捻くれた少年と海色に輝く少女達 AZALEA 編 作:ローリング・ビートル
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それでは今回もよろしくお願いします。
日曜日も同じような練習をしていたが、前日に比べると、素人が見てもわかるくらいに、国木田の動きが良くなっていた。まだ少し足がもつれそうになる部分はあるものの、そこは高海達との練習で直していけばいい。
「はあ……はあ……」
「ほら……飲み物」
砂浜に大の字になり、寝そべっている国木田に、あらかじめ用意しておいたスポーツドリンクを手渡す。
「あ、ありがとうございます」
彼女は起き上がり、のろのろと口をつける。「んく、んく」と喉を潤していく姿が小動物っぽくてつい頬が緩んでしまった。
「よしっ、練習続けるずらっ!」
「もう少し休んだほうがいいだろ」
「全然、平気……ずらっ!?」
「!」
国木田は盛大に足を滑らせ、前方に座っている俺の方へと転んだ。
背中から抱きつくようにしがみつかれ、その際に、背中に柔らかな感触が押しつけられる。
その感触は彼女の小さな身体には不釣り合いなくらいの豊かさを誇り、その圧倒的な存在感をむにゅむにゅと俺の背中で主張していた。
いや、薄々気づいてはいたのだ。
ジョギング中……何か揺れてんなぁ、とか。
ダンスレッスン中……何か揺れてんなぁ、とか。
しかし、頑張っている女子にそんな不謹慎極まりない下劣な視線を送るなんて、世界平和を願う俺にはできない。魂が汚れるからな。なので、気づかないふりをしていたのだが……。
「……おぅ」
「せ、先輩、大丈夫ずらか!?」
「ああ……大丈夫全然平気」
やばい。はやく離れないと、これはやばい!だって男の子なんだもん!
「国木田……そろそろ立てそうか」
「あ、はい……」
国木田が立ち上がるのに合わせて俺も立ち上がり、今日も静かにたゆたう沼津の海を数秒間眺め、澱みのない新鮮な空気を肺に取り込み、身体の毒素を全て吐き出し、3回ジャンプして筋肉をほぐし、何事もなかったかのように、国木田に向き直った。
「ごめんなさい……ずら」
「さっきも言ったが、ケガしたわけでもないから大丈夫だ。むしろ、そっちが心配なんだが……」
「あ、マルは大丈夫ずら。先輩がいた、から……」
「……国木田?」
国木田はみるみるうちに顔を真っ赤にして、普段からは想像もつかない速度で駆け出した。
「オラは、オラは……なんてはしたないことを!」
「お、おい、国木田!そっちは……!」
国木田はジャージ姿のまま海へと突撃し、それを助けに行った俺もずぶ濡れになった。
こうして1週間の国木田花丸プロデュース(?)は終了した。
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「ルビィちゃん、話があるずら」
「?」
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