大有双   作:生甘蕉

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8話 マンモス

 Jヒロインズに渡したビニフォンから、華琳ちゃんが残したメッセージが立体映像で再生される。

 なんかスターな戦争の出だしを思い出すね。

 どうせなら渡したビニフォンをあのロボ型にしておけばいいのに。

 

『このビニフォンには解錠魔法が効かない。すなわち、私がカリン・ブーンと融合してしまったか、少なくともカリン・ブーンがそこにいるということ』

 解錠の魔法ってレベルが高いといろんな鍵を開けることができるようになる。たとえコンピュータのパスワードでもね。

 それに気づくまで華琳や七乃が俺のノートパソコンを勝手に使えてた理由がわからなかったんだよ。いくらパスワード変更しても無駄。指紋認証も鍵扱いだから無効化されてさ。

 

 おかげで、やばそうなのはインターネットにも使わない別のノーパに退避させて、普段はスタッシュにしまいっぱなしにするしかなかった。

 解錠魔法に気づいた後はヴェルンド工房の連中と一緒にビニフォンを改良したり、FXギアや他のロボの認証にも対策つけたりする羽目になったよ。

 

『あなたたちの状況が私と同じならば、世界は……多くの異世界とともに攪拌(シャッフル)されている』

 まさにスーパーロボット大戦のZシリーズの多元世界っぽいなあ。

『Dimension Shuffleと今は呼んでいるあの爆発によって、多くの世界は融合や入れ替えが起きてしまった』

 Dimension Shuffle……次元攪拌か。DSね、世界が融合してるんだからWorld Shuffleじゃ駄目なの? 略称WS。どっちにしろ携帯機か。

 

『融合は世界だけではない。私のように人間さえも融合する』

 そうなんだよね。使徒やファミリア、その候補同士が異世界の同一存在と接触した場合は弱い方がカードになるはずなんだけど、華琳ちゃんの場合はまるで合成を使ったかのような状態になってしまっている。

 そもそも華琳ちゃんとカリン・ブーンが同じ存在だったのかってのも疑問なんだけどさ。

 

『人間やその他の物の融合にはパターンがあるわ。融合する前のどちらにも共通点が存在する』

「共通点?」

『多くは名前。たまに別の共通点』

 カリン・ブーンと華琳が融合したのは名前が同じだからか。

 グランゾンとの戦いを促す時にも「名は体を表す」って言ってたけど、そういうこと?

 

『煌一クンも確認してごらんなさい。あなたは真玉橋孝一と融合して……』

「マジですか?」

 慌ててビニフォンで俺のプレイヤーシートを呼び出して確認する。

 華琳ちゃんが「Hi-ORu粒子」とかネタ振りしてきたのはそういうことだったなん……おや?

 俺の名前は天井煌一のままなんですけど。

 

『……ないはずね』

「フェイントかよ!」

 これ本当に録画なの?

 

『もしも煌一クンが本当に真玉橋と融合していたら、その時は私たちとは違う流れになったということ。この話はあまり参考にならないかもしれないわ』

「どうやら少しは役に立てそうな情報なのかしら?」

 華琳ちゃん、俺を鑑定して名前を視たのか。ファミリアになったばかりなのにもうスキルを使いこなしてるよ。

 いくつものゲームのプレイ経験がある分、華琳よりも慣れるの早いかも。

 ……華琳も早かったか。

 

『私だけではなく、他にも多くが融合してしまっている。中には、融合した相手に引っ張られて記憶が曖昧な者もいるわ。探し出しなさい』

 華琳ちゃんも記憶が混乱してるとか言ってた。今まで合成してきた嫁さんたちはそんな様子はなかったけど、それは完全に同一人物だったからなのかも。

 

『あなたたちが跳ばされた場所については、予言にあった、心残り、が大きく影響しているとみているわ。見つからない者を探すのは、そのことを念頭に入れなさい』

 心残りか。それが跳ばされた先に影響がある?

 俺や華琳ちゃんがここに跳ばされたのにも理由があったりするんだろうか。

 

『爆発時にエクサランスがいたせいか、跳ばされた皆には時間差がある。すぐに全員が見つかることはないでしょう』

 その辺もオーガスの時空振動弾と同じか。

 俺たちが使徒とファミリアじゃなかったら、娘が出てきたりしそうだよね。

 

『皆を探しつつ、戦う準備を進めなさい。地球には敵が多すぎるわ』

 敵、ねえ。スパロボだったらそうなんだろうけど。

『そして救済は戦いだけではない。マ†・エロースもそのために建造された方舟。……もっともこれは別の煌一クンが用意しているでしょう』

 ホワイトかファイヤーか。その別俺が、予言にも用意しろっていわれた方舟を建造するのか。

 さっきちょっと乗った艦をそのまま使うんじゃないのね。それだと、タイムスリップものにありがちな、誰が最初に造ったかわからないってことになるもんな。自分が自分の祖父になる、みたいなさ。

 

『これ以上は、あなたたちの行動を制限しそうだからこの辺で止めるわ。ちゃんと覚えたわね? このデータは自動的に消滅する』

「ちょっ!」

 俺は慌ててコタツの上のビニフォンを手に取り、車外へ出ようとする。

 

『別にビニフォンごと爆発したりはしないから落ち着きなさい。それでは、あなたたちの健闘を祈る』

 バシュッと大きな音を立てて、華琳ちゃんの映像が途切れた。映像停止だけではあんな音は普通しないから演出なんだろう。

 ビニフォンをカティアちゃんに返して「焦って損した」と笑って誤魔化す。いらん恥かいちゃった。

 

 

「たしかにデータは消えているようね」

「あの台詞言うためだろ。消す必要あるのか?」

「さあ? 私にはわからないわ」

 自分でしょうに。でも華琳ちゃんが微笑んでいるようにも見えるから、本当は理由がわかっているのかもしれない。

 

「名は体を表すかあ」

「融合相手が予想できる者もいるわ。JやK、Rに出てきた者と同じ名前の」

 そんなにいるかな?

 ……スパロボは登場人物も多いから、同じ名前ってのもいるか。

 

「まず、確実そうなのは冥琳ね」

「あっ!」

 冥琳は、無印冥琳がぬいぐるみにされてた時に擬似契約空間で華琳ちゃんと会っているから真名を交換してたんだよね。

 

「メイリン・ホーク!」

「そう。スーパーロボット大戦Kならば、機動戦士ガンダムSEED DESTINYも参戦している。可能性は高いでしょうね」

夫婦交換(スワッピング)に巻き込まれたくないから、種ガンには関わりたくなかったんだけどなあ」

 冥琳がメイリンか。

 あれ? カリン・ブーンとメイリン・ホークって声が同じじゃなかったっけ。

 

「ツインテールの冥琳は見てみたいわね」

「どうなんだろう、華琳ちゃんはあまり外見が変わってないから冥琳もそうなんじゃ? ……でも俺も見たいな」

 雪蓮も喜んでビニフォンで撮影しまくりそう。

 って、雪蓮が一緒かどうかもわからないのか。

 

「雪蓮……はちょっと融合相手が思いつかないな、逸れてなきゃいいけど」

 冥琳というブレーキのない雪蓮はちょっと考えたくない。

 せめて祭がついていてくれよ。

 

「他にも楽進がシン・アスカというのも考えられる」

「真名じゃないのもありなのか? それに性別が」

「可能性の話よ」

 凪が種運命の主人公(笑)になっているなんて……男やフタにもなっていてほしくないんですが。

 でももしそうなら妹さんは助けてあげたいな。

 

「この()()にもいるのではないかしら?」

「でもビニフォンにも探知にも反応がないよ」

「時間差があると聞いたばかりでしょう。これから融合することもありうる」

 そうか。そうなるとその相手を探せばいいのかな。

 ここは地球って名前だけど、俺たちの地球じゃない惑星なんだよね。

 

「この地球がKのあの地球だとすると、キングゲイナー、ゾイドジェネシス、ガン×ソードのキャラか」

 誰がいる?

「部分的な名前の一致でもいいのならシンシア・レーンは楽進、霞、恋の誰と融合してもおかしくはないわね」

「3人全員が融合してないことを祈ろう」

 名前の一部でいいんだったら華琳ちゃんのお兄さんになったアスハムのハムで、ハム孫賛で白蓮ってのも……ちょい無理がありすぎるか。

 

「レ・ミィちゃんが美以ちゃんとならわかる気がする」

 川で魚獲りしたり、丸焼き姫だったりする野生的なイメージだから違和感ないし。ロリだし!

「ゾイドジェネシスならばコトナ・エレガンスがほしいわね」

「融合相手の話でしょ」

「コトナ・エレ顔ス……顔良か厳顔のどちらかなら融合しないでほしいわね。そのままがいいわ」

 コトナには双子の妹リンナ・エレガンスもいたから、桔梗と斗詩が姉妹になってる? なんか違う気がする。

 

「ルージ・ファミロンは声が魏延と同じよ」

 中の人が同じで融合って……ありなのか? 桔梗(コトナ?)焔耶(ルージ?)でセットにはなるけど、ショタっ子が巨乳さんになっちゃったらさすがに家族もびびると思う。

 ルージの家族っていえば、あのお母さんは可愛かったよな。

 

「声って……名前以外の共通点でも考えた方がいいのかな? 性格とかさ」

 性格が似てるんなら融合しても違和感は少ないはずだ。

「性格が同じ、というのならこの3人もね」

「へ?」

「私たちがなにか?」

 突然話を振られてビックリしているJヒロインズ。

 

「おっとり巨乳、委員長気質、腹ペコ。ほら、どこかの義姉妹と同じではなくて?」

 それだけ見るとたしかに桃香、愛紗、鈴々っぽいけどさ。メルアは腹黒じゃない……のかな?

 

「腹ペコってアタシ?」

「……そろそろ晩御飯にしようか」

「そうね」

「お腹すきました」

 テニアちゃんの質問は軽く流すみんな。言わずもがな、ってことなんだろう。

 

「毛長象を獲ってきなさい。輪切りにするわ」

「マンモじゃないでしょ、あれは。どこにいるかもわからないし、そんな時間もないって」

 キングゲイナーの毛長象か。俺も食ってみたいけどさ。マジで輪切り肉にできたら、喜ぶ嫁さんも多そうだ。

 機会があったら狩猟してみますかね。

 

 

「寒いから鍋もいいんだけど、コタツが小さいからまた今度ね」

 みんなが鍋を囲んで、俺だけハブられてるのも別にかまいはしないのだけど、みんなの方が気にしておいしく食べてくれないかもしれない。

 あとで大きなコタツを用意しよう。ヤーパンの天井なら売って……ないだろうな。成現するしかないか。

 

「はい」

「ありがとう」

「おかわりもあるぞ」

 大鍋ごとスタッシュに入れといたそれをよそって、みんなに渡す。

 シチューだから死亡フラグにはならないよね。

 

 そういえばスーパーロボット大戦Rにも母さんのシチューってアイテムがあったっけ。

 SPを回復するアイテムだったけど、俺たちの場合はEPを回復してくれるんだろうか? 嫁さんたちの美味しい料理を食べればEPも回復するし。

 だけどEPは気力扱いな気もしてくる。どっちかな。

 

 精神コマンドもどうなってるのか不明だ。使ってくるやつがいるのか? それとも俺たちも使える? 試してみる必要があるな。

 効果で考えるとスパロボ世界のSPは俺たちのMPかCPに対応してそうだ。

 

 ……以前に左慈と戦った時にこちらの攻撃が全く当たらなかったけど、もしかしたら、完全回避な精神コマンドの『ひらめき』を使っていたのかも。

 

 食事の後は明日の予定を相談。それが終わったら、俺は外にテントを立てて寝る予定だ。

 さすがにキャンピングカーで4人の美少女と一緒に寝るのはマズイ。

 

「まずはエリアZiにいかなきゃいけないのか」

 キャンピングカーをとめたこの辺ではゾイドを見かけてないから、ここは違うと思う。

 エリアZiは高い山脈と強力な磁気嵐によって遮られているんだった。なにで飛んで越えればいいかな。

 

 磁気嵐で危険だから、俺がリュウジンオーに変身してエリアZiにたどり着いてからポータルで呼べば……ポータルは使徒かファミリアじゃないと駄目だった。

 

「カリンと融合した華琳ちゃんにEPを注入してもらって、これのかわりのシルエットマシンを成現すればこの惑星でも目立たないかな」

 シルエットマシンってのはキングゲイナー世界のほとんどの乗り物の総称。オーバーマンは違ったんだっけかな。

 

「どうせならシルエットマンモスの方がいいわ」

 シルエットマンモスは超大型のシルエットマシン。キングゲイナーでは都市ユニットを引っ張っていた。戦艦みたいなのもあったな。

「できないこたないだろうけど、目立つよ。それに操作も大変じゃないかな?」

「そう。残念ね。移動式の後宮はまた今度にしましょう」

「そんなこと考えてたの?」

 早く春蘭と秋蘭、桂花と合流しないと華琳ちゃんが欲求不満になっちゃうんじゃないか? Jヒロインズも危険かもしれん。

 

 

「この惑星は私たちの地球じゃないのよね。地球には戻れないの?」

 不安そうなカティアちゃん。記憶は曖昧でも地球には帰りたいんだろう。

「戻るよ。地球の方が跳ばされた嫁さんが多いだろうし」

 スパロボKだと、地球とこの惑星が超空間ゲートで結ばれていたんだったよな。時期がくればきっとそのゲートもできるだろうけど、それを待つつもりもない。

 地球の位置さえわかれば、移動手段を用意してなんとか帰れるはず。マ†艦が見つかればフォールド航法もできるだろうし、なんなら俺が成現すればいい。

 

「地球に跳ばされた嫁さんと連絡がつけば一番なんだけど……」

 途中で鳴り響く着信音。

「噂をすれば影、ね」

 華琳ちゃんの言葉を聞きながらビニフォンを確認する。

 ねねちゃん?

 

「……もしもし」

『なにやってやがるのです!』

 繋がったとたんに怒られちゃった。恋と逸れて気が立っているのか?

 

「落ち着いて、ね」

『これが落ち着いていられるですか! なんでお前がBF団の首領なのですか!』

「はいぃ?」

 BF団? あの悪の秘密結社?

 その首領って、ビッグ・ファイアだよね。

 俺が、って俺の分身がビッグ・ファイアやってるの?

 まさか融合しちゃったの?

 

 




桃園のJヒロインズってのもちょっと迷いました

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