捻くれた少年と海色に輝く少女達 AZALEA 編 作:ローリング・ビートル
感想・評価・お気に入り登録・誤字脱字報告ありがとうございます!
それでは今回もよろしくお願いします。
「未来ずら~」
「そ、そうか……」
俺達は水族館へと来ていた。最初は人が多そうなので躊躇していたが、うん、やっぱり多かった。まあ、休日だしね!これで人がいない方が、八幡心配になっちゃうよ!
色とりどりの魚が気ままに泳ぐ水槽は、見ているだけで癒されると共に、過去を鮮明に引きずり出した。
『なんか花火みたいだね』
『私は……』
「っ!」
「八幡さん……?」
「……いや、何でもない……!」
ひんやりとした小さな手が、俺の手を優しく包んだ。
「大丈夫、ずらか?」
「あ、ああ……」
「少し休憩するずら」
「……そうだな」
国木田が手をさらにぎゅっと握ってきて、心音が聞こえそうなくらい胸が高鳴ったが、不思議とその温もりには居心地の良さがあった。
*******
「はい、どうぞ」
「……ありがとう」
軽食等を販売している売店がある休憩所で、国木田からソフトクリームを手渡される。
「美味しいずら~、疲れた時には甘い物が一番ずら~」
「…………」
ここまで幸せそうにクリームを頬張る姿を見ていると、お前が食べたかっただけだろ、と思わなくもないが、まあありがたくいただくとしよう。奢りだし。タダで食うのが、一番美味いし。あと……
「どうしたずら?」
「いや……」
なんかこう……落ち着く。
「八幡さん」
「?」
「クリーム、ついてるずらよ」
国木田は、俺の口元を指で拭い、その指を自分の口まで持っていった。
「…………」
「ずら?」
この子、今自然な流れでとんでもない事をしましたよ。俺みたいに鍛えた奴じゃなかったら、一発で落ちてただろう。しかも、当の本人は「甘いずら~」なんて言って、全然気にしていない。
「あれ、花丸ちゃん?」
「あ、曜ちゃん」
振り返ると、スタッフの恰好をした渡辺がいた。
「それに、比企谷さんも。ヨーソロー!」
「ヨーソローずら!」
「お、おう……」
ビシッと敬礼を決めてくる渡辺に、少し気圧されながら会釈する。危うく、つられて敬礼するところだったぜ……。
渡辺は気を悪くした風もなく、了解をとってから、俺と国木田が使っているテーブルまで椅子を運んできて、腰かけた。
「曜ちゃんはどうしてここに?」
「バイトだよ。たまにここでやってるんだぁ♪今、休憩に入ったところ」
渡辺は俺と国木田を見比べ、何か意味ありげに笑った。
「お二人は……デート?」
「ずらっ!?」
「いや、観光案内だ」
「ああ、なるほどね。この前、全然内浦の良いとこ言えなかったですもんね」
「いや、言っただろ……俺にとって最高の良いところを」
「あれは……ちょっと……」
苦笑いした後、彼女はこちらに身を乗り出し、自分の口元に手を添え、ヒソヒソ声で話しかけてきた。
「あの……比企谷さん、本当に付き合ってないんですか?」
「嘘言う理由もないだろ」
「まあそうだけど……」
「ふぅん……」
てか近いっての、何なの、Aqoursのメンバーって男を死地に追いやる精鋭が揃ってるの?安全圏は桜内と黒澤妹だけか。いや、黒澤妹は慣れてくれるまでのリアクションは、別の意味で死地に追いやられる。
「むぅ……」
国木田は急にハイスピードでコーンをかりかり削り出した。そのリズムは不機嫌さを表している気がするんだが……。
「あっ、花丸ちゃん……ごめんね?」
「別にいいずら」
「今度のっぽパンあげるね」
「ありがとうずら!」
あっさり懐柔された……。
俺も国木田が不機嫌になったらやろう。
「あ、そうだ!内浦のいいところなら、伝統行事とかどうですか?」
「へえ、どんなのがあるんだ?」
「そうずらね。ここは海があるから……」
「おふねひき、か」
「違うずら」
「違います」
だよね。今のところ、エナがある人に出会ってないからね!
こうして、しばらく3人で内浦と千葉についての深イイ話をした。
読んでくれた方々、ありがとうございます!