捻くれた少年と海色に輝く少女達 AZALEA 編   作:ローリング・ビートル

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  思いつきで書きました。
  のんびり更新していきます。


プロローグ

「ヒッキー。元気でね…………」

「ああ…………」

 千葉駅には、俺の家族と由比ヶ浜、一色、戸塚、材木座、川崎、平塚先生等の、関わる機会の多かった人間や、意外にも、葉山グループのメンバーまで来ていた。

「せんぱ~い…………」

「だから泣くなっての」

「だって~…………」

 こんな時まであざとい奴かと思ったが、割と涙の量が多いので、慌ててしまう。

 困っていると、戸塚が近寄ってきて、手を握ってくる。

「八幡、向こうに行っても連絡してね。僕からもするから」

「もちろんだ。毎晩してやる」

 何ならモーニングコールも追加してやる。

「は、八幡よ。何なら我も…………」

「ああ、それつまんね」

 こいつも相変わらずである。泣くなよ。絶対だぞ。

「そういや…………」

 一応を周囲を確認する。

「あ、ゆきのんは…………」

「そっか…………」

 雪ノ下も家の事でトラブルを抱えている。それが何なのかまではよくわからずじまいだった。そして、それが気がかりだった。

「ヒッキー、心配しないで!」

 由比ヶ浜は拳をぐっと握り、胸の高さまで上げる。

「ゆきのんの事はあたしが何とかする!だからヒッキーは自分の家族の事だけ考えてればいいんだよ!」

「悪い…………」

 由比ヶ浜の強さに甘える形になったのを申し訳なく思いながら、既に電車に乗り込んだ家族の事を思う。

『すまん』

 家族に申し訳なさそうに謝る父の姿。別に俺達に謝る必要などないのに。

 ざっくり説明するなら、親父は左遷された。

 上司の大きなミスの責任を押しつけられる形での左遷。

 あんだけ社畜として頑張っていたのにこの仕打ち。やっぱり仕事なんてするもんじゃねーな。

 そんな事を考えている内に、何かしてやれないか、とか柄にも無いことを考えてしまった。

 結果が、親父の単身赴任ではなく、家族総出の引っ越しだ。俺が何か言い出す前に、母ちゃんと小町も同じ事を考えていた。意外な所で家族とは似るものである。悪くない。

「まあ、色々あるだろうが、新天地でも頑張りたまえ」

 平塚先生が頭をポンポンと叩いてくる。

「いや、何もないでしょう。3年だから受験勉強やるだけですよ」

「しかし、君だからなぁ」

 嫌な信頼である。

「君の事だから、また転校先でも誰かを変えていくのかもな」

「買い被りすぎだっての。じゃ、時間だしそろそろ行くわ」

「じゃあね、ヒッキー」

「八幡、夏休みにでも遊びに行くから」

「ぐす…………はち…………まん…………」

「先輩、富士山登りに行くついでに見に行ってあげますから」

「…………ありがとな」

 その場にいた全員に、しっかりと頭を下げた。

 そして、振り返る事はしなかった。

 

「お兄ちゃん、海綺麗だよ!」

「ま、千葉にも負けてないんじゃないか」

 MAXコーヒーを飲みながら、窓の外に目を向ける。

 さっきからずっと海は見えていたが、静岡県内にはいってから見ると、どこか違った輝きを放っているように見える。

「泳ぎ行こーよ」

「いや、死ぬから。死んじゃうから」

「ダイビングショップもあるみたいだよ」

「聞いてねぇ…………」

 しかし本当に緑も多く、気持ち良さそうだ。

 降りたら真っ先に深呼吸をしよう。

 

「千歌ちゃん。どうしたの?」

「あの人達、引っ越してきたのかな?」

「う~ん…………そうみたいだね!」

「この街のいい所…………いっぱい見つけて欲しいなぁ」

   

 

  






  読んでくれた方々、ありがとうございます!

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