仮面ライダーウィザード ~Magic Girl Showtime~   作:マルス主任

15 / 52
ラ・ピュセルVSクラムベリー、開戦です。
結末はいかに…


第13話 信じる道のために

 住宅街から離れ、工場へと戦いの場所へ変わっていた。

ラ・ピュセルが剣を抜く。クラムベリーが拳を握って戦闘態勢を作る。

秋の冷たい夜風が二人の下を通り抜けて、クラムベリーの装飾の花が揺れる。

スノーホワイトを連想させる花飾りだが、スノーホワイトの花飾りよりも鮮やかで、生々しい花。

沈黙がしばらく続いた。ラ・ピュセルもクラムベリーも、構えたまま動かない。

 

 ふと、風が止んだ。

その瞬間、クラムベリーはラ・ピュセルに襲いかかった。

一つ動きが遅れたラ・ピュセルだったが、剣を縮小し、短刀のようにしてクラムベリーの猛攻を防ぐ。

クラムベリーの攻撃は一つ一つが大きい。一発でも当たれば直ぐにクラムベリーのペースに持っていかれる。

短刀で防いでいるため、クラムベリーの手は傷つき、血が滲み出ていた。

ダメージは少しずつ与えているはずなのだが、クラムベリーは痛がるどころか、寧ろ笑みを浮かべている。まるで戦いを楽しんでいるかのように。

このままでは押し切られる。

危機を感じたラ・ピュセルは剣を巨大化させ、クラムベリーを切りつけるように剣を振り回した。

クラムベリーはなんとか避けたものの、右腕を切り裂かれた。

右腕から出血しているにも関わらず、気にもしない様子でラ・ピュセルに話しかける。

 

 

 

「さすがはルーラ達に勝利した腕前ですね」

「あんなものは、勝利とは到底言えないものだ」

「謙遜も卑下も必要ありません。私にはその事実さえあれば十分です。だからこそ私はあなたと戦いたい」

 

 

「そして…完膚なきまでに叩きのめしたい!」

「クラムベリー…お前…!」

 

 

 クラムベリーは他の魔法少女とは違う。というよりもネジが外れているというのか。

こいつを野放しにしてはならない。ラ・ピュセルはそう直感した。

 

 

「だが、ここでやられるわけにはいかない。クラムベリー、お前を止める」

「ふふっ、それでこそです…だからこそ倒しがいがある!」

 

 

 そう言ったクラムベリーは、再びラ・ピュセルに殴りかかった。

ラ・ピュセルは攻撃を避けながら、クラムベリーの顔面に蹴りを入れる。

クラムベリーが怯んだ隙に、ラ・ピュセルはクラムベリーの視界から消えた。

 

 

「ほう…どこから来るか…」

 

 

 クラムベリーは周囲を警戒し始める。

しかし、突如クラムベリーを巨大な剣が襲う。

その剣の正体は、ラ・ピュセルの剣。

ラ・ピュセルは遠くまで離れて、剣を遠距離からクラムベリーに向けて放ったのだ。

突然の襲撃ではあったが、クラムベリーは避けきったが、その直後…

 

 

 

「はぁぁぁぁぁぁ!」

「何…!」

 

 

 上空から、ラ・ピュセルが剣をクラムベリーに向けて突き刺すように飛び降りてきた。

しかし、クラムベリーも避けているだけではない。

剣を避けた後、隙を見せたラ・ピュセルを殴り飛ばした。

クラムベリーの一発を受けたラ・ピュセルは、吹き飛ばされてしまった。

なかなか立ち上がれないラ・ピュセルの前にクラムベリーは容赦なく襲いかかる。

一撃、また一撃とダメージを受けるラ・ピュセル。

クラムベリーはラ・ピュセルを蹴り飛ばした。

 

 

 

「ぐっ…うぅ…」

「さすがの攻撃でした…ですが、ここまでです」

「くそっ…でも…」

 

 

 ラ・ピュセルは首を絞められ、投げ飛ばされる。

 

 

「ぐぁぁぁぁ!」

 

 

 このままでは殺されてしまう。死にたくない。こんなことで死ぬわけにはいかない。

ラ・ピュセルの心に、少しずつ恐怖心が生まれて始めていた。

今すぐにでも逃げたい、怖い、戦いたくない。

だが逃げようにも体が動かない。しかしクラムベリーはどんどん近づいてくる。

ラ・ピュセルはもうどうすれば良いのかすら分からなくなった。

 

 

「さようなら、ラ・ピュセル…」

 

 

 ラ・ピュセルは死を覚悟した。怖かった。今の恐怖が終わるなら死んだっていいとすら思えた。

 

 

 

 

 

《「そうちゃん、これからも宜しくね!」》

 

 

 

 

 ふと、そんな声が聞こえてきた。

そうだ、彼女を守る為に戦うんだ。これ以上こいつの好き勝手にさせはしない。

自分はスノーホワイトの騎士だ。彼女を守る剣だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ラ・ピュセル、岸辺颯太は、スノーホワイトこと姫河小雪の幼なじみだ。

昔から小雪とよく遊んでいた時に、魔法少女のアニメや本をよく見ていた。

そのせいか、中学生になった今でも魔法少女のアニメを借りる為に、隣街のレンタルビデオ店へ行ったりと、彼にとっては魔法少女が大切な存在になっていた。

そんな時だ。魔法少女育成計画を見つけたのは。

すぐにハマった颯太は、毎日欠かさずプレイしていた。

そんな時、ファヴが現れて、自分を魔法少女にした。

最初は戸惑った。自分が性別が変わって女になっているのだ。

勿論思春期男子である颯太は、ラ・ピュセル状態の自分が気になって仕方がなかった。

一度鎧を脱いでラ・ピュセル状態で風呂に入ったこともあった。

なんとか自身の体に慣れてきたものの、他の魔法少女達の体も魅力的で、今でも目を反らしてしまう。

そしてスノーホワイト、小雪が魔法少女として現れた時はとびきり驚いた。

スノーホワイトと共に活動し始めてから、いろいろ楽しいことがあった。悲しいこともあった。でもそんな日々が幸せだった。

それに、晴人との出会いを通して、特別な力を持つことの重大さを知った。

だからこそ、この力を正しく使おうと考えた。

平和や、人々を守る為に。

そして、スノーホワイトを守る為に。

そう誓ったから。彼女の剣となることを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 こんなところで死んでたまるか。やるべきことがまだある。

こんな奴はここで倒さなければいけない。

 

 

 

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

 

 

 ラ・ピュセルは立ち上がり、剣を持ってクラムベリーに走りかかる。

剣をクラムベリーに向けて切りつける。かと思いきや、剣を上空に投げ、クラムベリーの注意を引き付けた。

そしてクラムベリーを蹴り飛ばし、上空の剣を持ってクラムベリーを一気に切り裂いた。

しっかりとクラムベリーの肉が引きちぎれる音を聞いた。

返り血を浴びるラ・ピュセル。完全に倒したと油断していた。

 

 

 

 

 

「ふふっ…これがあなたの力でしたか…ですが、油断しましたね」

「……何?」

 

 

 確かにクラムベリーを切り裂いたはずだ。何故クラムベリーは生きている。

そんな事を思っている間に、首を掴まれ、身動きが取れなくなった。

 

 

「な…んで…確かに…お前を…倒したはずだ…」

「残念でしたね…私の魔法は音を操れる…肉が引きちぎれる音なんていくらでも出せるのですよ」

「く…そ…お前…なんか…を…野放し…にしたら…スノー…ホワイトがぁ…小雪がぁ…」

「なかなか楽しめました…ありがとうございました。ラ・ピュセル」

 

 

 そう言ったクラムベリーは、ラ・ピュセルを思い切り殴り飛ばした…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 気が付くと、颯太は変身が解けていた。

ここがどこか、何でここにいるのか分からない。

今、颯太はどこかの山道を歩いている。

何かをしようとも思わない。逃げようとも思わない。

 

 

 

 

 ふと、後ろから車の音が聞こえてきた。

このままでは轢かれて死んでしまう。

逃げようと思っても体が動こうとしない。

颯太の近くに大型トラックが、もう目前に迫っていた。

どうすることも出来ない。ただ颯太はトラックを見つめることしか出来なかった。

 

 

 

「ごめ…ん…小雪…」

 

 

 

 そう思った瞬間、颯太は自分の体が飛んでいるような感覚を感じた。

いや、本当に飛んでいるのかもしれない。

だが、多分トラックに吹き飛ばされたのだろう。

何か声が聞こえる。それは男の声である。トラックの運転手だろうか。

でも、どこかで聞いたことがある気がしたが、そんなことはもはやどうでも良かった。

 

 

 

もう少し生きたかった。小雪と魔法少女をしたかった。他にも何かあった気がするが、もう何も考えられない。

 

 

 

 

 

 

 

 そんな後悔だけが、颯太の心に錘として残り、颯太の意識は闇に消えていった…




以上、13話でした。
僕はこのまま終わらせるつもりはありません。それだけです。
ヒントはライオンです。
そういえば、ここ最近あいつ出番少ないような…?

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。