捻くれた少年と海色に輝く少女達 AZALEA 編 作:ローリング・ビートル
「も、もすもす……八幡さん……」
「……おう。まだ慣れてないみたいだな」
「うぅ……だって電話はまだ緊張するずら~」
「そっか……てか、どうした?明日地区大会決勝だろ?朝早いんじゃないのか?」
「あ、はい。そうなんですけど……」
「?」
「その……オラ、今までの人生でこんなことなかったんですけど、気持ちが昂ぶっていまして……よかったら、眠くなるまで、お話しに付き合って欲しいずら……」
「…………」
「ダメ、ですか?」
「……いや、いいぞ。こっちも眠れなかったし」
「ふふっ」
「どした?」
「オラ、八幡さんのそういうところ好きずらよ。いつもさり気なく気遣ってくれて」
「バッカ、お前、ほ、本当に眠れなかったんだよ」
「わかりました。ありがとうございます」
「……それよか、予選突破してから注目度凄いことになってんな」
「いえ、それほどでも……」
「ウチの学校にも、サイン貰ったって喜んでる奴いたぞ」
「あはは……なんか照れちゃうずら。最近、ステージの上に立つのは慣れてきたんですけど」
「……別に冷たい視線に晒されてるわけじゃないからいいんじゃないか。女子に告白して、次の日にそれをクラスの全員が知ってたとかより全然マシだろ」
「な、何だかよくわからないけど、すごく物哀しい光景が目に浮かんだずら」
「そうか……なんか悪いな。ああ、それと東京土産ありがとな」
「いえいえ。八幡さんにも、『バック・トゥ・ぴよこ万十』をもっと愛して欲しいずら」
「……まあ、甘いもん好きだし……MAXコーヒーの次くらいには……」
「ふふっ……それはそうと八幡さん。この前、八幡さんのパソコンでSaint Snowの動画がいっぱい再生されていたのは何故ですか?特に、姉の聖良さんを中心に……」
「……気のせいだろ」
「気のせいじゃないずら」
「いや、ほら、あれだ……やっぱり元プロデューサーとしては、ライバルグループは気になるからな。一応調べておいたんだよ」
「そ、そうずらか……疑ってごめんなさい」
「いや、いい」
「二人共、ダンス上手ずら」
「ああ」
「歌も上手ずら」
「ああ」
「聖良さん、胸大っきいずら」
「ああ…………そうか?」
「今、誤魔化そうとしたずらね」
「……明日、早いんだろ?そろそろ寝た方がいいんじゃないのか?」
「むむむ……でも、八幡さんと話してたら、少し眠たくなってきたずら」
「話がつまらなくて悪かったな」
「ち、違うずら!そういう意味じゃないずらよ!」
「冗談だ。じゃあ、そろそろ寝たほうがいいぞ」
「あ、はい。ありがとうございました」
「……ああ……明日、応援しに行くから、楽しみにしてる」
「…………はい!楽しみにしててくださいずら!」
「それじゃあ……」
「はい、おやすみなさい」