仮面ライダーウィザード ~Magic Girl Showtime~   作:マルス主任

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前回の皆様のご感想を読む限り、なかなか衝撃的だったようですね。
今回は、大いなる希望が降りてきます。
大事な事なので二度言います。降りてきます。


第32話 舞い降りし者

 仮面ライダーウィザード、ヴェス・ウィンタープリズンと、スイムスイム、ミナエルによる戦いが始まっている。

戦況は、若干スイムスイムとミナエルが押されているというところだ。

ウィザードが放つ多彩な魔法攻撃により、スイムスイムは苦戦を強いられる。

また、ウィンタープリズンの隙も与えぬ攻撃を浴び、ミナエルも決して優勢ではない。

 

 

 

「ミナエル、スイムスイム!いい加減諦めたらどうなんだ!」

「やだね!」

 

 

 ウィザードと戦うミナエルは、ウィザードに押されているにも関わらず、反抗している。

 

 

「これ以上の戦闘は無意味だ!俺はお前達を傷つけたくない…」

「うるせー!とにかくこっちもあんたらを止めないと全部パーになるんだよ!」

「なっ…何?」

 

 

 

 “止めないと”の言葉に違和感を覚えるウィザード。

まさか、相手が本当に自分たちを足止めしているなら。

こちらが足止めと思っていた行動を逆手に取られているのなら。

逆にこちらが罠に掛かったというのか…。

そして、ウィザードの推測を決定付ける証拠がもう一つある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 いつもミナエルと共に行動しているユナエルがこの場に居ない。 

そして、ユナエルの魔法は、生物に変身することの出来る魔法。

 

 

 

 

 

 シスターナナが危ない…!

 

 

 

 

 

「くそっ!しまった!」

「ウィザード!どうしたんだ!」

「今すぐシスターナナの所へ行かないと…彼女が危険だ!」

「何だって!?」

 

 

 

 

 

 シスターナナが危険。その言葉を聞いた瞬間に、ウィンタープリズンの目の色が変わった。

ウィザードはドラゴタイマーを召喚し、操作する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ウォータードラゴン!

 

 ハリケーンドラゴン!

 

 ランドドラゴン!

 

 ファイナルタイム!

 

 

 

 

 

 

 

 

 ウィザードは、ウォータードラゴン、ハリケーンドラゴン、ランドドラゴンを呼び出し、4人に増加した。

 

 

 

「なっ、増えたぁ!?」

「…厄介」

 

 

 

 ウォータードラゴンはスイムスイム、ランドドラゴンはミナエルと対峙する。

フレイムドラゴンとハリケーンドラゴンは、シスターナナを追う。

 

 

 

「ウィンタープリズン!ここは二人で食い止める!お前はフレイムドラゴンとハリケーンドラゴンについていけ!」

「分身とは…すごいな。ならここは頼む!」

 

 

 

 フレイムドラゴン、ハリケーンドラゴン、そしてウィンタープリズンは、自身の作った壁の一つを破壊し、寺から脱出した。

 

 

 

「な、待て!」

「…行かせない」

 

 

 

 ミナエルとスイムスイムが追ってくる。

しかし、残ったウォータードラゴン、ランドドラゴンが立ち塞がる。

 

 

 

「行かせるか!」

「悪いけど、追い付かせるわけにはいかないんでな」

 

 

 

 

 

 ディフェンド!プリーズ!

 

 

 

 

 

 ランドドラゴンが土の壁を作って再び寺の入り口を塞いだ。

 

 

 

 

「げげぇー!面倒なことしやがって!」

「こうなったら…戦うしかない…」

 

 

 

 怒るミナエルを横目に、スイムスイムは薙刀“ルーラ”を構える。

そして、ウィザード二人もウィザーソードガンを出し、更にコピーの魔法でもう一つ作り出す。

二刀流でウィザーソードガンを使い、応戦状態を整える。

 

 

 

 

「「さぁ、ショータイムだ…!」」

 

 

 

 

 今度は二人のウィザードが、スイムスイム達に立ち向かった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 見てしまった。

目の前で、シスターナナがユナエルに刺された。

倒れたシスターナナの周りが、少しずつ赤く染まる。

襲いかかる恐怖のあまり、たまは叫び声を挙げてしまった。

認識阻害のお陰で、一般の人間には気付かれないが、ユナエルには気づかれてしまった。

 

 

 

 

 

「うおっ、誰かと思えばたまじゃん!」

「ひっ…ゆ、ユナちゃん…」

「作戦成功だよ!これでシスターナナは死んだ!うざいのが消えてスカッとしたよ!」

 

 

 

 

 

 振り向き、たまに話しかけるユナエルは、笑顔だった。

たまには今のユナエルが理解出来ない。

何故笑顔なのか。

何故人を殺しておきながら平然としているのか。

今のたまに渦巻いている感情は、怒りなのか、それとも悲しみか。

 

 

 

 

「さーて、一人殺ったし、もーどろ!」

「…んで…」

「ん?何か言った?」

「何で…人を殺しても平気なの…?」

 

 

 

 

 たまはユナエルに向かってそう言った。

そんなたまの目からは、涙が溢れていた。

 

 

 

 

「な、何でたまが泣いてるんだよ…」

「だって…だって…」

「たまって、シスターナナと仲良かったのか?大して仲良くもない奴が死んでも、別になんとも思わないでしょ?」

「そういう問題じゃないよ…」

「は?」

「ユナちゃんもミナちゃんもスイムちゃんも、なんで平然と人を殺すなんて言えるの?」

 

 

 

 

 

 ユナエルは黙りこんだ。

たまは、泣きながらユナエルに訴える。

 

 

 

 

「こんな事に、何の意味があるの…!」

「意味も何も、生き残る為だよ!」

 

 

 

 

 ユナエルがたまに言い放つ。

 

 

 

 

「たまだって死にたくないだろ!私だって死にたくない!」

「それは、そうだけど…」

「今のままじゃ毎週誰かが死ぬ。だったら仕方ないじゃないか!」

「ユナちゃん…」

「自分たちが生きるには、誰かを脱落させるしかない…戦わないと生き残れない!」

「でも、他にも方法はあるよ!それを探す為にシスターナナ達はみんなと協力しようって言ってたんだよ…」

「…何だよ…たまもそんなこと言い出すのかよ…」

「え…?」

 

 

 

 ユナエルが、ゆっくりとたまの方へ近づいてくる。

 

 

 

「そういう偽善ぶった事言うのが、私は一番嫌いなんだよ…」

「ユナ…ちゃん…?」

「シスターナナだってそうだ。あんな事言いながら、いざトラブルが起きれば、全部ウィンタープリズンに任せっきりで自分はさっさと逃げやがって」

 

 

 

 

 ユナエルの言葉に、たまは返す言葉が無くなってしまう。

 

 

 

 

 

「とにかく、私達は生きる為に戦う。それが嫌ならこのチームから抜けるなりすればいいよ」

「ま…待って…」

 

 

 

 

 そう言い残して立ち去ろうとするユナエル。

しかし、そんなユナエルの目の前を、槍が通り抜けていった。

 

 

 

 

「うあっ!何だよ!」

「あ…アレは…」

 

 

 

 

 いきなりの攻撃で尻餅を付いたユナエル。

そして、たまが槍が飛んできた方向へ目を向けると…。

 

 

 

 

「ま、マジかよ…」

「嘘…」

 

 

 

 

 そこには、下級ファントム・グールの大群がいた。

明らかに、ユナエルを狙っての攻撃である。

そして、グールはユナエル目掛けて襲いかかってきた。

 

 

 

 

「数が多すぎるだろ!くっそ…こうなったら!」

「ユナちゃん!?」

 

 

 

 ユナエルは、真っ正面からグールの大群へ立ち向かう。

まずは一体のグールから槍を奪い、ユナエルが槍を使ってグールを切り裂いていく。

だが…。

 

 

 

 

「くっそぉ!何だよこいつら!どんだけいるんだよ!」

 

 

 

 

 倒しても倒しても、どこからかグールが現れ、ユナエルに襲いかかる。

そして、ユナエルも戦う内に疲労が増し…。

 

 

 

 

「うっ、ぐあぁ!」

「ユナちゃん!」

 

 

 

 グールの数による集団攻撃で、ユナエルもダメージを受けてしまう。

一度攻撃を受けると、避けきるのは不可能で、次々とダメージを受けるユナエル。

ついには、ユナエルはグールの攻撃でたまのいる場所まで吹き飛ばされてしまった。

 

 

 

 

「う…ぐっ…」

「ユナちゃん!しっかりして!」

「あいつら…ヤバいぞ…」

 

 

 

 

 グールの大群は、こちらに向かってゆっくり歩いてくる。

このままではいずれやられてしまう…

 

 

 

 

「…たま、今のうちに逃げて。私が時間を稼ぐ」

「えっ!ユナちゃん何言ってるの!」

「二人まとめて死ぬか、どっちかだけでも生き残るか。どちらを選んだ方が良いかなんて、たまなら分かるだろ」

「だけど…ユナちゃんだって死にたくないんじゃ…」

「死にたくないよ…でもこうするしかないんだ!」

「ユナちゃん…」

 

 

 

 

 そう言うと、ユナエルは再び立ち上がる。

そして、もう一度グールに向かう。

 

 

 

「私はどうすることも出来なくて、こうやって戦いに参加して、人殺しをするしかなくなったんだ」

「そんな…ユナちゃんも…」

「それにさ、さっきは言わなかったけど、たまの言葉には本気の気持ちが籠ってた。だから、たまが戦いを止める方法を探ってよ。きっと見つけられるよ」

「待って…ユナちゃん…突然過ぎて…頭が回らない…」

「じゃあな、たま」

「お姉ちゃんやリーダーにも、宜しく言っておいてよ」

 

 

 

 ユナエルは、再びグールの大群へ立ち向かう。

強力な武器を持たないユナエルでは、いずれやられてしまうことも分かっている。

それでも、ユナエルは立ち向かう。

 

 

 

「かかってこい!化け物共!」

 

 

 

 まずはグールを蹴り飛ばす。

そして、さっきと同じく槍を奪って戦う。

しかし、結果は変わらなかった。

先ほどよりも増殖したグールに、次第に押されるユナエル。

槍を落としてしまい、再び丸腰の状態になってしまう。

そんなユナエルに、背後から襲いかかるグールが二体。

これでは避けきれない。

 

 

 

「ごめん、お姉ちゃん…」

 

 

 

 ユナエルがそう呟いた。しかし…

 

 

 

 

 二体のグールが腹部に穴を開けて倒れて消滅した。

ユナエルは、辺りを見回した。

穴を作る魔法を使えるのは、一人だけだ。

グールが次々倒れていく。

そして、ユナエルの側に、一人の魔法少女が。

 

 

 

「ユナちゃん、しっかりして」

「たま…お前、なんで…」

「見捨てるなんて出来ないよ。二人で一緒に、いや、三人で生きるんだよ」

「三人?」

「ほら、シスターナナもってことだよ」

 

 

 

 ユナエルを救った魔法少女、たまはシスターナナが倒れている方向を指差す。

 

 

 

「もっと早く止血すれば良かったけど、一応まだ息はあるよ」

「…分かったよ。一緒に行こう」

 

 

 

 

 ユナエルと共に立ち上がるたま。

しかし、劣勢なのは変わらない。

たまは、これから始まるとされる戦いの前に、夢で出会ったあの人物に心の中で呟いた。

 

 

 

 

「(神様、どうか私達が生き残れる力を、私にください)」

 

 

 

 しかし、そう願った瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おう。でも、今回はヤバそうだから、俺も手を貸すよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっ?」

 

 

 

 たまが不思議に思った瞬間、オレンジ色の光が差し込み、そこから何かが飛び出してきた。

現れた何かは、今まで数えきれない程だったグールを、全て一瞬で殲滅した。

たまもユナエルも、気づいた時には全てが終わっていた。

 

 

 

 

「な、何だ?」

「ゆ、ユナちゃん!あれを見て!」

 

 

 

 

 たまが指を指す方向、そこには光に包まれて現れた、銀色の鎧を纏った者がいた。

その姿は、夢でたまが出会った人物と酷似していた。

しかし、何やら兜のようなものを装着している。

でも、あれは絶対…。

たまがそう思った時、その人物が振り返った。

顔こそ違うが、あの雰囲気…やはりそうだ。

 

 

 

 

 

 

 たまの祈りが届いたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺は仮面ライダー鎧武。みんな、大丈夫か?」

「か、神様…」

「あぁ、そうさ。よく頑張ったな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 神様、もとい仮面ライダー鎧武の言葉は、たまにとっては本当の神の如く暖かかった。




はい、神が降りてきました。
次回も結構なチート能力発動です。ご期待下さい。

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