大有双   作:生甘蕉

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44話 ファイヤーさんと烈火さん

 地球に行った()は嫁さんたちと合流し、別世界の自分の同一存在っぽいやつと遭遇した。

 球神ねえ。この世界の主神らしいけど本当なんだろうか?

 嫁さんたちはマブラヴ世界のキャラと融合しちゃってて、あっちの世界の合成と同じような状況になっている。つまり処女になってしまっていたのを確認。いいなぁ、あっちの俺。

 

 まあその分ってワケじゃないだろうが、あっちはやはりハードで死者がガンガン出ている。朝会話した相手が夕方には死んでいた、なんてのもわりとあってEPが削れているみたい。空井が〈死者蘇生〉のスキル持っていて本当によかったよ。じゃなきゃ精神的にまいっていたかもしれん。

 

 さらに俺の方も顔のない月の主人公と融合してしまっていた。それだけじゃなくて、顔のない月の登場人物の中にも融合しているやつがいた。18号とランバ・ラル2人っていったいどうなっているんだか。……18号はママキャラである由利子さんと融合してたけど処女になってるのか。しかもファミリアにしちゃったし。つい、「さん」付けで呼んでしまうが娘のゆり子と紛らわしいからしかたあるまい。

 

 この感じだとたぶん、名前だけじゃなくて中の人でも融合するっていうのもあるみたいだ。まだ見つかっていない嫁さんたちも融合しちゃっているのかな?

 嫁さんと融合した以外のマブラヴキャラにも異変が起きていて、遠坂凛まで出てきている。他にもまだいるんだろうか。会ってないけどグレンダイザーとライディーンがいるんじゃないだろうな? いや、融合してなくてもそのものなんだっけ?

 

 俺の方はルイズとその家族にゼロ魔の情報を与えて、ルイズが虚無であることを知らせた。ルイズも家族もショックを受けていたが、ルイズが魔法を使えるようになったことだしそのことは極秘扱いにすることになっている。

 残る問題はいくつかあるが、一番は風石。

 

 地の底深くにある風石の鉱脈が暴走したら大陸が崩壊レベルの大災害になるっぽい。

 アニメだと違うみたいだけど、こっちはどうなのかまだ確認できていないんだよ。

 もし鉱脈があるとすれば量が尋常じゃないはずだが、掘って回収するのが確実かな?

 ってなワケで。

 

「一括破壊ツルハシ~」

 

「なによその変な言い方。それに妙にカクカクしたツルハシね?」

 

 俺が掲げたツルハシにそんな素直な感想をくれるルイズ。

 マイクラMODで有名な能力を持たせたからこんな形なんだってば。

 

 俺達はまだ学園には戻っていない。ルイズとしては早く戻って魔法が使えるようになったのを自慢したいだろうが、やっと魔法が使えるようになったのだからとルイズママが嬉々としてルイズに稽古をつけているために戻れないのだ。。

 彼女としてはもしもルイズが虚無だということがバレてしまってもなんとかなるように力をつけさせたいのだろうけど、実戦さながらの猛特訓にしばらくルイズの瞳からハイライトが消えていて心配……どころではなく、俺まで参加させられていたので心配する間もなかった。

 

 激しい稽古のお礼にとルイズママには一服持っちゃった。

 いや、ちゃんと疲れをとる薬って説明したよ。疲れだけじゃなくて加齢もとっちゃったけどね。だって俺の嫁の華琳と融合しちゃってないか、どうしても確認したかったしさ。

 飲ませたのは若返りの薬。以前に俺も飲んだことがあったから成現(リアライズ)しやすかったんだよね。量の調節もバッチリさ。そしたらルイズよりちょっと上くらいの外見に。カトレアよりも若いくらい?

 それで、華琳じゃないのが完全に確認できたので一安心。

 

「なんということを!」

 

「疲れは取れたでしょ。元に戻りたいならその薬も用意できますが」

 

「不要だ!」

 

 ルイズパパに止められました。そのまま若返ったルイズママは連れていかれて。その晩は深夜までの稽古もなくぐっすり眠れたよ。翌朝はルイズパパは満足そうな顔でやつれてた。

 

「やったねルイズ、家族がふえるよ」

 

 誰も「おいやめろ」って言ってくれなかったよ、残念。

 でも身重なら激しい運動は控えるだろう、きっと。

 

「あ、あの! 若返りの薬はもうないのですか?」

 

 エレオノールはそれまでの高慢高飛車な態度を改めて縋るような眼差しを俺に向けている。この世界の貴族の結婚適齢期を過ぎそうなので焦っているのかも。まだ婚約は解消されてないはずだけど、相手がロリコンさんなのかな?

 

「そんな物欲しそうな目で見られてもね。あの薬も貴重な上に効果が効果だから、あんまり用意してなくて」

 

「そんな貴重な薬をどうしてお母様に? まさかコーイチ」

 

 なんで俺を睨むのかなルイズ? だけどまあ「嫁さんと融合してるか確認のために」なんて言えるはずもなく。

 

「レコン・キスタ対策。その姿なら正体を隠せるでしょ」

 

 適当な理由をでっち上げる。俺の回答に少し考えるそぶりを見せるルイズママ(小)。ゼロ魔の情報を与えているのでレコン・キスタを放置はできないと思うのだが。

 レコン・キスタは浮遊大陸アルビオンの革命軍。虚無を名乗るオリバー・クロムウェルがトップで、裏でガリア王が糸を引いている。革命が成功するとトリステイン王国と戦争になるのもわかってくれたよね。

 ぶっ潰すにしても正体不明のままやった方がガリア王ジョゼフも動きにくいだろう。

 

「ふむ。ならば私にも杖を用意なさい。代金は払います」

 

「杖って……まさか」

 

 無言で肯くルイズママ。ルイズの家族にはゼロ魔だけじゃなくてリリカルなのはのアニメも見せたんだよね。

 そしたらね、フェイトに自分を重ねて涙するルイズのようにプレシアに自分を重ねて反省するかと思いきや、戦闘シーンに興味がいったみたいでさ、アームドデバイスが気に入ったみたいなんだよね。A's以降は見せるんじゃなかったな。

 

「レヴァンティンは属性的に合ってないと思うけど」

 

「たいした問題ではありません。ルイズのバルディッシュの持ち主と仲のいい方の杖でしょう?」

 

「お母様」

 

 ルイズは嬉しそうだけどそんな理由ならレイジングハートだよね? シグナムが騎士っぽいからだよね? 絶対好みで言ってるよね?

 レヴァンティンは炎属性だから、以前の口止めにキュルケにって思ってたんだけどなぁ。キュルケには火トカゲ(サラマンダー)をリザードに進化させる? うーん、本人ならぬ本トカゲが望めばってとこか。

 

「あ、エレオノールお嬢さんにはさっきのコレとかコレなんかどう?」

 

「ツルハシとハンマー? 奇妙な形ね」

 

「ハンマーはとても地面を掘りやすく、ツルハシは固まってる鉱石を一定範囲でキューブ化して回収しやすくするマジックアイテムだ。耐久値もそこそこある。調べてみてね。特に地下深くを」

 

 マジックというかMODアイテムなんだけどね、マイクラの。もちろん俺が成現(リアライズ)したものだ。

 ハンマーで風石の鉱脈まで掘っていって、一括破壊ツルハシで風石を回収しようという作戦。風石に刺激を与えず活性化させないでちっちゃくキューブ化できるように設定しているので問題はないはず。キューブ化されたのはマイクラと一緒で一定時間回収されないと消えていく仕様になっている。

 風石はMuv-LuvだとG元素らしいから多少は回収してあっちに回そうと思うけどね。フィナとミズホもロボに使えないか調べているみたいだし。あ、彼女たちにはそろそろ地球へ行ってもらう予定だ。基地開発に協力してもらうつもり。

 

「あとでその辺のアイテムを作る作業台も用意しておく」

 

 作業台はマイクラそのものじゃなくて、作れるアイテムを限定してEP込め中なんで時間がかかっている。まあ、あとほしいのは風石収納のためのチェストぐらいなのかな?

 

「わたしは身体を治してもらったし、これでわが公爵家は貴方には頭が上がらなくなりますね」

 

「はぁ。ヴァリエール公爵には精力剤でも用意しますか?」

 

「ぜひよろしく頼む!」

 

 冗談だったのにくい気味で肯かれてしまった。娘さんたちの前だっていうのにまったくもう。

 

「ちい姉様も治ったし、これでもし弟でも生まれたら完全にうちの後継者問題はなくなるわ。お父様がんばって!」

 

「おちび、意味わかって言ってるのかしら?」

 

 ルイズの応援に目をつり上げるエレオノール。

 

「そうなればわたしがコーイチについていっても問題ないもん」

 

「いや、せっかく魔法が使えるようになって馬鹿にされなくなったんだから、こっちでみんなに見せつけてやるんだろ?」

 

「だって、どこから聞きつけたのか、わたしが魔法を使えるようになったからって急に縁談の話がきてるのよ。それもたくさん! わたしを馬鹿にしてたやつの家からまで! わたしのことを魔法使いとしてしか評価されないなんてそんなの納得いかないわ!」

 

 むう。契約空間(コントラクトスペース)で俺がいろいろと見せたせいでルイズの価値観が以前とは違うものになってしまったか。それとも念願の魔法が手に入ったけど、その程度では超えられない壁で思い知ったおかげか?

 

「わたしも完治したのが知れ渡ってまして大変です」

 

 カトレアまでが大きくため息をしたので一瞬さらにつり上がったエレオールの目がすでに泣きそうになってしまっている。

 

「縁談は進めます。機会を逃すとどうなるかはよく知っているでしょう?」

 

 ルイズママの追い打ちにエレオールはついに決壊。突っ伏してしまった。やっぱりうまくいってないみたいだ。

 もうやめたげてよ!

 マジでセラヴィーがまたきたら婿に薦めるのに。あいつ、過去に戻れるようになってるからどろしーちゃんを手に入れたのかな? エリザベスが嫌がるか。元気にやってるかなあ。

 

「わたしはコーイチと……」

 

「その者の実力は認めないでもないですが妻帯者でしょう。諦めなさい」

 

 俺のこと評価してくれてたのねルイズママ。でもなんか、ルイズが俺と結婚したいって受け取ったみたいだけどそうじゃなくて、一緒に行きたいって言いたかったんじゃないのかな? 魔法を使えるようになったのに「ファミリア契約してやってもいいわよ」みたいなことをよく言ってるから。

 睨まれたルイズは俺の腕にしがみついてきた。その様子を見て大きくため息をつくルイズママ。

 

「わかりました。縁談が嫌なのであればそれを押し通せるほどのあなたの実力を見せなさい」

 

「え?」

 

「婚約者候補たちと戦い、勝利なさい。それが条件です。負ければその相手と結婚、いいですね?」

 

 なんという脳筋思考。若返ったためにそれに拍車がかかった?

 ルイズはぎゅっとしがみつく力を強めてからゆっくりと離れて。

 

「もし全員にわたしが勝てば縁談はなしになるのね。そうすればコーイチと!」

 

「全て勝利できれば縁談はお断りさせてもらうことになりますが、それとこれとは話が別です。あと、彼は私が連れていきます」

 

「へ?」

 

 自分を指差す俺と、再び俺にしがみつくルイズ。ちょっと、さっきよりも密着しているってば。

 

「コーイチはわたしの使い魔よ!」

 

「私1人にレコン・キスタを押しつけるつもりですか? 現地で働いてもらう。もう少し見極めさせてもらいます」

 

 レヴァンティンがあれば、いや、なくても烈風さん1人でなんとかなると思うのですが。

 ゼロ戦ポジションの武御雷はもう向こうに行っちゃってるし、俺の出番はいらないよね?

 

「それならわたしが行く!」

 

「多くの命を奪う覚悟があるのですか? 非殺傷設定にしたところでフネを落とせば人は死にます。それもたくさん」

 

 フネってのは風石で飛ぶ船のことだよな。レコン・キスタもそのフネの軍艦を使ってくるからたしかに海よりも死亡率は高そうな戦場ではある。

 ルイズはすぐには答えられなくて。ゼロ魔でルイズがあっちに行ったのは戦うためじゃなくて別の任務のためだったもんなあ。

 もしも武御雷があったら俺、それで軍艦と戦っちゃったかもしれないけどそれは言わないでおこうっと。

 

「彼を見極めるといいました。働きと為人を。それによってはルイズとのことも考えないでもありません」

 

 ルイズとのことってなにさ? 使い魔に相応しいとかそういうことで合ってるんだよね?

 

「いいの?」

 

「使い魔なしで婚約者候補たちに勝利することができるのなら」

 

「やってやるわ! コーイチもわたしがいなくてもがんばるのよ!」

 

「う、うん」

 

 なんかルイズがやる気になったからいいか。……いいのかな?

 まあ、BETAの相手をしなきゃいけないあっちの俺よりはマシだと信じるしかないか。……嫁さんいないけど。

 

 

 ◇ ◇

 

 

 すぐにルイズの婚約話が各家に連絡されて数日後、ルイズママは偏在(ユビキタス)で分身。さらに分身はフェイス・チェンジを使い、以前の姿でルイズの婚約決定戦の審判役。

 フェイスって割に全身の姿が変わったのはルイズママの実力のおかげらしい。「若返ったせいか力も増している」なんて言っていたが。ルイズママは普段もこの魔法で若返ったことを隠している。

 本体は俺の用意したレヴァンティンを装備。バリアジャケットも展開しててちっちゃいシグナムみたいになっていた。うん。いろいろとちっちゃい。

 

「烈風が烈火の将になっちゃうとは」

 

「そうですね。以後、わた、ぼくのことは烈火と呼ぶように」

 

「はいはい、烈火さま」

 

 むう、烈風の騎士姫モードとな。そして俺の方といえば、やはり正体を隠すために変身魔法でいつもの黒猫になっていて。

 

「コーイチ、そんな姿になれるんならもっと早く教えてくれればいいのに」

 

「よーしよしよし」

 

「本当は変身能力を持つ猫の使い魔なんじゃないかしら?」

 

 ルイズに抱っこされ、カトレアが喉をナデナデ。エレオノールが尻尾の折れた先っちょをコリコリと玩んでいた。

 むう、恋並に動物に好かれているだけあってカトレアのナデナデはツボを押さえていて心地よい。

 このまま眠りに落ちそうだった猫俺をひょいと烈火は持ち上げる。

 

「そろそろ行くよ。お前はぼくの使い魔のカーボンだ」

 

「なにそのまっくろくろすけな名前は?」

 

「できるかぎり喋るなよ」

 

 言いながら自分に仮面を、さらに俺に首輪をさっとつけてくれる烈火。

 こんなもんつけなきゃ野良に見えるほどみすぼらしくはないと思うんだけど。

 

「コーイチ、母さまのことをお願いね」

 

「わか、にゃあ」

 

 返事しようとしたら烈火に睨まれたので鳴き声にすることにした。俺、必要かなあ?

 

「母がやりすぎないように注意してください。今の母だとアルビオンぐらい落とせます」

 

 疲れた顔のエレオノールからお目付がお前の仕事だと説明されてしまった。後ろでルイズとカトレア、それに旦那さんも肯いてるよ。レヴァンティンでの魔法にももう慣れていて、シグナムの魔法も使いこなすんだもんなあ。たしかに風系っぽい名前のもあったけどさ。

 ふむ。浮遊大陸を落とすまではできなくても無茶しそうで心配はするか。

 

「ふん。失礼な娘だな。もう行くぞカーボン」

 

「にゃあ」

 

 烈火さんてばもうキャラ作ってるよ。旦那さんは心配そうな、それでいてどこか嬉しそうな複雑な表情。青春時代を思い出してるのかも。

 

 

 ◇ ◇

 

 

 ご家族の心配は的中で。

 烈火さん大暴れ。「義によって参上した」とか言いながらレコン・キスタの軍艦を墜としまくるんだもんなあ。飛び交う大砲をかわし、レヴァンティンを振るう度に落ちていくフネ。烈火さんはマップ兵器といっていい。

 

 俺はといえば大量消費されるアームドデバイスのカートリッジ生産役としてだけではなく、アンドバリの指輪ってマジックアイテムによって復活した死者に、魔法で聖水の雨を降らせて死体に戻したりとちょっとは活躍した。ゾンビの相手は慣れてるのだよ。

 猫らしく城に忍び込んで、スパイとなっていた死者を死体に戻すこともやった。〈鑑定〉スキルで判別できたからね。その流れで皇太子を殺害しようとしていたワルドを目撃。その場に乱入して皇太子を保護してたんだけどなかなか強い上に猫じゃ戦いにくくて。変身魔法を解除しようとしたら烈火さん到着。そしてワルドを瞬殺。半ば冗談だったとはいえ娘の婚約者だった男の悪行が許せなかったんだろうかね。

 ワルドは本体だった上にファミリア候補でもあったみたいで、俺がそばにいたせいかカードになったけど、こいつどうしようかな? ワルテナに、いや、ワルがかぶるからポロりんにでも売りつけようかな。

 

 オリヴァー・クロムウェルは決戦時に烈火さんが真っ二つにしたフネから逃げようとしたところに遭遇、腕を切断して指輪を回収できたよ。捕獲してアルビオン王国に引き渡したから後のことは知らん。

 後始末はアルビオン王国がするべきだ、と暴れるだけ暴れてさっさと浮遊大陸を後にする烈火さんと俺。むこうは終始唖然とした状態だった。

 

 指輪は俺が預けられてスタッシュに収納したよ。あとで精霊に返さないといけない。

 さて、ルイズはうまくやってるだろうか?

 

 婚約者候補を殺してないといいなあ。

 

 




華琳かどうかの確認のためには手段を選ばない主人公

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