捻くれた少年と海色に輝く少女達 AZALEA 編   作:ローリング・ビートル

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プロローグ3

「あと3日か…………」

 あと3日で新天地での学校生活が始まる。おかしいな。3ヶ月足りない気が…………。ちなみに親父達は既に新しい社畜生活に突入している。ったく、あと3日間ぐらいゆっくり休めっての。

「お兄ちゃん、お兄ちゃん!」

 小町が隣りに座ってくる。…………うわ、何か頼み事をしてくる時の態度だ。

 俺は沼津の共学校に、小町は浦の星女学院に編入が決まっている。小町の方はかなりぎりぎりまで悩んだらしいが、高校は千葉の時と違い、俺とは別の高校を選んだ。今回の事で、何か思うところがあったのだろうか。べ、別に寂しいわけじゃないんだからね!

「学校への道を確認しとかないと」

「そうか。いってらっしゃい」

「お兄ちゃんも行かなければいけないのです」

「まあ、まだ慣れていないしな」

 可愛い妹がまだ慣れない土地で迷子になるのも、かわいそうだ。仕方なく、外出の準備をする。

「つーか、お前の行くとこ女子校だろ?俺が行っちゃ、まずいんじゃねーの?」

「大丈夫だって!…………多分」

「おい、そこは絶対って言ってくれよ…………」

 

 バスに乗って、窓の外に目を向けると、青く澄み渡る空と、静かにたゆたう海が流れていく。その二つが水平線を溶かして合わさってしまいそうに調和しているのを見つめていると、あっという間に目的地に到着した。

「バス停からそんなに遠くはないな。これなら、大丈夫だろ」

「そだね♪じゃ、校舎探検しよ!」

「いや、しねーから」

 引っ越して1週間も経たない内にそんなドキがムネムネするようなスリルは味わいたくない。

「じゃあ、せめて校門まで!」

「へいへい」

 

「ふ~ん、結構グラウンド大きいね」

「ああ」

 返事をしながらも、視線は海へ向けている。だって陸上部とかが割と露出度高めでアレなんだもん。

「ちょっと飲み物買ってくるわ」

 

 曲がり角の辺りにある自販機前で財布を出していると、何かぶつかってきた。

「うおっ」

「ぴぎぃっ」

 やけに甲高い声で、その小動物じみた女子は呻く。

「だ、大丈夫か?」

 鼻を押さえている少女に声をかける。

「あ、はい…………こちらこそ、ごめんなさ…………」

 少女は俺を見て固まる。まるで時が止まったようだ。

 赤みがかったツインテールも、子犬のような庇護欲をそそられる瞳も、ほんのりと桃色の唇も全て停止していた。しかし、よく見たら額の辺りが青ざめているような気がする。

「お、おい、どうした?」

 片手で軽く肩をゆすった。

 しかし、それがスイッチとなったのか、少女の顔がどんどん赤くなる。そして、限界に達した瞬間…………

「ぴぎゃああああ!!!!」

 その小さな体からは想像もつかないくらいの大音量をぶっ放してきた。思わず耳を押さえてしまう。

 …………てゆーかこれ、ピンチではないでしょうか。

 あたふたしていると、背後から、凛とした声が聞こえる。

「あなた…………わたくしの妹に何をしてますの?」

 この時、確かに思った。

 悪い予感ほどよく当たる。





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