武器を持った奴が相手なら、覇王翔吼拳を使わざるを得ない   作:桜井信親

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第五十話記念作品


50 超覇王至高拳

戦場にやって来た。

 

正面にあるのは袁紹軍の本隊。

右隣に公孫賛軍。

その反対側に袁紹軍の分隊と、袁術からの援軍が布陣している。

袁術軍の中には孫策隊も居るみたいだ。

 

「おぉ、壮観やなぁ」

 

「いっぱいなの~!」

 

「真桜、沙和!ここは戦場だぞ、もっと緊張感を持たないか!」

 

相変わらず三人は仲が良い。

どこか緊張感のない李典と于禁も、それを怒る凪も含めてワンセットと言った感じだ。

 

さて、俺たちが受け持つのは袁紹軍の正面右半分。

その隣の公孫賛軍もだな。

残りは張遼や夏候惇が攻める布陣だ。

 

曹操様と夏侯淵は本隊として俺たちの後ろに詰める。

許緒や典韋などもそこに居る筈。

 

「とは言え、開幕前に舌戦か……」

 

「華琳様と袁紹殿は、何やら因縁があるようですので」

 

俺たちも向こうも布陣は終わって久しい。

だが先程から曹操様が前線に来て、袁紹と舌戦をしているらしいのだ。

 

本当はそんなの無視して開幕ぶっぱと行きたかったが、流石に自重した。

やらない方がいいと、北郷君から忠告されたしな。

 

それと俺も前線に居る以上、ある程度話の中身は聞こえて来るんだが…。

大半が袁紹の高笑いと言う時点でお察し。

あまり意味はないだろうと思い、軽く聞き流している。

 

 

「おっと、やっと終わったか」

 

暫くすると話が終わったようで、それぞれ大将が本陣に戻って行く。

いや、袁紹は周りに引きずられる形で戻って行った。

 

相変わらずですな。

 

さて、今日で袁紹の牙門旗も見納めか。

 

チラリと本陣を見る。

曹操様が夏侯淵を脇に従え、仁王立ちしている。

 

「皆、敵は数が頼りの烏合の衆よ。各々、武威を示しなさい!」

 

「「「応ッッ!!」」」

 

曹操様の激に応え、曹操軍が動き出す。

夏候惇や張遼は我先にと動き出しているが、俺たちも負けてはいられない。

 

 

「よし、夏候惇や張遼に負けずに進むぞ!」

 

「おう!」

 

「はいなの!」

 

「はい!」

 

三人に声をかけて、俺も始める。

 

「じゃあ副長」

 

「はい、ご武運を」

 

何時も通り、呂羽隊を韓忠に預けて一人先行する。

小言や溜息もなく送り出されるのは、何だか新鮮だ。

華雄姉さんも居ないし。

 

ちょっと物足りなく思うのは、多分贅沢って奴なんだろうなぁ。

 

さて、ダッシュはダッシュでいいのだが。

夏候惇と張遼が先を争うように、袁紹軍と孫策隊に突入している。

一番槍を得るのは、もう無理だ。

 

李典と凪も袁紹軍に接敵してるし、于禁も公孫賛軍と交戦し始めた。

 

揺れる旗は目の前。

ならば、やることは一つだ。

 

旗を持った袁紹軍が相手なら、覇王至高拳で粉砕せざるを得ない。

 

今回は袁紹軍も全力のようで、旗も大きなものが複数ある。

全て、粉砕してくれよう。

 

「ぬぅぅぁぁーーーーっっ」

 

気力充填!

今の俺なら出来るっ。

 

超ッ

 

覇王至高拳!!

 

「せりゃっ、せりゃっ、せりゃぁぁぁーーーっっ!!」

 

両手眼前交差からの腰溜めで一瞬停止。

そこから一気に三連発。

 

通常の覇王至高拳よりも多めに気を込めた。

濃縮激発バージョンで、狙うは旗柱の中段あたり。

 

「んなっ?」

 

遠くで誰かの声が聞こえた気がした。

 

気にすることなく、砲台としての役割を遂行する。

いやまあ、この役割は今思いついただけで、尚且つ自称なんだけど。

 

ともあれ袁紹軍本隊に乱立していた旗は、見渡す限り消失。

スッキリして見栄えも良くなったんじゃないか?

はっはっは!

 

よし、続けて行くぜ!

気を溜めようとしたところ

 

「また貴様かぁぁぁーーーーぶべっ!」

 

ブォンっと大鉈を振り回す髭が現れたが、金色だったので容赦なく蹴り倒す。

飛燕足刀は避けつつ攻撃出来て便利だな。

 

おっと、他の金色が来る前に掃除をしてしまおう。

 

足に気を溜め爆発させるように放出し、大きく跳躍。

その際、あらかじめ両腕に気力充足させておく。

 

「空中、覇王翔吼拳ッ!」

 

滞空したまま覇王翔吼拳で、残りの袁紹軍旗を撃ち抜く。

まだ、空中で覇王至高拳は無理だな。

どうも勝手が違う。

覇王翔吼拳で十分なんだがそれはそれ、修行は続けねば。

 

いや、それよりもだ。

超覇王至高拳に空中覇王翔吼拳。

これらを放って尚、意気軒昂。

 

仮想気力ゲージにはまだ余裕がある。

これぞ、修行の成果だな。

 

よーし、まだまだ行くぞぉー!

 

「飛燕疾風脚!」

 

 

* * *

 

 

戦況は乱戦。

俺はひとまず呂羽隊と合流し、主に金色を粉砕し続けている。

 

袁紹軍は、金色で目立つから旗が無くても余裕だな。

一方で公孫賛軍も、精鋭は白馬だから良く分かる。

袁術軍は金色モドキで、孫策隊は何となく南国っぽい気配があったりなかったり。

 

乱戦は乱戦だが、曹操軍に不利な気配はない。

金色はそこかしこで砕かれてるし、白馬は追い散らされてる有様。

誰に追い散らされてるんだろ。

 

ちょっと様子を見に行こうか、なっとぉ!?

 

ビュォオンッなんて凄い風切り音を鳴らしながら刃が通り過ぎた。

 

「ちっ、やっぱり避けるのね」

 

そこには、どこかで見たようなお姉さんが立っていた。

いつの間にか、金色は金色モドキへと変化していたらしい。

俺はそんな左方向へは動いてないから、金色モドキが動いてきたんだろう。

 

「ちょっと、聞いてるの?」

 

聞いてます。

 

「孫策か、久しぶりだな」

 

「ええ、お久しぶりね」

 

そう言うとジッと見てくる孫策さん。

おお、ないすばでぇ。

 

「何か用か?」

 

「……そうね。ねえあなた、私に仕えない?」

 

な、なんだってー!?

まさかのナンパ?

違うか。

 

しかし随分と唐突だな。

普通にリベンジかけてくるもんだと思ってたが。

とは言え、如何ともし難い。

 

「仮にも、曹操軍に所属する奴に言うことじゃないな」

 

行ってみたいし勧誘は嬉しいけど、ここで頷いたら曹操様にちょんぱされてしまう。

何を?

首だったらマシなんじゃないかな。

 

「そう、残念ね」

 

「ああ、残念だ」

 

この戦いが終わったら、とか言いたい。

でも、どこでだれが聞いてるか解らないから言えない。

 

壁に耳あり障子にメアリー。

ここ戦場だから壁なんてないし、日本じゃないから障子もないけどね!

 

ともかく、残念ながら断るしかなかった。

そうすると、彼女と俺はただの敵味方でしかない。

 

「無理矢理にでも、連れて行こうかしら?」

 

ググッと力を込める孫策さん。

まあ、こうなるよね。

俺としても手合せは願ってもない。

 

が、ここが戦場であることを忘れてはならない。

 

「韓忠。隊を率いて張遼のとこへ!」

 

孫策さんと戦うと、色んなものが巻き添えになっちまう。

ちょっと先で、張遼が金色モドキを粉砕してるのが見えた。

呂羽隊の安全策も兼ねて、ここらで点数稼ぎでもしておこう。

 

「へえ、いい覚悟ね」

 

どう致しまして。

ただ、言いながらペロリと舌なめずりするのは止めて頂きたい。

 

「さあ、かかって来い!」

 

「言われずとも!」

 

 

 




・超覇王至高拳
使用者はタクマ、と言うかMr.カラテ。
覇王至高拳を三連続で撃ち出す大技。
元々はMAX版龍虎乱舞の締めで使われていました。

もう50話ですって!
本当は48話で放浪編(仮)を終えたかったのですが、間に合いませんでした。
放浪編が終わる辺りで、年内の更新を締められればいいなと思っています。

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