やっと合流できた唯ちゃんとこれから夜の夫婦生活というところでビニフォンがけたたましく鳴り響く。
慌てて出たらティスちゃんからだった。再会しやすいようにって彼女にもビニフォンを渡してあったんだけど、使い方はちゃんとわかったようだ。
「もしもし」
『コーイチか、お前、まだ分身がいるのか?』
「はい?」
『だから、ここにお前がいるんだって』
ここってどこさ。ええと、今のロットのビニフォンなら通話相手の居場所を特定できるようになってるから……って木星付近?
「木星って、なんでそんなとこに? って言うか、俺?」
『どう見てもお前でしょ!』
「いや、俺からは見えないんだけど。写メって、わかる? 送ってもらえるか」
状況がよくわからない。木星付近ってザンスカール帝国にでもいるのか?
通話がいったん切られて、ちょっとの間でメールが送られてきた。添付された画像にはたしかに俺に似たような男が映っていて。
「これさ、こっちの世界のお兄ちゃんじゃないの?」
「え?」
ビニフォンの画面を指差して唯ちゃんがそう告げる。
こっちの世界の俺?
華琳が会った妊婦曹操の夫が異世界の俺らしいって話があったけど。
そういえば
俺が送っているテレパシーの返答がないのは聞こえてないから?
再びかかってきたティスちゃんからの電話に出てそこでちょっと待つように告げて、彼女の持つビニフォンをマーキングにしてポータルを開く。
「ちょっと行ってくる」
「ボクも行くよ。そっくりさん見たいから」
ちょっと距離あるからポータルのMP消費が大きいな。
ま、俺が6分の1とはいえ余裕ではある量なんだけどさ。
◇
唯ちゃんを俺の小隊に編入して行った先は大きな部屋だった。外の様子はわからないけどここが木星付近?
「テレポート? いえ、違いますね」
ポータルから出てきた俺たちを見てそう言ったのはティスちゃんと同じくらいの年齢に見える少女。
彼女はもしかしてアクエリオンEVOLのロ理事長ことクレア・ドロセラ?
「カライのニセモノ!?」
「そっくりさん? 双子の兄弟?」
「クローンかも」
俺を指差して驚く少女たち。全員が美少女だ。
しかも全員に見覚えがある。俺が好きなアニメ、ゲームの登場人物ばかり。
その中にずっと探していた姿を見つけてしまった。
「クラン!」
「な、なんだ貴様は!?」
「俺だよ! 俺! って指輪もチョーカーもない……」
「残念、ハズレだったみたいだねお兄ちゃん」
抱きしめようとした腕を回避し俺を睨むクラン。さすが
からかうような感じで結論を言う唯ちゃん。でもそれはたぶん俺の落ち込みを避けようとしたためで。
「だ、誰だ、お前は!?」
今度は男。俺以外でこの場にいる唯一の男だ。
いや、俺以外というのは間違いかもしれない。
その顔は俺そっくりで。唯ちゃんが言ったようにこっちの世界の俺なのか?
「俺は天井煌一。
「あまい……カライじゃないの?」
聞いてきた子はマクロス30のアイシャかな。見た感じ、俺の愛紗ともヨーコとも融合していないようで残念なような安心したような。
マクロス30のダブルヒロインではアイシャ・ブランシェットの方が好きだったからね。あ、もう片方のヒロインのミーナ・フォルテもいるな。あ、メイ・リーロンもいる! グレンラガンのリーロンとは融合してなくて本当によかった!
「そっちは?」
「お、俺は
そんな字あるのか。
でも字は違うが名前は同じ。やっぱり異世界の俺なのか?
「ボクの読みが当たったみたいだね。確認のために眼鏡外して比べてみよう」
「き、キミは?」
「ボクは」
「カライが気にしていた篁唯依よ」
唯ちゃんの自己紹介を遮って近くのモニタから現れたのは、立体映像の女性。
「シャロン・アップル!」
「ええ。あなたは何者? 篁唯依の婚約者という以外、私のデータベースにも情報がないわ。他の転生者でもない。この世界にはいるはずのない人間」
「転生者? そんなのがいるのか」
異世界転生ってやつだろうか。とりあえずカライと俺が似ているせいか敵対しているようでもないので情報交換を続けたい。
ティスちゃんもおとなしく俺たちの話を聞いて情報収集しているようだ。
「そんなのいいから眼鏡外そうよ」
ひょいっと小柄な、それでいて巨乳、まさにトランジスタグラマーを体現した少女がカライの眼鏡を奪う。
彼女はゼシカ・ウォンだ。衣装は前期型だな。
って、カライは眼鏡を外しても大丈夫なのか?
「やだ、美形!?」
鼻息が荒くなったのは腐ランカことサザンカ・ビアンカじゃないか。呪いはないみたいだな。
とはいえ、ここにはその別名の由来のランカ・リーもいるんだよなあ。
「お兄ちゃんも」
俺の眼鏡は俺以外には外せないように
「篁唯依にお兄ちゃんと呼ばれるなんて、まさかユウヤ・ブリッジス?」
「いいえ、彼はユウヤ・ブリッジスではないわ。彼女がアメリカにいることは確認できている」
シャロンが空中に映像を投影する。そのモニタに映されたのは監視カメラからなのか斜め上からの映像だった。
しかも中心に映ったのはよく知っている赤毛の少女。反応するのは唯ちゃん。
「由真姉!」
そう。映されたのは軍服に身を包む由真。ということはユウヤ・ブリッジスと融合してしまっているのか。
「ユウヤ・ブリッジスが女の子? ゆま? ゆいとゆま……これはもしかして!」
気づいたか異世界の俺。そうだよ、あっぱれ! 天下御免の登場人物だよ。
「スケバン刑事!」
「そっちかよ! いや、それも間違いじゃないけど!」
子済三姉妹の名前はスケバン刑事IIIの風間三姉妹からだよなあ。俺も唯ちゃんにヨーヨーを
それともカライの世界ではあっぱれが発売されていない?
「え? じゃあ、ゆいちゃんにお兄ちゃんと呼ばれているってことは同級生2?」
「たしかに唯ちゃんは喫茶店の子だけど!」
やはりこいつは異世界の俺なんだろうか? 発想が近すぎる。
そんな俺たちを置いて、唯ちゃんはビニフォンを操作中。
「由真姉! 由真姉! 出てよ!」
「まだ記憶が戻ってないんじゃないか?」
「……ボクもそうだったからキッカケがあれば」
今すぐにでも会いに行って記憶を取り戻させたいけど、この世界のアメリカにはマーキングしてないのでポータル移動ができない。
唯ちゃんや白蓮のように自分で思い出してくれるのを祈るしかないのか。
「なんで篁唯依とユウヤ・ブリッジスがが別人に?」
「それは説明できるから、そっちのことも教えてくれ。たぶん、お前は異世界の俺なんだろう」
眼鏡を外した俺の顔を見て、カライはゆっくりと肯いた。
ふう。祝福封じの手段をいくつも用意しておいてよかったよ。
◇ ◇
驚くべきことがわかった。
異世界の俺と思われるカライは
「あの飛影が鎧衣尊人で転生者。さらにダバにキラもってことか」
「他に悟空や承太郎もいるって無茶苦茶だねえ」
「恋姫ヒロイン全員嫁にした天井の方が無茶苦茶だろう」
眼鏡越しなのに空井がジト目なのがわかる。俺としては特典でアニメキャラに転生せずに美少女多めを選んだお前の方がアレだと思うぞ。
まあ、転生者が選んだラインナップを聞いたら逆に誰になりたいってのも困るけどさ。
「わ、私まで嫁になっているというのは本当なのか!?」
「うん。ほら、これこれ」
ビニフォンで俺とのツーショットを立体表示させる。文化祭の時のやつなので嫁クランも俺も大江戸学園の制服姿だ。こっちのクランは鼻息荒くそれを見ている。
「あたしはどうなのよ!」
「この中でいるのはクランだけかな」
ずいっと割り込んできたシェリルだったが、俺の返答にがっくりとしてしまう。
「本当に好かれているんだな、空井は」
「ああ。特典のせいだとわかっていても涙が出るほど嬉しい」
そんな好かれ方でいいのか、とは俺には言えない。梓で似たようなことになっちゃっているから。
梓にも早く会いたいなあ。
っと、せっかくだからこれも聞いておこう。アイシャかシャロンならばわかるかもしれない。
スタッシュから米粒よりも小さな欠片を出す。
「これを調べてくれないか?」
アイシャの指示に従って解析器にそれを置くと、すぐに結果が出た。
それは半ば予想していた答えで。
「欠片を調査した結果、これはG元素とわかったわ」
「それ、風石なんだよ」
G元素も風石どっちも固有原理なはずだが、こうなるとこのMuv-Luvの世界とゼロ魔の世界が完全に繋がっているみたいだな。
風へんに皇で一文字です