武器を持った奴が相手なら、覇王翔吼拳を使わざるを得ない   作:桜井信親

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俗に言う日常回


36 猛虎無頼岩

「ハイハイハイ、ハイーーッ!!」

 

「ちぇすとーっ!」

 

趙雲の華麗で俊敏な槍捌きを躱しつつ、隙を見て飛び蹴りを放つ。

 

 

謁見と簡単な自己紹介が終わるや、趙雲に練兵場へ誘われた。

そして早速とばかりに試合をとなったのだが……。

 

趙雲の後ろに関羽と張飛、そして華雄姉さんと呂布ちんが控えてる。

対戦待ちの方々である。

 

多くね?

特に、姉さんはそこに居るべきじゃなくね?

 

何でこんなことになったかと言うと、主に関羽さんと趙雲のせいだ。

 

謁見後、激おこ状態の関羽さんから笑顔で組手を申し込まれた。

そこに、趙雲がまずは自分だと主張。

 

関羽と趙雲の睨み合いになりかけたが、ふっと視線を外した趙雲。

そして、交流がてら俺との対戦大会をと提案したのだ。

 

興味を持ったらしい、劉備軍の皆様が賛同した結果こうなった。

 

ちなみに呂布ちんは、最初は全く興味なさそうだった。

が、俺に勝ったら特別褒賞という悪魔の囁きから参戦を表明。

目を爛々と輝かせて、今の待機中と相成った訳だ。

 

いや、対戦は望むところなんだけどな。

俺だけ総当り戦ってのはどうかと思うんだ。

何も一日で全てやらんでも、ねぇ。

呂布ちんとの対戦も、出来れば万全の状態でしたかったなって。

 

奥では頭脳労働者たちによる、優雅なお茶会が開催中。

侍女として働く、月ちゃんと詠っちの姿に癒される。

 

 

「せりゃあぁーーっ!!」

 

「猛虎!」

 

そんな訳で趙雲との試合真っ最中。

考え事は切り上げ、そろそろ決めに行こうか。

 

槍の切っ先を、気を纏わせてかざした左腕でちょんっと横にズラす。

その隙に、右の正拳突きを勢いよく放った。

 

「無頼岩ッ!」

 

最小の動きで相手の攻撃を制し、カウンターを放つ。

いい感じに刺さってくれた。

 

「ぐっ」

 

吹っ飛ぶ趙雲。

上手く入ったが、これで決まりにはならない。

続けて踏み込み止めの一撃をっ。

 

「猛威、虎殺掌!」

 

水平に手刀を放ち、首筋で寸止めする。

よし、上手くいった。

 

見れば趙雲も槍を振り上げており、あと二拍程遅かったら負けていたな。

 

「俺の勝ちだな?」

 

「フッ、そうですな。いやはや流石でした」

 

趙雲も素直に負けを認め、互いの健闘を称えあう。

挨拶代りの勝負みたいなもんだが、ある程度の技量は知れた。

うん、良い勝負だった。

押忍!

 

 

「うむ、見事だった。では次の相手は私だ」

 

関羽さん、容赦ない。

少しくらいインターバルをですね。

 

「行くぞ!」

 

グワッと青龍偃月刀を振り上げる関羽さん。

どうやらまだ、おこ状態が続いてるようで話も聞いてくれない。

 

ま、しゃーない。

連続稽古だと思って対処しよう。

 

 

* * *

 

 

おこ状態から漸く落ち着いた関羽との試合を終わらせ、張飛を退け、姉さんとも打ち終えた。

さあ、ここからが本当の地獄だ。

 

「最後は呂布ちんかぁ」

 

「………行く」

 

「来い!」

 

戦国最強と名高い呂布ちん。

虎牢関の時に少し見たが、その武才は計り知れない。

実に興味深い。

 

得物の方天画戟はドでかい。

これを縦横無尽に振り回す呂布ちんだが、隙が無い訳じゃない。

そこらが攻め所になるだろうな。

 

ブオォーーンッからのシュバンッ、そしてドゴン!

 

……やー、攻め所は分かるんだ。

でも踏み込むのに相当、勇気いるなこれ。

想像以上でした。

 

力の法則たち、ちゃんと仕事してる?

まあ、その辺りを潤滑にするのが気の力だと分かってはいるんだが。

 

呂布ちんに勝つためには、覇王翔吼拳を使わざるを得ない。

 

でも、ただ覇王翔吼拳を放つだけでは呂布ちんを捉えることが出来ない。

これはもう、本気で狙って行くしかないな!

 

 

「虎煌撃!」

 

「……ッ」

 

ちょっとした間隙を縫い、地面に気を撃ち込み土を散らす。

視界を遮り、動きを掣肘する役割を……是非とも果たして欲しい。

 

土煙の向こう側。

おおう、余裕で動いてらっしゃる。

 

流石は天性の武才。

これに野生の勘が備わり最強に見える。

 

「…フッ」

 

若干薄くなった土煙を、薙いで迫る天下無双。

 

「はあっ」

 

気合一発、猛虎雷神剛を放つ。

ガードポイントからの差し込みアッパー。

が、軽やかなステップで避けられた。

 

おぅふ。

 

呂布ちんの攻撃は、概ね見切って避けることが出来てる。

でも、こっちの攻撃も割と余裕で躱されるんだよね。

このままじゃ、千日手になりそうだなぁ。

 

いやまあ、組手だからそのまま引き分けてもいいんだけど。

食費などのためにお金を稼ぎたい呂布ちんの目は、まだまだ輝き続けている。

 

お昼奢るとか言って買収出来ないかな?

…ダメだ、ばれたら絶対怒られる。

 

仕方ない、これも修行だ。

後のことは何も考えず、全力で打ちに行こう。

 

「ふぅんぬぁぁぁぁぁーーーーーっっ!!」

 

両手をそれぞれ脇の下に置き、思い切り気を練り上げる。

 

「……させない」

 

呂布ちんが何かを感付いて、思い切り振り降ろして来るのを避ける。

ドゴンッからのビュンッ

続いて恐ろしげな横薙ぎも何とか躱して……。

 

「覇王翔吼拳!」

 

正面に両手を突出し射出。

ふと、呂布ちんが避け動作を取ろうとするのが見えた。

咄嗟にはどこに逃げるのか解らんので、連続で発射する。

 

「はあッ!!せりゃあぁーーッ!」

 

覇王翔吼拳の三連発。

全て異なる方向に拡散させて照射。

二発目と三発目は、それぞれ威力が相当減じてしまったが仕方ない。

 

「……くっ」

 

ズシャッと落ちる音がしたので見てみると、呂布ちんが片膝をついていた。

ふむ、どうやら三発目が当たったようだ。

頑張った甲斐があったな。

 

「ぬぅ」

 

代わりに、俺も相当量の気力を消費してしまった。

立ってるのも辛い。

すぐにでも座り込んでしまいたいが……。

 

呂布ちんがゆらりと立ち上がる。

マジかー。

 

「………」

 

「……む」

 

目を合わせると、どこか切なそうな目をしている。

どうやらお腹が空いたらしい。

これぞ天佑!

 

「そろそろ、終わりにしないか?」

 

ここぞとばかりに声をかける。

急ぎ過ぎないよう、そして震えないようかなり気を付けた。

 

呂布ちんは暫く溜めた後、コクリと頷いた。

 

よし、乗り切った!

 

「なんだ、もう終わりか?もう少し続けろ」

 

姉さんがつまらなさそうに言ってきた。

無茶言うなし。

 

「呂布ちんも腹減ったようだしな、俺も流石に疲れたよ」

 

見ると、呂布ちんの下にすかさず陳宮が近寄って食事に誘っていた。

せっかくだし、もうちょっと話とかしときたいな。

 

でも、今はもう限界。

ドッカリとその場に腰を下ろす。

 

ふぅーーーーっ

 

マジで疲れた。

気分的には気力ゲージも真っ赤っ赤。

 

いやはや、やはり覇王翔吼拳の拡散照射は厳しいものがあるようだ。

が、一つ上を見ることには繋がった。

 

次なるステップは連射性。

そのために必要なのは、まず踏み込み精度の向上と気力の拡充。

よし、今夜から早速始めるとするか!

 

 

この後はなし崩し的に宴となり、劉備陣営の方々との親睦を深めることとなった。

 

 

 




・猛虎無頼岩
主にタクマの技。
作品によっては飛び道具を跳ね返すことも可能でした。
成功したことはありませんが。

関羽や張飛の描写は冗長になったのでカット。
ようやく、呂布ちんとまともな接触が出来ました。
これで少しは主人公に興味を持ってくれることでしょう。

そして、覇王……拡散照射…?うっ、頭が…

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