大有双   作:生甘蕉

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今回は麗羽視点



38話 ゴールデン○○○

「地上の人は帰れっ!」

 

 今のは妖精? レオタードのような薄手の服を纏っていてなかなか可愛らしかったですわね。

 えっ、フェラリオ? どこかで聞いた気がしますわ。

 

 いったいここはどこなんでしょう。(わたくし)はツーリングの最中でしたのに……本当にそうでしたの? なにか別のことをしていたような気もしますわ。もっとこう世界の命運にかかわるような。

 なにを考えているのかしら。そんなはずがあるわけが……助けを求めるように隣に倒れている愛車、ゴールドウイングに手を伸ばします。大きなオートバイですわ。なんといっても名前がいいんですのよ。黄金の翼。まさに私のために名付けられたと言ってもいいのですわ。

 でもなぜか、私にはもっと相応しい黄金の愛機があった気もするんですの。愛する夫が用意してくれた……夫? 私はまだ未婚の学生なのですわ。夫なんて……でも、愛しい方から頂いたこの指輪。これがなによりの証明!

 

 左手の薬指で輝く指輪を撫でてみれば、少しずつ甦ってくるあの方の記憶。不様な態度を取ってしまった私を受け入れてくれた優しいあの人。呪われてしまったとはいえ、美しいあの顔を見抜けなかったとはこの私の不覚ですわ。華琳さんは耐えられたというのに!

 

「地上の方、どうしました?」

 

 なんですのこの長髪の男は?

 私の美しい回想の邪魔をするなんて無礼な男ですのね。

 

「私、混乱してますの。少しの間、お黙りなさい」

 

「な?」

 

 この長髪の男、そしてさっき見たフェラリオに、男に命令していた禿頭の男。だんだん思い出してきましたわ。マクロスほどではなかったけれど大好きだと夫が言っていた作品、『聖戦士ダンバイン』と同じですわ。

 私にあるもう一つの記憶、ショウ・ザマであった記憶もそれを肯定していますわ。ショウ! そうでしたのね! あの偽華琳さんが言っていた「名は体を表す」とはこのこと。もう一人の私との合成の時のようにきっとショウ・ザマも取り込んでしまったのですわ。

 

「ショウ。私は紹。そう! そうですのね! おーっほっほっほ!」

 

「おい?」

 

「どうしたバーン?」

 

「ガラリアか。この女、あまりのショックに狂ってしまったのかもしれぬ」

 

 失礼な男ですわね。そんなだからリムルさんにもふられてしまうのですわ。

 ガラリアさんは……ふむ。悪くないですわね。私の下で使ってあげてもよろしくてよ。

 

 

 ◇ ◇

 

 

 翌日、多少なりとも状況を把握してきた私は、同じくオーラロードを通ってきたとされる、ヤンキーパイロットのトッド・ギネスと元軍人のトカマク・ロブスキーの2人と共にオーラバトラー、ドラムロを見物いたしましたわ。どうせならこの2人が斗詩さん、猪々子さんだったらよろしかったですのに。

 やはり、この世界は『聖戦士ダンバイン』の世界ですのね。どうやら私は本当にショウ・ザマとなってしまったようですわ。幸い、姿はほとんど私のまま。当然ですわ。男になどなってしまったら煌一さんが悲しみますもの。こんな美女がいなくなっては世界の大損失でもありますわね。

 ええ。ショウのトレードマークである顎のバッテン傷もありませんわ。合成と同じく傷も治るのでしょう。となるとこの身体は再び夫を喜ばせることになりますわね。ほんの少しばかり若くなっているような気もしますわ。

 

 ドラムロは丸っこくてぽっちゃりさんな不細工なオーラバトラーですわね。それでも、煌一さんはこの機体も好きだと言ってましたわ。まあ、オーラバトラーの全てがお好きなようでしたわね。

 これはチャンスかも知れませんわね。煌一さんが好きなオーラバトラーをプレゼントするチャンス。あの方は自分で創ることができますけれど、本物を手に入れたらきっと大喜びすることでしょう。おーっほっほっほ! 愛しい私の贈り物となればなおさらですわ!

 

 となればどうしましょう?

 ここを制圧してしまいましょうか?

 今の私はあの頃とは違いますの。煌一さんの美しいお顔を見抜けなかった私。あの芸術品を見損なうなど許されませんわ。己の未熟さを思い知った私は鍛え直しましたの。鍛錬なんて必要のなかった天才であるこの袁紹が、ですわよ。

 私はファミリアとなったこともあってみるみる力を伸ばしたんですのよ。それはあの華琳さんも驚くほど。「合成されたおかげね」なんて負け惜しみまで。煌一さんが「まるでゴールデン……」と呟いてくれたのは聞き逃しませんでしたわ! おーっほっほっほ! さすが私の夫! 一番ほしい言葉をかけてくれますの。

 まさにそうですわ! 今の私はゴールデン麗羽なのですわ!!

 

 ですからこの規模の施設なら簡単に制圧できますわ。煌一さんが私のために用意してくださったロボットもありますし。このゴールデン麗羽が負けることなどありませんわ!

 でも、それではいけませんわね。昨夜試したけれど、煌一さんや他の妻たちとの連絡がとれないのですわ。ポータルもマーキングしているはずの行き先がありません。異世界間でも通話可能なこのビニフォンでもバイストン・ウェルのオーラによって通信を邪魔されてしまっているのでしょうか? いえ、煌一さんが創ったこのビニフォンに限ってそのようなことがあるはずがありませんわ。

 ではいったいどうして? なにやら嫌な予感がしますわ。まさか華琳さんが煌一さんを独占するために邪魔な私を排除した?

 許せませんわ! 

 

 ……いえ、いくら華琳さんでもしないでしょう。そんなことをすれば煌一さんが悲しむのはわかりすぎていますもの。なにか不測の事態が起きている、そう見るべきですわね。

 とにかく、もう一度オーラロードを通って地上界へ出ることにしますわ。

 そのためにしばらくは『聖戦士ダンバイン』のストーリーどおりに動くしかありませんわね。

 

 夜には他国の有力者までも呼んだ園遊会。やはりガッターとドラムロの戦いが始まりましたわ。ドレイクとしてはドラムロの力を見せつけるためのメインイベントなのでしょう。ゼラーナ隊の襲撃に邪魔されてしまいますが、これもストーリーと同じですわ。

 ゼラーナ隊は顔見せ程度で撤退。戦略というものがわかっていませんわ。どんな犠牲を出してでもここでドレイクを仕留めていればどうとでもなりましたのに。

 

 翌日はダンバインを動かすことになるのですわね。煌一さんが大好きなあのオーラバトラーを。

 でも、トカマクさんのダンバインは撃墜されてしまうのですわ。トカマクさんはともかくダンバインが壊されてしまうのは勿体ないですわね。猪々子さん向きのカラーですのに。

 

 案内された城の一室でそんなことを考えていると昨夜のフェラリオ、チャム・ファウが部屋に侵入してきましたわ。つい、ひょいと捕まえてしまいました。遅すぎますわ。

 そうですわね。せっかくですから彼のダンバインを貰うことにしましょう。どうせ壊れてしまうのですからストーリーに対して影響は出ないのですわ。

 

「リムルさんのところへ案内するのです」

 

「なんで地上の人がリムルのことを知っているのよ!」

 

「私がすごいからですわ。ゴールデンですのよ」

 

「意味がわからない!」

 

 

 ◇

 

 

 チャムさんをなだめてリムルさんの部屋まで案内させますわ。この部屋の扉の外では私が逃げないように見張りがいるのはわかっていますので、不在を知られないように扉を魔法で施錠(ロック)。私は変身魔法でPOMっと姿を変えて窓から移動するのですわ。

 

「ショウ、あなたフェラリオだったの!?」

 

「違いますわ。魔法で姿を変えているだけですの。早く案内なさい」

 

 小さなフェラリオさんに姿を変えた私。ゴールデンな私は魔法だって使えますのよ。おーっほっほっほ!

 この姿で煌一さんとロボットに同乗するのも悪くないですわね。大きな煌一さんも見てみたいですわ。あの人が喜ぶ顔を見るためにも私、やるのですわ。

 チャムさんに案内させてリムルさんに会いましたわ。ストーリーでは会うのは今日ではないですけれど、もう気にしません。

 リムルさんはあの両親から生まれたのが信じられないような可愛いお顔ですわね。男の趣味は残念ですけれど。

 

「チャム?」

 

「リムル、地上の魔女を連れてきたっ!」

 

「誰が魔女ですか!」

 

 POMっと変身を解いて元の姿へ。驚いていますわね。それはそうでしょう。小さくて可愛らしいフェラリオさんがこのように美しいゴールデンな私になったのですものね。

 

「おーっほっほっほ! 私の美しさに驚いておいでですのね!」

 

「い、いえ……本当に魔女?」

 

「だから魔女ではありません! むしろ聖女の友人、妻姉妹なのですわ!」

 

 あっぱれ対魔忍世界と煌一さんが名付けた世界で聖女と呼ばれていた桃香さんは私と同じく煌一さんの妻。これはもう姉妹と言っても過言ではありませんわ。

 まったく、この私のゴールデンな神々しさがわからないなんて、ヒロイン扱いされないのも当然ですわね、リムルさん。

 

「ともかく、時間がありませんわ。私をオーラバトラーの待機場所に案内するのです!」

 

「え? どういうこと?」

 

「先ほどの襲撃者、ニー・ギブンと仰ったかしら。あの男の役に立ちたいのでしょう? ここのオーラバトラーの数を減らして差し上げますわ」

 

 まだ混乱しているようですが、ニー・ギブンの名前を出した途端にすぐに了承してしまうリムルさん。チョロすぎますわ。まさに盲目の恋。将来が心配になってきますね。あの母に殺されるのはさすがに可哀想ですから、なんとかしてさしあげますわ。

 ああでも、煌一さんはニー×キーン派でしたわ。悩むところです。ニーさんにリムルさんとキーンさんの両方を娶る程の甲斐性がありますかしら?

 そうですわ! マーベルさんもいました。ショウは私となってしまいましたから、マーベルさんもニーさんに任せなければいけなくなりましたわね。

 もちろん、シーラさんはショウである私が面倒を見ますわ! 彼女は華琳さんも好みのようでしたし悔しがらせてあげましょう。

 

「おーっほっほっほ!」

 

「い、いきなりなに!?」

 

「いえ。リムルさんはニーさんのどこに惹かれたんですの? さすがにあの髪型はどうかと思うのですけれど。ああ、父親が禿頭なので毛の多い方がよかったのですわね」

 

 いきなり切り出してしまったコイバナにリムルさんはなぜかキツい目つきで私を睨みます。まさか、私があの変な髪型の男に興味を持っているとでも勘違いをしてしまったのかしら? ここはその失礼な誤解を解いておかないといけませんわ。

 

「ご安心なさい。私には愛する夫がおりますの」

 

 左手薬指の指輪を見せつけますわ。煌一さんが私のために用意してくれた逸品。どこの世界にだって、これ以上の指輪なんて存在しませんわ!

 おや? もしかしてバイストン・ウェルでは結婚指輪の風習はないのかしら?

 

「私の夫は幾十もの妻を抱える最高の男でしてよ。ですから、あんな変な髪型の男にはまったく興味がありませんの」

 

「へ、変な髪型なんかじゃ……」

 

「言いよどんだところをみるとリムルさんもそう思っているのでしょう? まあ、それでも他にも妻を抱えることになりそうですし、髪型などその方たちと協力して変えてしまえばよろしいのですわ」

 

「他の妻?」

 

 さらに目つきが怖くなってらしてよ。リムルさんだけでなくチャムさんまで。

 これではニーさんが苦労なさいますわね。煌一さんほどとは申しませんが、ニーさんも複数の妻に対しての気遣いができるように鍛えなくてはいけませんわね。ゼラーナ隊と合流したら教育してさしあげませんと。

 

「チャムさん、思い当たる方がおいででしょう? ならば、誰か一人を選ばせて残りが不幸になるのと、みんなで幸せを分かち合うののどちらがいいか、よくお考えになることですわ」

 

「あなたはいいの? 自分の他に妻がいて」

 

「そうですわね。悔しく思う時もないわけではないですわ。でも、私には負い目がありますの。あの人に対してとても失礼なことをしてしまった。嫌われて当然の私。もし私一人でしたら合わす顔が無くて妻になどなれなかったのですわ」

 

 呪いのせいであんなに嫌ってしまった私でさえ大事になさってくれる煌一さん。妻の順位こそありますが、それでもみんなを愛してくれるあの人。順位がなかったらきっと妻同士でもっと揉めていたかもしれませんわね。

 ああ、早く会いたいですわ。そこに煌一さんがいるわけでもないのに小走りになってしまった自分に苦笑い。

 

「そうそう、リムルさん。私が悪い魔女ではない証拠に、コソ泥のような盗みなんてできないのです。ですから、ここのオーラバトラーを私にくださいな」

 

「え。ええ。よくわからないけれど、ニー様に迷惑をかけるオーラマシンなんてみんな持っていって!」

 

 これでよろしいですわね。使徒とファミリアは神の遣い。悪いことはできませんわ。スタッシュには自分の物か借りた物しか収納できないので、リムルさんから貰う必要があるのです。スタッシュの容量? 問題ありませんわ。鍛え上げた私の懐の大きさをなめてもらっては困りますのよ。

 話を続けながらもドレイクの兵に見つからないように〈感知〉スキルを活用して移動し、無事に整備所と思わしき場所にたどり着きましたわ。

 

「さすがにここには人がいますわね。もう少し接近できればいいのですけれど」

 

「まかせて!」

 

 止める間もなくチャムさんが飛び出してしまいましたわ。囮になるつもりなのでしょう。その行動、無駄にはしませんわ。POMっと再びフェラリオに変身して飛行して私も突撃します。整備台のダンバインに急接近したら、次々とスタッシュにしまう私。煌一さんの喜ぶ顔が目に浮かびますわ。それだけではなく、きっと抱きしめながらダンスのようにくるくると嬉しさを表現してくれるでしょう。

 

「す、すごい。今のどうやったの?」

 

「なにを驚いているのです。ずらかりますわよ!」

 

 兵が集まる前に撤収しましょう。リムルさん、チャムさんと合流して急いで戻りますわ。

 騒ぎが広がる中を見つからずに無事リムルさんを部屋まで送りますわ。さすがゴールデンな私。

 

「あなた、いい魔女だったのね!」

 

「だからチャムさん、私は魔女ではありません」

 

「これでお父様も考え直してくれれば」

 

「無理ですわね。あの男、覇業に取り憑かれた顔をしてますわ。昔の私のように。あ、顔と言ってもお顔の造形ではなくて表情のことでしてよ」

 

 考えてみれば名家と地方領主との違いはあるけれど、昔の私の立場と似ておりますわね。負けるなんてまったく考えていなかったあの頃。もしあの時、先に煌一さんに出会うことができていたら私はどうしていたかしら?

 呪いにさえかからなければ私が見誤うこともないでしょう。きっと力尽くで自分の物にしようとしましたわね。

 

「さて、リムルさん。ニーさんのところに行きたいのならまず、自分を鍛えておくことをお勧めしますわ。あなた、足手まといでしてよ」

 

「足手まとい?」

 

「自分の実力がわからない頑張り屋さんは、周りに迷惑をかけるものですわ」

 

 煌一さんがよく仰ってましたわ。「リムル使えねー」と。ゲームの話でしたけれど。

 ふむ。そうですわね。煌一さんが好きだった作品がまだありました。ここはそれに倣って、私がリムルさんを鍛えて差し上げますわ。ライバル役のチャムさんもおりますし。

 

「ノリムルさん。私には真名という神聖な名がございますわ。けれどあなたはそれを教えるにはまだ相応しくはない。ですから取りあえずは、私のことはお姉さまと呼ぶのですわ」

 

「ショウお姉様?」

 

「ええ。よくってよ」

 

 いいですわ! 最近なぜか美羽さんがレーティアさんばかり姉扱いして寂しかったんですの。義姉妹にしてさしあげたレーティアさんも私を姉扱いしませんし。ここはもう、私がお姉様となってノリムルさんに尊敬されてるところをお二人に見せつけて、素敵な姉を取られたと嫉妬させてみせますわ!

 煌一さんもきっとコーイチローさんポジションを楽しんでくれることでしょう!

 

 

 ◇ ◇

 

 

 ため息が出てしまいますわ。

 翌日の予定がダンバインがなくなったので捜索と代替え機の準備に手間取って3日後、ようやく出撃。それはまあいいのですけれど、用意されたのが角飾りをつけたゲドではため息が出るのも当然でしょう。

 どうせならサーバインをくれればよかったのにですわ。こうなったらあとで倉庫を探しましょう。リムルさんがくれたオーラバトラーの中に入れても問題ないはずですわ。スタッシュに収納できます。

 

「せめてこの地味な色ぐらいなんとかなりませんの?」

 

「文句を言うな。このゲド改をここまで仕上げるので手一杯だったんだ!」

 

 目の下に濃いクマを作ったショットさんが不機嫌そうに返します。あれからほとんど寝てないそう。ご苦労様ですわね。

 改? 中身が違うのかしら? でもこれでは煌一さんは喜びませんわね。

 

「ショウ、あれから見なかったけどプリンセスと遊んでいたって? ジャップはのんきなもんだ」

 

「修行をつけてさしあげていただけですわ、スケベヤンキーさん。あまり胸ばかり見ると夫に殺されましてよ」

 

 嫉妬深い煌一さんならいくら大好きなダンバインの登場人物でも愛する私が視姦されたなんて許しはしないのですわ。

 あと私は日本人でいいのかしら? 融合したショウさんは日本人ですから半分くらいの日本人? けれど夫と同じ日本人を侮辱した言い方は許せないですわね。助けてあげようと思ったけど保留にいたしますわ。トッドさんのダンバインも貰ってあるから用済みと言ってもいいですし。

 

「おいおい、人妻かよ」

 

「修行ねえ」

 

 ノリムルさんがドレイクに私を強く推薦したので特訓することが許されたのですわ。彼女には煌一さんに作ってもらった予備の鉄下駄も貸してあげました。

 私が自分の特訓に使用した物ですわ。鉄下駄なんて一見無理があるように感じますが、煌一さんの成現(リアライズ)によって、身体を壊すような負担はなく、適度に脂肪を落とし筋力増加させながらも必要以上の筋肉で脚が太くなることを防いでくれるという、女性ならばどんなことをしてでも手に入れたくなる逸品でしてよ。見た目はアレですが武器防具としても使用可能と至れり尽くせりで、煌一さんの妻は皆が持っているのです。

 もちろん私もそれを装備してノリムルさんと一緒にランニングやウサギ跳びをしてるのですわ!

 

 それにしてもオーラバトラーの操縦は簡単ですわね。ショットさんによれば「操縦桿やペダルは補助的な物でオーラ力の強い操縦者ならばオーラを通じて思いどおりに動く」ということですが、本当のようです。

 これならば確かに多くの兵が操縦を覚えることができるでしょう。私が生まれ育ったあの大陸の者たちだって使えるかもしれませんわね。

 

 ギブン家にはさっさとアの国の王、フラオン・エルフに見切りをつけてラウの国かナの国に身を寄せるようにと、チャムさんに伝言を頼んだのですが、やはり聞いてはくれなかったようですわね。チャムさんにマーキングカードを渡して、私がポータルで移動して直接説得すべきだったのでしょう。

 まあ、一応忠告はしたのです。ストーリーと同じようになってしまっても私の責任ではありませんわね。煌一さんもギブン家にはとくに思い入れがなかったようですし、かまいませんわ。

 

 

 ◇

 

 

 ほとんどストーリーと同じように進んでしまっていますわ。

 トカマクさんは当然のように撃墜され、トッドさんもゲド改を破損。そして私は聖戦士ダンバインのヒロインとされる女性と遭遇。お互い顔を見せ合うためにオーラバトラーの扉を開けて会話しますわ。私の美しさにひれ伏すがよいですわ。

 ダーナ・オシーのマーベル・フローズン。醜いオーラバトラーに乗ることでギャップ美を加算しても私の敵ではありません。おーっほっほっほ!

 

「善悪の見境もなしにドレイクに手を貸すバカな女」

 

 知っている台詞そのままとはいえ、言われると腹が立ちますわ。自分が正義のために動いているという自信がお有りですのね。ドレイクの元にいたこともあるのでそんな判断ができるのでしょう。

 

「いきなりバカとは無礼ですわね。私、どうしても夫と再会しなくてはなりませんもの。そちらこそ、チャムさんの伝言は聞いたのでしょう? せっかく私がこの地味なオーラバトラーで我慢しているのにその程度の戦力で迎え撃とうとは、能なし無策のおバカ指揮官に従ってますのね」

 

「あなたがショウ?」

 

「ええ。私はダンバインのショウ・アマイ。これはゲド改なんてツッコミは野暮ですわよ」

 

 あの方が私の夫である証明の名前を高らかに告げる。

 ステータスで確認した名ですわ。すなわち、もはや私には袁家の家名は不要ということ。当然です。私にとって一番大事なのは夫なのですから。

 

「戦力なんてそう簡単に用意できるものではないわ」

 

「だから味方になれと? そう仰るなら、ドレイクに仕掛けたあの夜、なにがなんでもドレイクを仕留めるべきでしたわ。奇襲など選んだ時点でルール破りをしているのですから」

 

「他に選べる手段なんて」

 

「あら? 正義を名乗るテロが発生したら、マーベルさんの祖国は屈服するのかしら?」

 

 煌一さんによればゼラーナ隊はテロリスト。宣戦布告もなしに他領への攻撃行為は大問題ですわね。黄巾党と同じと言われても仕方ないでしょう。

 

「私たちは違う」

 

「テロリストの多くは正義をかたるのですわ。そう呼ばれるのが嫌ならば、あなたたちは手段を選ばなければいけません。正道を歩みたいならばこそ、力が必要。このバイストン・ウェルでもそれは同じ」

 

 口ばかり正義を名乗って、やってることはテロ行為ではドレイクも他の領主、国王も納得しませんのも当然でしょう。

 むしろマーベルさんのお国こそ難癖つけて嫌がらせし、先に手を出させて相手を悪者にするのがお得意だったのではないかしら? ゼラーナ隊はその策に乗ってしまったようにも見えますわ。

 

「半端な策ではドレイクに通用しませんわ。覚悟はしましたか? 差し違えてもドレイクを討つという。その覚悟があればあの夜は成功したかもしれませんわね」

 

「どっちの味方なの? ショウ・アマイ!」

 

「私は夫の味方ですわ。おーっほっほっほ!」

 

 男のために戦うのならば口だけではなく実力も必要でしてよ、ノリムルさん。

 マーベルさんは扉を閉じてダーナ・オシーの剣を構えます。私の気迫にビビりましたわね。構わずにゲド改の扉を開けたまま、キッと睨みますと怖じ気づいて逃走しましたわ。雪蓮さんや霞さんたちとのガンつけにらめっこ、参加しておいて正解でしたわね。あの時はちょっと……いえ、私が粗相なんてするはずがありませんのよ!




おショウ夫人の方が語呂がいいという

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