捻くれた少年と海色に輝く少女達 AZALEA 編 作:ローリング・ビートル
「そういや、まだ聞いてないんだが、今日はどこ行くんだ?」
「ふっふっふ。私に任せて。今日で君は内浦マニアになるから」
「いや、そこまでなりたくはないんだが……」
「まあまあ、遠慮しなくていいから。さ、行くよ!」
遠慮など一切してないんだが……。俺の千葉愛なめんなよ。
だが、松浦がすたすた歩き出したので、とりあえずついていくことにした。
何の気なしに空を見上げると、雲一つない青空だった。
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「まずはここ!」
「……おお」
まず案内されたのはお洒落な外観の喫茶店。海の近くというのがまたいい。
だがそれだけではなく……
「わんっ」
もちろん店員が吠えたわけではない。店に入ると、足元には小さな犬がこちらをくりくりした目で見上げていた。
「……かわいい」
「でしょ?この子目当てに来るお客さんもいるんだよ。お~よしよし」
松浦が優しく頭を撫でると、犬は嬉しそうに目を細める。
すると、奥からぱたぱたと足音が聞こえてきた。
「いらっしゃいませ~。あら、果南ちゃん珍しい……もしかして、彼氏?」
「違いますよ~」
「…………」
ちょっと前にもこんなことがあったような……。
どこをどう見たらそうなるのか。変なこと考えちゃいそうになるからやめてね。
「彼は最近引っ越してきたんです。今日は町の案内を……」
「なるほど、じゃあサービスしなくちゃね」
二十代後半くらいの店員さんは、こちらに向かってウィンクした。これは「次回もサービス、サービス♪」の伏線だろうか。
くだらないことを考えていると、再び犬がくりくりした瞳でこちらを見上げている。
「ね?いい雰囲気でしょ」
「かわいい……」
「えっ!?」
そっと犬を愛でていると、松浦が驚いた表情をしていた。
「どした?」
「え?あ、いや……な、何でもないから!……まぎらわしいなぁ、もう」
いきなり何だろうか。
だが、すぐにコーヒーが運ばれてきて、この謎は謎のままだった。
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喫茶店を出ると、松浦は「う~ん」と大きく伸びをした。
「よし、次は運動しよっかな」
「……は?」
町案内のはずが運動?この体力おばけに付き合って運動なぞしていたら、俺の身体は『はちまん、こわれる』みたいになっちゃうんだが。スペアとかねえんだぞ。
「あはは、冗談だよ冗談。それはまた今度しっかり付き合ってもらうから」
「そ、そうか」
どっちにしろ運動はさせられるらしい。まあ、最近体力ついてきたのでいいんだけど。
「さ、行こ。まだまだ付き合ってもらうからね」
「……おう」
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「ち、千歌ちゃん!あれ!」
「え?……あっ」