捻くれた少年と海色に輝く少女達 AZALEA 編 作:ローリング・ビートル
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それでは今回もよろしくお願いします。
「相談?」
「はい……あの……」
「どうかしたの?」
「あ、ううん。何でもないよ」
国木田は黒澤妹に首を振った後、こちらを向き、こくりと小さく頷いた。おそらく、また後でという意味だろう。目ーとー目ーでー通じ合うー、みたいなやり取りだ。色っぽさはあまりないけど。
黒澤妹と話ながら、時折窓の外に目を向ける国木田の横顔は、さっきより少しだけ凛としていて、瞳には決意の色が宿っているように思えた。
翌日……。
「お、お、お邪魔します……」
「……なあ、国木田」
「何ずらか?」
「日曜日の朝9時に起こすのは、立派な睡眠妨害にあたると思うんだが……」
「先輩……朝9時はそんなに早くないずらよ?」
「いや、日曜日だから……」
「オラは朝5時に起きたずら」
「その話を聞いただけで眠くなってくるんだが……」
「先輩……怠惰ずら」
そんな『あなた……怠惰ですね』みたいなノリで言われても……。
「まあ、その辺に座ってくれ」
「は、はい……ずら」
例の相談の為、朝早くから比企谷家を訪ねてきた国木田。本来なら、俺の部屋などに通すべきではないのだが、またもや起こしてもらうという不覚。のどかな自然が、千葉での緊張感を失わせるのだろうか、なんて言い訳しておこう。
国木田は正座をしているものの、落ち着きがなく、キョロキョロと部屋の中を見回している。話し合い、出来るのだろうか?
「……場所変えるか」
「だ、大丈夫ずら!ここでいいです!」
「そうか……それで、黒澤妹のことだっけ?」
「ル、ルビィちゃんが 泊まりに来たずらか?」
「落ち着け、国木田。とんでもない事を口走ってるぞ」
「ずらっ!」
「……すぐ用意するから、ちょっと待ってろ」
結局、近くの喫茶店を利用することにした。
開店したばかりの喫茶店には俺達以外の客はおらず、穏やかなジャズピアノの旋律が店内のぽっかりした空白を満たしていた。
注文を済ませると、国木田はぽつぽつと自分の視点から見た現状を話してくれた。
「黒澤姉に気を遣ってる……か」
「はい。でも、やっぱり……ルビィちゃんには、自分のやりたいこと、やって欲しいずら」
黒澤妹は、どうやらスクールアイドル嫌いな姉に気を遣って、スクールアイドルを始めることを躊躇しているらしい。
ただ、あの二人の仲は良好というか、黒澤姉はむしろシスコンの気があるように思える。同族の匂いというか何というか……それと……
「黒澤姉って、本当にスクールアイドル嫌いなのか?この前、高海達にスクールアイドルの実績がどうとか言っていたが……」
「それは、マルもそう思うずら。ただ、そこは二人だけの事情もあると思うから……」
「まあ、それもそうか」
「それで、マルは……ルビィちゃんをスクールアイドルに誘おうと思ってます」
「……そうか」
「あのあの、先輩に相談っていうのはここからずら!」
「お、おう……」
「あっ……ごめんなさい」
急に身を乗り出した国木田ははっとして、すぐに着席する。
そして、深呼吸して、再び口を開いた。
「先輩……マルをスクールアイドルにしてください!」
「ああ…………は?」
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