捻くれた少年と海色に輝く少女達 AZALEA 編 作:ローリング・ビートル
花丸と他愛ない会話をしながらのんびり歩いていると、茂みの方から「送信っ!!」という声が聞こえ、彼女の携帯が鳴り出した。いや、どうせ近くにいるんだから直接言いにくればいいんじゃないですかねえ……。
「えっと、鞠莉さんからメールが来たずら」
「……そ、そうか」
ぶっちゃけ嫌な予感しかしない。
かといってスルーしてしまったら、わざわざ公開デートをしている意味がなくなってしまう。
覚悟を決めた俺は、花丸の目を見て頷いた。
「えっと……ホテルオハラに近くにある温泉に行くようにって指示が来たずら」
「……そうか」
何があるというのだろうか……てか、何故温泉?俺の入浴シーンでも見ようというのだろうか。何それ、恥ずかしいんだけど。
「八幡さん、どうかしたずらか?」
「いや、何でもない」
「温泉、楽しみずら~。久しぶりずら~」
「……そっか。ならよかった」
どうやらこの子は本来の目的を忘れているようで、すっかりお楽しみモードである。
その様子に頬を緩めると、彼女はこちらに手を差し出してきた。
「は、早く行きましょう!……ずら」
「……おう」
……まあ、リラックスするのは悪いことじゃない、か。
俺は小さな手をしっかりと握りしめ、それを合図に二人は並んで歩きだした。
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「鞠莉さん、二人に何を連絡しましたの?」
「ふっふっふ~、それは着いてからのお楽しみでデース!」
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スライドドアを開け、一歩足を踏み入れると、そこは特に変わったところもない普通の温泉だった。強いて言うなら、サウナな打たせ湯、電気風呂などがしっかり整えられていて、結構広いことぐらいか。
俺は一旦汗を流してから、すぐに中央の一番大きな風呂に体を沈めた。じんわりと心地よい温かさが体を芯から温める感覚に、心の底から満たされていく。
「ふぅ……」
思わず溜め息が漏れてしまうあたり、公開デートで中々緊張しているのだろう。てか、あいつらもうちょっと気配を消す努力をして欲しいんだが……。
考えていると、近くで誰かがちゃぽんと湯船に足を踏み入れる音が聞こえた。まあ、さすがに貸し切りとはいかない……か?
「……は?」
「……ずら?」
時間が止まったかのような感覚。
視線は目の前の人物に釘付けになり、微動だにできない。ただお湯が注がれる音だけが絶え間なく響き、これは現実なんだと教えてくれていた。
俺は顔にお湯をぶっかけ、もう一度目を凝らして見る。
……そこにいたのは、タオルで前を隠しただけの花丸だった。
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「こ、ここ、混浴~~~!?鞠莉さん、あなた何を考えていますの!?破廉恥な!!」
「これぞ裸の付き合いでラブラブ作戦デース♪これで二人ももっと仲良くなりマス!」
「なんか目的変わってるような……しかも、これじゃ私達見れないし」
「「あ……」」