捻くれた少年と海色に輝く少女達 AZALEA 編   作:ローリング・ビートル

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青春の影 #71

 ラブライブ地区予選決勝。

 すべてのアイドルがパフォーマンスを終え、結果発表を今か今かと待ちわびていた。

 だが観客席の反応を見る限り、全国大会進出は……

 

「さあ、それでは発表させていただきます!全国大会に駒を進めるスクールアイドルは……」

「…………」

「Aqoursです!」

 

 一気に会場が沸いた。

 正直、パフォーマンス後の拍手の大きさや、周りの反応から、予想はついていた。別に後だしじゃないよ?ハチマン、ウソ、ツカナイ。

 スクリーンに映った花丸の笑顔は、先程圧巻のパフォーマンスを見せつけていたとは思えないくらい、ほんわかした笑顔を見せていた。

 

 *******

 

 帰り道、すっかり暗くなった坂道を歩きながら、どのタイミングで手を繋ごうかと思案していると、彼女のほうからそっと手を握ってきた。

 そこからさらに体をすり寄せてくる。どうやら今は甘えたい気分らしい。

 

「……どした?」

「ほっとしたら力が抜けたずら……ふぅ」

「そっか……まあ、お疲れ。あとおめでと」

「ふふっ、八幡さんそれさっきも言ってたずらよ」

「つい、な。自分でも不思議なくらいテンション上がってる」

「そうずらか。それはマルも嬉しいです」

「これなら入学希望者も集まるんじゃないか」

「ずら。……明日に期待するずらよ!」

「?」

 

 今何か言い淀んだ気がしたが……いや、疲れてるだけかもしれんし。

 その日は彼女を家まで送り届けて、そのまま帰った。

 

 *******

 

 家に帰り、家族で食卓を囲んでいると、小町から驚きの事実を聞いた。

 

「タイムリミット?」

「うん。あと3日で100名に達しなかったら廃校が確定するんだって」

「…………」

 

 あの時のあの表情はそれが理由だったか。

 タイムリミットに関しては、まあ時期的には妥当なところだろうが、彼女達からしたら圧倒的に時間が足りないだろう。

 ……果たして目標達成できるだろうか。

 

 *******

 

 食後に色々と気になった俺は、花丸に電話してみることにした。

 

「はい、国木田です」

「……もしもし、今大丈夫か?」

「八幡さん……もちろんずら!」

 

 声のトーンから、おそらく空元気だろう。

 勢いで電話をかけたので、どう話そうかとか全然考えていなかった。

 それでも何か喋らなければと思うと、自然と言葉は出てきた。

 

「……あー、今日割と星が綺麗に見えるな」

「ずら?……そう、ずらね」

 

 しまった。

 緊張からか、いきなりわけのわからんことを言ってしまった。

 だが今から訂正するのは恥ずかしい。

 とりあえずこの方向で話を進めるしかない。

 

「あー……花丸は、この先の進路とかは考えてるのか?」

「進路、ですか」

 

 親かよ、と思わずセルフツッコミをしそうになった。やっぱり一、二年人と関わるようになっただけでは、コミュ力は改善したりしないものである

 

「実は……まだあんまり考えたことがないずら。今はスクールアイドルと読書と……で頭がいっぱいずら」

「ん?最後のほう、何て?」

「な、何でもないずら!」

「そ、そうか……」

「は、八幡さんこそ……なりたいものとかないずらか?」

「……専業主夫」

「聞こえないずらよ~」

「……いや、俺も実際まだ考えていないからな……」

「そうずらか。それじゃあ今度マルと一緒に考えませんか?」

「おお、いいな。それ」

「ずら。あ、それと八幡さん……気を遣ってくれて、ありがとうございます、ずら」

「い、いや、気を遣って、つーか……まあ、その、どういたしまして。じゃあ、俺もう寝るわ」

「はい、おやすみなさい」

「おう、おやすみ」

 

 通話が途切れ、名残惜しさと静寂が同時にやってきたので、誤魔化すように寝転がる。

 小さく響く鈴虫の音色に耳を傾けていると、いつの間にか眠りについていた。


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