捻くれた少年と海色に輝く少女達 AZALEA 編 作:ローリング・ビートル
それでは今回もよろしくお願いします。
比企谷八幡は驚愕していた。
「……美味い」
「本当ずらか!?」
「ああ……」
お世辞抜きにして、花丸の作った料理は本当に美味い。小町に勝るとも劣らないレベル。ジャガイモに出汁の味がじんわり染みこんだ肉じゃがは、不思議なくらいご飯がすすみ、豆腐と油揚げのお味噌汁は祖母から作ってもらったものを彷彿とさせる。おばあちゃん直伝の腕前は確かなようだ。
「お口に合ってよかったずら~」
安堵の息を吐いた花丸は味噌汁を啜り、白米を頬張る。
そのほんわかした表情を見て、自然と声をかけてしまった。
「……スクールアイドル、頑張ってんだな」
「ずらっ?」
花丸は、んくっと白米を嚥下し、くりくりした目を驚きに見開いた。
「い、いきなりどうしたずらか?」
「いや、何となく……元プロデューサーとして、そう思っただけだ」
「は、八幡さん」
「?」
「これが小町ちゃんの言ってた捻デレずらか?」
「いや違うから。捻デレとかないから」
「ふふっ、でも気にしてもらえて嬉しいです。八幡さんには……しっかり見ていて欲しいずら」
「…………」
そこまで真っ直ぐに微笑まれると、こちらも反応に困ってしまう。
しかし、そこで今朝の気まずさがいつの間にか雲散霧消していることに気づいた。花丸の表情には、ちょっと前までの緊張感はない。食事中だからかもしれんが。
二人だけの食事は、ほんのりと温かみのある時間となった。
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「片づけは俺がやっとく」
「いえ、マルにやらせて欲しいずら!」
せめて洗い物くらいはと申し出ると、花丸は胸を張り、ふんす!と立ち上がった。カスタネットがあれば、うんたん、うんたんとはしゃぎそうな勢いだ。あと、この子は自分の胸の大きさに関して、無自覚すぎやしませんかねえ。
このまま何もしないのも、かえって落ち着かないので、とりあえず妥協案を出してみることにした。
「じゃあ、俺も手伝う」
「了解ずら。オラ、ワクワクすっぞ!」
「いや、落ち着け……作品変わってるから……」
大した量はないので、二人でやればすぐに終わるだろう。
しかし、この後悲劇が訪れるとは思ってなかった……。
数分後……
「なあ、国木田……泡、多くないか?」
「綺麗に洗えるように洗剤全部入れたずら♪」
かしこ~い♪とは、もちろんならない。
何だ、あの料理スキルからこの洗い物スキル……エンジェルフォールばりの落差じゃねえか。どうなってんだ、これ。
シンクには泡がブクブクと溢れ、食器も何も見えない。
しかし、それでも花丸は泡に手を突っ込み、せっせと動かしている。君は洗うのが好きなフレンズなんだね!すご~い、ありがと~。
「花丸」
「ずら?」
「……休んでていいぞ」
「ずらぁ!?」
俺はしばらく泡と闘う羽目になった。
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