捻くれた少年と海色に輝く少女達 AZALEA 編 作:ローリング・ビートル
千葉県のとあるファミレスにて……。
「あっ、いろはちゃん来た!やっはろ~」
「こんにちは~♪」
「家族旅行、楽しかった?」
「はい!沼津もいいところでしたし♪先輩にも会えましたよ」
「ヒッキーどうだった?元気だった?」
「う~ん、相変わらずでした」
「あはは……想像つくなぁ」
「まあ、彼だもの……」
「あっ、でも……」
「「?」」
「すごく可愛い女の子と仲良くなっていました」
「「…………」」
*******
「……くしゅっ」
「八幡さん、どうかしたずらか?」
「いや、何でもない。それより……なんだ、その恰好?」
花丸はタオルを体に巻きつけ、しっかりと手で押さえている。決して離してなるものかという決意のようなものが、ぎゅっと握られた手から透けて見えていた。
彼女はにぱっと不自然な笑顔で、それを誤魔化した。
「いえ、お気になさらず。それより朝早くから来てくれて、ありがとうございます」
「ああ、まあ気にすんな。どうせ家の近くだしな。てか、誰も他に来てないのかよ」
「あはは……皆寝坊したみたいで……」
朝四時過ぎ、俺と花丸は海の家の前のベンチに腰かけている。俺は今さっき連絡をもらって来たばかりだが。
どうやら集合時間になっても、他のメンバーが来ないらしい。
まあ、朝四時集合とか普通に無理だ。津島とかはバス使わなきゃ、ここまで来れないし。いや、今はそれより……
「何でタオルなんか巻いてんだ?」
「八幡さん。いやらしいずらよ」
「言いがかりも甚だしいんだが……」
まさか下に何も着ていないことはないだろうし……まあ、今いる場所から考えて……。
「……いや、悪い」
「ど、どうしたずらか?何で謝るずら?」
「いや、何つーか……タオルの下、水着なんだろ?」
「ずらっ!?は、八幡さん、タオルの下が見えてるずらか!?透けて見えるずらか!?」
「そんな超能力持ってねえよ。まあ、お前の性格からして恥ずかしがるのはわかるからな……」
花丸は頬に手を当て、小さな体をさらに縮こまらせる。
「あうぅ…………あ、あの……八幡さんは、オラの水着姿でも……見たいと思いますか?」
「…………」
見たい。
いや、どちらかと言えばね?そりゃ、俺だって年頃の男の子だし?昨日は参考書とずっとにらめっこしてたし?何か癒しが欲しいし?
それに、見たくないなどと言うのは彼女に失礼だろう。
「……八幡さん?」
「いや、まあ、あれだ……見たいといえば見たいような……」
「はっきりしないずら……」
そう言いながら、一人で力強く頷いた花丸は、タオルをはらりと砂浜に落とし、俺の前に立った。
「どう、ですか?」
「…………」
僅かに頬を朱に染めた花丸は、可愛らしい緑のワンピースみたいな水着を着用していた。肌の露出を極力抑えているのは彼女らしい。
しかし、制服や私服の時よりも、胸の膨らみはずっと強調されていて、油断していると、つい視線が固定されそうだ。
「あの……八幡さん?」
「……い、いいんじゃないか?」
「ずらっ!……あ、ありがとうございます……」
花丸は顔をさらに紅潮させ、手をもじもじと落ち着かなく動かしている。多分、しばらく目を見れそうにない。
五時頃になり、松浦と高海と桜内が到着するまで、俺と花丸は目を合わせないまま、ぽつぽつと途切れ途切れの会話を交わした。