捻くれた少年と海色に輝く少女達 AZALEA 編 作:ローリング・ビートル
「「…………」」
オーケー。状況を整理しよう。
まず小原の指示で、ホテルオハラが経営する温泉施設にやってきた。
そして、男女別々かと思いきや、何故かタオル一枚の花丸と遭遇。
特に整理するまでもなかった……わかりやすく嵌められてんじゃねえか。
目の前にいる花丸は、タオル一枚で頼りなく前を隠し、口をぱくぱくさせている。こいつは多分、俺以上に驚いているのだろう。まあ、仕方ないといえば仕方な「ずらぁっ!」
花丸は慌てて湯船に体を沈める。や、やばい!今、タオルがずれて色々見えそうだったぞ……!
「は、八幡さん、どうしているずらか!?も、もしかして、そんなにマルの……」
「いや、その、まあ落ち着け……どうやら小原に嵌められたらしい」
「ええ!?ま、鞠莉さぁん……」
羞恥に頬を染めた花丸は、鼻から上だけお湯から顔を出し、しばらくブクブクさせていた。
やがて、少しは落ち着いたのか、口を開いた。
「ううぅ……は、八幡さん?」
「……どした?」
「その……見た、すらか?」
「……何を?」
「さっき……マ、マルの裸を……」
「…………見てない」
「い、今の間はな、なんずらか!?」
何を言われようと、見てないったら見てない。もちもちしてそうな白い肌とか、やっぱり大きな胸とか、タオルに隠れていてまったく見えない……ホントだよ?ハチマン、ウソ、ツカナイ。
しかし、花丸はこちらをじ~っと穴が空くように見つめていた。
「八幡さん、目つきがいやらしいずら」
「……いや、待て。ほんのちょっと見たのは悪かったが、俺は悪くない。それにだな……」
しどろもどろになりながら言い訳を試みると、花丸はクスッと笑い、距離を詰め、肩をピタリとくっつけてきた。
火照った彼女の体温と柔らかさが直に伝わり、そこにしか意識がいかなくなる。
そして、俺の耳に温い吐息がふわりとかかった。
「……オラ、とっても恥ずかしかったけど、八幡さんになら見られてもいいずら。だから……マルの事、お嫁さんにしてくださいね?」
「っ…………あ、ああ」
こいつは俺の理性を崩壊させようとしているのだろうか。
目を向けると、とろんとした瞳が真っ直ぐに俺を見ている。
「…………」
「…………」
再び沈黙が訪れるが、そこには気まずさなどどこにもなかった。
俺は手探りで、お湯の中の彼女の手を握りしめた。
「……花丸」
「……はい」
そっと俺の手を握り返す花丸の頬は紅くなり……あれ?ちょっと紅すぎるような……この子、もしかして……
「……お前、のぼせてないか?」
「そ、そんなことないずらよ~。さあ、背中を流してあげるずら~」
「いや、そのテンションっておい、今いきなり立ったら……!」
その瞬間、すべての時が止まった気がした。
のぼせて思考が混乱しているのか、花丸は勢いよく立ち上がった。
そして、俺は言葉を失い、呆然と彼女の一糸纏わぬ姿に見とれていた。
「…………」
「八幡さん、どうしたんですか?……ん?えっ……ずらあぁぁ~~~~~!!!」