仮面ライダーウィザード ~Magic Girl Showtime~ 作:マルス主任
ウィザードは今日も名深市の各所を巡り、岸辺颯太の行方を追っていた。
颯太が行方不明となってもう1週間も経つ。
なのに、手がかり一つ見つからなかった。
ウィザード自身、何も見つけられない自分に腹が立った。
スノーホワイトも、心を入れ替えて人助けをしているようだが、シスターナナやトップスピードに慰められている姿を何度も見た。
だからこそ、見つからなくてもウィザードはここで諦めるわけにも行かなかった。
自分が諦めたら、誰が希望になるのだ。
仮に、もう颯太がこの世にいなかったとしても、彼の手がかりを見つけてみせる。
ウィザードとしても、晴人としても、彼の心だけでも救ってみせる。そう誓ったのだ。
元々、晴人と颯太が出会ったのは、ファントムに襲われている所を救った時だった。
公園でサッカー練習をしていた颯太に襲いかかったファントムの残党。
残党が生き残っていることは、当時の晴人も知っていたため、騒ぎを聞きつけ直ぐに助けに入れた。
戦いの後、再びサッカーを始めた颯太を昔の自分と重ね合わせた晴人。
サッカー経験もあった為、颯太にサッカーを教えてやろうかと言った所、快く受け入れてくれた。
その後は、友人関係となった二人。時々ではあったが会ってサッカーを教えていた。
サッカーも上手く、将来有望なスポーツマンだと思っていた晴人。
しばらくして魔法少女好きというのを明かされた時は驚いたが、そんなのは個人の趣味であり、他人がどうこう言う必要も無いと思い、純粋に受け入れた。
明かした時の颯太の顔は真っ赤であり、中学生と言えどまだまだ幼さを見せる颯太に、晴人も思わずほっこりしていた。
しかしその時は、この先の未来など誰も予測がつかなかっただろう。
本当に彼が魔法少女となっているなんて、誰も予想がつかなかっただろう。
そして、その後に悲惨な運命を迎えることも。
しかし、こんな所で彼の人生は終わってはならない。
残された希望を信じて、晴人はウィザードとなり、今日も走る…。
「よっ!元気か?」
「仁藤さん!いつもありがとう!」
「おう…ってお前、またプリキュア見てるのか、それって前もやってなかったか?」
「うん。この病室のテレビ、レコーダーまで付いた豪華仕様だからね。存分に使わせてもらうよ!」
仁藤攻介は再び病室に顔を出していた。
病室にいる彼が見ているのは、魔法使いプリキュア。しかも先週放送分である。
普通の病院には、テレビにレコーダーなんて付いておらず、テレビそのものを見るのでさえテレビカードで有料なのがよくあるのだが、ここの病院はテレビ無料どころかレコーダーの使用すら無料であるのだ。
確かに使い勝手は良いが金を掛ける箇所を間違えていないか。と仁藤は思っていた。
「というか、一回見ただけで大体内容分からねえか?」
「いやいや、二回目を見ることによって気付かなかった部分、伏線とか様々な所を発見出来るからね。二回目からが本番だよ」
「お、おう…そうなんだな」
「分かってくれたなら良いんだ。…というかはーちゃんの声って何処かで聞いたことあるような…あっ!シスターナナか。やっと分かった」
「は?シスターナナ?誰だそりゃ」
「あっ…いやいやいやいや!何でもないよ!うん!何でもない!」
「はいはい皆まで言うな。というかお前今日で退院なんだぞ?ギリギリまでプリキュア見るのか?」
「まぁね…後1時間はあるしね。そうだ仁藤さん聞いて!この前たまたま見たアニメのココアってキャラの声が、すごい僕に似てたんだよ!後チノってキャラの声もスイm…知り合いの声に似てて驚いたよ。人間の声ってみんな似たり寄ったりなのかな?」
「たまたまじゃねえか?声優って色んな声出せるんだろ?」
「そうなのかな?声優さんってすごいね」
「そうだな…。後、お前に聞いときたい事がある」
「何?」
「今日退院した後、お前何をするつもり何だ?家に戻らずに行きたい所があるって…」
「それはまだ秘密。夜になったら教えるよ」
「あ~何か一番気になるなそういうの…」
「また迷惑かけるかもだけど、どうしてもやりたい事だから。お願い」
「まぁいいか!どうせだし、とことん付き合ってやるよ!」
夜が訪れた。ウィザードは今日も何の成果も得られなかった。
しかし、ウィザードがふと目をやった先には、何かが大量に発生している。
どうやら廃工場で何かがあったらしく、ウィザードは出来るだけ近づいていった。
近くに着いて、よく見てみると、そこには衝撃の光景が広がっていた。
廃工場に無数に湧いたファントム・グール。
そして、グール軍団に囲まれたスノーホワイトだった。
その中には、ファントム・オーガもいるように見える。
まさか、スノーホワイトを喰って魔力の足しにするつもりなのだろうか。
そんなことはさせない。ラ・ピュセルに続いてスノーホワイトも失いたくない。
ハリケーン…ドラゴン…!
ウィザードはハリケーンドラゴンとなり、空中からグール軍団にウィザーソードガンで強烈な一撃を浴びせた。
次々倒れていくグールであったが、ウィザードの攻撃はオーガに止められた。
「スノーホワイト!大丈夫か!?」
「はい…なんとか…」
「久しぶりだな、指輪の魔法使い。前回の再戦と行こうじゃないか」
「望む所だ。さぁ、ショータイムだ!」
オーガはウィザードとの再戦を宣言した。ウィザードも負けじと戦闘態勢だが、しかし…
「引っ掛かったな…!お前ら、やってしまえ!」
「…何!?」
突如発したオーガの声と同時に、グール軍団、そしてファントム・ウォーリアがスノーホワイトに襲いかかる。
突然の事に驚くスノーホワイトだったが、直ぐ様ブレイラウザーを使ってファントム軍団に立ち向かって行く。
「オーガ!お前ら!」
「へっ、元々お前の注意を引き、奴らにあの魔法少女をぶっ潰して貰う為の陽動だったんだよ!」
「ふざけるな!退け!」
「退けといって退くバカがいるか!」
「くそっ、スノーホワイト!逃げろ!」
「余所見してる場合か!喰らえ!」
ウィザードの少しの隙から攻撃を入れていくオーガ。
しかし、以前の時とは違い、雑な攻撃ではなく、的確に、また強烈な一撃である。
「ぐわぁぁぁ!」
「どうした魔法使い!前のような力はどうした!」
「だったらこの指輪で…!」
「させるかよ!おらっ!」
「ぐわぁぁ!」
ウィザードは指輪を交換しようとしたが、オーガに攻撃され、指輪を落としてしまった。
更にオーガはウィザードに攻撃を仕掛けていく。
「もっと行くぜ!指輪の力は使わせねえよ!」
「なっ、止せ!」
「止めるわけねえだろ!」
オーガの攻撃は隙を与えずウィザードに直撃してしまう。
ついにはウィザードは変身指輪を全て落とし、オーガに奪われてしまった。
「これでお前は力を使えない!」
「お前…!」
ウィザードが苦戦するのと同様に、またスノーホワイトも苦戦を強いられていた。
「魔法少女…倒ス…」
「全く攻撃を受けてない!?」
「ソンナノ、効カナイ…」
ウォーリアは鉄壁の防御力を誇り、攻撃を出すタイミングは早くは無いが、その威力は強烈で、スノーホワイトを一撃で吹き飛ばした。
「きゃああ!」
「弱イ…魔法少女…コンナモノ…」
「スノーホワイト!」
「お前は黙ってろ魔法使い!」
「がぁっ…」
スノーホワイトは持っていたブレイラウザーを落とし、攻撃のせいで起き上がれない。
そんな間にも、ウォーリアはどんどん近づいてくる。
ウィザードもオーガで精一杯であり、スノーホワイトの援護に回るどころか、押され始めていた。
「おいおいィ!どうした魔法使い!指輪が無ければただの雑魚かぁ!?オイ!」
「ぐっ…こいつ、前より強くなってる…」
「そうこうしてる内に、あの魔法少女が死んじまうぞ!」
ウィザードはどうにかしてスノーホワイトの所へ向かいたいが、オーガの攻撃は避けきれず、自分が動くことすら困難となってきた。
そして、ウォーリアはスノーホワイトの目の前にまで迫っていた…
「コレデ…終ワリ…」
「や、やめて…来ないで…死にたくない…死にたくないよぉ…」
「やめろぉ!ぐはっ!」
「やっちまえ!ウォーリアァ!」
「嫌だ…嫌だ…」
「サヨナラ、魔法少女…」
「やめろぉぉぉぉぉぉぉ!」
ウィザードの叫びも虚しく、ウォーリアの鈍器から鈍い一撃が放たれた…。
「ハハハハ!どうだ魔法使い!守ろうとしたものが為す術も無く死ぬのはよぉ!」
オーガの勝ち誇った声が響く。
しかし、ウィザードは困惑した。
何故奪われたはずの指輪が自分の手元にあるのか…。
そして…
「…ん?……ぐおぉ!」
オーガが突然唸り出した。何処からか攻撃を受けたようだ。
そしてオーガを攻撃した武器。それには見覚えがあった。
「調子ぶっこいてんじゃねえよ。俺の存在を完全に忘れてやがったな!」
「…な、何だと…!」
「お前…仁藤か!」
「大分派手にやられてたみたいだな。でも、ピンチはチャンスだろ、晴人!」
そう、オーガを攻撃したのは、仮面ライダービースト、仁藤攻介だった。
「何とか間に合った。やっぱり作戦変更して良かったぜ」
「作戦変更…?というかスノーホワイトは!」
「皆まで言うな。よく見てみろ」
ビーストはスノーホワイトとウォーリアがいた方角を指差す。
砂煙が立ち込めてよく見えないが、スノーホワイトは生きていた。
そして、ウォーリアはこちらに吹き飛ばされてきた。
「あ、あれ…私、生きてる…?」
「遅くなってすまない、スノーホワイト。いや、小雪…」
「…えっ、まさか…」
ウォーリアを吹き飛ばした者の正体は、ウィザード達がずっと探してきた人間…。
「我が名はラ・ピュセル…。スノーホワイトを守るたった一つの剣…!」
露骨な伏線で皆様お気づきだったと思われますが、復活です。
決して皆様を絶望させませんよ。
そして中の人ネタは私の趣味だ。いいだろう?(プロフェッサー風)
次回から逆襲開始です。