捻くれた少年と海色に輝く少女達 AZALEA 編 作:ローリング・ビートル
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それでは今回もよろしくお願いします。
「はあ……はあ……ずらぁ」
「お疲れ」
ゴール地点にしているベンチの前に到着した国木田にタオルを渡す。彼女はそれを首にかけ、息を整えながら、のろのろと汗を拭った。
「はあ……はあ……全然、駄目ずら……」
「……何もしないよりはいいだろ。あの時やっときゃよかったなんて思わなくて済む」
「はあ……はあ……そう、ずらね……」
始めて三日でそう簡単に体力などつくはずもなく、国木田はやや落ち込み気味だが、とりあえずは身体を動かす事に慣れるのが先決だろう。あとは……
「国木田。今日の放課後、時間大丈夫か?」
「もちろんずらっ!はあ……はあ……」
「今日はスクールアイドルの楽曲を片っ端から聴こうと思うんだが……」
「はあ……はあ……了解ずら!先輩……じゃなくてプロデューサー!」
「おう……」
何故国木田が俺のことをプロデューサーと呼んでるかって?無論、形から入るのも大事だからである。決してふしだらな理由などない。ハチマン、ウソ、ツカナイ。
「じゃあ、もう少し休んでから行くか」
「そう、ずらね」
二人してベンチに腰かけ、何の言葉も交わす事なく、突き抜けるような青空と今日も静かにたゆたう海を見ていた。
それは日常から切り離されたような不思議な感覚のする癒しだった。
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「ちょっといいかしら?」
「お、おう……」
国木田との待ち合わせ場所に向かう途中、まさかの黒澤姉から声をかけられる。手には何か紙切れが握られていて、普段の凛とした佇まいとは違い、どこか挙動不審な感じが見て取れる。
「あの……これ……」
「…………」
彼女は綺麗に折り畳まれた紙切れをこちらに差し出し、そっぽを向く。これはまさか……
「いや、そういうドッキリは勘弁してもらいたいんだが……」
「はぁ?何を言っていますの?」
俺の言葉に黒澤姉は首を傾げるが、すぐに気づき、顔を真っ赤にした。
「おだまらっしゃい!!私はそのような真似は致しませんわ!!」
「……だろうな」
「か、からかっているんですの!?いえ、それよりもあなた、考え方が後ろ向きすぎではありませんの?」
「まあ、あれだ。自己防衛本能が強いんだよ」
「……まあ、いいですわ。これを花丸さんと一緒に読んでください。参考になりますわ」
「?」
黒澤姉から渡された紙切れには、びっしりとスクールアイドルのグループ名と楽曲名が書かれていた。
あれ?そういや……
ふと沸いた疑問に顔を上げると、黒澤姉の顔がすぐそこにあった。
そして、威圧感たっぷりに口を開く。
「くれぐれもこの事は内密に……!」
「…………」
「い・い・で・す・わ・ね!」
「わ、わかった……」
こちらに質問をする時間など与えず、彼女はくるりと背を向け、声をかけてきた時とは違い、凛とした後ろ姿で去って行った。
読んでくれた方々、ありがとうございます!
それでは、今日はAqoursのファンミーティングに行ってきます!