武器を持った奴が相手なら、覇王翔吼拳を使わざるを得ない   作:桜井信親

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79 虎殺陣

忘れてたけど、呉へ定時連絡を出した。

出したと言う事実を忘れてたんじゃなくて、出すことを忘れてた。

シャオも、俺も。

 

由莉はちゃんと覚えてたけど、俺やシャオの確認が必要だからね。

勿論怒られたけど、向こうでも孫権辺りが凄く怒ってそうだ。

 

帰るのが怖いっ!

 

 

それはともかく、翌朝俺たちは城の大広間に集まった。

 

益州南部の平定がほぼ終わり、西は五胡も動きも沈静化してきた。

北では東からやって来た俺が色々やらかしたり、涼州から馬超たちが加わった。

 

そんな訳で、主要な武将たちの御披露目をしようってことになったらしいよ。

 

孫呉からの客将たるシャオ、俺、白蓮に由莉。

由莉は副長ながら、色んな意味で表に認知されてきた。

 

そして西涼から落ちてきた馬超、馬岱、あと馬休に馬鉄といった馬一族。

彼女たちは丸ごと蜀に仕官したらしい。

 

そして、蜀軍を構成するメイン武将たち。

劉備ちゃん、関羽、張飛、趙雲、呂布ちん、陳宮、黄忠、孔明ちゃん、鳳統。

それに、見知らぬナイスバディな厳顔と思われる女性と、髪が特徴的な多分魏延。

 

それぞれが自己紹介をして、交流を深めている。

特に人気だったのは、馬超と俺。

……俺ぇ?

 

馬超は錦馬超としてその勇名を轟かせており、槍の名手みたいだし分かる。

それと並んで俺とか、何故かと思ったが何やかんやで知られているらしい。

 

旗折り戦鬼とか気袁斬とか、あと極限戦士とか。

 

……ちょっと、色々と突っ込みたい。

突っ込みたいんだけどっ!

 

シャオのドヤ顔が全てを物語る。

個人的には痛々しいのだが、割と本気で勇名とされてる感じで何も言えない…。

 

まあ、気にしないのを吉としよう。

 

 

「それで、お主が袁家を滅ぼしたと言う旗折り気将か」

 

「違う」

 

見知らぬナイスばでぇな厳顔さんから声を掛けられた。

だが断じて袁家を滅ぼしてなどないし、変な異名も知らない。

 

「あら?噂の様相と、それほど違わないと思うのだけれど」

 

「そんな噂は知らん」

 

続いて話しかけて来たのは、これまたナイスボデェの黄忠さん。

いや、俺が無頓着なのは認めるが、実際に建業では俺の噂なんて聞いたことがない。

せいぜい、孫策に勝った武将と極一部で囁かれてるくらいだ。

 

「まあお主が認めようと認めまいと、風評は変わらぬ故な。おっと、ワシは厳顔。宜しく頼むぞ」

 

「私のことは知ってるわよね?黄忠よ」

 

「…呂羽だ」

 

一応二人とも知ってるが、改めて紹介し合う。

ぼんきゅっぼんに囲まれて、なんとも目のやり場に困るというもの。

 

いやでも、良く考えたらそんな奴ばっかな世界。

ちゃんと服を着てる?時点で、呉の奴らよりもマシであるはず。

よし、ちょっと落ち着いた。

 

「そんな訳で、噂の真贋を確かめてやろう」

 

「そうね。私もこの目で見たことがないから、気になるわ」

 

結局そこに行きつくんだな。

最初からそう言ってくれた方が楽なんだが。

まあいい。

 

「じゃあ、中庭に出ようか」

 

「リョウ!あ、試合するの?そんな、おばさんたち何かに負けちゃダメよ!」

 

ひょいっと顔を覗かせたシャオが、とんでもない爆弾を投下して行きました。

 

「…あらあら」

 

「…ふむ。あのお転婆な嬢ちゃんがお主の上役か」

 

黄忠は笑顔だし、厳顔も口調は苦労を労うかのようだが、プレッシャーと目が…。

シャオよ、妙齢の女性にそれは禁句やでぇ。

言ったの俺じゃないけど、睨まれるのは俺。

なんでやねーん。

 

「では掛かって来るがいい。我が豪天砲で粉砕してくれよう」

 

ええい、どうとでもなれ。

全力全壊だ!

 

 

* * *

 

 

「おりゃあっ」

 

「はあっ」

 

全力全壊とは、するつもりだったのかされる見通しなのか。

パワーは既知だが、存外スピードもある。

簡単に言うと、強いね!

 

今まであまり居なかったタイプだ。

そもそもあんな武器、パイルバンカーっての?あるのか。

いくら火薬を発明したのが大陸だからってねぇ。

 

「そおいっ」

 

「うお!」

 

ズガァーンッと弾装が射出される。

もう攻城兵器だろ、それ。

まともに食らったら内臓破裂も良いとこだ。

硬気で固めたら耐えきる自信はあるが、敢えて頑張る必要性は見出せない。

 

呂布ちん以来の大苦戦。

これは不味い。

 

別に常勝無敗を突き進まねばならない訳でもないが、シャオたちの手前負ける訳にはいかん。

同じ理由で弾切れを待つと言う戦法も使えない。

消極的に勝つのは極限流に非ず!

 

「そらそら、どうした!逃げ回るばかりでは勝てんぞっ」

 

「飛燕疾風脚!」

 

「ぬぅ!」

 

ガスッと当てに行く疾風脚だが、容易にガードされる。

織り込み済みのそこを支点に、回し蹴りで弾みをつけつつ後方大ジャンプ。

 

着地後すぐさま…

 

「覇王…」

 

「せえぇーい!!」

 

あべしっ

 

間を空けてから使わざるを得ない、と思ったが間に合わなかった。

バチコーンと弾かれ宙を舞う。

 

「虎煌拳!」

 

吹っ飛ばされる最中、体勢を立て直して牽制がてら空中から気弾を放ってクルンと着地。

いやー、火力と速度の両立って酷くね?

 

『お前が言うな』

 

脳裏に白蓮の言葉が蘇る。

いや、俺の力は死人が出る程じゃ……。

 

うん?死ねる程の火力、かぁ。

 

確実に刺さるなら、天地覇煌拳をカウンターで放てば良い。

でも決まらなければ、うわらばっと死亡確定。

 

ならば、もっとカウンターに特化した技で迎撃すれば、あるいは捌けるかも。

よし、試してみる価値はあるな。

 

「なかなかやるではないか。だが、大技を決める時間はやらんぞ!」

 

覇王翔吼拳の構えで大技って分かるのか。

だが、大技にも色々あるのだよ。

それを今から見せてやろう!

 

「ちぇあぁーーっ」

 

ふぅー……今!

 

「りゃあっ」

 

大きく構えを取り、振り被られた厳顔の得物の軌道を見極める。

左手首に気を集中させ、ギリギリ触れるかどうかの瞬間。

弾薬が放たれる直前。

ほぼ同時に一歩踏み込むことで、放射される線上を避けつつ彼女の後背を取り…。

そのまま、気を込めた手刀を後頭部に思い切り叩きつけるッ!

 

虎殺陣。

 

……決まった。

豪天砲の轟音と、手刀を叩きつけたズギョンって衝撃音が重なって絶妙なハーモニー。

この一瞬の攻防を、どれだけの観客が見極められたものか。

なんて思わず自画自賛。

 

俺は構えを取ったまま瞑目して残心。

 

足元には一撃で沈んだ厳顔。

彼女の気を探ると、乱れていたがやがて終息していった。

ふむ、気絶したか。

 

「良い勝負だった。押忍!」

 

 

* * *

 

 

厳顔を退けた後は、ちょっと色々あった。

彼女が強すぎて手加減出来ず、思い切り沈めてしまったのが裏目に?

 

魏延が半狂乱になって打ち掛かってきたのを極限虎咆で返り討ちにしたり。

馬超や趙雲が槍を突き出してきたのを、それぞれ暫烈拳と幻影脚で迎撃したり。

ちんきゅうきっくを無頼岩で撃ち落としたりな。

 

俺も少し休憩したかったのだが、許されずに宴は続いた。

 

ハッハー、偶には極限状態に陥るのも悪くないな!

これがナチュラルハイって奴だろうか。

 

良く分からないテンションのままに、以前買っておいた鼻高赤面を手に取った。

 

ミスター・カラテに俺はなる!

 

とうっ

 

 




・虎殺陣
KOFタクマと二代目カラテが使用する超必殺当身技。
構え中は無敵とか万能当身投げとして有名で、ダメージも中々。
MAX2なのでホイホイ使えないのが残念でした。


ところで、馬超と魏延も結構胸ありますよね。
馬超はともかく、魏延にそんなイメージが無いのは何故でしょう。

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