捻くれた少年と海色に輝く少女達 AZALEA 編 作:ローリング・ビートル
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それでは今回もよろしくお願いします。
「あ、理事長!」
「……理事長?」
小町が制服姿の金髪女子を理事長と呼んだ事に、つい反応してしまう。
すると、その金髪女子がずいっと距離を詰めてきた。
「あなたが小町のお兄さん?」
「え?あ、ああ……」
近い近い近い近い!あとめっちゃいい匂い!なんか高級感溢れるといいますか……。
「……ずら」
何故か視界の端で国木田から睨まれているように感じるが、多分気のせいだろう。
「初めまして!理事長兼浦の星女学院3年の小原鞠莉デース!」
「……理事長兼生徒?」
「その通り!いわばカレー牛丼みたいなものネ!」
「い、いや、違うと思う……」
「えー!?おっかしいなー。誰も共感してくれまセ~ン」
そりゃそうだろ。
「鞠莉さんはね、小原財閥の娘なんだよ。丘の辺りにおっきなホテルあったでしょ?」
「ああ……」
確か日本どころか、世界的に有名な高級ホテルチェーンだったはずだ。
「浦の星女学院への寄付金も一番多いんだって」
「……なるほどな」
しかし、それで理事長就任とか、どんだけ学校好きなんだよ……。
考えていると、小原さんはまた距離を詰めてきた。
「あんまり目元は似てマセンね~」
「ほ、ほっといてくれ……」
「でも、これはこれでキュートかも」
「いや、んな事は……」
「ふふっ、じゃあ今日は楽しんでいってくだサイ♪」
「……どうも」
ウインクをした彼女は身を翻し、あっという間に風のように去って行った。油断できない奴だ。すごいいい匂いするし。
「先輩、鼻の下が伸びてるずら」
「……どうした?」
「知らないずらよ~」
「は、花丸ちゃん。目が恐い……」
「く、国木田?」
そんなやり取りをしている内に、やがて館内は暗転し、ライブの開始を告げた。
「楽しかったね!」
「ずら!」
「……ああ」
終演後の館内からやっと外に出ることができ、まだ土砂降りの帰り道をのろのろと駄弁りながら歩く。
短いライブだったが、トラブルやら何やらで、想定よりだいぶ長くなった。
突然の停電。
高海の開演時間間違いにより、途中から参加した大勢の観客。
黒澤姉が突きつけた現実。
そして何より、スクールアイドル3人の渾身のパフォーマンス。
何だか夢でも見ていたかのような輝かしくもふわふわした時間が、意識に妙な浮遊感を与えている。
バス停まで到着すると、国木田が隣に並んできた。
「先輩、楽しかったずらか?」
「……結構、楽しかった」
「あの、実は……」
「?」
彼女は急に真顔になると、声をひそめて先を続けた。
「オラとルビィちゃん、高海先輩からスクールアイドルに誘われているずら……それで、相談があります……」
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