捻くれた少年と海色に輝く少女達 AZALEA 編   作:ローリング・ビートル

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青春の影 ♯35

「はあ……」

 

 お布団の上に寝転がり、天井を見上げる。いつもと同じ眺めのはずなのに、まったく違って見えます。どういうことでしょうか?

 帰り道、マルはずっとぽーっとしたままで、あまり記憶がないのです。

 ルビィちゃんと何かを話していたとは思うのですが……頭の中ではずっと……あわわわ!

 あの時の光景、感触、匂い、表情を思い出すだけで頭の奥からぽかぽかして、顔が真っ赤になっていくような感覚がする。一体……どうしたずらか?

 さらに、差し伸べられた手を握った時のことがまだはっきりと頭の中に残っていて、とくん、とくんと胸が高鳴る。他のことが考えられそうもありません。

 オラ……まさか……。

 

 *******

 

「スカイランタン?」

「そうよ、サタン」

「うゆ……」

「…………」

 

 朝、何故かわざわざ迎えに来たAqours1年生トリオに聞かされたPVのアイディア。内浦の皆さんが協力して、大量のスカイランタンを空に飛ばすらしい。だが、今はそれよりも……

 

「……!」

 

 花丸の方を見ると、さっと目を逸らされた。

 さっきからずっとこんな感じである。

 やはり先日のことが……。

 とはいえ、今ここで蒸し返しても仕方ないので、後でもう一度謝っておこう。

 

「……ずら丸、あなたからも例の件、お願いしときなさいよ」

 

 津島が溜息混じりに、花丸に声をかけ、彼女は肩を跳ねさせた。

 そして、彼女はおっかなびっくりといった様子で、ゆっくりと俺の隣に移動する。背中にうっすらと汗をかいているのは、きっと夏が近いせいだけではないのだろう。

 やがて、彼女はぽつぽつ話し始めた。

 

「あ、あの……八幡さんにも、スカイランタンを一つ……作って欲しいずら……作り方は、マルが教えますから……」

「……お、おう、わかった」

「…………」

「…………」

 

 どちらも目を合わせては逸らし、朝っぱらから居心地の悪い空気を作りながら、別れるまでの道のりをてくてく歩いた。

 

 *******

 

 昼休み。

 沼津でもベストプレイスの確保に成功した俺は、サッカーをしている生徒を眺めながら、昼飯を……邪魔されていた。

 

「ほふん、八幡よ!そろそろ貴様に我の新作を送ろうと思っているのだが……」

「いや、いらんわ」

 

 俺に送ってないで、出版社に送れっての。それかネットに晒しゃいいのに……久々に話しても、やはり材木座は材木座だった。つーか、こんな時間に電話すんな。

 

「え?八幡と話しているの?」

 

 あれ、今天使のような声が……

 

「八幡!僕だよ、覚えてる?」

「……毎朝、俺の味噌汁作ってくれ……」

「あはは、何言ってるの?」

 

 よし、昼休みはもうどうでもいいや。なんなら午後の授業もサボる所存であります!

 

「八幡、そっちはどう?楽しい?」

「あー……まあ、ぼちぼちだ」

「また一人で頑張り過ぎてない?」

「……いや、受験はさすがに俺自身がどうにかしなきゃな」

「そうじゃなくて。そっちでも奉仕部みたいなことしてるんじゃない?」

「……いや、別に」

「そっか……何かあったら言ってね」

「むしろそっちが言ってくれ。いつでもウェルカムだ」

「ふふっ、ありがと。じゃ、またね」

「ああ」

 

 ……そういや、材木座の奴。本当に小説送ってくんのかな?




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