捻くれた少年と海色に輝く少女達 AZALEA 編   作:ローリング・ビートル

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青春の影 ♯8

 

 結局、俺達は店員に押し切られ、中に入る事になった。店内には、想像していた通りに若いカップルで溢れ、正直居心地の悪さを感じる。オシャレなインテリアも大きな窓から見える見晴らしのいい景色も、何故かその気持ちを増幅させた。一方、国木田は……

「未来ずら~♪」

「……おーい、国木田……」

「比企谷先輩!天井でプロペラが回ってるずら!未来ずらよ!」

 シールズファンの事だろうか。確かに金持ちの家ってイメージはあるが……。

「はっ……マ、マルったら、また……ごめんなさい」

「気にすんな……」

 はしゃぐ国木田はこの上なく浮いていたが、店内の客はお互いの相手に夢中で、冷たい視線も特に感じなかった。

 しかし、俺と国木田は同じ時代を生きてるはずなんだかな……。

 

「お待たせしました。カップル限定スペシャルドリンクです!」

 女性店員さんが元気よく持ってきた飲み物には、やはり一つの洒落たグラスに、二つの大きなストローがささっていた。

 国木田はそのグラスをポカンと見つめている。幼い子供みたいな表情は、この状況じゃなければ頬を緩められそうだ。

 やがて彼女は小さな桜色の唇を開く。

「え~と、これ……なんですか?」

「あー……カップル限定スペシャルドリンクだ」

 国木田の問いに単純な答えを返す。

 最初は上手く状況を飲み込めていなかった彼女も、グラスに聳え立つ二つのストローの意味に気づき、頬を一瞬で真っ赤にさせる。

「こ、こ、これは……この前読んだ……図書館で人気の恋愛小説に……あわわ……」

 こいつ……のっぽパンに気を取られて、何も考えてなかったな……。

「ああ……まあ、これはお前が飲んでも……」

「そ、それは駄目ずら!」

「?」

「こ、これも何かの巡り合わせ……神様のお導きずら……」

「……なんか大袈裟すぎないか?」

「予想しない事が起こるのが人生ずら……さ、さあ、先輩も、どうぞ……」

 そう言って、ストローを咥え、真っ直ぐな眼差しを向けてくる。どう考えてもおかしな展開でしかないのだが、無駄に真剣な表情の国木田を見ると、それもつっこみづらい。

 ……つーか傍から見れば、男の俺が尻込みしているようにしか見えない。何これ、ハチマン、イミワカンナイ!

 半分くらいやけくそ気味にストローを咥え、中のひんやりした液体を吸い上げる。

 国木田も同じように、やたらと勢いよく吸い上げたため、あっという間に飲み干してしまった。

「お、美味しかったずら……」

「あ、ああ……」

 顔が熱いのをごまかすように、窓の景色に目をやる。その自然豊かな景色に思いを馳せ……る間もなく第二陣がやってきた。

「お待たせしました!ラブラブのっぽパンです!」

「「!」」

 俺と国木田はただただ驚愕した。





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