捻くれた少年と海色に輝く少女達 AZALEA 編   作:ローリング・ビートル

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青春の影 ♯47

 

 千葉県のとあるファミレスにて……。

 

「あっ、いろはちゃん来た!やっはろ~」

「こんにちは~♪」

「家族旅行、楽しかった?」

「はい!沼津もいいところでしたし♪先輩にも会えましたよ」

「ヒッキーどうだった?元気だった?」

「う~ん、相変わらずでした」

「あはは……想像つくなぁ」

「まあ、彼だもの……」

「あっ、でも……」

「「?」」

「すごく可愛い女の子と仲良くなっていました」

「「…………」」

 

 *******

 

 

「……くしゅっ」

「八幡さん、どうかしたずらか?」

「いや、何でもない。それより……なんだ、その恰好?」

 

 花丸はタオルを体に巻きつけ、しっかりと手で押さえている。決して離してなるものかという決意のようなものが、ぎゅっと握られた手から透けて見えていた。

 彼女はにぱっと不自然な笑顔で、それを誤魔化した。

 

「いえ、お気になさらず。それより朝早くから来てくれて、ありがとうございます」

「ああ、まあ気にすんな。どうせ家の近くだしな。てか、誰も他に来てないのかよ」

「あはは……皆寝坊したみたいで……」

 

 朝四時過ぎ、俺と花丸は海の家の前のベンチに腰かけている。俺は今さっき連絡をもらって来たばかりだが。

 どうやら集合時間になっても、他のメンバーが来ないらしい。

 まあ、朝四時集合とか普通に無理だ。津島とかはバス使わなきゃ、ここまで来れないし。いや、今はそれより……

 

「何でタオルなんか巻いてんだ?」

「八幡さん。いやらしいずらよ」

「言いがかりも甚だしいんだが……」

 

 まさか下に何も着ていないことはないだろうし……まあ、今いる場所から考えて……。

 

「……いや、悪い」

「ど、どうしたずらか?何で謝るずら?」

「いや、何つーか……タオルの下、水着なんだろ?」

「ずらっ!?は、八幡さん、タオルの下が見えてるずらか!?透けて見えるずらか!?」

「そんな超能力持ってねえよ。まあ、お前の性格からして恥ずかしがるのはわかるからな……」

 

 花丸は頬に手を当て、小さな体をさらに縮こまらせる。

 

「あうぅ…………あ、あの……八幡さんは、オラの水着姿でも……見たいと思いますか?」

「…………」

 

 見たい。

 いや、どちらかと言えばね?そりゃ、俺だって年頃の男の子だし?昨日は参考書とずっとにらめっこしてたし?何か癒しが欲しいし?

 それに、見たくないなどと言うのは彼女に失礼だろう。

 

「……八幡さん?」

「いや、まあ、あれだ……見たいといえば見たいような……」

「はっきりしないずら……」

 

 そう言いながら、一人で力強く頷いた花丸は、タオルをはらりと砂浜に落とし、俺の前に立った。

 

「どう、ですか?」

「…………」

 

 僅かに頬を朱に染めた花丸は、可愛らしい緑のワンピースみたいな水着を着用していた。肌の露出を極力抑えているのは彼女らしい。

 しかし、制服や私服の時よりも、胸の膨らみはずっと強調されていて、油断していると、つい視線が固定されそうだ。

 

「あの……八幡さん?」

「……い、いいんじゃないか?」

「ずらっ!……あ、ありがとうございます……」

 

 花丸は顔をさらに紅潮させ、手をもじもじと落ち着かなく動かしている。多分、しばらく目を見れそうにない。

 五時頃になり、松浦と高海と桜内が到着するまで、俺と花丸は目を合わせないまま、ぽつぽつと途切れ途切れの会話を交わした。

 

 


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