捻くれた少年と海色に輝く少女達 AZALEA 編 作:ローリング・ビートル
Aqoursで一番の名曲は『待ってて愛のうた』と思っているのは自分だけではないはず……!
それでは今回もよろしくお願いします。
「ねえ、お兄ちゃん」
「どした?」
自室で読書に耽っていると、小町が少しだけ真面目そうな表情で入ってきた。何かお兄ちゃんにお願いだろうか。財布の中には300円しか入っていないのだが。
「お兄ちゃんってさ……花丸ちゃんと付き合ってるの?」
「…………は?」
「いや、だから、お兄ちゃんは花丸ちゃんと付き合ってるんですか?」
「いや、付き合っていない」
つい脊髄反射的に答えていたが、ようやく小町の言った事を理解した。
……俺と国木田が?
だが、付き合ってるという事実に心当たりはないが、そう誤解される行動には心当たりがある。
「実は……」
小町は学校での出来事を語り始めた。
『ねえねえ、国木田さんって彼氏いるの!?』
『ずらっ!?あ、いや、な、何の話?』
『昨日、他校の男子と並んで歩いてたでしょう?私達、みちゃったんだ!』
『多分、年上だよね?』
『何かこう……目は恐いけど、まあそこそこいい感じの人!』
『え?えーと、あの……』
『なになに?私も聞きたい!』
『国木田さんカレシいたんだ!可愛いもんね~!』
『そ、そんな……オラ……私は……』
『花丸ちゃん、昨日はウチの兄に忘れ物届けてくれてありがとう!』
『え?小町ちゃんの?』
『小町ちゃん、お兄ちゃんいたの?』
『うん、それで色々あって花丸ちゃんとも顔見知りだったから、忘れ物届けてもらってたの。私、用事があったから』
『何故放課後……』
『家で渡せば……』
『花丸ちゃん、ありがと~!!』
「お、お前……無理ありすぎんだろ……」
妹の言い訳の下手さに涙が出ちゃう。だってお兄ちゃんなんだもん……。
「ごまかせたんだから文句言わないの。小町としては、二人が仲良くなるのは嬉しいけど、花丸ちゃんがああいう状況に慣れてないんだよね。」
「俺も慣れてないんだけど」
「お兄ちゃんは慣れてるじゃん。もっとひどい冷たい視線とかにも」
「お、おう……」
妹としてそれは胸が痛まないのか。
「じゃあ、お兄ちゃん。後はよろしくね」
「おう……悪かったな」
「いいよ。それじゃ、おやすみ~♪」
小町がドアを閉めてから、改めて考える。
そんな広い町ではないし、確かに誰かに見られていてもおかしくはない。自分達がどう思っていようが、周りは勝手に判断するだろう。新天地で気が緩みすぎていたのかもしれない。
去年の夏頃、似たような事があった。
あの時は泣かせてしまった……。
明かりを消して、ベッドに寝転がり、天井を見つめながら、俺は国木田に伝えるべき言葉を探した。
読んでくれた方々、ありがとうございます!