仮面ライダーウィザード ~Magic Girl Showtime~ 作:マルス主任
「ラ・ピュセル。生きていらしたのですね」
「生きていて良かったよ。知り合いが死ぬのは心が痛い」
「本当にそうだぜ。お前がいない間のスノーホワイトは見てられなかったんだからな」
「そうだったのか…みんなにも、心配をかけたんだな。申し訳ない」
ラ・ピュセルが生きていたことを知り、チャットルームには多くの魔法少女が集まっていた。
一人になったスノーホワイトを心配してくれていたシスターナナ、ウィンタープリズン、トップスピードは特にラ・ピュセルの生存を喜んでいた。
ここ最近はチャットルームに集まる人数が減っていたが、今日はほとんどがルームに来ていた。
その理由としては…
『みんなすごい集まってるぽん。そしてラ・ピュセルは生きてて嬉しいぽん』
「何が嬉しいだ。ファヴ、今日は話をしたくて来た。他にもこれだけの魔法少女が集まってくれた」
『本当だぽん。クラムベリー、カラミティ・メアリ、ハードゴア・アリス以外は全員来てるぽん。クラムベリーはついに皆勤賞じゃなくなったぽん。残念ぽん』
この場にはクラムベリー、カラミティ・メアリ、ハードゴア・アリス以外の11人が集まっていた。
また、ハードゴア・アリスについては会った魔法少女も数少なく、存在そのものを知らなかった者もいる。
「じゃあ早速本題に移らせてもらう」
『何だぽん?』
「まず、お前は以前、このキャンディー集めは毎週絶対脱落者が出るって言ったよな」
『それが何ぽん?』
「私が消えた週、脱落者は出なかったそうだな」
『…』
「矛盾してないか?それにスノーホワイトの話では、私を完全に亡き者扱いしていたそうじゃないか」
「た、確かに!どういうことなんだファヴ!」
ラ・ピュセルの指摘に、トップスピード達も声を上げる。
しかしファヴは何も答えない。無言である。
更にラ・ピュセルは続けた。
「どうして私の遺体も確認せずに死んだと判断したんだ?」
『…』
「それに、クラムベリー。奴は危険過ぎる。言うなれば殺人鬼だ。あんな奴がいればこのランキングが正常に進むわけない、奴を何故放っておくんだ」
『…』
「結局このゲームの意味って何なんだ?おかしい所がありすぎる」
ラ・ピュセルがここまで言うと、魔法少女達もファヴに疑問を持ち始めた。
しかしファヴは何も答えない。もはや抜け殻なのではと思うほどに動こうともしない。
「おい、いい加減答えたらどうなんだ!」
ついにラ・ピュセルが声を荒げた。
場が静まり返った。すると…
『だったら逆に何なんだぽん』
急に雰囲気が変わり、ファヴが静かに話し出す。
『脱落しないでもいいならしなくていいじゃないか。そう言いたいんだろぽん』
「要約すればそうなる…実際はどうなんだ」
『…くだらない、ぽん。』
「何だと…!?」
『そんなくだらないことでファヴを呼ぶとは呆れたぽん』
『こっちは魔法少女を減らしたいだけぽん。正直今まで言った言葉に嘘があったことは認めるぽん。でも、だからなんだって言うんだぽん?』
『ゲームを操作出来ないってのも勿論嘘だし、こっちは人数が減るならなんでもいいぽん』
その一言に、ラ・ピュセルは脳に血が登る感覚を感じた。
俗に言う、激昂状態という奴だ。
「お前は人の命を何だと思ってるんだ!実際に人が死にかけてる!元々勝手にお前が私達を巻き込んだくせに、責任を感じてないのか!」
『あー、もうラ・ピュセル黙っててくれないかぽん。あんまり調子に乗ると温厚なファヴも怒っちゃうぽん』
『ファヴがこのゲームの管理者だぽん。脱落とかは全部ファヴが処理するぽん。ゲームにフェアじゃないからやってなかっただけで、その気になれば今すぐにでもラ・ピュセル。君を脱落させてもいいんだぽん』
『君達魔法少女はただ減らし合ってくれれば良いんだぽん。黙ってこっちに従ってればいんだぽん』
「貴様…!」
ラ・ピュセルが怒りを露にする。
その目は屑を見る目である。
しかし、ファヴは気にせず続けた。
『それに、責任とか言ってたけどこっちは強制してないぽん。君達が一瞬でも魔法少女になりたいと思ってスマホをタップした時点で契約は成立だぽん。結局は君達の責任ぽん』
『クラムベリーを消して欲しいとか言ってたぽん。でもこちらとしては脱落すれば何でもいいからクラムベリーのような戦闘狂は大歓迎なんだぽん。殺し合いで消しあってくれても何も悪いことはないぽん。こっちも見てて楽しいぽん』
「何て奴だ!」
「こんなんだったら魔法少女になるんじゃなかった!」
「なるんじゃなかった!」
そんなことを言い出すファヴに、多くの魔法少女からの罵声が浴びせられる。
「魔法少女は清く、正しく、美しくなきゃダメなんだよ…ファヴはそんなこと思ってなかったの?私達を最初から玩具としか見てなかったの?」
スノーホワイトも続けて反論する。
すると、ファヴからの返答は意外なものであった。
『スノーホワイト。それにはファヴも賛成ぽん』
「じゃあ、何でこんなこと!」
『魔法少女はみんなのヒーローでなきゃいけないぽん。どんなピンチになっても必ず悪を打ち倒す戦士だぽん。でも、今までの君達は新しい玩具を買ってもらってはしゃいでる子供と変わらないぽん。この魔法少女の力はそんなにくだらないものじゃないぽん』
『ファヴはこうやって強い魔法少女を探し出してるんだぽん。みんなで楽しくのんびりやるなんて脳内お花畑の奴がやることだぽん』
『君達には強大な力を持ったという自覚がないぽん。この力は遊びじゃないぽん。』
「そんな…」
スノーホワイトは言葉を失った。あまりにもファヴの言葉が衝撃的であり、自身の頭を巡っている。
自分はそんなに強大な力を持ってしまったのか。
魔法少女はアニメやマンガで見ているものとは違うのかもしれない。
『とにかく、そういうわけだからこれからも頑張ってぽん。じゃあ、シーユーぽん』
そのファヴの言葉を最後に、チャットルームは閉められた。
魔法少女達も強制退場させられた。
戻ったスノーホワイトは、涙を流しており、それを見たラ・ピュセルは、ファヴへの怒りを露にしたが、それ以上に、自分がスノーホワイトを守ってあげなければならないと改めて決心した。
「へぇ、そんな面白い話が聞けたのなら、行けば良かったかね」
「そうデスカね…?」
「で、あんたの要件は何だい?」
とあるバーの中で、椅子に腰かけていたのはチャットに来なかったカラミティ・メアリであった。
そしてその隣には、マジカロイド44が話をしていた。
「宜しければ、私もあなたに協力しようと思うんデスが…」
「こんなのと一緒に組もうって言う物好きは珍しいねぇ」
「いえいえ、強い方と一緒に組んだ方が良いかと思いマシテね」
「…分かったよ。付いてくるなら好きにしな」
メアリの一言で一瞬喜びの顔を見せたマジカロイドだったが、メアリは更に続けた。
「その代わり…一つ条件がある」
「…何デス?」
「一人、殺ってこい…」
というわけでゲス部分が解放されましたね。
ウィザードとビーストは登場しませんでしたが、許してください。
そしてこれからは魔法少女の戦いが…!?