Fate/kaleid liner エドモン☆ダンテス2wei! 作:雛宮メリー
帰宅しました。
学校では大して何も起こらなかったよ。
「エドさん、その…さっきの話は本当ですか…?」
「あぁ。クロはどうやらイリヤを殺すことを目的としている」
どういうわけかは知らんが、な。
メル子は青い顔をした。
「うぅ……ホントにクロさんを家に置いて大丈夫なんですか?」
「………なんでかさ、あいつは大丈夫だと思うんだ。
今はイリヤを殺そうとしてるけど、どうしても俺にはあいつを憎むことが出来ない」
ホントなんでだろうな。
あいつを嫌いになりきれないんだ。
攻撃の時もどうしてか手心を加えてしまう。
「……まぁ、エドさんがそう言うなら私に異論はありませんけど」
「悪いな、メル子。多分、これは俺の初めての我儘かもしれん」
「エドさんの突拍子も無い行動なんて今更ですよ」
やれやれ、とでも言うような様子のメル子。
そんな彼女が、今の俺にはありがたかった。
「さて、それじゃあいっちょ腹くくりますかね」
気付けばもう家の前。クロとの対話はすぐそこだった。
ーーー
「………その、さっきは悪かったわね」
「え?」
玄関で出くわしたクロは開口一番、謝罪の言葉を口にした。
「わたしは目的を語らない契約とはいえ、エドを巻き込む形で襲いかかったのはわたしからだもの」
「あー、うん。そーゆーことね」
つまりクロの目的はイリヤであって俺では無い。
俺とはあくまで円滑な関係を望んでいるのだろう。
だからこそ、よりにもよって
「雇用条件について詰めてた時にも言ったろ?
俺は相当量の魔力があるからお前とかち合っても自衛くらいは出来る」
ホントは無限にあるが、それは置いておこう。
「つまり、アレだ。俺は怒ってない。だからクロも非を感じる必要はない。
分かったらハウスキーパーらしく家事の一つでも覚えるために勉強しなさい」
「……うん。ありがと」
さて、話も片付いたことだしクロに家事を教えながら、夕飯を作りますかね。
「エド」
不意にクロに名前を呼ばれたので思わず振り返る俺。
「な…んっ!?!」
「ちょっと、クロさん!?」
クロの顔がドアップ。
それからすぐにクロは飛び退く。
「………その、お詫びよ」
「お詫びって……なんのだよ…」
「は、破廉恥ですっ!」
小学生女児に頬をキスされたくらいで動揺する俺ではない。
今のはただの親愛の証。それにこいつは魔力供給のために女の子の唇を奪うキス魔…って、そういえばそれで思い出した。
「ところで、クロ」
「ん?」
「お前、イリヤの内側にある魔力の元が顕現したようなモノかね?」
クロが魔力を常に消費して顕現していると聞いた時、最初に想像したのは魔力供給が行われないマスター不在のサーヴァントである。
イリヤの弱体化、クロの消費され続ける魔力。
そして、俺が元から知っているstay nightの知識から来るイリヤの正体が、この世界でも同じものだとするならば……。
これらから考えると自ずと答えは見えてくる。
「短時間でよくもそこまで気付けたわね」
「正直、断片的な言葉からこの答えを出すのはいささか気が逸りすぎかとも思ったが……そうか」
だとしたら、クロの魔力については解決方法がある。
「俺とサーヴァント契約しないか?一応、魔力には困らなくなるぞ」
俺の持つ無限の魔力。それを生かせばクロの魔力消費くらいは問題ない。
どれだけ使っても底がないから俺に命の危機はない。
「そ、そこまで甘えるわけにはいかないわ!!第一、多いといっても常に使い続ければエドだって魔力切れを起こすでしょ!」
「……むつかしいな」
甘えではないんだがな。
あくまで効率を考えた結果、魔力を常時供給した方が便利だしキスする手間も省けて一石二鳥だと思っただけだし。……あぁ、俺の魔力のことはそういえば「とにかく多い」としか言ってなかったな。
「とにかく、いつも通りでいいわよ。
わたしはここでハウスキーパーをやりつつイリヤを殺す」
「そんでもって俺はお前に活動拠点を渡しつつ、イリヤを守る」
「って、それじゃあ意味ないじゃない!!」
結果、クロは俺が冬木にいる限り目的は達成できず、俺の家でハウスキーパーをやり続けるはめになる、と。
「なんていうか、エドさんがとても悪い笑みを浮かべています……」
「ヤダナァ、メル子。キノセイダヨ」
「めっちゃカタコトですっ!?」
とにもかくにもこうして各々のスタンスが決まったのだった。
クロは終始一貫イリヤの殺害。
俺はそんなクロからイリヤを守る。
対立してるわけではないが、目的が互いに正反対。
これからどうなるのやら。