捻くれた少年と海色に輝く少女達 AZALEA 編 作:ローリング・ビートル
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それでは今回もよろしくお願いします。
下校中、Aqoursの一年生組に捕まり、いつものベンチに連れて行かれた。まじか、捕まりすぎだろ、俺。コラッタやポッポ並みかもしれん。
そして、見せられているのは……。
「私と一緒に~~~~……堕天しない?」
「「「「「しない?」」」」」
「……な、何だこれは……」
「新しいPVずら♪」
「…………」
津島が加入してから新しく制作したらしいPVには、堕天使っぽいコスプレをしたAqoursのメンバーがポーズを決めてカメラに笑顔を向けていた。何だろう、この背後の五人の無理しちゃってる感。桜内は苦笑いになっちゃってるよ。
てゆーか、津島はあれほどやめたがっていた堕天使のコスプレを結局やっちゃうのかよ。錆びついたマシンガンで今を撃ち抜くくらいの勇気だと思うんだが……。
「ルビィちゃんがとっても人気ずら!」
「そ、そうか……」
コメント欄を見ると、確かに黒澤妹へのコメントが一番多いように見える。
「スカートが短くて恥ずかしかったけど、頑張ったずら」
「……おう」
よく見ると確かに短い。あ、ワカメちゃんほどじゃないよ?なんというか、踊ったら見えちゃうんじゃないかって短さだ。丈は制服と同じぐらいなのに、何だろう、この感じ。高海とか脚が……
「先輩、なんかいやらしいずら」
「いや、そんなんじゃない。何というか、あれだ。衣装の完成度が素晴らしいな。ああ、いい感じだ」
「……口先だけで褒めてるように思えるずら」
「ま、まあ、ランキングは上がったからよかっただろ」
「あ、はい!よかったずら!」
「ぬが~~~~~!!あんた達!二人だけで話を進めないでよ!!」
津島がいきなり奇声を発し、国木田をゆっさゆっさと揺さぶる。
「善子ちゃ~ん。痛いずら~」
「お、落ち着いて……」
黒澤妹が控え目に止めに入るが、津島はまだ国木田を揺さぶっていた。
「アンタ、約束は忘れてないわよね!」
「もちろんずら~」
「約束?」
「あ、こっちの話ですよ、八幡さん」
「……そ、そうか」
まあ、仲良き事は美しき哉ってやつか。
*******
数時間前、昼休みにオラは善子ちゃんから、屋上に呼び出されました。
彼女は憂いを帯びた瞳を、海の彼方へと向けていて、風に舞う漆黒の髪をかき分けるその姿は、とても魅力的で、そんなにひと目を気にせずとも、ありのままでいればいいのに、と思えてしまう。
オラが隣まで行くと、彼女はさっそく話し始めた。
「で、どうなのよ?」
「どうなのって?」
「ずら丸……あの人の事……好きなの?」
「……はい?あの人って?」
「八幡さんよ、八幡さん!ずら丸、いつも一緒にいるじゃない!」
「…………え~~~~~~~~!!?」
予想だにしなかった質問に驚き、顔が熱くなり、頭の中が思うように働かなくなる。
「な、な、何言ってるずら~」
「当たり前のことよ」
「どこが当たり前ずら!何でそんなこと聞くずら~!」
「決まってるじゃない!私はあの人の事が好きだからよ!」
「ずらっ?」
善子ちゃんの突然の告白に、今度は頭の中がこんがらがり、訳がわからなくなりました。
「す、す、好き?」
「何、顔真っ赤にしてんのよ!アンタも高校生なんだから、1回くらい誰かを好きになったことあるでしょ?」
「マ、マルは……」
何とか記憶の糸を手繰り寄せてはみたけど……ないずら。
そもそもこれまでの学生生活は、方言や引っ込み思案な性格から、図書室に籠もりがちだった為、本の世界での恋愛しか知らないのです……。
考えていると少し落ち着いてきて、疑問を自然と疑問を口にしました。
「あの……善子ちゃんは先輩のどこが好きずらか?」
「え?何よ、いきなり……」
「その……マルが比企谷先輩を好きか、と聞かれたら、まだマルにはそういうのはよくわからないずら。だから……気になって……」
「……わからないわ。一目惚れね!」
「一目、惚れ?」
あまりに早い返答に、ついオウム返しをしてしまう。
善子ちゃんは腕を組んで、自信満々に答える。
「そうよ!恋愛に理由なんてないのよ!恋は…………ハリケーンなんだから!」
最後に何か付け足したのは余計だった気がするけど、自信を持って誰かを好きと言えるのは、素敵なことだと思います。
でも、このモヤモヤは何でしょうか?
「……ずら丸。じゃあ、アンタは私のライバルね!」
「……え?ライバルって……何の?」
聞き返すと、善子ちゃんはいつものポーズを取り、声を低くして、喋り始めた。
「ククク、堕天使ヨハネとお前のどちらが、あの方と番になるのに相応しいか、心ゆくまで競い合おうぞ」
「ずらっ?」
「それとも……私の不戦勝ということで……」
「よ、よくわからないけど、わかったずら!」
……こんな感じで、私と善子ちゃんの不思議な契約関係が始まったずら。
オラはまだ自分の気持ちすらよくわかっていないけど、それでも初めて出会った時よりずっと……あの人の隣に居心地の良さを感じているから……今はただ……。
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