捻くれた少年と海色に輝く少女達 AZALEA 編 作:ローリング・ビートル
結局、あの後はすぐに花丸を自宅へ送り届けた。彼女の祖母は、謝る彼女の頭を撫で、こう言った。
「マルちゃん、チューした?」
「ずらっ!?」
「…………」
まあ、何はともあれ、花丸との関係に確かな変化が訪れる事にはなったものの、俺は受験勉強に、彼女はスクールアイドルに集中するため、しばらくはお互いゆっくりとこれまでの関係から変化していくことになると思っていたのだが……
「すぅ……すぅ……」
「…………」
昨日告白してきた彼女が、もう俺の隣で寝ている!!
彼女は練習着で俺の隣に寝転がり、すやすやと安らかな寝息を立て、時折「もう……食べられないずらぁ~」と呟いた。ギャグ漫画のキャラかよ。可愛いな、オイ。
寝ぼけ眼をこすりながら起き上がった俺は、彼女の体をそっと揺する。
「お、おい、花丸……」
彼女は可愛らしく口元をもにょもにょさせながら、長い睫毛を揺らし、うっすら目を開いた。
「ん……んん……はちまんさん、おはようずらぁ……」
「いや、どうした急に。し、心臓飛び出るかと思ったぞ……」
「……お、起こしに来ました」
「寝てんじゃねえかよ……」
「あはは……気持ちよさそうに眠ってる八幡さんを見たらつい……」
花丸は頬を紅く染めながら、照れ笑いを見せる。起こせてはいないが、目覚めとしては悪くない。いや、むしろポイント高いですよ、これ。
ただ、恋人未満の状態で隣で眠るのは、色々とプルスウルトラしすぎだと思うの。
「八幡さん?」
「いや、大丈夫だ。ただあんまり無防備なのは気をつけとけよ。うっかりそのまま……変なことことしそうになる」
俺の言葉に彼女は顔をさらに紅潮させ、聞き取れないくらいに小さな声でぼそぼそと何事か呟く。
「…………少しくらい、なら」
「どした?」
「な、何でもないずら!じゃ、じゃあ、マルは練習に行ってくるずら!八幡さんもお勉強頑張るずら!」
「お、おう……ありがとな」
花丸は振り返ることなく、あっという間に出て行ってしまった。
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「はぁ……はぁ……」
「花丸ちゃん、はい」
「ありがとうずら」
ルビィちゃんが飲み物を手渡してくれる。今日はいつもより体が軽くて、まだ踊り足りない気分です。
「何かいいこと、あったの?」
ルビィちゃんが小首を傾げ、尋ねてくる。でも、昨晩のことはどう説明すればいいのか……オラの優柔不断さもあって、中途半端な状況に……でも、言ってもらえたずら。『好き』って……。
生まれて初めての体験。
正直に言うと、昨日の夜から口元が緩むのを堪えるのに必死です。どうしよう、少し浮かれすぎかもしれないずら……。
「ふっふっふっ……」
そこで、千歌ちゃんが不適な笑みを浮かべ、ジリジリと近寄ってきた。
「花丸ちゃん、比企谷さんと何かあったんでしょ!?私にもそれくらいわかるよ!」
「え、えっと……」
「ち、千歌ちゃん……まだ千歌ちゃんにはまだ早いような……」
「ル、ルビィちゃんまで!?」
ルビィちゃんからの指摘にショックを受ける千歌ちゃんを、マルは苦笑しながら見ていました。