捻くれた少年と海色に輝く少女達 AZALEA 編   作:ローリング・ビートル

22 / 92

 感想・評価・お気に入り登録・誤字脱字報告ありがとうございます!

 それでは今回もよろしくお願いします。


青春の影 ♯15

 

「あ、理事長!」

「……理事長?」

 小町が制服姿の金髪女子を理事長と呼んだ事に、つい反応してしまう。

 すると、その金髪女子がずいっと距離を詰めてきた。

「あなたが小町のお兄さん?」

「え?あ、ああ……」

 近い近い近い近い!あとめっちゃいい匂い!なんか高級感溢れるといいますか……。

「……ずら」

 何故か視界の端で国木田から睨まれているように感じるが、多分気のせいだろう。

「初めまして!理事長兼浦の星女学院3年の小原鞠莉デース!」

「……理事長兼生徒?」

「その通り!いわばカレー牛丼みたいなものネ!」

「い、いや、違うと思う……」

「えー!?おっかしいなー。誰も共感してくれまセ~ン」

 そりゃそうだろ。

「鞠莉さんはね、小原財閥の娘なんだよ。丘の辺りにおっきなホテルあったでしょ?」

「ああ……」

 確か日本どころか、世界的に有名な高級ホテルチェーンだったはずだ。

「浦の星女学院への寄付金も一番多いんだって」

「……なるほどな」

 しかし、それで理事長就任とか、どんだけ学校好きなんだよ……。

 考えていると、小原さんはまた距離を詰めてきた。

「あんまり目元は似てマセンね~」

「ほ、ほっといてくれ……」

「でも、これはこれでキュートかも」

「いや、んな事は……」

「ふふっ、じゃあ今日は楽しんでいってくだサイ♪」

「……どうも」

 ウインクをした彼女は身を翻し、あっという間に風のように去って行った。油断できない奴だ。すごいいい匂いするし。

「先輩、鼻の下が伸びてるずら」

「……どうした?」

「知らないずらよ~」

「は、花丸ちゃん。目が恐い……」

「く、国木田?」

 そんなやり取りをしている内に、やがて館内は暗転し、ライブの開始を告げた。

 

「楽しかったね!」

「ずら!」

「……ああ」

 終演後の館内からやっと外に出ることができ、まだ土砂降りの帰り道をのろのろと駄弁りながら歩く。

 短いライブだったが、トラブルやら何やらで、想定よりだいぶ長くなった。

 突然の停電。

 高海の開演時間間違いにより、途中から参加した大勢の観客。

 黒澤姉が突きつけた現実。

 そして何より、スクールアイドル3人の渾身のパフォーマンス。

 何だか夢でも見ていたかのような輝かしくもふわふわした時間が、意識に妙な浮遊感を与えている。

 バス停まで到着すると、国木田が隣に並んできた。

「先輩、楽しかったずらか?」

「……結構、楽しかった」

「あの、実は……」

「?」

 彼女は急に真顔になると、声をひそめて先を続けた。

「オラとルビィちゃん、高海先輩からスクールアイドルに誘われているずら……それで、相談があります……」

 

 





 読んでくれた方々、ありがとうございます!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。