仮面ライダーウィザード ~Magic Girl Showtime~ 作:マルス主任
今回は、大いなる希望が降りてきます。
大事な事なので二度言います。降りてきます。
仮面ライダーウィザード、ヴェス・ウィンタープリズンと、スイムスイム、ミナエルによる戦いが始まっている。
戦況は、若干スイムスイムとミナエルが押されているというところだ。
ウィザードが放つ多彩な魔法攻撃により、スイムスイムは苦戦を強いられる。
また、ウィンタープリズンの隙も与えぬ攻撃を浴び、ミナエルも決して優勢ではない。
「ミナエル、スイムスイム!いい加減諦めたらどうなんだ!」
「やだね!」
ウィザードと戦うミナエルは、ウィザードに押されているにも関わらず、反抗している。
「これ以上の戦闘は無意味だ!俺はお前達を傷つけたくない…」
「うるせー!とにかくこっちもあんたらを止めないと全部パーになるんだよ!」
「なっ…何?」
“止めないと”の言葉に違和感を覚えるウィザード。
まさか、相手が本当に自分たちを足止めしているなら。
こちらが足止めと思っていた行動を逆手に取られているのなら。
逆にこちらが罠に掛かったというのか…。
そして、ウィザードの推測を決定付ける証拠がもう一つある。
いつもミナエルと共に行動しているユナエルがこの場に居ない。
そして、ユナエルの魔法は、生物に変身することの出来る魔法。
シスターナナが危ない…!
「くそっ!しまった!」
「ウィザード!どうしたんだ!」
「今すぐシスターナナの所へ行かないと…彼女が危険だ!」
「何だって!?」
シスターナナが危険。その言葉を聞いた瞬間に、ウィンタープリズンの目の色が変わった。
ウィザードはドラゴタイマーを召喚し、操作する。
ウォータードラゴン!
ハリケーンドラゴン!
ランドドラゴン!
ファイナルタイム!
ウィザードは、ウォータードラゴン、ハリケーンドラゴン、ランドドラゴンを呼び出し、4人に増加した。
「なっ、増えたぁ!?」
「…厄介」
ウォータードラゴンはスイムスイム、ランドドラゴンはミナエルと対峙する。
フレイムドラゴンとハリケーンドラゴンは、シスターナナを追う。
「ウィンタープリズン!ここは二人で食い止める!お前はフレイムドラゴンとハリケーンドラゴンについていけ!」
「分身とは…すごいな。ならここは頼む!」
フレイムドラゴン、ハリケーンドラゴン、そしてウィンタープリズンは、自身の作った壁の一つを破壊し、寺から脱出した。
「な、待て!」
「…行かせない」
ミナエルとスイムスイムが追ってくる。
しかし、残ったウォータードラゴン、ランドドラゴンが立ち塞がる。
「行かせるか!」
「悪いけど、追い付かせるわけにはいかないんでな」
ディフェンド!プリーズ!
ランドドラゴンが土の壁を作って再び寺の入り口を塞いだ。
「げげぇー!面倒なことしやがって!」
「こうなったら…戦うしかない…」
怒るミナエルを横目に、スイムスイムは薙刀“ルーラ”を構える。
そして、ウィザード二人もウィザーソードガンを出し、更にコピーの魔法でもう一つ作り出す。
二刀流でウィザーソードガンを使い、応戦状態を整える。
「「さぁ、ショータイムだ…!」」
今度は二人のウィザードが、スイムスイム達に立ち向かった…。
見てしまった。
目の前で、シスターナナがユナエルに刺された。
倒れたシスターナナの周りが、少しずつ赤く染まる。
襲いかかる恐怖のあまり、たまは叫び声を挙げてしまった。
認識阻害のお陰で、一般の人間には気付かれないが、ユナエルには気づかれてしまった。
「うおっ、誰かと思えばたまじゃん!」
「ひっ…ゆ、ユナちゃん…」
「作戦成功だよ!これでシスターナナは死んだ!うざいのが消えてスカッとしたよ!」
振り向き、たまに話しかけるユナエルは、笑顔だった。
たまには今のユナエルが理解出来ない。
何故笑顔なのか。
何故人を殺しておきながら平然としているのか。
今のたまに渦巻いている感情は、怒りなのか、それとも悲しみか。
「さーて、一人殺ったし、もーどろ!」
「…んで…」
「ん?何か言った?」
「何で…人を殺しても平気なの…?」
たまはユナエルに向かってそう言った。
そんなたまの目からは、涙が溢れていた。
「な、何でたまが泣いてるんだよ…」
「だって…だって…」
「たまって、シスターナナと仲良かったのか?大して仲良くもない奴が死んでも、別になんとも思わないでしょ?」
「そういう問題じゃないよ…」
「は?」
「ユナちゃんもミナちゃんもスイムちゃんも、なんで平然と人を殺すなんて言えるの?」
ユナエルは黙りこんだ。
たまは、泣きながらユナエルに訴える。
「こんな事に、何の意味があるの…!」
「意味も何も、生き残る為だよ!」
ユナエルがたまに言い放つ。
「たまだって死にたくないだろ!私だって死にたくない!」
「それは、そうだけど…」
「今のままじゃ毎週誰かが死ぬ。だったら仕方ないじゃないか!」
「ユナちゃん…」
「自分たちが生きるには、誰かを脱落させるしかない…戦わないと生き残れない!」
「でも、他にも方法はあるよ!それを探す為にシスターナナ達はみんなと協力しようって言ってたんだよ…」
「…何だよ…たまもそんなこと言い出すのかよ…」
「え…?」
ユナエルが、ゆっくりとたまの方へ近づいてくる。
「そういう偽善ぶった事言うのが、私は一番嫌いなんだよ…」
「ユナ…ちゃん…?」
「シスターナナだってそうだ。あんな事言いながら、いざトラブルが起きれば、全部ウィンタープリズンに任せっきりで自分はさっさと逃げやがって」
ユナエルの言葉に、たまは返す言葉が無くなってしまう。
「とにかく、私達は生きる為に戦う。それが嫌ならこのチームから抜けるなりすればいいよ」
「ま…待って…」
そう言い残して立ち去ろうとするユナエル。
しかし、そんなユナエルの目の前を、槍が通り抜けていった。
「うあっ!何だよ!」
「あ…アレは…」
いきなりの攻撃で尻餅を付いたユナエル。
そして、たまが槍が飛んできた方向へ目を向けると…。
「ま、マジかよ…」
「嘘…」
そこには、下級ファントム・グールの大群がいた。
明らかに、ユナエルを狙っての攻撃である。
そして、グールはユナエル目掛けて襲いかかってきた。
「数が多すぎるだろ!くっそ…こうなったら!」
「ユナちゃん!?」
ユナエルは、真っ正面からグールの大群へ立ち向かう。
まずは一体のグールから槍を奪い、ユナエルが槍を使ってグールを切り裂いていく。
だが…。
「くっそぉ!何だよこいつら!どんだけいるんだよ!」
倒しても倒しても、どこからかグールが現れ、ユナエルに襲いかかる。
そして、ユナエルも戦う内に疲労が増し…。
「うっ、ぐあぁ!」
「ユナちゃん!」
グールの数による集団攻撃で、ユナエルもダメージを受けてしまう。
一度攻撃を受けると、避けきるのは不可能で、次々とダメージを受けるユナエル。
ついには、ユナエルはグールの攻撃でたまのいる場所まで吹き飛ばされてしまった。
「う…ぐっ…」
「ユナちゃん!しっかりして!」
「あいつら…ヤバいぞ…」
グールの大群は、こちらに向かってゆっくり歩いてくる。
このままではいずれやられてしまう…
「…たま、今のうちに逃げて。私が時間を稼ぐ」
「えっ!ユナちゃん何言ってるの!」
「二人まとめて死ぬか、どっちかだけでも生き残るか。どちらを選んだ方が良いかなんて、たまなら分かるだろ」
「だけど…ユナちゃんだって死にたくないんじゃ…」
「死にたくないよ…でもこうするしかないんだ!」
「ユナちゃん…」
そう言うと、ユナエルは再び立ち上がる。
そして、もう一度グールに向かう。
「私はどうすることも出来なくて、こうやって戦いに参加して、人殺しをするしかなくなったんだ」
「そんな…ユナちゃんも…」
「それにさ、さっきは言わなかったけど、たまの言葉には本気の気持ちが籠ってた。だから、たまが戦いを止める方法を探ってよ。きっと見つけられるよ」
「待って…ユナちゃん…突然過ぎて…頭が回らない…」
「じゃあな、たま」
「お姉ちゃんやリーダーにも、宜しく言っておいてよ」
ユナエルは、再びグールの大群へ立ち向かう。
強力な武器を持たないユナエルでは、いずれやられてしまうことも分かっている。
それでも、ユナエルは立ち向かう。
「かかってこい!化け物共!」
まずはグールを蹴り飛ばす。
そして、さっきと同じく槍を奪って戦う。
しかし、結果は変わらなかった。
先ほどよりも増殖したグールに、次第に押されるユナエル。
槍を落としてしまい、再び丸腰の状態になってしまう。
そんなユナエルに、背後から襲いかかるグールが二体。
これでは避けきれない。
「ごめん、お姉ちゃん…」
ユナエルがそう呟いた。しかし…
二体のグールが腹部に穴を開けて倒れて消滅した。
ユナエルは、辺りを見回した。
穴を作る魔法を使えるのは、一人だけだ。
グールが次々倒れていく。
そして、ユナエルの側に、一人の魔法少女が。
「ユナちゃん、しっかりして」
「たま…お前、なんで…」
「見捨てるなんて出来ないよ。二人で一緒に、いや、三人で生きるんだよ」
「三人?」
「ほら、シスターナナもってことだよ」
ユナエルを救った魔法少女、たまはシスターナナが倒れている方向を指差す。
「もっと早く止血すれば良かったけど、一応まだ息はあるよ」
「…分かったよ。一緒に行こう」
ユナエルと共に立ち上がるたま。
しかし、劣勢なのは変わらない。
たまは、これから始まるとされる戦いの前に、夢で出会ったあの人物に心の中で呟いた。
「(神様、どうか私達が生き残れる力を、私にください)」
しかし、そう願った瞬間だった。
「おう。でも、今回はヤバそうだから、俺も手を貸すよ」
「えっ?」
たまが不思議に思った瞬間、オレンジ色の光が差し込み、そこから何かが飛び出してきた。
現れた何かは、今まで数えきれない程だったグールを、全て一瞬で殲滅した。
たまもユナエルも、気づいた時には全てが終わっていた。
「な、何だ?」
「ゆ、ユナちゃん!あれを見て!」
たまが指を指す方向、そこには光に包まれて現れた、銀色の鎧を纏った者がいた。
その姿は、夢でたまが出会った人物と酷似していた。
しかし、何やら兜のようなものを装着している。
でも、あれは絶対…。
たまがそう思った時、その人物が振り返った。
顔こそ違うが、あの雰囲気…やはりそうだ。
たまの祈りが届いたのだ。
「俺は仮面ライダー鎧武。みんな、大丈夫か?」
「か、神様…」
「あぁ、そうさ。よく頑張ったな」
神様、もとい仮面ライダー鎧武の言葉は、たまにとっては本当の神の如く暖かかった。
はい、神が降りてきました。
次回も結構なチート能力発動です。ご期待下さい。