武器を持った奴が相手なら、覇王翔吼拳を使わざるを得ない   作:桜井信親

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43 極限流連極拳

夏侯淵に連行され、曹操様の客将となった俺及び呂羽隊。

 

自己紹介は軽く終わらせて、力を見る為と称した試合を行った。

相手は夏候惇と夏侯淵、久しぶりに元気な姿を確認出来て良かった張遼。

あと珍しく許緒と典韋のセットに北郷君。

 

「ちょ、なんで俺まで!?」

 

「おお北郷君、死んでしまうとは情けない」

 

「死んでないですよ!ふぉーっ!?呂羽さんっ、腕、怖っ!」

 

夏侯姉妹はちょっと怖かったが、ハイテンションの張遼も怖かった。

どちらも覇王翔吼拳を使わずに済ませたけどな。

そのせいか、曹操様と夏侯淵さんの視線が超怖い。

 

次に、許緒と典韋。

彼女たちは大振り大攻撃がメイン。

避けるのは容易いが、敢えて受けて対応してみせた。

 

典韋がお仕置きです!と言ってたのに少し萌えたから。

今は反省している。

 

まあ素で受け止めるのは流石にキツイから、気で強化した腕で払いをしたんだけど。

人類ポカン計画の片鱗を見た気がした。

 

そして最後に北郷君。

何故そうなったのかは解らない。

恐らく、曹操様の差し金であろうとは思うのだが。

 

よって、手加減しながらも大いに攻め込んでやった。

最後に一発だけ裏拳を当てた。

案ずるな、みねうちじゃ。

 

「裏拳って、峰打ちなのか……?」

 

そう言ってガクリと項垂れる北郷君。

いや、逃げと捌きの技術は中々だったと思うよ。

あと峰打ちじゃなくてみねうちだから。

 

ガックリした北郷君を、早速典韋や李典、于禁らが寄って集って介抱している。

うむ、眼福なり。

 

 

* * *

 

 

さて、ある意味前菜は終わり。

ここからがメインディッシュ。

 

「リョウ殿。お久しぶりです」

 

「やあ凪、久しぶりだな」

 

「華琳様より聞いています。ご指導頂けると…」

 

「うん、まあな。前の様に、共に研鑽して行こうぜ!」

 

そう言うと、満足そうな笑みを見せてくれた。

が、直後少し険しい表情になる。

 

「時に、そちらの方は?」

 

視線の先には韓忠の姿が。

紹介しておかないとな。

 

「俺が預かる小隊で副長をして貰ってるんだ」

 

「韓忠と申します。将軍には及びませんが、隊長の下で研鑽を重ねております」

 

「そうか。知ってると思うが私は楽進と言う。宜しく頼む」

 

「宜しくお願い致します」

 

うん、些か社交辞令っぽいが普通の挨拶だ。

凪の表情が険しいものであることを除けばな。

 

何となく、両者の間でピリピリとしたものが漂っている気がする。

 

ちなみに韓忠の表情はいつも通り、冷静なまま。

いや、若干恍惚としているか?

 

「とりあえず、韓忠はじめ呂羽隊の皆も一緒に修行を…」

 

「リョウ殿は、彼らを指導しているのですか?」

 

「はい。特に私は、隊長に最も深く師事しています」

 

ともかく修行について話を進めようとしたら、凪に遮られ質問された。

それに答えようとすると、今度は韓忠に遮られる。

 

「師事、だと?」

 

「ええ。私は隊長の一番弟子ですから」

 

「……ッ」

 

あ、何かを踏み抜いたような幻聴。

なんだろう。

二人の間で火花が散っているような気がする。

この火花が、俺に飛び火するのは時間の問題だろう。

 

「リョウ殿……。弟子は、取らないと、仰ったでは、ありませんか……?」

 

ほらね?

いやいや、ドヤァってしてる場合じゃない。

 

ほら、凪が冷たい目でジトーッみてるじゃないか。

何とか取り成さないと!

 

「さ、さあ凪!せっかくだし、久しぶりに手合せといかないかっ?」

 

俺、脳筋。

何がせっかくなんだ。

全く取り成しになってねぇ。

 

「……そうですね。リョウ殿、久しぶりに手合せ願います」

 

でも良かった、何とかなりそう。

 

韓忠は若干不満そうだが、凪との間に何かあったのか?

まあ、どうせ詳しくは話してくれないんだろうが。

とりあえず、凪との試合に全力を傾けよう!

 

 

「せやぁっ」

 

「はぁっ!」

 

回し蹴りが交差し、互いに呼吸を計りながらの打ち合い。

 

凪、フルスロットル。

最初からクライマックス。

何かそんな感じ。

 

「はぁぁぁ、てやァッ!」

 

「見切ったわっ」

 

そんなところに、溜めが極短くなり進化した気弾が放たれる。

これを無頼岩で弾き返す。

 

「なっ?」

 

「甘い!」

 

まさか弾き返されるとは思っても見なかったのか、一瞬動きが固まった。

そこに、連撃を重ねる。

 

極限流連極拳。

 

一歩踏み込みつつ、振り降ろしからの中段打撃。

頭部への左肘打ちからボディーブロー、右アッパーへと繋ぐ。

 

アッパーで浮いたところに龍斬翔で追撃。

吹っ飛ぶ凪。

虎咆でも良かったが、何となく蹴り上げで締めた。

 

ふーぅ、噛み合う相手ってのは良いもんだ。

実力もかなり高いしな。

 

「くぅ…流石です」

 

お、立ち上がって来たか。

綺麗に入ったと思ったがな、やるじゃないか。

 

「凪だって随分強くなってるじゃないか。驚いたぞ」

 

これは本心。

以前一緒に修行してた時、反董卓連合の時、そして今回。

どんどん研ぎ澄まされている。

 

「それでもリョウ殿には届きません。……やはり、」

 

おっと!

その先を言わせてはならない。

 

「凪!」

 

「私を弟s…はい、なんでしょうか」

 

慌てて遮る。

曹操様から、凪の言うことは必ず聞けって言われてるからな。

いきなり破るなんてマネは出来ない。

 

「凪は俺にとって特別な存在だ。だから、隣に立っていて欲しい」

 

弟子は鍛えるもんだが、鎬を削るライバルが欲しいんだ。

そういう意味で、凪は逸材であり特別。

弟子になりたいだなんて言わないでくれ!

 

当初は俺も修行中だからって意味だったが、韓忠たちの存在がもう否定出来ない。

せめて凪には、とな。

 

「………ッ」

 

返事が無いと思って見てみると、凪が真っ赤に。

そして観戦してた呂羽隊、特に韓忠から殺気が。

うぇい?

 

「あわわ、リョウ殿…の、とくべつな……と、隣に……ッ」

 

うん、落ち着こうか。

そんな変なこと言ったかな?

 

凪と韓忠たちの様子を見れば一目瞭然。

言ったんだろうな、変なこと。

 

「隊長。いちど、しんでみてはいかがでしょう」

 

夏侯淵様もお喜びになりますよ、なんて。

韓忠が凄い形相で酷いことを言ってくるが、まあ割といつものことだ。

そっちは置いといて、冷静に省みる。

 

 

”凪は俺にとって(ライバル的な意味で)特別な存在”

”(共に修行して)隣に立っていて欲しい”

 

うん、別に間違ってないよな。

一体なにが……。

 

……うん?

ふと、視点が間違ってるのかも知れない、と言うことが頭を過る。

 

今の俺は格闘バカの状態とも言える。

ちょっと視点を変えてみよう。

 

”凪は俺にとって特別な存在”

”隣に立っていて欲しい”

 

……格闘や修行を置いておいて、改めて省みるとあら不思議。

プロポーズのような言葉に見えなくもない。

 

これは、やっちまったか!?

 

しかし安易に撤回すると大惨事になるだろう。

俺の首が飛ぶ的な意味で。

 

よし、今は黙っておこう。

あとで北郷君に相談して、善後策を講じることに決めた。

 

差し当たり、凪を正気に戻して状況を確認。

韓忠も含めたところで、必要と思われるフォローをしておくか。

 

 

* * *

 

 

「と言う訳なんだよ北郷君。何とかしてくれ」

 

「無茶振りだ!?」

 

状況を説明し、解決策を北郷君にお願いする。

普通の奴なら俺も無茶振りだとは思うが、そういうの慣れてんだろ?

魏ルートだとそうでもないのか?

 

でも他に縋る人が居ないんだ、頼む!

 

 




何とか間に合いました。
一度リズムが崩れると、エターなるフラグが建ってしまいますからね。

しかし、あと10話程度で完結かー……。
無理かもしれません。

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