捻くれた少年と海色に輝く少女達 AZALEA 編   作:ローリング・ビートル

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君想い #11

「そういや、まだ聞いてないんだが、今日はどこ行くんだ?」

「ふっふっふ。私に任せて。今日で君は内浦マニアになるから」

「いや、そこまでなりたくはないんだが……」

「まあまあ、遠慮しなくていいから。さ、行くよ!」

 

 遠慮など一切してないんだが……。俺の千葉愛なめんなよ。

 だが、松浦がすたすた歩き出したので、とりあえずついていくことにした。

 何の気なしに空を見上げると、雲一つない青空だった。

 

 ********

 

「まずはここ!」

「……おお」

 

 まず案内されたのはお洒落な外観の喫茶店。海の近くというのがまたいい。

 だがそれだけではなく……

 

「わんっ」

 

 もちろん店員が吠えたわけではない。店に入ると、足元には小さな犬がこちらをくりくりした目で見上げていた。

 

「……かわいい」

「でしょ?この子目当てに来るお客さんもいるんだよ。お~よしよし」

 

 松浦が優しく頭を撫でると、犬は嬉しそうに目を細める。

 すると、奥からぱたぱたと足音が聞こえてきた。

 

「いらっしゃいませ~。あら、果南ちゃん珍しい……もしかして、彼氏?」

「違いますよ~」

「…………」

 

 ちょっと前にもこんなことがあったような……。

 どこをどう見たらそうなるのか。変なこと考えちゃいそうになるからやめてね。

 

「彼は最近引っ越してきたんです。今日は町の案内を……」

「なるほど、じゃあサービスしなくちゃね」

 

 二十代後半くらいの店員さんは、こちらに向かってウィンクした。これは「次回もサービス、サービス♪」の伏線だろうか。

 くだらないことを考えていると、再び犬がくりくりした瞳でこちらを見上げている。

 

「ね?いい雰囲気でしょ」

「かわいい……」

「えっ!?」

 

 そっと犬を愛でていると、松浦が驚いた表情をしていた。

 

「どした?」

「え?あ、いや……な、何でもないから!……まぎらわしいなぁ、もう」

 

 いきなり何だろうか。

 だが、すぐにコーヒーが運ばれてきて、この謎は謎のままだった。

 

 ********

 

 喫茶店を出ると、松浦は「う~ん」と大きく伸びをした。

 

「よし、次は運動しよっかな」

「……は?」

 

 町案内のはずが運動?この体力おばけに付き合って運動なぞしていたら、俺の身体は『はちまん、こわれる』みたいになっちゃうんだが。スペアとかねえんだぞ。

 

「あはは、冗談だよ冗談。それはまた今度しっかり付き合ってもらうから」

「そ、そうか」

 

 どっちにしろ運動はさせられるらしい。まあ、最近体力ついてきたのでいいんだけど。

 

「さ、行こ。まだまだ付き合ってもらうからね」

「……おう」

 

 ********

 

「ち、千歌ちゃん!あれ!」

「え?……あっ」

 

 


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