仮面ライダーウィザード ~Magic Girl Showtime~ 作:マルス主任
ルーラ一行にキャンディーを奪われ、最下位にはならなかったものの、心に傷が出来たスノーホワイト。
彼女を慰めながら、ラ・ピュセルは自身の行動の甘さを悔やんでいた。
自分の使命は彼女を守り抜くこと。その筈だった。
ピーキーエンジェルズの煽りにまんまと嵌まった自分が情けない。
自分自身もアニメや漫画のように敵と戦いたい。そんな欲に支配された自分が情けない。
とにかく自分が情けなかった。
それにもし、あの時の金色の魔法使いに助けて貰ってなかったら、スノーホワイトどころか、自分の命すら危なかった。
そういえば、あの時の魔法使いはどこにいるのだろう。もう一度会えるならばお礼が言いたい。
同じ魔法使いのようであったし、ウィザードに聞けば分かるだろうか。
名前は確か、《ビースト》と言ったか………
ラ・ピュセルはピーキーエンジェルズを追って、鉄塔から離れた工業地帯へ足を踏み入れていた。
飛べるだけあってピーキーエンジェルズはなかなかに速く、追い付くのに時間が掛かった。
やっと追い付き、双子の姿を捕捉する。
「おい!お前ら一体何のつもりだ!」
「いやぁ、なんとなく察してくれると嬉しいな」
「キャンディーちょうだい!」
「なん…だと…」
ラ・ピュセルは怒りという感情をこれ程までに感じたことは無かった。
同じ魔法少女の中でもキャンディーを奪うという考えを持った者がいるのが信じられなかった。その事への怒り。
しかし、それと同時に思い切り剣を振れるという喜びの感情が渦巻いていた
「お前達の思い通りにはさせないぞ…」
「おお、カッコいいねぇ、でも無駄だよ…たま!」
ミナエルはたまに呼び掛けた。
どこかにたまがいるのか?ラ・ピュセルがそう考えている間に突如地面が崩壊し、大きな穴が出来た。
地面の崩壊により砂ぼこりが大量に立ち込め、ラ・ピュセルは視界を塞がれ、自分が今どこにいるのかすら分からなくなった。
「ごめんね…ラ・ピュセル」
そんなことを呟くたま。
彼女の瞳からは涙が溢れていた。
たまの魔法はを巨大な穴を作る能力である。
そんなたまの魔法でラ・ピュセルのいた場所に穴を作り、ラ・ピュセルを落とすことに成功した。ピーキーエンジェルズ達の作戦は予想以上に上手く行った。
はずだった。
砂ぼこりが消えて、穴が露になる。
しかし、そこにはラ・ピュセルの姿が残っていた。
巨大化させた剣を足場代わりにして、咄嗟にその場を凌いでいた。
「う、嘘ぉ…」
「マジクール…」
「こんな奴らに、やられるわけにはいかない!」
ラ・ピュセルは穴の近くにいたたまを蹴り、ピーキーエンジェルズにとてつもない速さで斬りかかる。
ピーキーエンジェルズはギリギリの所を避け、空中に散開する。
散開したピーキーエンジェルズは、直ぐ様急降下を始め、ラ・ピュセルに襲いかかる。
ラ・ピュセルは剣を巨大化させ、斬りかかる体勢を作った。
ピーキーエンジェルズとラ・ピュセルが激突しようとしたその瞬間…。
「ちょっとちょっとぉー!何やってんすか!」
突如男が乱入してきた。
一般人の乱入にピーキーエンジェルズとラ・ピュセルも思わず攻撃を止めてしまい、ピーキーエンジェルズは勢いを止められず地面に激突した。
「あ、あなた…何をしてるんですか?」
「皆まで言うな、それはそちらの方だろ。魔法少女同士が何で戦ってるんだ!」
「え、えぇと…アハハ」
「ラ・ピュセル…今回のは無かったってことで…」
男を不審がり、帰ろうとするピーキーエンジェルズだったが、男に止められる。
「待ってくれよぉ!せっかく会えたんだ!話ぐらいは聞いてくれよ!」
「うわあ!お姉ちゃん!こいつに掴まれたよ!」
「な、名前も言わずに待ってって言われても困るんだけど!」
「お、おう!すまねえ!俺は仁藤攻介!」
「まず何の用なの!」
仁藤という男に乱入され、もはや戦いどころではない3人。
しかし、そんな所へ…
「見つけたぞ…魔法少女…」
「何だお前!」
「何か怪物がぁ!」
「これが噂に聞くファントムだよお姉ちゃん!」
更なる乱入者、しかもファントムに驚く魔法少女。
しかし、この男は違った。
「やっぱり晴人から聞いてた通り、ファントム共が湧いてるじゃねえか」
「…ん?何だ貴様は…」
「仁藤さん…って言ったっけ、今、晴人って…それにファントムのことも知ってるって…」
「皆まで言うな、お前らは逃げろ。こいつは俺の獲物だ」
「じゃ、じゃあ、お言葉に甘えて…」
「ルーラが良く言う戦略的撤退って奴だね。まぁルーラは今日で死ぬわけだけど。たまもほら、急いで」
「う、うん…」
そう言う仁藤に、ピーキーエンジェルズとたまは逃げていった。
しかし、ラ・ピュセルは逃げないでファントムと対峙している。
「おい、お前は逃げないのか。」
先程までとは雰囲気の変わった仁藤に忠告されるが、ラ・ピュセルの意志は変わらない。
以前のファントムとの戦いは、ウィザードに終始助けられながらだった。
だが今回はもう違う。ここで逃げれば騎士の恥だ。
「私も戦う。もう逃げない」
「そうかい。じゃあ頼むぜ」
そう言うと仁藤は右手に付けていた指輪を自分のベルトにかざした。
多少指輪の形状が違うが、仁藤もやはり魔法使いだった。
ドライバー、オン!
仁藤は体を大きく動かしポーズをとる。そして左手の指輪をベルトに装着し、指輪を回して変身する!
「変 身!」
セット、オープン!
L・I・O・N ライオン!
仁藤は魔方陣に包まれ、ライオンをモチーフにした魔法使い、仮面ライダービーストへ変身した!
「俺は仮面ライダービースト…さぁ、ランチタイムだ!」
ビーストは自身の武器、ダイスサーベルを呼び出しファントム・ウォールに突っ込む。
ウォールは名前の通り壁のような装甲を持つファントム。
並大抵の攻撃では破れない。
ビーストの剣撃も、効いてはいるものの、決定的な大ダメージは与えられない。
「くっそ、こいつ硬ぇな…」
「ビースト!私もサポートする!」
「うおっ、サンキュー!」
ラ・ピュセルは剣を鉄塔並のサイズにする。そして巨大化した剣をファントムに直撃させる。
「この攻撃力…ぐわっ!」
「ファントムが怯んだ!チャンスだビースト!」
「おうよ!さっさと行くぜ!」
ビーストは再び右手の指輪を付け替えて、その指輪をベルトに押し込む。
バッファ、ゴー!
ビーストは、バッファローの力を借りて、赤いマントを羽織り、ビースト・バッファマントへ変化した。
そしてダイスサーベルにあるルーレットを動かし、指輪で止める。
ダイスサーベルはルーレットの数字によって威力が変わる。1~6で数字が多い方が威力も大きい。
数字は5。十分必殺を狙える威力だ。ビーストは一気に攻める。
ファイブ!バッファ、セイバーストライク!
そしてラ・ピュセルももう一度剣で相手に斬りかかる。
「これで終わりだ!おりゃぁぁ!」
「はぁぁぁぁぁ!」
ビーストとラ・ピュセルの同時攻撃が炸裂し、ウォールは一瞬にして塵となった。
倒されたウォールは、ビーストのベルト、ビーストドライバーに吸い込まれていった。
「ごっつぉ!」
「ふぅ…何とかなったな。ビースト」
「おう、というか、あの鉄塔の上、何かやってないか?」
ビーストの一言で、ラ・ピュセルは我に帰った。
そうだ、スノーホワイトが危ない。救出に向かわなければ。
「ビースト!すまない!また何処かで会おう!」
そう言うと、ラ・ピュセルは鉄塔へ向かって走り去った。
「お、おう!またな、魔法少女!…あ、名前聞き忘れた」
戦いを終えた仁藤は、のんびり夜の景色を見ながら街を散策していた。
すると前方から、見覚えのあるバイクが一台…そう、ウィザード・操真晴人だ。
「ん?…お前仁藤!」
「おっ、晴人じゃねえか!久しぶりだな!」
「あぁ、来てくれた早々に悪いんだが、ルーラって子の情報知ってるか?」
「ルーラってファントムのことじゃないのか?」
「何でそうなる」
「いや…だって双子の魔法少女が、ルーラは今日で死ぬって言ってたからさ」
「何!?サンキュー仁藤!」
「あ、ちょっと待って!晴人どこ行くんだよぉ!」
晴人は急に焦りだし、急いでバイクに乗って行ってしまった。
「何だかみんな急用が多いなぁ…ま、気にしたら負けか」
「晴人にも会った事だし、しばらくはここのファントム潰しでもするかな」
「それにしてもあの騎士みたいな魔法少女、可愛かったなぁ…」
「きっと普段から、可愛い女の子なんだろうなぁ…」
というわけでちょっとした番外編でした。
次回はいよいよルーラ編ラストです!
今回もご閲覧ありがとうございました!