大有双   作:生甘蕉

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7話 1秒で了承

 OVERMANキングゲイナーの登場人物、カリン・ブーンと融合したという華琳ちゃん。

 彼女はこの世界がスパロボKだという。

 

 スーパーロボット大戦K。

 版権作品のキャラが違う。主人公キャラの性格が酷い。シナリオに矛盾がありすぎるなど、評価が低いゲームだ。

 主人公はネタキャラとしてスパロボファン以外からも知名度の高いミストさん。

 Kは携帯のKらしい。別のKだといわれる時はあまりいい意味のKが使われることはない。

 

 それが、この世界?

「たしかに参戦作品にキンゲもあったけど。Zシリーズにも出てたじゃないか。時空振動弾が使われた後の世界なんだから、あっちの可能性の方が高いような気がするよ」

「まだ少し記憶が混乱してるのだけど、この地球にはエリアZiが存在するのは覚えているわ」

「エリアZi……たしかにKっぽいな」

 メカ生体であるゾイドたちが暮らす惑星Zi。

 ゾイドシリーズの舞台なんだけど、スパロボKではその惑星Ziと、キングゲイナーの舞台の地球、それにガン×ソードの舞台の惑星EIが、1つの惑星に合成されて、もう1つの地球、って呼ばれていた。

 

「Kかぁ……」

「Jの3人娘もいるからJKってところかしら」

 なんか別のものを連想させそうな……。それにRが抜けてるし。

 RJK……龍驤改?

 

 ショックを受けている間に華琳ちゃんはファミリアシートに記入を終えて無事に俺との契約が完了、ファミリアになってくれた。

「これが私のデータね」

「マジで華琳・ブーンになってる……」

「あら、あなたが気にしてるのはここじゃなくて?」

 華琳ちゃんが指差した欄には処女の2文字が。

 ファミリアシートってこんなことまで記入されてしまう。履歴書以上に細かすぎる。

 そっちの経験の有無で装備できるかどうかが決まるアイテムや、なつくモンスターがいるから、らしいんだけど本当のとこはどうなんだろうね。どっちもまだ見てないよ。ユニコーンなら翠や白蓮が乗りたがるかな?

 

「そういえば冥琳が合成された時も処女に戻ってたな」

「融合前から経験はないわよ」

「そりゃそうか。……カリン・ブーンの方は?」

 つい聞いてしまった。よく考えたらセクハラ発言だ。

 

「シスコンのアレが男を近づけさせてないわ。ゲインはアレが親友と認めていたから例外だったのでしょう」

 なるほど。役に立ってるじゃん、さすがカリン・ブーンのお兄さん。

 あでも、そのゲインは彼女を捨て、子供ができてることすら知らなかったから、そうでもないのか。

 

契約空間(ここ)を出たらすぐにポータルで移動するわよ」

「家族にメモぐらい残しておいた方が。俺が誘拐犯みたいに手配されるのも困るよ」

「いいのよ。手がかりは与えないわ。頃合いを見計らって、私がゲイン・ビジョウと一緒にいたとでも情報を流せば、アレはアニメと同じ行動をするはずよ」

 さっきからアレって……君のお兄さんになってるんじゃ? 華琳ちゃんの部分では認めるつもりはないんだろうなあ。

 

「別にアニメと同じにしなくてもいいような?」

「歴史の流れを変えたってあなたが消えたりしないかしら?」

「ああ、真・恋姫の魏ルート一刀君みたいにか」

 それは考えてなかった。

 真・恋姫では魏ルートのみ一刀君は歴史を変えたせいなのか、消えちゃうんだった。

 

「うーん、スパロボRだと過去に行った主人公たちのせいで技術革新が起こったり、ザンボット3の子が死ななかったりって歴史が変わってたから問題はないような気もする」

「恵子は助けたいわね」

「そもそも俺は使徒だしさ、世界の救済ってことで流れを変えるのが仕事なんだよね」

 それで消えちゃったら救済なんてできるわけがない。

 

「そう。それならばもっと大きく変えるのもいいわね」

「胸の痛みのような前兆に注意か。ビニフォンで状態異常をこまめに確認することにして……大きく変えるってなにか予定はあるの?」

「この世界の美少女を集めるわ。死すべき運命だったとしても覆して」

 ああ、華琳ちゃんは無印恋姫の曹操。天下の女の子を独り占めにするために魏を作っちゃうような子だったっけ。

 

「あのね、まずは俺の嫁さんたちを探さないといけなくてね」

「彼女たちもいいわね。ほしいわ」

「あげません! 俺の嫁です!」

 嫁さんそっくりな子に嫁さん寝取られたくない。

 もしかして華琳ちゃんをファミリアにしちゃったのは間違い?

 

「問題はあのチョーカーね」

「ちゃんと同性にも反応するようになってるんだから、変なことしちゃ駄目だよ。あ、華琳ちゃんにも渡しておくね。今のよりもいいやつだから」

 大量生産した一般向け用の特殊チョーカーを手渡す。華琳ちゃんには初めて会った頃に渡してあり、今も使ってもらっているが、改良型の方がいいだろう。

 

「どうせならもう1人の私たちと同じのをよこしなさい。あちらの方が強力なんでしょう?」

「そうだけど、あれは嫁さん専用。外せないし、攻撃しちゃうから」

 一般用は精神防御他の耐性向上や能力強化はあっても、直接的な攻撃機能はない。取り外しも装着者の意思で可能だ。

 

「嫁ねえ……あなたの妻同士ならチョーカーも反応しないのだったわね」

「そうだけど?」

 嫁さん同士で反応しちゃったら()()時やお風呂が大変でしょ。あと、今はまったく機能してないけど、子供や孫だと判定がゆるくなる様にも設定してる。男の子が生まれた時に母乳もあげられないんじゃ困るからね。

 

「わかったわ。私の夫になりなさい、煌一クン」

「プロポーズされた? しかもなんて男らしい……」

「1秒で了承なさい。それともまさか嫌だとでも?」

「ちょっと……ううん、正直な話、すっごく嬉しい! 華琳ちゃんも好きだし、華琳に浮気されてるような思いをしないでもすむようになる」

 だって華琳と華琳ちゃんは同一人物だからさ。華琳とは違うってわかっていても簡単には割り切れないよね。

 

「了承と受け取るわね」

「だが断る」

「なぜ? ……その台詞を使いたかっただけではないのかしら?」

「違うよ。俺は愛のない結婚は嫌なの!」

 言いたかったのも確かだけどさ。

 それにプロポーズってのもしてみたい。嫁さんたちとの結婚って流されてばっかりで、俺から求婚したことってないからさ。

 

「愛ならあるわ」

「あるのは嫁さんたちにで、俺にじゃないでしょ!」

 華琳ちゃんとは毎晩のように夢で、擬似契約空間で会っていたけどさ、結婚してもいいって好かれてると思うほど自惚れるつもりはない。

 

「ならば証明してあげましょうか?」

 ぐいっと襟を引っ張られて、俺の顔が華琳ちゃんに近づいていき、そのまま唇を奪われてしまった。

 逃げられないように頭をがっちりと両手でホールドされ、舌まで入り込んでくる。

 やばい、うまい。それに華琳とすごく似てて……。

 

「ふふ。これでわかったかしら? 男としたのはあなたが初めてよ。……融合して新しい身体となったと考えればファーストキスね」

 やっと解放してくれた華琳ちゃんは艶めく唇で舌なめずり。やばすぎる、俺のツインが起動しちゃいそう。

「そ、それは光栄だ」

 三国志だけに。ギャグを考えて興奮を少しでも誤魔化す。……ふう、おっさんな武将たちの顔が浮かんだのでなんとか持ちこたえたよ。

 

「結婚云々はまた今度にして、そろそろこの契約空間から抜けよう」

「そうね、ここには寝台もないのだし」

 あったらどうするつもりだったの?

 

「ポータルを出して。移動するわよ」

 契約空間から出てくると華琳ちゃんはポータルを急かす。ドアをノックしている相手に聞かれないように小声だ。

「荷物を用意したりは?」

「そんなことをしたらアレに勘づかれるわ。それにJの娘たちを残してきたのでしょう。長い時間3人だけにしたら不安になるわよ」

 それはそうかも。見知らぬ土地に置いてけぼりにされたら、騙されたとか思っちゃいそう。

 

 俺たちがポータルで移動するのと、華琳ちゃんの名前を呼びながらアスハムがドアを開けるのはほぼ同時。ギリギリセーフ、俺たちの姿は見られていないはずだ。

 

 

 

「これがポータル移動……特に疲れたり、変な夢を見たりもしないのね」

「ワープやフォールドと違うから。いきなり家を出ちゃって本当によかったの?」

「それよりも、寒いわ」

「そのまま来ちゃうからだよ。せめて着替えだけでも持ってくるとかさあ」

 華琳ちゃんとともにキャンピングカーに乗り込む。

 ここから出発してからほんの数分しかたっていないので、どこも変化はないようだ。

 

「早かったですね」

「うん。ただいま。さっそく仲間を連れてきたよ」

「私は華琳・ブーン。煌一クンのファミリアよ」

 融合しちゃって名前まで変わったから真名はいいのかな?

 華琳ちゃんに自分紹介を返すカティアたちを見ながらそんなことが気になった。

 

 

 

「これがコタツ。……いいわね」

 コタツ初体験の華琳ちゃんも気に入ったようだ。

 夢の中の擬似契約空間は暑くも寒くもなかったらコタツは持っていかなかったんだよね。

 

 だが、定員オーバーなので俺はコタツには入れない。こんなことならもっと大きなのにしておけばよかった。

 まあ、嫁さんじゃない美少女たちと同じコタツに入るなんて緊張するんだけどさ。

 

「あ、3人にもこれを」

 スタッシュから特殊チョーカーを取り出す。

 知り合いや対魔忍たちの分も余計に作るためにかなりの数を作ったんだよね。

 

 俺の固有スキル、成現(リアライズ)はプラモ等を本物にするスキルだ。EPのこもったアイテムを素材にしてMPかGPで、そのこもった感情の通りに実体化させる。

 

 EPってのはエモーションポイントの略で感情値。低くなると無気力やネガティブになっていく。回復には精神的な癒しが必要。

 MPはマジックポイントで時間で回復。

 GPはゴッドポイントでゲーム内通貨もどき。稼がないと増えない。

 

 GPだと成現の効果が永続なんだけど、MPだと時間制限あり。制限時間がすぎると元のアイテムに戻ってしまうから、本当は全部GPでやりたいんだが、ない袖は触れない。

 

 特殊チョーカー大量生産の他にもいろいろ作ったけど、EPがしんどかったなあ。シスターズたちの歌がなければ心の病気になってたかもしれない。

 俺はMPだけはあり余ってるから、そっちは余裕だったんだけどね。

 

「出かける前に渡しておきなさい」

「衣装がそれだから気づかなかったんだよ」

 3人の衣装は胸元はバッチリ見えるのに襟はキッチリ閉まっているというものなので、チョーカーが似合わないというか、干渉して邪魔になりそう。

 サイズ自動調整だけじゃなくて変形や色の変更もできるから、極薄で不可視にすればコーディネーションは関係なくなるけどね。

 

「これは?」

「お守り、みたいなものかな」

「首輪よ。煌一クンに逆らうと爆発するの」

「そんな機能はつけてない!」

 華琳ちゃんの冗談で、チョーカーに伸ばしていた手をひっこめる彼女たち。

 そんな物騒な機能つけるわけないでしょ。誤作動や俺が酔って使っちゃったらどうするのさ。

 

 自覚はないんだけど、俺って酔うと暴走することがあるみたいでね。

 深酒した翌日、起きたら妙な物を成現してたなんてこともあるんだよ、あはは……。

 だから俺にアルコールが入った時は成現しないように気をつけている。嫁さんたちがね。

 

 詳しい説明をしてやっと受け取ってくれた。

「本当に形が変わるんですね」

「首が嫌なら手首や腹巻にしてくれてもいいから」

 お勧めなのはお腹を攻撃や冷えから守る腹巻モード。不可視化すればへそ出しでも安心だ。

 

 チョーカーにしたのは、嫁さんたちの貞操帯(チョーカー)の量産型だからなだけで。

 浮気防止機能のついた嫁さん用のは外せないように作ってある。

 だけど外せなくしても、使徒やファミリアは身体の欠損を治す手段があるから、手足ごと切断して装備解除なんてできる。

 だからチョーカーなんだよね。首を切ってってわけにいかないでしょ。

 

「この娘たちはファミリアにはしないの? 素質はあるはずよ」

「だろうね。でも、苦労してる子たちだから、できれば普通の生活をさせてあげたいんだよなあ。今ははぐれてるけど、俺のファミリアの数って多いから戦力的には不足していないし」

 みんなどこに跳ばされたんだろう。早く会いたい。

 

「あの、ファミリアって?」

「使徒の部下、でいいのかな? 俺が使徒ってやつなんだけどね、その仲間だよ」

「あら? 妻のことではなかったのね」

「違うから。そりゃ俺のファミリアのほとんどが嫁さんだけど、そうじゃないのもいるから!」

 華琳ちゃんだけじゃない。俺のファミリアにはマサムネやディスクロン部隊、それにマインだっているんだ。

 

「ん? コーイチのお嫁さんって何人もいるの?」

「うん。最高の嫁さんたちだよ!」

 俺の担当世界に出発前に撮った写真をビニフォンで大きく立体投影する。人数多くて旅行や卒業アルバムの集合写真みたいになってるけどね。

 

「へえ、これってそんなこともできるんだ。で、どれがコーイチのお嫁さん?」

「え? 全員だけど」

「お、多すぎよっ! いくらなんでもおかしいわ! なんだか小さな子もまじっているし!」

 多いよねぇ。カティアちゃんの驚きもわかる。

 あとみんな18歳以上だから! 建前上は!

 

「あ、華琳ちゃんも煌一さんのお嫁さんだったんですね」

 メルアちゃんが指差したのは俺の隣に座ってる華琳。ちなみに反対側は梓だ。

「違うわ。それは私ではないのよ」

「え? でも……双子の姉妹?」

 華琳ちゃんと写真の華琳を何度も見比べるスパロボJヒロインズ。

「似たようなものね」

 双子じゃなくて別の世界の本人です。……説明すると長くなりそうだからいいか。

 

「お姫様みたいにみんな綺麗な子ばっかりだね。コーイチってもしかしてどこかの王様?」

「たしかにお姫様はいるけど、俺は一般人だよ。……使徒になる前はね」

「本当!?」

 目を輝かせる3人。彼女たちのお姫様のイメージってどんなだろう?

 ティアラとドレスをイメージする俺は古いんだろうか。

 フューリーにもお姫様いたし、キンゲにもアナ姫いたな。

 

 姫嫁をはじめとして嫁さんたちを一人一人解説してたら途中で飽きたのか、華琳ちゃんがビニフォンをいじりだし、3人娘とメールで内緒話をしていた。華琳ちゃんは指輪の中からずっと視ていて知っているからつまらなかったのかな。

 

「あれ? なにか変なデータが入ってるわ」

 カティアちゃんまで……いいよ、こうなったら意地でも嫁さん全員の説明をするからね!

 

「どれ? 動画ファイルのようね。それもパスワードでロックされている。煌一クン、パスワードは?」

 カティアちゃんから受け取ったビニフォンをいじる華琳ちゃん。

「そんなファイル知らないけど。だいたい、それは俺が渡したビニフォンじゃない」

 仕方なく解説を中断して答えた。いいから俺の嫁さんのことを聞いてほしいんだけどな。

 

「Readmeファイルもあるのね。パスワードはカリン・ブーンの初恋の人。……そういうことなのね」

 言いながらも入力したのかパスワードが解除され、そのビニフォンをコタツの天板中央に置く。俺のビニフォンをどかしてね。

 

「邪魔だから返すわ」

 無言で立体映像を停止してビニフォンをしまう俺。

「いじけてないの。再生するわよ」

 カティアちゃんのビニフォンから立体映像が再生される。

 それは華琳ちゃんだった。この世界にくる直前に会ったもう1人の華琳ちゃん。たぶん未来の彼女。

 やはり、左手薬指に指輪をしているな。

 

 さっきのプロポーズを俺が受けちゃったんだろうか?

 それともまさか、華琳と華琳ちゃんまでが合成された?

 

『これが再生されたということは、失敗したようね。保険が無駄にならなかったと喜ぶべきなのかしら?』

 その動画の華琳ちゃんは「ふふっ」と笑っていた。

 

 


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