武器を持った奴が相手なら、覇王翔吼拳を使わざるを得ない   作:桜井信親

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最初だけクライマックス


84 絶!!龍虎乱舞

「極限流奥義!」

 

姉さんとの試合は、それはもう白熱した。

過剰とも言えるほどに。

 

「瀑布豪閃ッ」

 

もうお互いしか見えてない。

俺も熱くなってしまい、程々で止めると言う気持ちは吹っ飛んでいた。

 

姉さんの爆斧が鋭く一閃されるのをすり抜けつつ接近。

懐に滑り込むと、振り降ろしを避けるために僅かに身を捩る。

ギリギリのラインを一歩踏み出し、技を始動。

 

「はあっ」

 

まずは左ジャブ。

続けて右ストレート。

足掛け蹴りから身を沈めてのしゃがみアッパー。

折腹中段回し蹴り。

踵落としからアッパー、間接蹴り、左ジャブ、右ストレート。

再び中段回し蹴りから幻影脚に繋ぐ。

 

「幻影脚…はぁぁぁ、てや!」

 

普段は上段回し蹴りでフィニッシュするところを龍翻蹴で引っ掛け、裏拳で追撃。

大きく気を溜めて、鳩尾にボディブロウ気味の龍牙を抉り込んで跳躍フィニッシュ!

 

龍牙を放つ際は、虎の型を為した気を発するくらい本気だった。

 

絶!!龍虎乱舞。

乱舞に幻影脚を取り入れるなど、かなり本気で打ち込むものとなっている。

 

やがて打ち上げられた姉さんが、錐揉み回転しながら地面に落下。

その鈍い着地音で我に返った。

 

「……やっべ」

 

龍虎乱舞を孫策以外に使ったのは初めてだし、使うことになるとも思わなかった。

そこまで本気になるほど姉さんが強く、それこそ孫策並みに強くなっていたと言うことなんだが…。

 

思いの外クリーンヒットしたせいで、その安否が気にかかる。

若干冷や汗をかいていると、姉さんがむくりと上半身を起き上がらせた。

 

安心する反面、マジかと言う思いもある。

まだまだ未熟なのか、あるいは気を纏う外装が予想以上にしっかりしてたのだろうか?

 

「…ははは、流石だな。呂羽」

 

「姉さん!…大丈夫か?」

 

「ふっ…。今回は、ここまでだな」

 

そう言ってバッタリと地面に倒れ伏した。

ね、ねえさぁーーんっ!?

 

 

* * *

 

 

姉さんとの手合せは微妙な空気を残して終わり、俺は本人を除く全員から怒られた。

曰く、やり過ぎだと。

仰る通り、ごもっともです。

 

「ったく、大将まで過熱しちまったら止める奴いねぇだろ?しっかりしてくれよ」

 

だが牛輔にまで苦言を呈されるとは、どうにも釈然としない。

ぐぬぬ。

 

「もう、リョウったら魅せつけてくれるわー」

 

シャオからもやりすぎって注意されたけど、彼女は虎のエフェクトに反応。

孫策だけじゃなかったんだな、そこに食い付くの。

今は亡き孫堅が虎と呼ばれていたことから、娘たちも思うところがあるのだろうか。

 

だが、両手を頬に当ててイヤンイヤンする必要はないと思う。

どうやったらそっち方面に行くんだね。

シャオの思考回路には、時々付いていけないぜ。

 

「呂羽さんって、かなりやばい人だったんだねー」

 

馬岱の感想が酷いが、今は反論できない。

誤解は追々解いて行けるといいな。

 

「あらあら。リョウさんたら、本当に疼かせてくれますわ」

 

紫苑に関しては何も言うまい。

 

 

結局その日、姉さんは完全休養日となった。

笑って許してくれたけど、正直やり過ぎたのは否めない。

済まなかった。

 

 

それから数日後、紫苑と馬岱は定軍山に向けて出立していった。

 

彼女たちを見送った俺たちは、回復した姉さんも交えて稽古を重ねている。

もちろん、周辺へ出張っての慰撫も欠かさない。

 

ついでに、孫呉への定時連絡も忘れないように。

管理は由莉任せだが、ちゃんと俺かシャオの署名は入れてるから。

決して、机に積みっぱにして怒られたりはしてないぞ。

 

 

* * *

 

 

特に何事もなく一週間が経過。

そろそろ交代要員として定軍山に向かう頃合い。

 

伝え聞くところによると、南蛮とは呂布ちんが前面に出て話し合いになりそうとのこと。

なんで呂布ちん?

理由は動物っぽい南蛮の方々と話が通じるから、らしい。

相変わらず虎縞の子たちなのかねぇ。

 

まあ穏便に済むなら、それに越したことはない。

一撃どっかんして恐怖された、とかじゃなくて良かった。

 

あと、月ちゃんから手紙が届いた。

此処には詠っちや華雄と言った旧董卓軍も居るし、心配なんだろう。

 

手紙には皆の無事を祈ることが綴られていた。

ついでに牛輔は元気か、とも。

 

何で牛輔かと思ったが、そう言えば奴は親戚だったなぁ。

あまり気にしてなかったが、髪を下ろして大人しくしてれば結構似てるんだよな。

目元とか、雰囲気が全く違うから中々そうは思えんが。

 

長らく月ちゃんたちの護衛も務めてたし、近しい存在なんだろう。

なんだったら成都に送った方がいいのか?

本人はこっちで楽しそうにしてるけど。

 

「どう思う?」

 

「月なら大丈夫よ。陽…牛輔も、武官だしね」

 

隣で月ちゃんからの手紙を読み、ほっこりしてた詠っちに尋ねてみる。

そしてらそんなご回答。

 

詠っちが言うなら大丈夫なんだろう。

自分も会えないのに牛輔を会わすなんて…などとは思ってはないよな、まさかな。

 

「それより、派兵の準備は大丈夫なの?」

 

「ああ。うちの副長は優秀なんでね」

 

出立は午後に迫っている。

本当は、こんなにゆっくりしてる場合じゃないのかも知れない。

 

でも由莉や白蓮が万端、整えてくれている。

姉さんも一緒だし。

 

ちなみに件の牛輔はお留守番。

一瞬死亡フラグ立ったかな?って思ったけど、留守番だから立ってなかったね。

 

最初はシャオも留守番をと思ったが、めっちゃやる気だったんで言わなかった。

本人は結構身軽だし、山を苦にはしないだろうから別にいいか。

なるべく目を離さないようにしよう。

 

「隊長、そろそろ」

 

おっとお呼びが。

じゃあ行ってくるかね。

 

「気を付けてね」

 

詠っちに見送られて、やって来たのは練兵場。

そこには我が軍の精鋭が。

 

派兵される呂羽隊の将は俺と姉さん、それにシャオに由莉。

白蓮は白馬義従を率いる特殊部隊扱いで、シャオと姉さんはそれぞれ十人程度を引き連れる。

俺は隊長だけど個人参戦に近いので、実質由莉が隊を率いる形に。

 

もう誰も何も言わないけど、軍隊としては歪な形だよね。

 

「よし、みんながんばれ!」

 

「「「応!!」」」

 

いつも通り、短い声かけだけで軍を発す。

皆も慣れたもんだぜ。

 

こうして俺たちは、国境警備駐屯地から定軍山に向けて出立した。

そこで何が待ち受けているのか、あるいはまだ何もないのか。

時期が不明って、怖いよね。

 

 

* * *

 

 

道中何事もなく紫苑たちと合流。

伝令に聞いた通り、これまで特段変わったことはなかったらしい。

 

「では引継を済ませてから、明朝に出立致しますわ」

 

「ああ。もうひと踏ん張り頼む」

 

ちゃちゃっと引継を済ませて、配置につくとしよう。

実際に引継をしてくれるのは由莉だけどな。

いやぁ、頼りになり過ぎて隊長の無能化が著しいぜ。

 

さて、現地を実際に見て思うことはめっちゃ森だなってこと。

 

鬱蒼とした林間に、抜けた先は雑木林。

ちょっとした広場もなくはない。

地形を把握した部隊なら、弓矢で迎撃・威嚇するにはもってこいだろう。

場合によっては籠城すらも出来そうなほどだ。

 

だからこそ騎馬隊の運用は難しいが、上手く考えて配置をしたらとても強固な砦ともなり得る。

攻める側からすると、打って出られたら厳しいだろうしね。

 

そんなことを考えながら、部隊の配置を決めて行った。

 

概ね固まったので披露したところ、由莉から七割前後の箇所に修正が入った。

…ま、そんなもんだろ。

 

 




・絶!!龍虎乱舞
KOFロバのMAX2超必殺技で、KOF2002UMでは絶・龍虎乱舞。
ガード不能だけど出が遅く、見てから回避余裕でした。
フィニッシュ前に幻影脚を盛り込んだりの派手さが大好きです。


シレッと華雄姉さんにオリ技を投入。
牛輔の真名をチラ見せ。

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