DRIFTERS-ドリフターズ- 異なる時代の英雄達 作:金色狼
あと、友人に頼まれて、「お前さ、菅野大尉だけじゃ駄目だろ?もう少し人数増やせや。」と、厳しいお言葉を頂いたので、パイロットは二人です。菅野さんともう一人、お楽しみに。かなり有名な方です。
それでは、どうぞ!
※飛龍と多聞さんの口調曖昧
◇菅野 直
「う、ぐ···おぉぉおぁあ!!!」
重くなっている操縦桿を必死に引き、菅野は舗装された道へうまく着陸した。機体がガタガタと音をたて、地面を走っている。菅野はブレーキをかけ徐々に機体を減速させていく。
止まったと感じると菅野はすぐさま風防を開け、外に出た。周りには木々が生い茂り、鳥の鳴き声が平和そうに響いている。菅野の思考が数秒停止し、呆然としていた。しかしすぐに思考は現実に引き戻された。
「んだよ····ここは···飛行場か···?」
人工物は先程の少女が座り込んでいた場所にあった大きな赤レンガの廃屋、それと菅野が不時着したこの舗装された道。だが、これを飛行場と呼んで良いのだろうか。
一切整備されていない滑走路、補給するための弾薬も燃料も、戦闘機、爆撃機も無い。菅野の乗っている紫電改はB-24編隊と戦い弾薬、燃料は無しに近い。補給もせずに島の探索といって離陸し飛行しても、1時間ともたないだろう。
考えた挙げ句、菅野は徒歩で先程の少女がいる場所へ向かった。
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何時間歩いただろうか。行けども行けども景色は変わらず森ばかり。菅野は苛立ちを募らせてきた。
「なんだよ!!行っても行っても森ばっかじゃねぇか!!あァ!?」
叫んでも何も変わらない。木々の揺すりあう音、小鳥達のさえずりが聞こえてくるだけだった。
「あぁ···クッソ···、めんどくせぇな···!」
そう言った直後、遥か彼方から何かの音が聞こえてきた。
「あァ···?今度は何だ?···!!!」
菅野は自分の耳がおかしくなったのではないか、と思った。何故ならば、聞こえるのだ。かすかにだが、発動機の音が。自分の他にもパイロットがいたのだ。
発動機の音はどんどん近づいてくる。それにつれ、音も大きくなりハッキリ聞き取れるようになる所まで近づいてきた。
「この発動機の音ァ·····聞いたことあんなァ·····!!」
菅野はニヤッとしながらその航空機の名前を言った。
「こいつァ······零戦じゃねぇか!!」
零戦。正式名称「零式艦上戦闘機」。太平洋戦争初期、世界最高峰の戦闘機として各国から恐れられていた航空機である。
数々の戦いに参加し大きな戦果を上げ続けた。長大な航続距離、強力な武装、そして零戦最大の特徴は格闘性能だった。短い距離で旋回できて、敵機の背後につくのは簡単だった。
菅野は目標を変え、あの零戦のパイロットに話を聞きに行こうと今来た道を帰っていった···。
◇坂井 三郎
坂井はガダルカナル攻撃に出撃していた。愛機である零戦を駆りF4Fの編隊を攻撃していた。
F4Fを全機撃墜したかを確認した。だが、まだ1機のF4Fが残っていた。発見したF4Fは黒煙を吹きながら飛行していた。
「あれは簡単に落とせそうだな····よし···!」
坂井はそのF4Fに近づき、攻撃しようとした。だが、相手も坂井の接近に気づいたのか坂井機の背後に回ってきた。だが相手は撃ってこなかった。坂井は後ろを振り向き敵機を確認した。なぜ撃ってこないのか坂井はすぐに分かった。機銃が故障しているのだ。故障している状態で機銃を撃てば爆発しかねない。坂井はF4Fの背後を取り返し、格闘戦を始めた。
F4Fは坂井の攻撃で撃墜された。坂井は数時間ガダルカナルの上空を飛行していた。すると遠くに航空機の編隊を発見した。坂井は航空機の編隊に近づいた。
「ワイルドキャットじゃない!これは·····ドーントレス···!?」
次の瞬間、後部銃座の銃弾が雨のように撃たれ始めた
坂井は零戦を巧みに操り銃弾を回避しつつ距離を取るが、雨のように撃たれる銃弾を全て避けきれる筈がない。発動機に被弾し燃料が漏れ始めている。
「おいおい、嘘だろ····?」
命の危険を感じSBDドーントレスから離れ、基地に向かって飛行を開始した。
その途中で目の前に扉が現れた。
「な···今度はなんだ!?」
坂井機は扉に吸い込まれるように消えた···。
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坂井は扉から抜け出したと思うと辺りに風景に目を疑った。
先程までのドーントレス群は見えず、静かな空と海が見えるだけだった。
「どこだ·····ここは······?」
今置かれている状況が把握できず、ただ呆然と周りを見渡していた。
零戦は燃料漏れを起こし、今にも発動機が止まりそうだった。
「なんだ、あれは···島か···?」
島を目の片隅に確認すると機首を島の方へ向け、孤島へ向かっていった。
島が近くなると、赤レンガの廃屋が見えてきた。
「なんだあれは····確か、横須賀や呉にもあれと似たような建物があったな····」
そんなことを思っていると、島の中央に舗装された道が見えてきた。
「あれは···滑走路か!燃料漏れを起こしているからな···不時着するしか、ないか····」
坂井は零戦を降下させ着陸体制に入った。
◇飛龍
「こんな所でうじうじしてても、何も始まらない····。とりあえず、鎮守府···みたいな建物だけど····入ってみよ···」
飛龍は鎮守府と思わしき建物の中に入っていった。中は人の手が行き届いておらず、埃っぽい空気が漂っていて、思わず掃除したくなるほどだった。柱には蜘蛛の巣が張っていて、割れた窓から侵入した蔦が壁一面に張り巡らされていた。
「ゴホッ····なに、これ····」
こんな環境だったら、咳をするのも当然だ。
だが飛龍は、こんな所で立ち止まっている訳にもいかず、先に進んでいった。
「鎮守府なら、提督室があるはず···。あるよね····?」
飛龍は二階に上がり廊下を覗いた。一階と変わらず、埃っぽい。すると、提督室から誰か出てきた。
「誰か出てきた····?」
「···誰だ?」
飛龍はその声に聞き覚えがあった。MI海戦で自分自身に乗っていた提督。
自分が艦娘になっても忘れない、ずっと探し続けていた人。
「多聞丸···!!」
「ん?誰だ···、アンタは。」
飛龍はハッとした。艦艇の姿だったのに、今は女の子の姿になっているんだ。
ちゃんと説明しないと、面倒くさいことになる。
「多聞丸、私はね···航空母艦の···飛龍だよ。」
「飛龍?···あの、空母飛龍か?」
「うんっ!···えっと、久しぶり···」
「あの飛龍が····こんなになるんだなぁ····」
飛龍の探し続けていた人、山口多聞は飛龍を見つめ「···ほぉ」と感嘆の声を上げた。
「赤城、加賀、蒼龍も···飛龍みたいになってるのか?」
「皆そんな感じかな···」
「私達はね、“深海棲艦”っていう敵と戦う為にまた命を授けられたって···感じ。分かってくれた?」
「いまいち分からんが···今度は艦艇ではなく、人間として生まれ変わったって事か···」
「人間として生まれ変わった···のは間違ってないけど···普通の人と比べて力があるってくらいかな?」
「普通の人間の数倍は力が出るわけか···ほぉ···」
「と、まぁ。再開したばかりだが、話は終わりだ。まず、ここについて説明せにゃならん」
「そういえば、ここ鎮守府だよね?資材とかは···」
「俺が来たときは、たんまりあったなぁ···」
「今は?」
飛龍が首をかしげ、問いかけた。
「今も変わらんぞ。」
「やった!補給できるんだ···よかったぁ···」
「補給···か。そういや飛龍よ。どうやって補給するんだ?」
「あ~···教えてなかったね····」
飛龍は艦娘について一から説明を始めた····。
はい、どうでしたでしょうか。
有名なパイロット、坂井 三郎さんです。ちなみに坂井さんが乗っている零戦はニニ型ってことでお願いします。
次回は皆さんお待ちかね、妖怪の登場です!
では、また次回お会いしましょう。