武器を持った奴が相手なら、覇王翔吼拳を使わざるを得ない   作:桜井信親

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27 龍虎乱舞

「飛燕疾風脚!」

 

華雄隊を探し求めて幾星霜。

緑を蹴散らしたのがばれて、鬼に追いかけられたが何とか撒いて今に至る。

 

結局、出会っても戦わなかった勢力は公孫賛だけだったな。

他の奴ら、ほとんど話すら聞いてくれなかったし。

普通さんの貴重さが身に染みたわ。

 

そして遂に、金色を発見した。

よっしゃと逸って虎煌拳、雷神刹を駆使して雑兵を蹴散らし進む。

 

が、どうにも金色違いな気がするぞ?

しばらく進んでからふと思う。

確かに金色は金色っぽいんだが、若干少ないというか無理やり付け足した感があるというか。

 

あと、練度が低い。

そして華雄隊が見当たらない。

 

「あら、あなた……」

 

更に言うと、金色の部隊にはこんな褐色に桃色の髪をしたお姉さんがいるはずがない。

ちゃんと言うと、孫策がいた。

 

つまり何か、この金色は金色モドキだったって訳か。

袁紹軍じゃなくて袁術軍だったと。

孫策は袁術の客将?だからそこに居るんだと。

 

なるほどなるほど、こいつは参ったな。

はっはっは!

 

「確か袁術ちゃんの旗を無残に折った、呂羽とかいう男…」

 

そりゃ華雄隊もいないよ。

むしろいたら全滅必死だわ。

 

そして、曹操様のとこ並みに死地となりそうな予感。

何故か孫策さんは一人だが、他の呉の戦士がいたら詰みかねん。

下手したら居なくても詰みかねんが。

 

あと、個人的には孫策より孫権が好きです。

作品的に。

 

「ここで会ったのも何かの縁。ひとつ、手合わせ願おうかしら?」

 

妙齢の女性に迫られるというのは、男として願ったり叶ったりのことだ。

それが孫策さんのような立派な方なら尚のこと。

格闘家として考えても、テンションが上がるのは仕方がない。

 

しかしだ。

俺は早急に華雄隊と合流せねばならない。

 

孫策さんとのランデブーを楽しんでる暇はないのだ。

何とか切り上げないと…っ

 

「ちょっと、聞いてるの?」

 

聞いてます。

 

でも気付かないふりして逃げ出したい。

逃げたらどうなるかな?

 

背を向けた瞬間、後ろからズンバラリな未来が見える。

止めとこう。

 

「あくまでも無視しようってんなら……」

 

孫策の握る剣に力が込められる。

限界か…。

観念して目を合わせた。

 

「あら、観念した?」

 

「孫策か。かなりの武を誇るようだが…」

 

極限流の敵でない!

と、放言したいのは山々だが流石に自重。

 

「ええ。そういう貴方は呂羽よね?」

 

「ああ。手合わせを所望のようだが、あいにく俺は今急いでいてな」

 

とりあえず話を合わせるが、見逃してくれないかなぁ。

無理かなぁ。

 

「そうなの?でも、そんなの関係ないわよ。だって…」

 

敵味方ですもんね。

 

「貴方がここで倒れたら、同じだもんね!」

 

そうきたかー!?

 

 

* * *

 

 

孫策との手合わせは熾烈を極めた。

本気度からすると、夏候惇並みかそれ以上だ。

 

格闘家としての俺は、この瞬間を大いに楽しんでいる。

だが、副長としては焦燥に駆られざるを得ない。

 

華雄隊も、そう簡単には瓦解はしないだろう。

しかし副長とはいえ、仮にも隊を任せられた俺があまり長く離れるのも如何なものか。

これでも一応、責任感とか持ってるんだぜ。

 

「ほーらほら、他のこと考えてちゃ切れちゃうわよー?」

 

何が切れるっていうんですかねぇっ!?

 

って、あぶな。

確かに考え事をする余裕はないな。

 

幸か不幸か、この場に居るのは俺と孫策のみ。

 

呂布ちんの時のように、他の介入があれば上手く助かるかもしれない。

しかし逆に、典韋が現れた時のように逆境に陥る可能性もある。

むしろ、そっちの方が可能性高い。

 

時間を掛け過ぎると不利なのは、間違いなく俺の方だ。

早急に、ある程度の片をつける必要がある。

 

ちらり、と周囲を眺め見る。

誰もいない。

問題なさそうだ。

 

よし、覚悟完了。

 

 

ふぅーーーーーっ!

 

深く長く深呼吸。

続けて、気の充足を図る。

 

「…っ」

 

ただならぬ俺の様子と気の高まりを見て取ったのか、孫策は一時的に攻めの手を止めた。

 

チャーンス。

 

全身に纏わせる気を数段階、引き上げてからの……。

 

 

いざ、極限流奥義!

 

 

両腕を前で交差。

ここまでは覇王翔吼拳と同じモーションだが、気の巡らせ方が異なる。

 

腕を解放するや、一足飛びに孫策に迫る。

 

踏み込みに程よく気を込め、それを一気に爆発させた。

そうすることで、軽く飛ぶかのように一足飛びに相手の下へ辿り着くことが出来るのだ。

 

「…くっ!?」

 

突然の緩急変化に、孫策も驚き戸惑っている。

しかし、遅い。

もう間合いに入った。

 

龍虎乱舞。

ゲームではヒットするとロックして乱舞に移行するが、現実でロックを掛ける術はない。

よって、高速で繰り出す連続技のような様相になる。

相手が入り込む隙を与えず、フィニッシュまで全速且つ全力で仕上げねばならない。

結構難易度が高いんだよな。

 

そんな訳で間合いに入ったことを確認するや、すぐさま技に移行。

 

まずは左正拳を二回連続で放つ。

続けて右足掛け蹴り。

さらに右正拳突き。

左ボディーブロー。

外回し蹴り。

左正拳。

左ボディーブロー。

後ろ回し蹴り。

左正拳。

右正拳突き。

左横蹴り……。

 

龍虎乱舞は一つの技であるが、連続技を決めるコンビネーション技とも言える。

まず左正拳二回で相手の気を上段に誘い、足掛け蹴りで下段を攻める。

下段に行ったと思わせるや正拳突きからボディーブローで上に行くなど、上下織り交ぜた構成となっている。

 

上下を間断なく攻めた後、左横蹴りで相手を仰け反らせる。

そこに止めの一撃だ。

懐に一歩踏み込んで、めり込ませる形で虎咆を放ちフィニッシュ!

 

 

パコーンと心地好い幻聴を聞きながら、乱舞を終えた。

手応えを感じながら、虎咆で舞い上がった上空からスタッと着地。

 

一方の孫策は軽やかに吹っ飛び、地面に激突寸前まで行くが、何とか持ち直して辛くも着地した。

しかし流石に堪えたようで、足元がふら付き上手く立てないでいる。

 

うん。

まだまだ研鑽の余地があるとはいえ、龍虎乱舞がちゃんと入って相手は無傷ってのは困るからな。

ちゃんと効いてくれてよかった。

 

「…くぅ……っ」

 

「よーし!極限流の、極限流による、極限流のための試合だったぜ!」

 

内心の疲労感を糊塗し、本日二度目のドヤ顔を披露。

ある種の名言も放つことが出来たし、満足だ。

 

流石の孫策さんも、疲れ果てて上手く対応できないようだ。

よし、この隙に逃げよう。

 

「今回は俺の勝ちだな。機会があれば、また会おう」

 

「…ま…ちな、さ…」

 

待ちません。

 

さっき乱舞中、視界の端に華雄隊の旗が映ったような気がしたんだ。

踵を返し、急ぎその方角へ向かって走り出した。

 

韓忠ほか、みんな無事かー!?

 

 

 




・龍虎乱舞
極限流やリョウの代名詞とも言える技。
本当は龍虎バージョンで出したかったのですが、詳細が思い出せずKOF94版にしました。
これもバリエーションの多い技で、今後も出していきたいところです。

26話で誤字報告適用しました。多謝。

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