捻くれた少年と海色に輝く少女達 AZALEA 編   作:ローリング・ビートル

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青春の影 #62

「「…………」」

 

 オーケー。状況を整理しよう。

 まず小原の指示で、ホテルオハラが経営する温泉施設にやってきた。

 そして、男女別々かと思いきや、何故かタオル一枚の花丸と遭遇。

 特に整理するまでもなかった……わかりやすく嵌められてんじゃねえか。

 目の前にいる花丸は、タオル一枚で頼りなく前を隠し、口をぱくぱくさせている。こいつは多分、俺以上に驚いているのだろう。まあ、仕方ないといえば仕方な「ずらぁっ!」

 花丸は慌てて湯船に体を沈める。や、やばい!今、タオルがずれて色々見えそうだったぞ……!

 

「は、八幡さん、どうしているずらか!?も、もしかして、そんなにマルの……」

「いや、その、まあ落ち着け……どうやら小原に嵌められたらしい」

「ええ!?ま、鞠莉さぁん……」

 

 羞恥に頬を染めた花丸は、鼻から上だけお湯から顔を出し、しばらくブクブクさせていた。

 やがて、少しは落ち着いたのか、口を開いた。

 

「ううぅ……は、八幡さん?」

「……どした?」

「その……見た、すらか?」

「……何を?」

「さっき……マ、マルの裸を……」

「…………見てない」

「い、今の間はな、なんずらか!?」

 

 何を言われようと、見てないったら見てない。もちもちしてそうな白い肌とか、やっぱり大きな胸とか、タオルに隠れていてまったく見えない……ホントだよ?ハチマン、ウソ、ツカナイ。

 しかし、花丸はこちらをじ~っと穴が空くように見つめていた。

 

「八幡さん、目つきがいやらしいずら」

「……いや、待て。ほんのちょっと見たのは悪かったが、俺は悪くない。それにだな……」

 

 しどろもどろになりながら言い訳を試みると、花丸はクスッと笑い、距離を詰め、肩をピタリとくっつけてきた。

 火照った彼女の体温と柔らかさが直に伝わり、そこにしか意識がいかなくなる。

 そして、俺の耳に温い吐息がふわりとかかった。

 

「……オラ、とっても恥ずかしかったけど、八幡さんになら見られてもいいずら。だから……マルの事、お嫁さんにしてくださいね?」

「っ…………あ、ああ」

 

 こいつは俺の理性を崩壊させようとしているのだろうか。

 目を向けると、とろんとした瞳が真っ直ぐに俺を見ている。

 

「…………」

「…………」

 

 再び沈黙が訪れるが、そこには気まずさなどどこにもなかった。

 俺は手探りで、お湯の中の彼女の手を握りしめた。

 

「……花丸」

「……はい」

 

 そっと俺の手を握り返す花丸の頬は紅くなり……あれ?ちょっと紅すぎるような……この子、もしかして……

 

「……お前、のぼせてないか?」

「そ、そんなことないずらよ~。さあ、背中を流してあげるずら~」

「いや、そのテンションっておい、今いきなり立ったら……!」

 

 その瞬間、すべての時が止まった気がした。

 のぼせて思考が混乱しているのか、花丸は勢いよく立ち上がった。

 そして、俺は言葉を失い、呆然と彼女の一糸纏わぬ姿に見とれていた。

 

「…………」

「八幡さん、どうしたんですか?……ん?えっ……ずらあぁぁ~~~~~!!!」

 

 


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