は考え事をしていた。
「(俺も、彼女達を守れる力が必要か…?)」
「(でも、俺は変身出来ない…)」
「(ベルトさんはもういない…でも、変身出来なくても、俺にもやれることがあるはず…)」
「(今は少しでもアシストする事が、俺の役割だ…)」
ここに来るのはそんなに久し振りという訳でもない。
相変わらず全てが無のような空間である。
やはり、これくらい静かな方がゆっくり眠れるのだろう。
今度こそ平和を祈って眠ったはずなのだが、こうしてまた目覚めさせるのも申し訳ないと思う。
だが、これも敵の野望を止める為だ。
そして、彼のエンジンをもう一度呼び起こすためだ。
ロックを強制的に開き、地下に降りる。
地下フロアに到着した。
そしてそこには、機械類が多く置かれている。
その中の一つに触れようとしたときである。
『…君は!?…と、よく見たら鎧武じゃないか、勝手に入ってくるのは驚くからやめてくれ』
「すまない、でも、俺が来たってことはどういう事か分かってくれると思うんだが…」
『また何かあったのかね…』
「あぁ、今度は前の戦いよりも危ない。地球全体の危機になる可能性がある」
『地球…全体…』
「頼む。また力を貸してくれるか?」
『私は中々深い眠りには着けなさそうだね…』
「すまない…でも、あいつの危機でもあるんだ」
『そうか…。分かった、私にも出来ることはしようか』
「ありがとう、助かるよ」
鎧武が機械に触れると、地下フロアに灯りが付き、赤色のスーパービークルのエンジンが再び起動した…。
今回は過去話を書きましたが、トップスピード関連の設定も弄らせて貰いました。
リップルもここでトップスピードの秘密を知るという構成にしました。
最後のアレは、察してください。