捻くれた少年と海色に輝く少女達 AZALEA 編   作:ローリング・ビートル

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青春の影 ♯10

 転校してから2週間も経てば、さすがにある程度クラス内での立ち位置も周囲により勝手に決められてくる。俺は相も変わらず絶好のボッチポジションを確保していた。必要最低限の干渉しかしないのは、これまでと変わらずで居心地がいい。

 しかし、最近変化が起こった。

 今日も真っ直ぐ帰宅すべく、校門を出て、自転車に跨り、自転車を少し走らせていると……

「比企谷先輩!」

「?」

 声のした方を振り返ると、そこには国木田がいた。

 鞄の肩紐の部分を両手でぎゅっと握り締め、小走りでこちらに駆け寄ってきた。

 そう。ここ最近は、2、3日に1回は国木田と帰り道に遭遇する。そして、そのまま彼女が利用するバス停まで、並んで歩くようになった。

 その間、国木田は以前ショッピングモールへ一緒に行った時よりも、自分から積極的に話し、こちらの学校の事を頻りに聞いてくる。

 傍から見れば、知り合い同士が偶然出会い、一緒に途中まで歩いているだけだ。

 だが、腑に落ちない点がある。

 そもそも、国木田の帰る方角とは真逆に俺の通っている学校がある。しかも国木田の家は、真っ直ぐ帰宅したとしても、結構な距離があるらしい。本屋の場所も特に近いわけではない。

 仮に自惚れてみて、それを好意と受け取るにしても、理由がなさ過ぎる。出会って1ヶ月も経っていないし、一目惚れされるタイプでもない。

「先輩?どうかしたずらか?」

「いや、何でもない。それで……なんだっけ?」

「聞いていなかったずら!むぅ……」

「悪い。ぼーっとしてた。もう1回聞いていいか?」

「マルのクラスの話ずら。善子ちゃんっていうオラの幼馴染みが、入学式の次の日に色々あって、学校に来なくなったずら」

「……それは早すぎないか?」

 入学式翌日とか、せいぜい自己紹介するくらいだろ。よほど中学時代の人間関係を引きずっているなら話は別だが、そういう奴は大概、人間関係をリセットすべく、少し離れたレベルの高い高校へ通う。ソースは俺。

 国木田は何かを思い出すように遠くを見て、逡巡する

素振りを見せたが、やがて、 ぽつりと呟いた。

「実は善子ちゃん……」

「…………」

「自分の事を堕天使だと思ってるずら」

「そうか……へ?」

 今、会話の内容にそぐわない単語が出てきたような……

「自己紹介の時に、『貴方も堕天してみない?』なんて言い残して、教室から出て行ったずら。それきり……」

「…………」

 マジか。材木座の女版みたいなのがいるのか。

 いや、あいつがしっかり学校に通っているのだから、その善子ちゃんとやらも、何かきっかけがあれば……しかし、国木田に材木座の話なんぞ振るのは……そもそも、何で国木田は……。

 頭の中を幾つもの考え事でごっちゃにさせながら、今日もバス停にバスが来るまで、だらだらと話し込んだ。

 

「な、何でずら丸が私の番となるべきサタンと……いえ、私の愛しい人と……てゆーか、これってストーカーみたいじゃない!でもあと10分だけ……うふふ……」




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