大有双   作:生甘蕉

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オリ主の出番はまだ先です
今回はクラン視点


3話 運命改変

「あ、クランちゃんみっけ!」

「ちゃんではなーい! ……天和?」

 大きな胸をぶるんぶるん揺らしながらかけよってきた天和にいきなり抱きしめられた。

 お前はネネかっ! あいつも桃色の髪だったな。あと、おっぱいもこのぐらいで……。

 

「いったいここ、どこなのよ?」

「他の皆さんはいませんか?」

 天和の妹たちに質問される。

「むっ、むしろ私がききたいのだ」

 それと質問する前に天和から助けてくれ。

 

 気がついた時にはここにいた。

 さっきまでは全く違う場所(ダカン)戦闘(ガドラス)中だったのだぞ。

 まさか敵の攻撃による幻覚?

 いや、私の精神防壁(バドラ)スキルレベルと煌一の造ったこのチョーカーの(ガーマ)ならば、そんな攻撃をくらってたとしても、ここまで鮮明な幻にはならないはずなのだ。

 

 強制的に転位させられたと見るべきであろうな。

 これもあのグランゾンとかいうロボットの仕業か?

 ……いや、戦闘中は私はクァドランを操縦するために巨大(ゼントラーディ)化していたし、天和たちは離れた場所にいたはずだ。

 なにか別の要因か。

 

「これがアナザー華琳の言った失敗なの?」

「わからん。私たちは負けた(プレデ:ガンツ)のか……?」

 私のクァドランはどこへいった?

 あれは煌一が私のために用意してくれたのだぞ!

 

 まあいい、もう1人のわが妹――地和がアナザー華琳と言っていたな。私もそう呼ぶことにするのだ――は失敗した場合は、状況の把握と付近の仲間との合流と言っていたな。

 

 仲間たちへの連絡は天和たち姉妹にまかせて、まずは現在位置の確認をする(ウ:ケスト)としよう。ビニフォンと呼ばれる携帯端末(セルラー)を使ってマップアプリを起動させた。マップには地形だけでなく、各種情報も表示される。

「どうやら、ふきんには他のみんなはいないみたいだな」

 地図には仲間を示す文字やマークは表示されない。

「連絡もできないの。ビニフォンの通信先として選べるのはここにいる人たちだけ。アンテナは立っているのに」

 なんだと?

 地図の表示領域を広げようとして、現在位置の表示に驚く。

「B.J.グローバル?」

 今いる場所はそれらしい。

 

 

 B.J.グローバル。

 初代マクロス艦艦長ブルーノ・J・グローバルの名を持つマクロス級4番艦だ。

 なぜそのマクロス級の中に私がいるのだ?

 マクロス大好きな煌一がその無茶苦茶な固有スキルを用いて造り出した(プレメルケスザンツ)ものだろうか。

 

 方舟を用意しろとは予言されていた。だが、ここまで巨大なものを造るほどのMPやGPはなかったはずだ。

 だとしたらいったい?

 

 マップの縮尺をあまり変更せずに立体表示自体を大きくする。現在位置がマクロス艦の形となって、さらにそれがいる(ダルカーン)が映し出される。

「B.J.グローバルがいるのは……ガリア4か。なるほど」

 ビニフォンで日時を確認してみた。

「西暦2048年ってどういうことよ。ちぃたちオバさんになっちゃったの?」

 地和が青くなっているが、いきなり何十年と経ってしまったわけではあるまい。

 

 まさか時間まで跳躍したというのか?

 

「一番高いかのうせいは『マクロスF』の世界にきてしまった、であろうな」

「ふーん。煌一の担当がマクロスFの世界だったってこと?」

「ほら、あれじゃない? ポロりんのあの予言。心残りと遭遇するってやつ」

 心残りか。そんな予言もあったのだ。

 たしかに今からなら、その心残りを解消することもできるかもしれないが。

 

「……問題なのはここが2048年のB.J.グローバルだということなのだ!」

「たしか、マクロスFで出てきたバジュラの巣になっていた船ですよね」

「へー、ここが船の中? とてもそうは見えないねー」

 人和の補足に辺りを見回す天和。

 煌一の強い薦めもあり、()()みんなでマクロスFは全話、さらには劇場版まで観賞している。彼女たち3姉妹、数え役萬☆姉妹(シスターズ)は歌い手ということもあって特に熱心にマクロスシリーズを観ていたな。

 

「B.J.グローバルを旗艦とした第117次大規模調査船団……2048年にバジュラのしゅうげきによって、かいめつしているのだ」

「ちょ、ちょっとそれってヤバくない?」

「げきヤバなのだ!」

 超時空生命体(バジュラ)はフォールド細菌によるネットワークで特殊な知性を持っているが、こちらに保菌者がいない以上、意思疎通はできまい。

 いや、保菌者はいるのだが、そのせいでその人物を話の通じない人類から救おうと襲ってくるのだったな。

 

「でも、結婚指輪のプシュケーハートがあるよ。これはほーるどくおーつのすっごいバージョンなんだよね?」

 危機感が伝わってない天和はのん気だが、それでは駄目なのだ。

「むこうのプロトコルがわからん。フォールド通信でも会話などできぬのだぞ」

 結婚指輪には煌一の成現によって、超高純度の超空間共振水晶体(フォールドクォーツ)を超えるという超世界共振水晶体(プシュケーハート)が小さいながらも使用されている。

 

 フォールドクォーツは発生するフォールド(ウェーブ)をバジュラが感知できて危険なのだが、煌一はこれを作った時にバジュラに感知できないように設定してあると言っていた。

 ……だが、私たちが感知されなくてもこの艦が攻撃されてしまえば同じではないか。

 

「あ、あの人見たことあるよ」

 天和が指差したのは2人の男女。まったくこやつは……自分でふっておいて急に話を変えるな。

「今はそんな時では……オズマ?」

 

 オズマ・リー。S.M.Sスカル小隊の隊長。

 ゲイのボビー・マルゴと仲良しな上、部下を美少年で揃えている。

 そっちの趣味だとの噂も信じられそうな男だった。

 その噂を簡単に払拭できるぐらいにシスコンなのだがな!

 

「マクロスFの主人公の?」

 違う(デ:ダンツ)。主人公は早乙女アルトだったはずだ。

 煌一の言う、主人公はオズマでアルトはヒロイン枠、という説を信じている者も多いが。

 

「若いな。2048年ならとーぜんか。いっしょにいるのは……グレイス・オコナーではないか!」

 マクロスFの小説では2人の会話がもう少し続いていたら歴史が変わっていたとさえ……もしやここは、マクロスFでも小説版の世界なのか。

わかったぞ(エセケスタ)!」

「クラン?」

「なぜ私が2048年のB.J.グローバル(ここ)にきたか。全ての始まりである今でしかできんことがある。急ぐのだ!」

 あの2人が出会っている以上、時間は少ない。

 

「運命をかえるのだ!」

 なにが原因かなど、今はどうでもいい。

 

 

 ◇

 

 

「私の心残りはミシェルのことなのだ」

「2面のあの眼鏡ね。でもそれだけなら、バジュラと戦っている時に手助けすればいいんじゃない? なんで今なの?」

「それでは駄目なのだ。ミシェルが死ななくても、こっちの私と恋人どーしになれるとは限らないのだ」

 あやつが劇場版のマクロスFのミシェルならば私がなにもしないでもうまくいくだろうが、そうでなければ背中をおす必要がある。

 

「他の世界のクランが別の男と結婚してると知ったら……」

「焦って自分のものにしようとするんじゃない?」

 荒々しく私を求めるミシェル……うまくいけばこっちの私は喜ぶだろうがな。

 いやしかし、最初はやはりロマンチックな方がいいか?

 

「もしそれで、この世界の私がミシェルに嫌われたらかわいそうではないか!」

「クラン、まだあの眼鏡のこと好きなの?」

「……わからん。だが私の夫は煌一だ。それは確かだぞ」

「ふーん。ま、ちぃたちにはこれがあるから、浮気なんてできないんだけどね!」

 煌一がくれたチョーカー。私たちを守る防壁(バドラ)であり、貞操帯でもある。これがある限り、夫以外の男を近寄らせることはないだろう。

 

「だから浮気ではない! 幼なじみを助けたいのだ!」

「でもクランとくっつけるんだよね?」

()ではない! それよりもなぜお前たちまでここにいるのだ? なんの未練があるのだ?」

 こやつらはあの戦闘(ガドラス)時、私とは遠い(デルケ)、バトル級のブリッジにいたはずだ。私の未練に巻き込まれたのではあるまい。

 

「バサラと勝負するのよ!」

 どこかを指差す地和。

 そこにバサラがいるわけもないだろうに。

「バサラはほーろーの旅をしてるころだろう」

「くっ、じゃあシェリルは?」

「まだ小さい」

 むっ。シェリルの両親を救うこともできるかもしれんな。彼女の両親が殺害されたのはいつだったか?

 

 考えていたらうるさい(ザーン)が鳴り響きだした。緊急事態を告げるサイレンだ。

「な、なに?」

「バジュラが攻めてきたのだ。お前たち、自分の身は自分で守るのだぞ!」

「あんたはどーすんの?」

「グレイスを保護する!」

 ミシェルの死の遠因でもあるグレイスに思うところがないわけではないが、()()ではない。劇場版ではそこそこいいやつだったし。

 ここで、彼女を助けて煌一の言うところの、きれいなG、にするのだ!

 

 

 ◇ ◇

 

 

「なぜ邪魔をしたの。あなたちのせいで!」

「あれ以上研究ブロックにいたところで、なにもできまい」

 結局ついてきたシスターズとともにグレイスの保護に成功した。正確には捕獲(ギルツ)だったが。

 そして、スタッシュから出した宇宙船で脱出したのだ。グレイスも一緒だ。

 スタッシュの大型化と、ついでにこの船を煌一からもらっておいて正解だったのだ。私にピッタリだとあやつも言っておったが、気に入っている。

 ……煌一はもしかしたら本当にマクロス級も用意できるかもしれんな。

 

「大事な研究結果があったのよ」

 諦めがついたのか、それとも天和たちの回復魔法で治っていく自分の火傷に興味をひかれているのか、彼女の口調はおとなしくなっていた。

 

「死にたかったのか? あのままでは死んで……いや、そうはならなかったか。貴様は自分のインプラント・ネットワーク理論を自分の身で証明することになっていたのだぞ」

 小説版ではグレイスはあのまま研究ブロックで助からない重傷を負い、ギャラクシーの連中によってインプラント・ボディに意識をダウンロードされて、今の身体は焼かれてしまうのだ。

「……それも悪くはなかったかもしれないわね」

「キスしたこともなかったのに、自分の身体を失ってもよかったのか?」

「な!」

 この女でもこんな表情をするのだな。耳まで真っ赤になっているのだ。

 図星ということはやはり小説版の世界な可能性が高いな。

 

「さっき公園で会っていた男が気になるんだろう?」

「……あなたたちはいったい何者?」

「はぐらかそうとしても無駄、まだ顔が赤いよー」

 天和め、ここはカッコよく名乗る場面ではないか。

 自分の興味を優先させるとは。

 いや、私も気になるがな。

 

 運命が変わっていたかもしれないと小説ではいわれてたな。オズマとくっついてもらえば……キャシーはどうするのだ? キノコ頭から守るぐらいしかできん。

 もう少し計画を煮詰める必要があるのだ。

 時間もかかりそうだ。

 しばらく煌一たちとは会えないかもしれないな……。

 

 

 ここにはいない義妹たちを思う。

「華琳とヨーコは無事だろうか……あいつらなら心配はいらないか。なんたってこの私の妹なのだからな!」

 手近な惑星か移民船団を探しながら、わが宇宙船、XGP-15A2アウトロースター号が銀河を征く。

 

「アウトローはないよねー」

「スターはいいのに」

「じゃあ、トップスター号?」

 いつの間にか、船名を変えられてしまった。

 一番星(トップスター)などまるでデコレートされた運送船ではないか!

 

 ……しばらくは運送業で生活費を稼ぐのもありなのだ。

 

 




クランの台詞に平仮名が多いのは仕様です

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