捻くれた少年と海色に輝く少女達 AZALEA 編   作:ローリング・ビートル

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青春の影 ♯42

「沼津の花火大会?」

「ずら。この辺りでは一番人が集まるイベントずら」

「うゆ」

「ふっ、我がリトルデーモンが集う闇の祭典……」

「よ、善子ちゃん、キャラが中二さんに戻ってるよー」

 

 場の空気に流され、花丸、黒澤妹、津島、そして我が妹・小町を含めた5人で登校していると、無言で殿を務めていた俺に、花丸が話しかけてきた。

 

「Aqoursもステージで歌うから、八幡さんにもぜひ来て欲しいずら。その……受験勉強の息抜きに……」

 

 なるほど。それを言いたくて、やたら引き留められていたのか。おまけに口実まで用意しているとか……。

 上目遣いでちらちら見てくる後輩に、あっという間に観念させられ、黙って首肯した。

 

「……わかった。じゃあステージだけでも観に行くわ」

「そ、そうずらか……あの……」

 

 花丸は再び俯き、手をもじもじさせている。視界の端にいる小町が溜息を吐いた気がした。

 

「お兄ちゃん。どうせ息抜きするなら、とことん息抜きしないとだよ!小町達と一緒に色々見て回ろうよ!ほら、女の子達だけだと、色々アレだし!」

「お、おう……わかった……」

 

 勢いで押しきられた気もするが、可愛い妹や後輩がナンパされないよう、目を光らせておく立場の人間は確かに必要かもしれない。息抜きをする時はとことん息抜きをする、という意見も一理ある。

 ……もう、こっちに来てから夏祭りを迎えるぐらい時間が経ったのか。

 

 *******

 

「けぷこん、けぷこん。この作品で今年の終わりに冬コミデビューを飾りたいのだが……」

「……今週までには読んでおくわ」

「てか中二、こんなことしてて大丈夫なの?夏は受験生にとって大事な時期でしょ?」

「笑止!!我は貴様と違い、自分の行きたい大学に行くぐらいの知力は兼ね備えておるわ!!」

「なっ!?うっさい!あたしはゆきのんに習うから大丈夫だし!てか、最近そんなにバカじゃないし!」

「二人共……少し静かにしてもらえるかしら」

「「はい」」

「あはは……でも、雪ノ下さんが元気になってくれて良かったよ。八幡も心配してたから」

「……そうね。彼には心配をかけたわ」

「今度、久しぶりにメールしとくよ!色々報告しときたいし!」

「あぁ、報告なら私が先輩に直接しときます」

「え?いろはちゃん。今何て?」

「私、今度家族旅行で沼津に行くんですよ♪」

 

 *******

 

 自転車に乗り、自分の学校へと通う先輩の後ろ姿を見つめていると、この前の事もあり、胸の奥がきゅうっと締めつけられます。

 夏祭り……物語の世界みたいなら、何かが変わるきっかけになることもありますが、マルは何かを変えられるのでしょうか?

 スクールアイドル活動に、生まれて初めての恋。

 オラの今年の夏は、この二つだけで、これまでのどの夏より色濃く彩られることになりました。


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