武器を持った奴が相手なら、覇王翔吼拳を使わざるを得ない   作:桜井信親

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37 三戦の型

劉備軍にもまあまあ、溶け込めてきたかなーって思えて来た頃。

風の噂で、袁術が戦支度をしているとか何とか。

 

そんな訳で。

姉さん、軍議です。

 

 

「南から大軍で攻撃されると、ちょっと厳しいです」

 

「ですから、今ある兵力の七割を袁術さんに当てようと思います」

 

「この戦いは、孫策さんの動きに関係がありそうですね」

 

「上手くすれば、独立した孫策さんと挟み撃ちが出来ると思います」

 

おお、軍師たちが凄い。

普段はあわわはわわ言ってる二人だが、凄く頼もしい。

 

劉備軍の面子からも、よくよく信頼されているのが伝わってくる。

とても良い雰囲気だ。

 

さて、問題は俺がどう動くかだが。

袁術を迎え撃つ場合、孫策もいる可能性が高い。

 

だったらまた戦えるかな?

それとも、軍師たちが言うように孫策の秘めた想いを汲む方向に動くべきか?

 

しかし全て都合よく動くとも限らんしな。

ううむ。

 

「……そこで、呂羽さんには北への備えをお願いします」

 

むぅ?

いつの間にか話が進んでいたようだ。

いかんいかん、集中せねば。

 

「北への備え?」

 

「はい。袁紹さんが動かないとも限らないので…」

 

ああ確かに。

でも俺が居ると抑止力になるのか?

逆に激昂しそうな気もするが。

 

「華雄さんを主将に、呂羽さんを遊撃として配置します。これで……」

 

公孫賛のとこで、袁紹をやっつけた実績が評価されたようだ。

でも袁紹が来たら、連合組んでる公孫賛も来る可能性あるよな。

その時はどうすっかねぇ…。

 

まあ、その時はその時。

上手く動いて確保に走ると言う道もあるな。

 

「…じゃあ皆、力を合わせて頑張ろうっ!」

 

「「「応!(なのだ!)」」」

 

「「「はい!(なのです!)」」」

 

劉備ちゃんの激に応える陣営の皆。

コクリと頷く呂布ちんと姉さん。

よし、俺も気合を入れて当たるとしよう。

 

ところで思うんだけどさ。

呂布ちんが行くなら、いくら孫策さんが居ても袁術に勝ち目なんて全くないんじゃなかろうか。

 

思い切り本陣に奇襲なりで蹴散らしたら、すぐに戻って来れるんじゃね?

月ちゃんたちもいることだし、そうなることを願っておこう。

 

 

* * *

 

 

劉備軍の本隊が出撃してから暫し後。

 

「報告します。劉備様たちは袁術軍の本陣へ奇襲を仕掛け、勝利した由!」

 

ちょくちょく伝令の遣り取りをしていると、劉備ちゃんたちが辛くも勝利したという報告が来た。

連合戦の時もそうだったが、いくら呂布ちんが天下無双でも簡単にはいかんのだな。

兵力の差ってのは、やっぱ大きいものらしい。

 

袁術軍を追い返した劉備軍だが、少なくない被害が出た。

そして、また攻めてくるかも知れないため暫く向こうに逗留するそうだ。

 

…これ、何だかフラグっぽいよな。

 

「うむ、流石は呂布。…よし、呂羽。手合せするぞ!」

 

「いや、事務仕事あるから……。韓忠でも相手にしててよ」

 

「そうか、なら仕方ないな。では牛輔、韓忠。行くぞ!」

 

「っしゃあ!」

 

「……承知しました」

 

客将なのに事務仕事とはこれいかに。

本当は姉さんの仕事なんだけど、洛陽以来の流れでついね。

はわわ軍師も何も言わないし、大丈夫なんだろう。

 

牛輔は華雄隊の副長に抜擢された。

そして何時の間にやら離されていた、韓忠との差を縮めるべく熱く燃えている。

 

巴里は燃えているか?

ガッツリ燃えてるぜ!

 

そんな会話があったりなかったり。

 

韓忠も韓忠で、最近は極限流をベースに色んな技の開発に余念がない。

昨日の手合せでは、前方へ跳ねて右足を振り上げてからの下降中に左足を振り下ろす、竜巻蹴りと言う技を披露された。

 

ちょっとビックリして一瞬手が止まってしまった。

慌てて三戦の型でガードしたから難を逃れたが……。

少し危なかった。

 

あれってもしかしてトルネード……?

……いや。

うん、深くは考えまい。

 

前までは事務仕事を優先してくれてたのに、最近は手合せを優先するようになってる。

謎の一番弟子宣言以来、何となく姉さんと仲良くなってるんだよなー。

まあ強くなる分には文句などない。

 

おっといかん、思考が格闘側へシフトしかけてる。

ちゃっちゃと事務仕事終わらせて、俺も修行に入ろう。

 

「ご注進!」

 

姉さんたちと入れ違いに、駆け込んできたのは伝令の兵士。

コイツは確か、北方担当だったような。

 

「北より袁紹軍、南下の動きあり!!」

 

わぁ、ホントに来ちゃったよ。

 

「分かった。すぐに華雄将軍と、詠たちを呼んできてくれ」

 

「御意!」

 

袁紹ってば、俺が此処に居るって知らないのか?

それとも知ってて来るのか?

 

どっちにしても来る可能性があるなら仕方がない。

俺に出来るのは追い返すことのみだが……。

 

とりあえず、旗でも折りに行くか?

 

「リョウっ!袁紹が来るって!?」

 

あれこれ考えていると、慌てた様子で詠っちがやって来た。

月ちゃんと姉さんたちも。

 

「ああ。それで、対応を協議しようと思ってね」

 

「…そうね、とりあえず桃香たちに知らせないと」

 

おっと、そうだった。

そっちが先だったな。

 

「じゃあ、姉さんの名前で出しとこう」

 

「ええ。後は、とりあえず牽制に出るべきよね」

 

「出撃か!」

 

出ると聞いて、姉さんがアップを始めました。

 

洛陽の時から、何一つ変わらないその姿勢が最早愛おしい。

華雄隊の皆が愛する姿が此処にある。

 

困ることもあるけれど、姉さんはもうこれでいいと思うんだ。

あの時よりも、ずっと強くなっているのだし。

 

「とりあえず、呂羽隊と華雄隊で出撃しよう」

 

「そうね。他の予備隊は準備を整えて、待機させておきましょう」

 

いやぁ、詠っちは頼りになるな。

既に一線を退いたとは言え、伊達に一軍の軍師を務めてはいない。

 

なんだったらもう、軍師に復帰しても良いんじゃないか?

いや、それは俺が言うことじゃないか。

 

「よし、じゃあ準備を進めよう。姉さん、頼んだぜ」

 

「うむ、任せておけ!」

 

軍備に関しては、俺にとって姉さん程頼りになる人は居ない。

思えば長い付き合いになったものだ。

 

さて、俺も準備をしよう。

……っと!

 

「あー、詠殿。すまないが事務仕事を手伝ってくれないか?」

 

こっちが終わらないと準備に入れない。

なんてこったい。

 

「…はあ。いいわ、ボクがやっとく。リョウは華雄のとこに行きなさい」

 

「詠ちゃん、わたしも手伝うよ!リョウさん、華雄のことお願いしますね」

 

おお、詠っちどころか月ちゃんまで。

ええ子たちや。

 

「任された。じゃあ、後は頼む!」

 

軍事に関するとこだけ急ぎで書簡を作り、俺は姉さんたちの後を追った。

さあ、袁紹。

再びの悪夢を見せてやろう。

 

 

 




・三戦の型
「さんちんのかた」と読むらしいです。
使用者はタクマ。
KOF99ではゲージ溜め、同2002UMでは攻撃を防御する技となっています。
今回は2002UMバージョンでお送りしました。

尚、本作にキングやユリなど龍虎キャラの登場はありません。

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